米国の連邦議会下院のシンプソン議員(共和党、アイダホ州選出)ら14名の共和党議員は、2010年11月18日、原子力規制委員会(NRC)委員長がユッカマウンテン処分場の許認可申請書の審査を中止したことに対して、決議案を連邦議会下院に提出した。その中で、NRC委員長の一方的な決定を非難するとともに、連邦議会の更なる指示があるまでは審査を即座に再開するようNRCに対して求めている。NRC委員長は、独自の判断に基づいて、ユッカマウンテン許認可申請書の技術的な審査を停止するよう、NRCスタッフに指示したとされている 。
シンプソン議員の2010年11月18日付プレスリリースによると、NRC委員長は、2011会計年度の予算要求における現政権の考え方に基づいて、ユッカマウンテン処分場の許認可申請書の審査を中止するとしているが、2010年10月1日から始まる2011会計年度予算は承認されていないため、現在のNRCの活動は、暫定的に継続予算の下で運営されているとしている。
今回提出された決議案の前文には、次の13の項目が挙げられている。
- 連邦議会上下両院は、1987年に、ユッカマウンテンを唯一の処分場サイトのオプションと指定するように1982年放射性廃棄物政策法を改正した(下院237対181、上院61対28で賛成多数)
- 上下両院は、2002年に、ユッカマウンテンを唯一の処分場サイトのオプションとすることを再確認した(下院306対117、上院60対39の賛成多数)
- 連邦議会下院は、2007年に、ユッカマウンテン計画の予算を削除する案を圧倒的多数で否決した(80対351の反対多数)
- エネルギー省(DOE)は、電気事業者及び消費者からすでに240億ドル(2兆400億円)の拠出金を徴収している
- 高レベル放射性廃棄物処分サイトとしてユッカマウンテンを検討するため、すでに連邦の納税者は、85億ドル(約7,200億円)以上を使用している
- 民間の原子力発電所からの使用済燃料や高レベル放射性廃棄物を処分するとの契約の違反によるDOEの債務は、500億ドル(約4兆円)に達する可能性がある
- NRCの原子力安全・許認可委員会(ASLB)は、DOEはユッカマウンテン処分場の許認可申請書の取り下げが法的にできないとの決定を行った
- 2010会計年度のエネルギー・水資源開発及び関連機関歳出法では、ユッカマウンテン処分場の許認可申請書の審査を継続するための費用が認められていた
- 連邦議会は、ユッカマウンテン処分場の許認可申請の中止に関連した活動のための予算を認めていない
- 2011会計年度での継続予算では、新規の計画を実施するための予算は認めていない
- 連邦議会下院歳出委員会・エネルギー・水資源開発小委員会の共和党議員は、2010年10月20日付の書簡において、連邦議会がさらなる指示及び予算を与えるまで、NRCは2010会計年度の許認可申請書の審査を継続するものと想定すると述べている
- 2名のNRC委員は、許認可申請書の審査を中止する決定に同意せず、審査の中止は2011会計年度での継続予算と矛盾していると言及していた
- NRCの監察官(IG)は、ユッカマウンテン処分場の許認可申請書の審査を中止するとのNRC委員長の一方的な決定に関する調査を開始している
さらに、シンプソン議員はプレスリリースにおいて、連邦議会やNRCの他の委員の支持がない状態で、NRC委員長がユッカマウンテン計画を一方的に中止しようすることは不当であり、NRCの高い評価を脅かす行為であるなどとしている。
なお、2010年11月2日の連邦議会の中間選挙の結果により、2011年1月に開始される第112議会では、連邦議会下院は共和党が、上院は民主党が過半数を占める状態になる。
【出典】
(post by inagaki.yusuke , last modified: 2023-10-11 )