フィンランドの使用済燃料処分の実施主体であるポシヴァ社は2006年12月12日付のプレスリリースで、「使用済燃料の最終処分のための研究・技術開発(RTD)プログラム2007-2009」を、安全規制機関である放射線・原子力安全センター(STUK)に2006年11月末に提出したことを公表した。RTDプログラムはSTUKから求められた中間報告の一部を構成する報告書であり、この他の中間報告書としては、施設設計のアップデートに関するものが含まれる。また、それらとは別に、使用済燃料処分や生物圏の研究、並びにサイト詳細のアップデートに関する報告書などが予定されている。なお、RTDプログラムは3年毎に作成されることになっており、2003年には「オルキルオト及びロヴィーサ原子力発電所の放射性廃棄物管理:2004-2006年の研究、開発、技術設計プログラム」(TKSレポート2003)が公表されている 。
今回公表されたポシヴァ社の2007年から2009年における研究・技術開発(RTD)プログラムの主な目的は、同プレスリリースにおいて以下のように示されている。
- 処分システムが処分の安全要件を満足するように、処分システムの主要な構成物についての性能目標を定めること
- 安全要件が利用可能な技術によって満足されることを実証すること
同プレスリリースによると、同報告書では処分システムの主要な構成物の性能目標に関する現状についてのレビューを行っており、主要な構成物(人工バリア及び天然バリア)のほぼ全てについて、主な性能目標が定められ、その実現可能性が実証されたとしている。また、全般的な閉じ込め技術はここ数年での進捗により大きな問題は無いとする一方で、ベントナイトや埋め戻し材の使用に関しての研究開発の必要性が示されている。同様に、母岩への要求事項に関する開発や、実際の処分環境における処分実施の信頼性向上などが必要であるとしている。
セーフティケースの開発については、ここ数年は処分システムの展開に関する記述と生物圏モデリングの開発に重点が置かれてきたが、次のフェーズでは、同記述に関するアップデートが行われると共に核種移行モデリングが開始され、セーフティケースの準備において利用される方法論の中から新たな重点が示されるものとしている。
同報告書には、上記のような研究開発に関する事項以外にも、地下特性調査施設の概要や進捗(2006年秋の段階で、掘削深度:150m、坑道延長距離:1.5km)、スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)との共同研究による処分概念(KBS-3)についての開発状況や計画も示されている。
同プレスリリースでは今後の予定として、貿易産業省(KTM)のガイドに従いポシヴァ社が2012年末迄に建設許可の申請を行うこと、2009年末迄には同申請に必要となる全ての書類に関する概要を同社が示すことが紹介されている。
【出典】
- ポシヴァ社ウェブサイト、2006年12月12日付プレスリリース、 http://www.posiva.fi/englanti/tietopankki_ajankohtaista.html?
dataf=20061212124336.txt&dpic=standard.gif&title=Posiva+has +issued+the+RTD+programme+for+2007-2009+&arctype=ESITE &arcfile=&arctitle=&newstype=uutinen&lang=eng&date=20061212090000
【2007年1月9日追記】
ポシヴァ社のウェブサイトにおいて、2007年1月8日、「使用済燃料の最終処分のための研究・技術開発(RTD)プログラム2007-2009」(TKS-2006)が公表された。同報告書は、地下特性調査施設(ONKALO)、使用済燃料の処分概念開発、処分施設の設計、セーフティーケースの準備、代替処分概念の開発(KBS-3H)、オルキルオトにおけるモニタリングプログラムなどの章で構成されている。
- 使用済燃料の最終処分のための研究・技術開発(RTD)プログラム2007-2009(TKS-2006) http://www.posiva.fi/tyoraportit/TKS-2006web.pdf
【2007年2月7日追記】
ポシヴァ社は、2007年1月29日に「使用済燃料の最終処分のための研究・技術開発(RTD)プログラム2007-2009」(TKS-2006)のレビューのための国際専門家会議をヘルシンキで開催した。同社の2007年2月5日付けのプレスリリースによれば、同会議には、12ヶ国からの220名の参加があったとの ことである(プレスリリースには、同会議での説明資料等が公開されている)。
また、2007年2月2日付けのプレスリリースでは、同社の研究開発が処分の安全性の提示に向けた新たな段階に入ったとする旨の記事が掲載されている。同プレスリリースによれば、2009年には規制当局に安全性に関する中間報告書を提出する予定である。
- ポシヴァ社ウェブサイト、http://www.posiva.fi/englanti/tietopankki_ajankohtaista.html?dataf=current&noc=200&lang=eng
(post by 原環センター , last modified: 2023-10-10 )