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《米国》ネバダ州がユッカマウンテンの不承認通知- 舞台は連邦議会での審議へ

米国ネバダ州のGuinn知事は、4月8日、高レベル放射性廃棄物処分場として提案されたユッカマウンテン・サイトについて、これを不承認とする通知を連邦議会に提出した。これに対して、翌4月9日、上院エネルギー・天然資源委員長がネバダ州の拒否を覆す決議案を提出し、ユッカマウンテンのサイト指定は連邦議会による最終的な審議・議決を待つこととなった。

ネバダ州知事の不承認通知は、2月15日になされた大統領から連邦議会へのユッカマウンテン・サイト推薦通知に対して行われたものであり、地元ネバダ州に対して60日の期間内の不承認表明機会を与えた放射性廃棄物法(NWPA)の規定に基づくものである。州知事はネバダ州において演説の後、自らワシントンに赴き、同州選出の議員団らと共に議会前広場で記者会見を開いている。

ネバダ州知事は、ユッカマウンテンは安全でなくサイトとして適しておらず、ユッカマウンテン・プロジェクトは誤った科学、法、公共政策に基づくものとしており、同知事の発表した資料では、不承認の理由として以下が述べられている。

  1. 科学的側面
    ユッカマウンテンの地質特性は、予備調査時と比較して100倍以上高い透水性がある等の問題があり、地層による隔離の概念が適用できない。人工バリアに頼るのであればユッカマウンテン選択の必然性が無い。
    他にも、パッケージの合金等の問題に加えて、原子力規制委員会(NRC)によれば9つの重要な分野において293の技術的に未解決の問題があり、またDOEの評価モデル及び放射線量には最大で4桁の不確実性がある。地震・火山活動の可能性が高いという問題点もある。
  2. 法的側面
    ユッカマウンテンの推薦は、放射性廃棄物政策法(NWPA)および国家環境政策法(NEPA)に反している。ネバダ州はユッカマウンテン・プロジェクトに関連して、DOEのサイト選定指針、環境保護庁(EPA)の健康安全基準、水資源問題等、現時点で4件の訴訟を提起中であり、近々更に最低2件の訴訟を予定している。
  3. 国家安全保障および公共政策
    DOEは、米全土に分散している使用済燃料を1カ所の安全な場所に処分することがテロ対策等の国家安全保障上必要と主張しているが、処分場プロジェクトを進めても相当な期間は使用済燃料が各原子力発電所サイトに散在し続ける上、逆に輸送時のセキュリティが確保されていないため、より大きな問題が生じる。
  4. 代替案
    DOEはユッカマウンテン・プロジェクトは避けて通れないとの主張をしているが、原子力発電最大手のPECO社とDOEの合意案による発電所サイトでの乾式貯蔵施設建設という代替案が存在している。

一方、上院エネルギー・天然資源委員会のBingaman委員長およびMurkowski上席委員の発表によれば、同委員長は上記ネバダ州の不承認通知を覆し、ユッカマウンテンの高レベル放射性廃棄物と使用済燃料のサイト開発を承認するための決議案を提出した。放射性廃棄物法(NWPA)に定められた手続きでは、地元のネバダ州が不承認を表明した場合には、それから90日以内に連邦議会が上下院の単純過半数による合同決議を行った場合にはサイトの指定を行うことができるとの定めがなされている。

【出典】

  • ネバダ州知事の不承認通知(プレスリリース:http://gov.state.nv.us/pr/2002/4-8YUC.htm 不承認理由声明書: http://www.state.nv.us/nucwaste/news2002/nn11650.pdf)
  • 上院エネルギー・天然資源委員会内のプレスリリース(Bingman委員長:http://energy.senate.gov/press/dem/press_template.cfm?id=182201、 Murkowski上席委員:http://energy.senate.gov/press/press_template.cfm?id=182205)
  • 放射性廃棄物政策法(Nuclear Waste Policy Act

(post by 原環センター , last modified: 2023-10-10 )