連邦放射線防護庁(BfS)は、2012年1月9日に開催された市民活動家などを中心としたアッセⅡ監視グループとの公開会合において、アッセⅡ研究鉱山に試験的に処分された放射性廃棄物の回収に向けた事前調査である現状確認調査1 の評価に用いる基準を公表した。BfSは、同日付けのプレスリリースにおいて、評価基準に関する報告書を公表し、今後、3段階で実施する現状確認調査については、各ステップでの評価結果を踏まえて進めるとの考えを表明した。
アッセⅡ研究鉱山では、1960~70年代に岩塩鉱山跡を利用して低・中レベル放射性廃棄物の試験的な処分が実施された。これらの放射性廃棄物の回収方法を検討するため、BfSは、処分坑道の一部の試験的な掘削及び調査(現状確認調査の第1段階)を2011年11月以降に開始する予定としていた が、現時点ではまだ掘削作業に着手していない。同プレスリリースにおいてBfSは、調査開始に先立って、透明性を確保しつつ検証可能な形で現状確認調査の結果を評価するための基準を作成・公表したとしている。
評価基準は、アッセⅡ研究鉱山からの放射性廃棄物の回収が可能か否かを評価するための判断材料を全て含むものとして、以下に示す3つの評価分野で構成されている。
- 放射線防護:放射性廃棄物の回収作業によって生じうる放射線学的影響を検討するとともに、防護基準の遵守、放射線防護令に規定された作業員と住民の線量限度を遵守する観点から評価する。さらに、総線量のような放射線負荷の最小化についても検討する。
評価に当たっては、各段階の作業を実施することによって得られる便益が、それに伴う放射線学的リスクと兼ね合いにおいて許容できるものかどうか、またリスク低減のためにさらにどのような措置を講ずることができるかを検討する。 - 技術面での実現可能性:回収作業で利用される技術や自動化の可能性、作業の最適化に向けた方策を評価する。また、廃棄物の回収・封入・輸送に要する時間を算出する。
- 採掘作業における安全性:岩盤力学から見た処分室の状態、有害ガスの発生の可能性、その他の有害物質の存在など、労働災害の防止と作業の安全性の確保に関する基準により評価する。
なお、同プレスリリースにおいてBfSは、上記のうち放射線防護に関して、既存の知見に基づいた防護措置を講ずることにより、回収作業に伴う被ばく線量と作業員の健康リスクを許容できる程度まで低減できる見通しであるとの見解を示している。
【出典】
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連邦放射線防護庁(BfS)アッセⅡ研究鉱山のウェブサイト、2012年1月9日付プレスリリース、
http://www.endlager-asse.de/SharedDocs/StudienGutachten/kriterienbericht_faktenerhebung.html -
アッセⅡ研究鉱山の現状確認調査のための評価基準に関する報告書、
http://doris.bfs.de/jspui/bitstream/urn:nbn:de:0221-201201097015/1/Kriterienbericht_Faktenerhebung_01_12_2011.pdf - 放射線防護令
- 現状確認調査は、○第1段階:処分坑道の一部の試験的な掘削及び調査、○第2段階:処分室の掘削、○第3段階:放射性廃棄物の試験的な回収の3段階の工程で進められる。 [↩]
(post by j-nakamura , last modified: 2023-10-11 )