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《米国》NRCがユッカマウンテン処分場建設についての再開後の安全審査を終了し、残予算の使途を決定

米国の原子力規制委員会(NRC)は、2016年11月8日に、ユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可申請書の安全審査に関連して、新たな知見を取りまとめるための「ナレッジマネジメント報告書」の策定を行うことを決定した。NRCによる許認可申請書の安全審査については、2013年8月13日の連邦控訴裁判所の判決 を受け、過年度の歳出予算の未使用残高の範囲内で安全審査等の活動が実施され、安全性評価報告(SER)の策定、補足環境影響評価書(SEIS)の策定、許認可支援ネットワーク(LSN) (詳細はこちら) への登録文書の公開作業などが行われてきた。今回のNRCの決定は、2015年2月3日の指示文書で指定された活動が2016年末で終了することから、未使用残高として見込まれる約127万ドル(約1億5,200万円)の使途についてNRCが検討し、NRCの委員会が承認したものである。

未使用の残予算で今後の策定が決定したナレッジマネジメント報告書では、2011年にユッカマウンテン処分場に係る安全審査活動が停止された際に策定されたナレッジマネジメント報告書について、その後の新たな知見などを反映した更新が行われる。ナレッジマネジメント報告書で取りまとめる対象項目は以下が示されており、約9カ月の期間と約70万ドル(約8,400万円)の費用が想定されている。

閉鎖前・閉鎖後の安全評価

  • 不飽和帯の地層処分場における人工バリア性能への腐食科学の新たな知見の適用
  • 処分場の地上施設建屋の地盤工学的安定性の評価
  • 地震フラジリティ曲線(SFC、seismic fragility curve)計算手法の評価
  • 処分場の地上・地下施設の解析への地震動情報の適用

気候と水文学

  • 浸透と地下水流動に係る気候モデルへの取組及び気象データの更新
  • 飽和帯における地下水流動の特性調査・モデル化
  • 地層処分場の性能確認のための独立した地下水流動モデルツールの情報管理
  • 不飽和帯の亀裂性岩盤や熱環境のモニタリング方法及びセンサーの現在の性能(リモートセンサーを含む)

【出典】

 

【2017年8月10日追記】

米国の原子力規制委員会(NRC)は、2017年8月8日に、ユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可申請書の安全審査に関連して、実施を停止していた裁判形式の裁決手続の開始に関連する情報収集活動を行うことを決定した。今回の情報収集活動を実施することにより、高レベル放射性廃棄物処分に係る2018会計年度の歳出予算の執行に対して、効果的に、かつ、情報に基づいた決定を行うことに寄与するとしている。

具体的な情報収集活動としては、許認可支援ネットワークの諮問レビューパネル(LSNARP)のバーチャル会議を1回開催して、情報を提供するとともに、パネル及び一般からの許認可支援ネットワーク(LSN)、または、適切な代替システムに関する意見を聴取することが考えられている。なお、バーチャル会議の開催のための準備とともに、トレーニングを実施することが想定されている。

また、許認可審査の一環として実施される裁判形式の裁決手続については、ネバダ州でのヒアリング開催の可能性のある場所の調査、ネバダ州のヒアリング施設の購入の可能性を調達局との協議を含めた市場調査を行うとしている。

2017年6月30日現在で、過年度の歳出予算の未使用残高は634,000ドル(約7,160万円、1ドル=113円で換算)となっており、今回の情報収集活動では、このうち、110,000ドル(約1,240万円)を上限として使用することとなっている。

【出典】

 

【2018年10月17日追記】

米国の原子力規制委員会(NRC)は、2018年10月15日に、ユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可申請書の安全審査について、これまでの活動を経た残予算に関する今後の方針を決定した。NRCによる許認可申請書の安全審査については、2013年8月13日の連邦控訴裁判所の判決   を受け、過年度の歳出予算の未使用残高の範囲内での安全性評価報告(SER)の策定などが実施されるとともに、2017年8月8日には、実施を停止していた裁判形式の裁決手続の開始に関連する情報収集活動を行うことも決定されていた。

NRCスタッフ及び原子力安全許認可委員会パネル(ASLBP)は、2018年8月16日に、情報収集活動の一環として実施されていた許認可支援ネットワーク (詳細はこちら) の諮問レビューパネル(LSNARP)によるバーチャル会議開催やトレーニングの実施、ネバダ州におけるヒアリング施設の市場調査等の実施結果を報告するとともに、未使用の残予算で実施する今後の活動方針について以下の2点を提案していた。

