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《米国》2010会計年度歳出法案の審議状況

米国の連邦議会では2010会計年度予算の歳出法案の審議が行われており、高レベル放射性廃棄物処分を含むエネルギー関係等の歳出法案については、下院歳出委員会は2009年7月13日、上院歳出委員会は2009年7月9日に本会議に歳出法案を提出した。ユッカマウンテン処分場関連の歳出予算金額は、上下院どちらも1億9,680万ドルと、エネルギー省(DOE)の予算要求額と同額となっている。(米国の予算制度については、こちらを参照)

下表は、上下院の歳出法案におけるユッカマウンテン関連の歳出予算案について、前年度決定額と2010年度要求額(詳細はこちら)との対比を示したものである。

  民間分 国防分 合計
2009年度歳出予算決定額(a)  1億4,539万  1億4,300万  2億8,839万
2010年度DOE要求額(b)   9,840万  9,840万  1億9,680万
2010年度上下院歳出法案(c)  9,840万 9,840万 1億9,680万
 要求比(c-b)  0  0  0
 前年度歳出予算比(c-a)   △4,699万   △4,460万   △9,159万
(単位:USドル)

下院の歳出法案では、オバマ政権が設置することとしている放射性廃棄物管理の代替案を検討するブルーリボン委員会の設置に対して500万ドルの予算を割り当てることが示されている。

また、歳出法案に係る下院歳出委員会報告書では、ブルーリボン委員会における代替案の検討は、科学的知見及び利点に基づくべきであるとしている。さらに、オバマ大統領の「国民は、科学や政策決定に関する情報をもたらす科学的プロセスを信頼できるはずである」との発言を引用し、オバマ政権が放射性廃棄物管理の代替案を検討することは容認するが、科学的な信頼性を優先する場合、ユッカマウンテンを検討対象から外すことは理解できないとしている。加えて、ユッカマウンテンは地質学的に最も詳細に研究されたサイトであり、これまでに10億ドル以上の資金が使われており、ユッカマウンテンを考慮しない場合にはブルーリボン委員会の検討に科学的な信頼はないと述べている。その上で、下院歳出委員会は、ブルーリボン委員会の設置のための500万ドルの予算には、ユッカマウンテンを検討対象とすることが条件としている。

また、上院歳出法案に係る上院歳出委員会報告書では、予算要求額(1億9,680万ドル)は、放射性廃棄物基金(NWF)の年間の運用益で十分賄える額であり、オバマ政権によるユッカマウンテン計画を中止するとの決定を考慮すると、エネルギー長官は放射性廃棄物基金(NWF)への拠出金の徴収を停止することを想定するとの見解が示されている。なお、上院の歳出法案では、ブルーリボン委員会の設置予算については言及されていない。

【出典】

【2009年7月21日追記】

米国の連邦議会下院は、2009年7月17日の本会議において、高レベル放射性廃棄物処分を含むエネルギー関係等の2010年度予算の歳出法案を320対97で可決した。なお、ユッカマウンテン関連予算については、歳出委員会が本会議に提出した法案からの修正はない。

【追記部出典】

【2009年8月3日追記】

米国の連邦議会上院は、2009年7月29日の本会議において、2009年7月9日に上院本会議に提出された上院版の2010年度予算歳出法案を85対9で可決した。なお、可決された法案では、ユッカマウンテンの許認可申請を審査するための原子力規制委員会(NRC)の予算が、予算要求では5,600万ドル割り当てられていたが、2,900万ドルへと削減されている。

また、ネバダ州選出のリード上院多数党院内総務は、2009年7月30日、ホワイトハウス及びエネルギー長官との会談後にプレスリリースを公表し、ユッカマウンテン関連の予算について、2011年度は許認可手続きの継続のための予算も要求しないことでホワイトハウス及びエネルギー省が合意したことを公表した。

【追記部出典】

(post by inagaki.yusuke , last modified: 2023-10-11 )