2002年6月5日、米国の上院エネルギー・天然資源委員会は、米国における高レベル放射性廃棄物処分場としてネバダ州のユッカマウンテンを承認する決議案を可決した 。この決議案は、 2002年4月8日の地元ネバダ州知事による不承認通知を覆し、ユッカマウンテン・サイトを承認するためのものである。下院本会議は 2002年5月8日に 既に承認決議を行っており、後は上院本会議での審議および決議を待つこととなった。
ユッカマウンテン・サイトの指定を巡るこれまでの動きとしては、2002年2月15日に大統領が連邦議会に対してユッカマウンテン・サイト推薦通知を 行っていたが、2002年4月8日には地元ネバダ州知事が不承認通知を行っていた(何れも既報:大統領の推薦、ネバダ州知事不承認)。 これらは放射性廃棄物政策法(NWPA)に規定された手続に基づくものであり、同法に拠れば、このネバダ州知事の不承認を覆すためには連邦議会上下院における過半数での承認決議が必要とされており、最終的な結論は連邦議会の決定に委ねられていた。
連邦議会では、州知事の不承認通知の翌日2002年4月9日には上院エネルギー・天然資源委員会に、同4月11日には下院エネルギー・商務委員会にこの不承認を覆す決議案が提出され、実質的な審議は下院から開始された。下院では2002年4月25日にエネルギー・商務委員会での承認の後、本会議では 2002年5月8日に306対117の大差で承認が行われていた 。上院ではエネルギー・天然資源委員会において審議が開始されていたが、 2002年6月5日に同委員会において13対10で承認が行われたものである。
上院エネルギー・天然資源委員会のBingaman委員長はプレスリリースの中で承認の理由を下記のように述べている。
- 州知事からは、ユッカマウンテンの地質、処分場の設計、コンピュータ・モデルの信頼性、廃棄物輸送の安全性等、いくつかの疑問が挙げられたが、それらは原子力規制委員会(NRC)の専門家による回答が得られている。決議案の承認がなされれば、原子力規制委員会(NRC)は許認可過程の中でこれらの問題の解決が可能であり、従ってエネルギー省(DOE)の申請を妨げるような事由は示されていない。
- エネルギー省(DOE)は、原子力規制委員会(NRC)へ申請を行うことに十分な正当性があることを示した。原子力規制委員会(NRC)の許可を得るためには、エネルギー省(DOE)には、設計問題、性能評価、輸送の安全強化等の面で解決すべき事項はあるが、原子力規制委員会(NRC)および環境保護庁 (EPA)の専門家の意見でも解決可能と見込まれている。
- 放射性廃棄物の恒久的な解決策への国家的要請は非常に強く、そのための手段としては地層処分が唯一信頼できる長期的な解決策であると全米科学アカデミー(NAS)も表明している。過去58年にわたり、エネルギーと安全保障の利益を享受してきた我々には、我々自身で廃棄物処分を行う責任がある。
決議案は今後上院本会議での審議・議決に回されるが、ユッカマウンテン・サイトの承認のためには7月25日までに決議案の承認が行われる必要性がある。
【決議案および決議の本文(pdfファイル)】
- 上院決議案(S.J.RES.34)
- H_JRes87下院決議(H.J.RES.87)
【出典】
- 上院エネルギー・天然資源委員会内のプレスリリース (Bingman委員長:http://energy.senate.gov/press/dem /press_template.cfm?id=183310、 Murkowski上席委員:http://energy.senate.gov/press /press_template.cfm?id=183300)
- 下院エネルギー・商務委員会のプレスリリース (Tauzin委員長:http://energycommerce.house.gov/107/news/05082002_564.htm)
- 放射性廃棄物政策法 (Nuclear Waste Policy Act)
(post by 原環センター , last modified: 2023-10-10 )