米国における高レベル放射性廃棄物処分場については、2002年7月にユッカマウンテンが正式に立地サイトに指定され、2004年末予定の認可申請に向けた作業が続けられている。ここでは2004年3月に入って行われたユッカマウンテンに関連する3件の議会証言等から、プロジェクトに関連する最近の動きを報告する。議会証言は、2005会計年度予算、輸送ルートの検討状況、および珪肺症に関するものである。
【2005年度予算関係】
予算に関する議会証言は、2004年3月11日にエネルギー長官が下院歳出委員会エネルギー・水資源開発小委員会で連邦エネルギー省(DOE)の2005年度予算要求についての見解を示したもので、例年行われている。ユッカマウンテン関係は重要な項目として取りあげられ、8億8,000万ドルの要求予算により2004年末までの認可申請が可能となること、歳出予算の大幅増のために放射性廃棄物基金への拠出金を新たな資金確保制度として利用する立法措置を提案していることなどが示されている 。
プロジェクトの今後の予定としては、従来通り、2004年末に原子力規制委員会(NRC)への認可申請、そして2010年の廃棄物受入れ開始が示されている。
【輸送ルート関係】
輸送関係の証言は、3月5日にラスベガスで開かれた下院輸送・インフラ委員会鉄道小委員会のヒアリングで、DOE民間放射性廃棄物管理局(OCRWM)の担当官が行ったものである。今後の予定に関連するものとして以下のような内容が示されている。
- DOEは昨年、推奨輸送ルートを発表したが 、近い将来に輸送方法と輸送経路選択についての意思決定記録(ROD)1 を発行する。
- 予定鉄道線路の決定には環境影響評価(EIS)が必要であり、輸送経路選択時に環境影響評価の実施の告示を行う。
- 輸送ルートの確保のために、DOEは2003年12月末に1マイル幅のルートの土地収用申請書を内務省土地管理局に既に提出した。
【珪肺症関係】
2004年3月15日にはユッカマウンテンにおける作業員の珪肺症問題についてのOCRWM担当官の証言が、上院歳出委員会エネルギー・水資源開発小委員会で行われた。この問題に関しては、ユッカマウンテンにおける坑道掘削作業が開始された1992年から90年代半ばにかけてシリカ(珪石粉)の吸入限度がオーバーしていた時期があったことが判明したことを受けて、2004年1月に全作業員を対象とした珪肺症検査プログラムが発表されていた。なお、現在は規制に適合した作業が行われており、今後の坑道掘削作業の安全性には問題がないとしている。
【出典】
- 連邦エネルギー省(DOE)ウェブサイト(議会証言コーナー) (http://www.energy.gov/engine/content.do? PUBLIC_ID=15241 &BT_CODE=PR_CONGRESSTEST &TT_CODE=PRESSSPEECH )
- 民間放射性廃棄物管理局(OCRWM)ウェブサイト(輸送関係証言) (http://www.ocrwm.doe.gov/pm/program_docs/testimonies/03_05_04.shtml)
- 民間放射性廃棄物管理局(OCRWM)ウェブサイト(珪肺症関係証言) (http://www.ocrwm.doe.gov/pm/program_docs/testimonies/03_15_04.shtml)
- 意思決定記録(ROD:Record of Decision):米国では連邦政府機関が環境に影響を及ぼす可能性がある措置を実施する際には環境影響評価の実施が国家環境政策法により規定されている。この場合、その最終的な決定内容については、検討した代替案や影響緩和策を含めて「意思決定記録」として連邦官報で告示することが必要とされている。 [↩]
(post by 原環センター , last modified: 2023-10-10 )