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《カナダ》核燃料廃棄物管理機関(NWMO)が使用済燃料の地層処分プロジェクトの影響評価手続きのための意見募集開始を公表

カナダにおける使用済燃料処分の実施主体である核燃料廃棄物管理機関(NWMO)は、2025年7月17日付けのプレスリリースにおいて、使用済燃料の地層処分プロジェクトの影響評価手続きのための意見募集を行うことを公表した。本意見募集は、カナダ影響評価庁(IAAC)へ提出する「プロジェクト初期説明書(IPD、Initial Project Description)」について、提示したIPD案に対して、プロジェクトにより影響を受ける者の価値観、ニーズ、懸念を反映するために行うものである。NWMOは、意見募集の方法として、①地層処分場の候補エリアおける現地説明会の開催、②オンライン説明会の開催、③書面による意見提出を挙げており、意見募集の期間は2025年8月22日までとなっている。NWMOは、IPD案とともに、質問の例などを示した「意見募集ガイド」を公表しており、具体的な意見を求めてIDPに反映する意向を示している。

NWMOは、2025年3月に公表した2025~2029年の実施計画書において、2025年から規制意思決定プロセスを開始するとしており、今回のIPD案への意見募集は、影響評価プロセスの一環として実施するものである。

■プロジェクト初期説明書(IPD)

今回NWMOが公表している「プロジェクト初期説明書(IPD)」案は、NWMOが実施する使用済燃料の地層処分プロジェクトの目的と必要性や、影響の予備的評価とともに、それを回避または緩和する計画などを説明するものであり、以下の項目が含まれている。

  • 統合的影響評価及び許認可プロセス
  • 地層処分場のメリット
  • 継続的関与(持続的な対話、参加、協力)
  • 規制の意思決定プロセスにおけるベースラインデータの活用
  • 予備的スクリーニング評価の考慮事項及び結果
  • 今後の予定

■カナダの影響評価プロセス

カナダにおいて実施される大規模プロジェクト(水力発電のダム、港湾、原子力発電所など)については、人と環境を保護する方法で計画されていることを確認する目的で影響評価が行われることとなっている。このような影響評価は、カナダ影響評価庁(IAAC)がカナダ影響評価法1に基づき、大規模プロジェクトによる潜在的な影響を独立した立場で評価するものである。特に、原子力プロジェクトなど一部のプロジェクトに関しては、関係する規制当局と共同で統合評価(Integrated Assessment)が実施される。本影響評価は、以下の5つのフェーズで実施され、IAACは評価プロセス全体を3年以内に完了することを目標としている。今回のNWMOの影響評価手続きのための意見募集によりフェーズ1が開始されることとなる。

フェーズ1

  • 提案者がプロジェクトの説明を提示し、公衆との関与活動が開始される。
  • IAACが当該プロジェクトの影響評価書(Impact Statement)作成に必要な影響評価ガイドライン等を提示する。

フェーズ2

  • 提案者が影響評価書を作成し提出する。
  • IAACと関係する規制当局が統合評価のためのレビューパネルを設置する。

フェーズ3

  •  レビューパネルが提案者による影響評価書に基づき、提案されたプロジェクトが環境、健康、社会、経済に与える潜在的な影響(便益を含む)を検討する。
  • レビューパネルが公聴会を開催するとともに、公衆との関与活動等を実施し、影響評価の検討結果報告書を作成して大臣に提出する。

フェーズ4

  • 総督がプロジェクトを進めるかどうかを決定する。
  • プロジェクトを進めることができる場合、大臣が決定書(Decision Statement)を発行する。

フェーズ5

  •   レビューパネルが評価に基づき許認可発給の決定を行う。
  •   IAACと関係する規制当局は、評価において特定された提案者が遵守しなければならない要件への対応について監督する責任を負う。

■意見募集

NWMOは、地層処分場の候補エリアであるイグナス・タウンシップと近隣地域であるドライデン市において、IPD案を説明して参加者とディスカッションを行う現地説明会を開催するとともに、広くコメントを求めるためのオンライン説明会の開催、書面による意見提出を求めることを計画している。

  • 現地説明会:イグナス・タウンシップ(2025年7月24日、25日)、ドライデン市(2025年8月12日、13日)
  • オンライン説明会(2025年8月6日(AM、PM))
  • 書面による意見提出:NWMOのWebサイトでプロジェクト初期説明書(IPD)及び意見募集ガイドを公開、Eメール等でコメントを提出(2025年8月22日まで)

 

【出典】

 

  1. カナダ影響評価法は、カナダ環境アセスメント法を見直し、それまで環境のみにフォーカスされていた影響評価を、環境のみならず経済、社会、健康などに評価の範囲を拡大し2019年に施行された法律である。この法改正に伴い、カナダ環境アセスメント庁に代わりカナダ影響評価庁(IAAC)が発足した。 []

(post by nunome.reiko , last modified: 2025-07-23 )