  • 212,000ドル(約2,400万円、1ドル=113円で換算)の予算で許認可支援ネットワーク(LSN)のインターフェースの改良等を実施
  • ネバダ州におけるヒアリング施設に関連した活動は、その必要性が確実になるまで延期

この提案に対する2018年10月15日付のNRCの委員会の指示文書では、上記(1)の許認可支援ネットワーク(LSN)のインターフェースの改良等の実施の提案は否認すること、同じく(2)のネバダ州ヒアリング施設に係る調査の延期の提案は承認することが示された。本委員会指示文書では、今後の方針の決定理由や今後行うべき活動については示されていないが、本決定に係るNRC委員の投票記録文書では、(1)のLSN関連活動の実施を否認した3委員のコメントにおいて、今後も訴訟対応等が必要と想定される中で予算残高が減りすぎることへの懸念が示されるとともに、LSN改良の技術は時間の経過により陳腐化する可能性があることなどが示されている。

なお、過年度の歳出予算の未使用残高は、2018年8月末現在で約443,000ドル(約5,000万円)となっている。

【出典】

 

【2020年10月16日追記】

米国の原子力規制委員会(NRC)は2020年10月9日に、ユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可申請書の安全審査に関連して、これまでの安全審査等の活動を経て残余している歳出予算のうち、164千ドル(約1,800万円、1ドル=110円で換算)を使用して、ナレッジマネジメント活動を行うことを決定した。NRCによる許認可申請書の安全審査については、2013年8月13日の連邦控訴裁判所の判決   を受け、過年度の歳出予算の未使用残高の範囲内での安全性評価報告(SER)の策定などが実施された。さらに、2016年からは、ナレッジマネジメント報告書の取りまとめ、実施を停止していた裁判形式の裁決手続の開始に関連する情報収集活動などが実施されていた。

今回実施が決定されたナレッジマネジメント活動は、ユッカマウンテン処分場の安全審査における重要な技術文書について、規制の枠組みや技術審査との関連性が分かるよう、関連情報の説明等も含めた「ロードマップ」を策定するものとされている。ユッカマウンテン安全審査に携わった専門家の多くは、既に退職し、また、今後数年間で残りの中心的スタッフの参画が得られなくなる見込みであることから、安全審査の再開が決定した場合に技術スタッフを支援するナレッジマネジメント文書の策定がNRCスタッフから提案されたものである。前回のナレッジマネジメント活動では、技術的知見の共有を図るためナレッジマネジメント報告書が取りまとめられており、既に大量の情報が存在しているが、今回のロードマップでは、ユッカマウンテン技術審査の経験のない技術スタッフが裁判形式の裁決手続で証人に立ち、訴訟で弁護士の支援をする際に特に有用であるとされている。

ナレッジマネジメント活動の提案文書(COMSECY-20-0013)に添付された説明文書では、以下の2つのタスクからなるロードマップを策定することが示されている。

  • タスク1:ユッカマウンテンの規制枠組み(10 CFR Part 63)
    ユッカマウンテン高レベル放射性廃棄物処分に係る連邦規則(10 CFR Part 63)の制定・改定に係る規制枠組みロードマップ

    • 10 CFR Part 63の制定(2001年11月2日)、「発生確率の低い」FEP(特性、事象、プロセス)の明確化に係る改定(2002年10月8日)、及び1万年以降の評価期間に適用する線量基準に係る改定(2009年3月13日)が対象
    • 特に、1万年以降の評価期間に対する規則に焦点を当て、規則の技術的事項の策定を支援した重要文書を同定し、各重要文書の重要性と優先度を説明
  • タスク2:ユッカマウンテン技術審査
    安全性評価報告(SER)のアプローチの理解を支援する、リスク的洞察などの審査における重要な技術領域のロードマップ

    • 審査の技術領域に対応する重要文書を同定し、技術審査における各重要文書の重要性と優先度を説明

なお、ユッカマウンテン処分場の安全審査は、1982年放射性廃棄物政策法(1987年修正)に基づく放射性廃棄物基金(NWF)から支出されているが、これまでの歳出予算の未使用残高は、2020年8月末現在で約426千ドル(約4,690万円)となっている。

【出典】

(post by inagaki.yusuke , last modified: 2023-10-10 )