英国の放射性廃棄物管理委員会(CoRWM)1 は、2004年11月19日のプレスリリースにおいて、CoRWMとして初めて絞り込んだ管理オプション候補リストを公表した。これは、放射性廃棄物管理のために検討していた15の管理オプションについて、9つの基準に基づいて評価したものである。同プレスリリースによると、CoRWMの2005年1月の会合、およびCoRWMが実施している大規模な公衆の関与と協議プログラム(「公衆・利害関係者参画(PSE)プログラム」と呼ばれている)の中で、管理方針についての考え方がさらに整理されることとなっている。
プレスリリースでは、CoRWMが絞り込んだ管理オプション候補リストが下の表のように3つの区分で示されている。
リストから外すことが提案されているもの |
リストに残すことについて |
リストに残すもの |
---|---|---|
1. 氷床処分 | 6. 宇宙処分 | 8(b) 中間貯蔵 |
2. プレート沈み込み帯への処分 | 7. 海洋底下処分 | 10. 地層処分 |
3. 地層への直接注入処分2 | 8(a) 無期限貯蔵 | 11. 段階的地層処分3 |
4. 海洋処分 | 9. 浅地中処分 | |
5. 希釈処分 |
また、CoRWMは以下の4つのオプションについては、管理オプションとしては考慮しないが、将来において高レベル放射性廃棄物およびその他の放射性廃棄物の管理オプションと共に利用される技術として位置づけている。
プレスリリースによると、放射性廃棄物の管理オプションの評価に当たって利用された9つの基準は、以下のとおりとされている。
- 以下のような形態において、管理概念の裏付けがなされていないもの
- 国内外における実施
- そのオプションが実現可能であることを実証するような国際的な科学界での十分な研究開発
- 国外への環境配慮義務の不履行が発生するもの
- 特別な環境脆弱性のある地域への損害が発生するもの
- 将来世代への容認し難い負担(費用、環境破壊など)が発生するもの
- 便益を受けている現世代よりも大きなリスクを将来世代に課すもの
- 核物質防護に対して容認できないリスクを生むもの
- 健康に対して容認できないリスクをもたらすもの
- 達成される便益が費用に見合わないもの
- 現在および将来にわたって国際条約および国際法に違反するもの
なお、CoRWMは4つの段階を設けて放射性廃棄物の管理オプションの検討を実施しており、現在はその第2段階に当たっており、この段階での最終報告項目として管理オプション候補リストを挙げている。CoRWMは、この第2段階で作成された管理オプション候補リストに基づいて、次の検討段階においてさらに放射性廃棄物管理オプションについての協議を行うこととしている。
【出典】
- 放射性廃棄物管理委員会(CoRWM)のウェブサイトの2004年11月19日付けのプレスリリース、http://www.corwm.org/content-483
- 放射性廃棄物管理委員会(CoRWM)のウェブサイト、http://www.corwm.org/content-248、2004年11月
- CoRWMは、高レベル、中レベル、一部の低レベル放射性廃棄物とウラン、プルトニウム、使用済燃料についての長期管理オプションに関する勧告を政府に対して行う責任を有するものとして2003年に環境・食糧・農村地域省(DEFRA)などが設置した機関であり、2003年11月から活動を開始している。 [↩]
- 放射性廃液を深い地層中に注入して処分するオプションで、セメント等と共に注入するものなどがある。 [↩]
- 放射性廃棄物を地層処分場に定置し、暫くの期間、貯蔵をした後、埋め戻しを行い、最終的に地層処分とするオプションで、将来世代に処分場の閉鎖実施および閉鎖時期についての決定権を与え、また閉鎖前の廃棄物の回収可能性を保持させるものである。 [↩]
- 原子炉内でウランとプルトニウムを燃料として燃焼させることによって処分しようとする管理オプション [↩]
- 焼却によって放射性廃棄物を減容させる管理オプション [↩]
- 放射性金属廃棄物を溶融して減容させたり、環境への放出やスラグへの移行によって放射能の一部を分離させる管理オプション [↩]
(post by 原環センター , last modified: 2023-10-10 )