Learn from foreign experiences in HLW management

《米国》オクロ社が使用済燃料リサイクル施設の建設計画を公表

米国カリフォルニア州に本社を置くオクロ(Oklo)社は、2025年9月4日付のプレスリリースにおいて、先進燃料センターの第一段階として、16.8億ドル(2,520億円)を投資してテネシー州において燃料リサイクル施設を設計、建設、操業する計画を公表した。プレスリリースによれば、この投資は、使用済燃料をリサイクルして同社のオーロラ(Aurora)発電炉などの高速炉の燃料にする施設を建設するためのものであり、米国で初めての取組となる。オクロ社は、テネシー渓谷開発公社(TVA)との間で、TVAの使用済燃料を本施設でリサイクルするとともに、将来において同地域のオクロ社の発電炉からの電力をTVAに販売する可能性についても検討している。オクロ社は、リサイクル施設の許認可プロジェクト計画(Licensing Project Plan、LPP)を既に完成して原子力規制委員会(NRC)と事前協議段階に入っており、2030年代前半にはオーロラ発電炉向けの金属燃料の生産を開始できるとの見通しを示している。オクロ社の先進燃料センターは、リサイクルの他に燃料製造も可能な複合施設として構想されている。

オクロ社のリサイクル技術

オクロ社は、米国に9万トン以上存在する商業炉の使用済燃料をリサイクルして高速炉の燃料とする戦略を採っている。リサイクルについては、オクロ社は、パイロプロセス(乾式再処理)をベースとした電解精製によるリサイクル技術の研究開発を、エネルギー省(DOE)エネルギー先端研究計画局(ARPA-E)の選定プロジェクトなど複数の政府支援プロジェクトなどで実施してきている。特に、リサイクル技術の商業化は、1960年代に使用済燃料の電解精製技術を開発したアルゴンヌ国立研究所(ANL)や、アイダホ国立研究所(INL)等との共同研究で行われており、2022年2月には先進燃料リサイクルの商業化に係る覚書をANLと締結している。

オクロ社の電解精製リサイクル技術では、使用済燃料中のウラン/超ウラン元素(U/TRU)、及び核分裂生成物(FP)をそれぞれ回収し、U/TRUは高速炉燃料の原料に、FPは高レベル放射性廃棄物として処分される。電解精製によるパイロプロセスでは湿式再処理のPUREX法とは違って大量の液体廃棄物は生じないほか、処理量当りの施設規模も小さくなる。オクロ社の電解精製プロセスでは、プルトニウム(Pu)は単体で分離されずにアクチノイドと混合されたままとなるため、核不拡散上の懸念も小さくなる利点がある。

なお、ARPA-Eの「放射性廃棄物と先進炉処分システムの最適化(ONWARDS)」プログラムでオクロ社が選定されたプロジェクトでは、ディープアイソレーション(Deep Isolations)社も参画して、リサイクル施設からの廃棄物を同社のボアホール処分技術と適合する形で最終処分するための検討も行われている。

NRC許認可手続:オーロラ発電炉と並行して事前協議を実施

オクロ社は、リサイクル施設の建設に向けたNRCとの事前の協議プロセスを2022年末から公式に開始している。オクロ社は、NRCの既存規制枠組みで燃料リサイクル施設の許認可発給は可能との見解を示しつつ、燃料リサイクル施設の申請書提出は久しく無かったため、規制要件適合へのアプローチがNRCスタッフと整合している必要があるとして、燃料リサイクル技術の許認可プロジェクト計画(LPP)「初期版」を2022年12月29日に提出した。オクロ社は、2024年9月には既存のNRC規制枠組みを評価して許認可申請の道筋案を示した報告書を取りまとめてNRCスタッフの見解を得るなど協議を続けており、2025年9月4日にはLPPを完成してNRCとの事前協議段階に入っていることを明らかにしている。なお、リサイクル施設はテネシー州の支援も受けてオークリッジ・ヘリテージセンターに建設される予定であり、テネシー州知事も歓迎の意を表明している。

一方、オクロ社はオーロラ発電炉の許認可申請に向けたNRCとの協議も並行して進めている。オーロラ炉は金属燃料、液体金属ナトリウム冷却の高速炉で、電気出力が最大75MWのマイクロ炉である。オーロラ炉の建設については、2019年にINLサイトの利用許可等をDOEから取得し、2020年には非軽水炉の先進炉として初めてNRCに建設・運転一括許認可(COL)申請書を提出したが、2022年1月に情報不足を理由に否認されていた。オクロ社は、COL申請書の再提出に向けて、否認の2カ月後にはNRCとの事前協議を開始しており、2025年7月には第1段階のCOL申請の申請前準備評価を完了し、2025年中のCOL申請書提出を計画している。

【出典】

(post by tokushima.hideyuki , last modified: 2025-09-19 )