フィンランドにおける高レベル放射性廃棄物(使用済燃料)処分の実施主体であるポシヴァ社は、2008年10月31日付のプレスリリースにおいて、同日、オルキルオトにおける使用済燃料の最終処分場の拡大に関する環境影響評価(EIA)報告書を雇用経済省に提出したことを公表した。プレスリリースによると、このEIA報告書は、オルキルオトで建設が計画されている最終処分場で、使用済燃料12,000トン(ウラン換算、以下同じ)を処分する場合の環境影響を評価したものである。なお、現時点では、運転中の原子炉4基と建設中の1基から発生する使用済燃料を6,500トンまで処分する計画が認められている。
ポシヴァ社のEIA報告書によると、オルキルオトでの使用済燃料の処分量は、現在フィンランドの電力会社2社が導入を計画している新規原子炉2基から発生する見込み分を追加すると、最大で12,000トンとしている。ポシヴァ社は、今後の新規原子炉の導入計画に応じて、処分場の規模を下表に示すように評価している。
処分対象とな る使用済燃料 の発生元 |
オルキルオト 原子力発電所 |
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ロヴィーサ 原子力発電所 |
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使用済燃料処分量(最大) | 6,500トン | 9,000トン | 12,000トン | |
処分坑道の総延長 | 約64 km | 約82 km | 約104 km | |
地下施設の面積 | 約1.5 km2 | 約1.9 km2 | 約2.4 km2 |
ポシヴァ社は、プレスリリースにおいて、使用済燃料処分量が増加することにより、岩盤掘削から生じる廃棄物量が増加し、処分場の操業期間が延長されることになるが、処分場の安全性に大きな影響が生じることはない、としている。なお、ポシヴァ社は環境影響評価の実施に当たって、事前にその計画書(EIA計画書)を雇用経済省に提出し、同省が公表した見解を考慮してEIA報告書を取りまとめている 。
ポシヴァ社からEIA報告書の提出を受けた雇用経済省は、2008年10月31日付の同省のプレスリリースにおいて、ポシヴァ社のEIA報告書を公告・縦覧して関係省庁・機関などに意見を求めるとともに、今後開催される公聴会を通じて意見聴取の機会を設け、4カ月以内にポシヴァ社のEIA報告書に対する見解を発表するとしている。
フィンランドでは、原子力発電所や使用済燃料の最終処分場の建設計画について、その建設許可申請手続の前に、その建設が社会全体の利益と合致することを政府が判断する「原則決定」が必要となっている。EIA報告書は、この原則決定の申請を事業者が行う際に添付する必要がある。
オルキルオト原子力発電所4号機の導入を計画しているテオリスーデン・ヴォイマ社(TVO社)は、2008年4月25日に原則決定の申請を行っており、同日にポシヴァ社も最終処分場の処分容量を9,000トンに拡大する原則決定の申請を行っている 。ポシヴァ社は、1999年にオルキルオトで9,000トンの使用済燃料を処分する場合の環境影響評価を実施し、1999年にEIA報告書を取りまとめている。ポシヴァ社のプレスリリースによると、今回のEIA報告書は、フォルツム・パワー・アンド・ヒート社(FPH社)のロヴィーサ原子力発電所3号機の導入を計画する準備となるものとされている。
【出典】
- ポシヴァ社、2008年10月31日付プレスリリース
- ポシヴァ社環境影響評価(EIA)報告書(2008年10月31日)、
http://www.posiva.fi/publications/Posiva_YVA_selostusraportti_en_lukittu.pdf - 雇用経済省(TEM)、2008年10月31日付プレスリリース、
http://www.tem.fi/index.phtml?89521_m=93060&l=en&s=2471
(post by 原環センター , last modified: 2023-10-10 )