英国の放射性廃棄物管理委員会(CoRWM)は、2006年7月31日、放射性廃棄物の長期管理に関する最終報告書をウェブサイト上に公開し、政府に対して15項目からなる勧告を行ったことを公表した。CoRWMの2006年7月31日付けのプレスリリースによると、今回の勧告は、英国の長期にわたる放射性廃棄物の管理に向けた現実的なロードマップを初めて提供するのものであるとしている。また、CoRWMは、今回の勧告の実施に向けて政府に迅速な対応を求めるとしている。
同プレスリリースによると、放射性廃棄物管理委員会(CoRWM)は、勧告の重要な点として、地層処分及び処分場建設までを念頭においた中間貯蔵の実施、政府と処分場の受け入れ可能性のある地域との間の自発的な参加に基づいた協力関係の構築、実施手続きを開始するための監督機関の迅速な設置を挙げている。なお、今回の最終勧告については、2006年4月に最終勧告案がCoRWMによって公表され、関係機関との協議が行われていた 。
同プレスリリースで示された、放射性廃棄物管理委員会(CoRWM)の勧告の要旨は以下の通りである。
- リスクの観点から、地層処分を放射性廃棄物の長期管理のための実施可能な最善策と判断。また、地層処分については、公衆及び利害関係者の信頼の醸成及び維持を行いつつ、可能な限り早く実施することを目指すべき。
- 地層処分の実施に関わる不確実性などの観点から、処分が実施されるまでの確固たる中間貯蔵計画が廃棄物の長期管理戦略に不可欠。
- 柔軟かつ段階的な意思決定手続きを推奨。
- 不確実性の低減のための地層処分の長期安全性に関する研究開発プログラムの強化への関与。
- 意思決定の柔軟性を担保するため、地層処分以外の長期管理オプションの可能性の維持への関与。
- 誘致する地域が実施手続きに参加の時点で、処分される廃棄物のインベントリを明確に規定。
- ウラン、使用済燃料、プルトニウムを廃棄物として管理することが決定した場合の、安全な貯蔵及び地層処分に向けた固型化の実施。
- 原子炉の解体廃棄物の中で地層処分対象を決定する際は、低レベル放射性廃棄物に関する協議で検討される、他の受け入れ可能な管理オプションも考慮。
- 施設のサイト選定も含む、提案された長期管理アプローチにおける信用及び信頼の構築に不可欠な公衆及び利害関係者の参加の継続。
- 放射性廃棄物関連施設のサイト選定についての提案への地域の関与は自発的な参加の原則に基づくべき。
- 地域の参加への自発性は、短期的には参加を促進し、長期的には放射性廃棄物関連施設が地域に受け入れられることを確かにするように設計された地域社会の総合政策の提供によって裏付け。また参加については、地域の福祉が向上するという期待に基づくものであるべき。
- 受け入れの可能性のある地域と実施主体の開かれた対等な関係に基づく協力関係の構築による地域参加の達成。
- あらかじめ定められた時点までの、手続きからの撤退に関する地域の権利
- 手続きの妥当性を確保するため、重要な決定は民主的に選ばれた適切な組織により承認。
- 最終勧告で示された実施手続きを監督する独立機関の迅速な指名。
また、放射性廃棄物管理委員会(CoRWM)の最終報告書では、補遺として、CoRWMのサイト特性調査の開始までの見通し、Nirex社が政府及び原子力廃止措置機関(NDA)に示した見通しを基にした、英国の地層処分の参考スケジュールが示されている。
時期 | 期間(年) | 主な活動 |
---|---|---|
2006-2016 | 10 | 実施機関の設置、可能性のある受け入れ地域の特定など |
2016-2035 | 19 | サイト特性調査及びサイト選定 |
2035-2045 | 10 | 計画の許可、処分場の建設 |
2045-2110 | 65 | 処分場への廃棄物の定置 |
2110-2120 | 10 | 処分場の閉鎖 |
2001年の協議用文書「放射性廃棄物の安全な管理」で示され、2003年に4段階に修正された協議プロセスは、今回の放射性廃棄物管理委員会(CoRWM)の勧告に基づく政府による管理オプションの決定及び説明をもってその第2段階を終了する。その後、第3段階ではサイト選定基準を含む政府決定の実施方法についての公開討論が行われ、第4段階の必要な法整備をも含めた実施プロセスの開始は2007年頃に予定されている 。
【注】
放射性廃棄物管理委員会(CoRWM)の最終勧告において、地層処分は一旦施設を閉鎖した後は回収を意図しない、地下200~1,000mの深さに設置される施設での放射性廃棄物の処分と定義されている。
【注】
政府は、放射性廃棄物の管理オプションの検討を4つのステップで実施することとしているが、その第2段階を担う放射性廃棄物管理委員会(CoRWM)は、第2段階の中に独自の3つの検討段階を設定して放射性廃棄物の管理オプションの検討を実施してきた。今回のCoRWMの最終勧告により、CoRWMの第3検討段階が終了することとなり、今後、政府による管理方針の決定により政府の第2段階が終了することとなる。
【出典】
- 放射性廃棄物管理委員会(CoRWM)、2006年7月31日付けプレスリリース、
(http://www.corwm.org/content-1091) - 放射性廃棄物管理委員会(CoRWM)ウェブサイト
(http://www.corwm.org/content-0) - Managing our Radioactive Waste Safely, CoRWM’s recommendations to Government, July 2006
(http://www.corwm.org/pdf/FullReport.pdf)
【2006年8月4日追記】
2006年7月31日、政府は環境・食糧・農村地域省(DEFRA)のプレスリリースにおいて、環境大臣が放射性廃棄物管理委員会(CoRWM)の勧告に照らして政策を進める意向を示し、政府の正式な見解を、議会に対して秋の会期中に示す予定であることを公表した。また、原子力廃止措置機関(NDA)は同日、プレスリリースを発表し、地層処分及びその実施までの確実な中間貯蔵、自発性を基にした地域の参加及び協力関係への注力などについて基本的に賛意を示した。さらに、Nirex社も同日、プレスリリースにおいて、地層処分の実施及び必要な施設の建設・操業、研究開発のための実施主体の設置に賛意を示し、Nirex社の将来の体制及び役割については、政府によるCoRWMの勧告への反応によって決定されることになるとの見解を示した。
- 環境・食糧・農村地域省(DEFRA)、2006年7月31日付けプレスリリース、 http://www.defra.gov.uk/news/2006/060731e.htm
- 原子力廃止措置機関(NDA)、2006年7月31日付けプレスリリース、 http://www.nda.gov.uk/News–News_(1763).aspx?pg=1763
- Nirex社、2006年7月31日付けプレスリリース、http://www.nirex.co.uk/index/inews.htm
(post by 原環センター , last modified: 2023-10-10 )