欧州委員会(EC)は、2006年10月24日のプレスリリースにおいて、「原子力施設の廃止措置、使用済燃料及び放射性廃棄物の資金管理に関する委員会勧告」(以下「廃止措置等に関する勧告」という)を採択したことを公表した。欧州連合(EU)法の二次法(規則、指令、勧告等)に当たる本勧告は、放射性廃棄物と使用済燃料の管理及び処分を含めた原子力施設の廃止措置のための資金の適切な管理に関するものである。
プレスリリースによると、今回の勧告は、原子力安全分野における補完性の原則1 、各国規制機関による監督責任を十分に尊重したものとなっており、廃止措置に関する専門能力を備えた、事業者とは独立した国家組織の設置を提案する形が取られている。欧州委員会(EC)は将来発生する廃止措置費用の確保のためには、適切な管理の下で分離された基金を設置することが望ましい選択肢であるとしている。また、欧州委員会(EC)は、常設の専門家グループを設置する他に、関連する全ての加盟国における廃止措置及び放射性廃棄物管理基金の利用状況に関する年次報告書を発行する意向を示している。
欧州委員会(EC)は、「放射性廃棄物管理指令案」及び廃止措置を含む原子力施設の安全確保に関する指令案(以下「原子力施設安全確保指令案」という)として、各々拘束力を持つ指令を提出しており 、原子力施設の安全確保指令案には廃止措置における資金確保に関する規定も含まれていた。また、原子力施設安全確保指令案には、廃止措置基金の設置義務及び基金が満たすべき最低限の基準が具体的に示されていたが、2004年9月に提出された修正指令案では具体的な基準は明示されなかった。なお、欧州委員会(EC)はその後、2004年10月26日に「原子力施設の廃止措置のための資金の利用に関する報告書」を公表し、公式声明として2005年には透明性のある形で廃止措置資金を管理するよう求める勧告を採択する意向を示していた。
また、欧州連合(EU)における最近の放射性廃棄物管理の動向に関して、2006年11月20日にはEU理事会によって、放射性廃棄物及び使用済燃料の輸送管理に関する指令が採択されている。これまで放射性廃棄物の輸送に関して適用されていた1992年のEURATOM指令は、使用済燃料を適用対象としていなかったが、今回新たに策定された指令では使用済燃料も対象に含まれることとなった。
【出典】
- 欧州委員会ウェブサイト、2006年10月24日付プレスリリース http://europa.eu/rapid/pressReleasesAction.do?reference=IP/06/1466&format=HTML&aged=0&language=EN&guiLanguage=en
- 「原子力施設の廃止措置、使用済燃料及び放射性廃棄物の資金管理に関する委員会勧告」 Commission Recommendation on the management of financial resources for the decommissioning of nuclear installations, spent fuel and radioactive waste http://eur-lex.europa.eu/LexUriServ/LexUriServ.do?uri=OJ:L:2006:330:0031:0035:EN:PDF
- 「『放射性廃棄物管理指令案』及び『原子力施設安全確保指令案』の修正指令案」 Amended proposal for a COUNCIL DIRECTIVE (Euratom) laying down basic obligations and general principles on the safety of nuclear installations Amended proposal for a COUNCIL DIRECTIVE (Euratom) on the safe management of the spent nuclear fuel and radioactive waste http://europa.eu.int/cgi-bin/eur-lex/udl.pl? REQUEST=Service-Search&LANGUAGE=en&GUILANGUAGE=en&SERVICE=all &COLLECTION=com&DOCID=504PC0526
- 「放射性廃棄物及び使用済燃料の輸送の監督と管理に関する指令」 Council Directive on the supervision and control of shipments of radioactive waste and spent fuel http://eur-lex.europa.eu/LexUriServ/LexUriServ.do?uri=OJ:L:2006:337:0021:0032:EN:PDF
- EC条約
- 補完性の原則について、EC条約第5条2段は、「共同体は、その排他的権限に属しない分野においては、補完性の原則に従って、提案されている行動の目的が加盟国によっては十分に達成できず、それゆえ提案されている行動の規模又は効果の点からして共同体により一層良く達成できる場合にのみ、かつ、その限りにおいて行動する」と定めている。 [↩]
(post by 原環センター , last modified: 2013-06-26 )