英国の環境・食糧・農村地域省(DEFRA)は、2007年3月26日付けのプレスリリースで、低レベル放射性廃棄物の長期管理に関する新たな政策文書を公表した。今回公表された政策文書は、2006年2月28日の協議文書 により2006年5月末まで実施された公衆協議の結果を反映する形で策定されたものであり、低レベル放射性廃棄物を扱うに当たって、公衆の安全を最優先とし、低レベル放射性廃棄物をより柔軟で実際的なアプローチで管理することを打ち出している。さらに、今回の政策文書では、発生する廃棄物量を低減する必要があることを強調し、低レベル放射性廃棄物管理計画の策定及びその承認におけるパブリック・インボルブメント(PI)及び協議の必要性を認識したものとなっている。
同プレスリリースによると、今回の政策文書では、低レベル放射性廃棄物の確実で安全な管理における優先事項として、以下の点を挙げている。
- 既存及び将来的に発生する様々なタイプの低レベル放射性廃棄物の管理において、より大きな柔軟性を持たせる。
- 保健安全執行部(HSE)及びイングランドとウェールズの環境規制機関(EA)を含む独立した規制機関によってサポートされる計画により、安全性への注力を維持する。
- 処分オプションを検討する前に、発生の抑制、利用する放射性物質の量の最小化、リサイクル及び再利用を通じて、低レベル放射性廃棄物の発生量の低減を図る。
- 原子力廃止措置機関(NDA)によって準備されるものとして、将来のいつの時点でドリッグに設置されている低レベル放射性廃棄物処分場の代替が求められ、計画されうるのかといった点を含む、原子力産業からの低レベル放射性廃棄物の管理に関する英国全体での戦略を定める。
- 医療、研究・教育、一般産業の原子力産業以外からの低レベル放射性廃棄物の管理に関する英国全体としての戦略を開始する。政府にとっての第一段階は、非原子力分野からの将来的な低レベル放射性廃棄物の明確な見通しを得る研究を原子力廃止措置機関(NDA)と共同で行うことである。
- 低レベル放射性廃棄物管理計画の開発及び実現において、地域及び幅広い公衆を参画させる必要性を強調する。
また、同プレスリリースで、環境及び気候変動担当閣外大臣は、「本日の政策の公表は、将来の低レベル放射性廃棄物の安全かつ適切な処分方策を有し、原子力及び非原子力活動の結果として発生する種々の放射性廃棄物を受け入れるのに十分な柔軟性を持たせることを確実にするものである。今回の低レベル放射性廃棄物の管理についての検討は、現在、2006年7月の放射性廃棄物管理委員会(CoRWM)の勧告に基づく放射性廃棄物管理安全プログラムの下、政府が高レベル放射性廃棄物等の管理政策に関して進めている作業を補足するものである。」と述べている。さらに、同プレスリリースでは、低レベル放射性廃棄物の長期間にわたる管理及び処分のための方法は、高レベル放射性廃棄物の場合と異なり既に存在するものではあるが、今回の検討では以下のようないくつかの新たな問題を扱ったとしている。
- 原子力廃止措置機関(NDA)によって実施されている廃止措置及びクリーンアッププログラムにより、数十年にわたり発生する低レベル放射性廃棄物の発生量が大きく増大する。
- 上記の廃棄物を扱うためには、ドリッグ低レベル放射性廃棄物処分場は長期的な容量が不足している。
- 低レベル放射性廃棄物を扱うためのその他の手段が少なくなっている。
- 非原子力分野のために非常に重要なものとして、少量の放射性廃棄物のための小規模の処理及び処分の手段を見つけるのが困難になりつつある。
なお、今回の政策文書により、1995年7月に公表されたコマンドペーパー「放射性廃棄物管理政策レビュー:最終的結論(Cm2919)」の関連する部分は修正、または置き換えられることになる。
【出典】
- 環境・食糧・農村地域省(DEFRA)、2007年3月26日付けプレスリリース、
(http://www.defra.gov.uk/news/2007/070326a.htm) - Policy for the Long Term Management of Solid Low Level Radioactive Waste in the United Kingdom(政策文書)2007年3月26日
(http://www.defra.gov.uk/environment/radioactivity/waste/pdf/llw-policystatement070326.pdf)
(post by 原環センター , last modified: 2013-07-03 )