英国の放射性廃棄物管理委員会(CoRWM)は、2006年4月27日付けのニュースリリースにおいて、放射性廃棄物管理オプションの勧告案を公表した。同ニュースリリースにおいてCoRWMは、放射性廃棄物の長期管理オプションとして、地層処分と処分サイトが決定するまでの中間貯蔵を組み合わせた管理方法を示している。今後、この勧告案は、2006年7月に最終勧告を環境・食糧・農村地域省(DEFRA)に提出する前に、関係機関との協議にかけられるとされている。
公表された勧告案では、現状の知見に基づけば、廃棄物とされている全ての物質の長期管理方策としては、地層処分が最適であるとしている。しかし、放射性廃棄物管理委員会(CoRWM)は、地層処分の実施には数十年もしくは、サイト選定における技術的な課題や地域社会の懸念が示された場合にはより長くかかる可能性があるため、中間貯蔵プログラムの必要性を指摘している。このような背景により、CoRWMは、以下の点を含む段階的な実施プロセスを勧告している。
- 処分場プログラムの遅れや不成功の可能性に対応するための中間貯蔵プログラムの開発を通じた、廃棄物の安全で確実な管理の実施。
- 放射性廃棄物の長期貯蔵のためのより適した手段とともに、地層処分の長期安全に関する本質的な、及びサイト固有の不確実性を低減することを目的とした研究開発プログラムの強化。代替管理オプションに関する適切な研究開発の実施。
- 実施プロセスにおける意思決定に柔軟性を持たせることによって、他の長期管理オプション(例えば、ボーリング孔処分)が実用的な代替方法となる可能性の維持。
- 処分場のサイト選定を含む長期管理アプローチに対する信頼を構築することを目的とした公衆・利害関係者参画の継続。
- 次の段階へ進む前、もしくは代替案を除外する前に、進捗のレビューを行い再評価の機会を創設。
同ニュースリリース及び最終勧告案では、放射性廃棄物の長期管理施設のサイト選定に関する地域社会の参加は、自発的な意思に基づくべきであることを勧告するとともに、政府が地域社会の参加を容易にするために、参加支援パッケージを提供するように勧告している。さらに、地域社会と実施主体との間が、開かれた対等な関係に基づいたパートナーシップの構築を通してなされるべきであることが示されている。
また、同ニュースリリースでは、地層処分場は地下数百メートルに作られ、周囲の岩盤や特別に設計された人工バリアが環境を保護する役目を果たすとしており、英国における3分の1の土地が、地質学的に地層処分に適しているとしている。
なお、放射性廃棄物管理委員会(CoRWM)は、3つの検討段階を踏んで放射性廃棄物の管理オプションを検討しており、現在は第3検討段階 にある。CoRWMは放射性廃棄物管理オプションについて、2005年4月に地層処分、段階的地層処分、短寿命放射性廃棄物の浅地中処分、中間貯蔵の4つの管理オプションに絞り込み、検討を続けていた 。
【出典】
- 放射性廃棄物管理委員会(CoRWM)、2006年4月27日付ニュースリリース、 http://www.corwm.org/content-1038
- CoRWM’s Draft Recommendation、http://www.corwm.org/pdf/None%20-%20CoRWMs%20Draft%20Recommendations%2027%20April.pdf
【2006年6月8日追記】
2006年6月7日、原子力廃止措置機関(NDA)は、プレスリリースにおいて、放射性廃棄物管理委員会(CoRWM)が2006年4月27日に公表した放射性廃棄物管理オプションの勧告案に対して、概ね肯定的な見解のコメントを発表した。
- 原子力廃止措置機関(NDA)のウェブサイト 2006年6月7日付けのプレスリリース、http://www.nda.gov.uk/News–News_(1692).aspx?pg=1692
(post by 原環センター , last modified: 2023-10-10 )