ドイツの連邦環境・自然保護・原子炉安全省(BMU)は、2005年5月4日のプレスリリースにおいて、探査活動が凍結されているゴアレーベン地下の岩塩ドームに変更を加えることを禁止する政令案が閣議決定されたことを発表した。ドイツでは、今後は放射性廃棄物最終処分施設のためのサイト選定手続きが法的に規定される予定であるが、この政令案は、立地調査確保のためにゴアレーベンの岩塩ドームが利用不能な状態にならないようにするためのものである。また、これはゴアレーベンの将来について明示的な決定をするものではなく、ゴアレーベンが今後も処分場候補地となる余地があるかないかは、最適な候補地選択のためのサイト選定手続きの結論次第であるとされている。なお、政令の制定には連邦参議院の承諾が必要とされている。
ドイツでは、ニーダーザクセン州ゴアレーベンにおいて最終処分施設建設のための調査が1970年代から行われてきたが、2000年10月1日からは新たな探査活動が凍結されていた。プレスリリースでも示されているが、この探査活動凍結などを取り決めた2000年6月14日の連邦政府と電力会社間の協定において、ゴアレーベンの岩塩ドームを現状のまま維持し、第三者の侵入から保護する義務を連邦政府が負うことになった。これを受けて、2002年4月に大幅に改正された原子力法 では、処分場立地調査地域における現状変更禁止を規定する条項が追加されている。
プレスリリースによれば、政令案は、ゴアレーベン地下の岩塩ドームのみの保護を図るものである。岩塩ドームを損傷する行為は今後すべて禁じられるが、家屋や灌漑施設の建設のようなその他の行為は政令の適用外とされている。政令案では、周辺自治体を含む地域が計画地域として指定され、地表から100mより深い場所への変更が禁止される。さらに特別に指定された3つの区域については、50mより深い部分での変更も禁止される。変更が禁止される期間は、政令の公布から10年間とされている。
今回のゴアレーベンの岩塩ドームの現状変更禁止に関する政令については、地元および周辺自治体に政令案を提示して協議を行うことが2004年7月に発表されており、地元からの意見のいくつかが政令案に加えられたことがプレスリリースにおいて示されている。
なお、ドイツでは、2002年12月のサイト選定手続委員会(AkEnd)の勧告 を受けて、2003年から約2年間にわたって公開の場で議論を行った上でサイト選定手続きについて法的拘束力のある決定が下される予定が連邦環境・自然保護・原子炉安全省(BMU)から示されていたが、地元のニーダーザクセン州や電力業界の反発等もあり、具体的な動きは公表されていない。
【出典】
- 連邦環境・自然保護・原子炉安全省(BMU)プレスリリース(Nr.108/05, 2005年5月4日) (www.bmu.de/fset1024.htm)
- ゴアレーベン「現状変更禁止」政令案(www.bmu.de/files/atomenergie/downloads/application/pdf/gorlebenvspv.pdf)
- 連邦環境・自然保護・原子炉安全省(BMU)ウェブサイト情報 (www.bmu.de)
- ニーダーザクセン州環境省ウェブサイト情報 (www.mu1.niedersachsen.de)
- ドイツ原子力産業会議(DATF)ウェブサイト情報 (www.kernenergie.net)
【2005年8月31日追記】
本政令案は2005年6月17日に連邦参議院により承諾され、2005年8月17日に発効した。
- 連邦環境・自然保護・原子炉安全省(BMU)ウェブサイト情報(http://www.bmu.de/atomenergie/downloads/doc/35431.php)
(post by 原環センター , last modified: 2023-10-10 )