2006年の放射性廃棄物等管理計画法の規定に基づき、CNEは放射性廃棄物等管理に関する取り組みや調査研究等の進捗状況の評価を毎年行い、評価結果を取りまとめた報告書は議会に提出されることとなっている。2007年6月に第1回評価報告書 を取りまとめて以降、CNEは毎年報告書を取りまとめており、今回の報告は第5回目となる。なお、前回の第4回報告書は、2010年6月に公表されている 。
CNEが取りまとめた今回の第5回報告書の「要約と結論」によれば、高レベル及び長寿命中レベル放射性廃棄物の地層処分事業1 に関して次のような動向や評価結果が示されている。
- 2010年9月にANDRAは、地層処分事業の事業化段階における実施体制と戦略を提示した一方で、地層処分事業に係る費用の増加を費用見積として示した。これをうけて、廃棄物発生者であるフランス電力株式会社(EDF)、AREVA社、原子力・代替エネルギー庁(CEA)は、費用削減の可能性のある処分場の代替設計オプションを提案した(2010年11月にANDRAに提示)。
- 上記の廃棄物発生者が提示した代替設計オプションの個々の技術的要素には、今後検討すべき要素も含まれるが、技術的・経済的条件と両立可能な形で放射線影響を最小限に抑えるという最重要目的を達成するためには、CNEは現行のANDRAの計画が廃棄物発生者の提案よりも優れていると判断する。
- ANDRAはエネルギー・気候変動総局(DGEC)の要請に基づいて、廃棄物発生者の提案について検討するために、2011年4月に地層処分事業に関するレビューチームを設置した。ここでのレビューの目的は、地層処分事業を支援するコントラクターを決定する前に、地層処分事業の産業プロジェクトとしての頑健性に関する見解を示し、地層処分場の仕様及び技術面・経済面で探求されるべき最適化の方法を特定することである。レビューの結果を受けて、ANDRAは同年10月に、地層処分場の設計概念と技術仕様のレファレンス(参照仕様)となる“地層処分事業の要件”をCNEに提示した。
- 上記のレビューの後に、ANDRAは地層処分事業を支援するコントラクター決定のための入札手続きを進めている。CNE自身に、その入札仕様等を詳細に分析する時間が無かったが、ANDRAが入札に際して地層処分場の明確な概念を示すことなく、処分場の詳細な概念や費用試算の最終化等を外部機関に委託してしまうことをCNEは懸念している。CNEはANDRAに対して、法律で定められた責任を果たすよう要請する2 。
- CNEは更に、廃棄物発生者(EDF、AREVA社、CEA)が、原子力施設、地下施設、並びに、関連するリスク管理等の分野における長年の開発実績に基づく専門性を有することにも着目し、ANDRAが地層処分事業の実施に特権的役割を有するものの、事業期間中の各種プロセスをとおして、これら廃棄物発生者が効果的に関与していくことを提案する。
- CNEは、公開討論会で利用される地層処分事業の基本要素を示す概要書が12ヶ月以内に公表されることを要請する。地層処分事業の基本要素には、処分概要、可逆性の条件、地上施設の概要、坑道・斜坑、処分対象廃棄物のインベントリ、費用見積等が含まれる。
第5回評価報告書における地層処分事業に関する調査研究の進捗状況やCNEの評価結果の詳細は同報告書の第2章で扱われており、以下のような項目立てで展開されている。
- インベントリ
- ZIRA(処分場の設置に向けて2009年12月にANDRAが政府に提案し、詳細な調査が実施されている区域 )
- ZIIS(処分場の地上施設を配置する可能性のある区域)
- 処分事業の進捗
- 研究活動(熱力学研究及び土質力学研究、地下研究所における研究)
- 可逆性
- 地層処分サイトの記憶
同章の中でCNEは、次のような評価結果を示している。
- CNEはANDRAが地下研究所で行っている様々な調査研究を高く評価しており、2013年までにさらに多くのデータが取得できると期待している。また、CNEは実規模での処分孔掘削試験を継続する重要性を強調しており、更に、高レベル放射性廃棄物の処分孔の大きさを特定するために今後実施される試験が、廃棄物パッケージの回収可能性を評価するうえでも重要であると考えている。
- CNEは2013年の公開討論で提案されるZIIS(処分場の地上施設を配置する可能性のある区域)の選定の妥当性をCNE自身が評価するために、ANDRAが実施した調査について公開討論の開催前に把握できることを望む。なお、地元代議士やその他のステークホルダーとの協議が、ZIIS選定に際して重要な判断材料になるとしても、選定に際しては、地理、地質、並びに環境的な制約等に関する客観的な調査結果に基づくべきである。
なおCNEは、地層処分に関する上記第2章の冒頭において、福島第一原子力発電所の事故によって、特に、貯蔵プールを含む地上貯蔵施設の脆弱性が明らかになったとして、廃棄物発生者が実施する個々のサイトでの貯蔵方法等に関する調査について、2012年にその調査結果の分析を行う予定であることも示している。
【出典】
- 国家評価委員会(CNE)第5回評価報告書
https://www.cne2.fr/telechargements/Rapport-CNE2-2011.pdf
(post by emori.minoru , last modified: 2023-10-11 )