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《カナダ》使用済燃料処分場のサイト選定の状況-先行8地域における第3段階第1フェーズが完了

(NWMOによるサイト選定プロセスの進捗動向)

(NWMOによるサイト選定プロセスの進捗動向)

カナダの使用済燃料処分の実施主体である核燃料廃棄物管理機関(NWMO)は、2013年11月21日付で使用済燃料処分場の9段階から成るサイト選定プロセスに参加している21地域のうちの8地域について、第3段階の第1フェーズの評価が完了し、2014年から3~4年をかけて実施する第3段階の第2フェーズの調査対象として4つの地域を選定したことを公表した。今回、第1フェーズの評価が完了した8地域は、2010年5月から開始したサイト選定プロセスへの関心表明を行った順に選ばれている

今後、第3段階の第2フェーズの調査を実施する4地域は、クレイトン・タウンシップ、イグナス・タウンシップ、シュライバー・タウンシップ、ホーンペイン・タウンシップ(右上図の3、5、7、9)である。NWMOは、第2フェーズの調査に移行しないこととしたイングリッシュリバー先住民族保留地、パインハウス村、イアーフォールズ・タウンシップ、ワワ自治体の4地域(右上図の1、2、4、11)では関連作業を終結させるとしている。NMWOは、地層処分場のサイト選定プロセスに対する8地域のこれまでの貢献を高く評価しており、地元の福祉向上のために独自に利用できる資金をそれぞれ40万カナダドル(3,760万円)提供するとしている1

また、NWMOは選定結果に対する8地域の自治体の首長のコメントも公開しており、第3段階の第2フェーズに移行しないことなった自治体も含めてほとんどの首長が、地元自治体がサイト選定プロセスに参加し、国家プロジェクトに貢献できたことを誇りとする旨の発言をしている。

なお、サイト選定プロセスが続けられている残りの13地域のうち、1地域がサイト選定プロセスの第2段階に、12地域が第3段階の第1フェーズにある。NWMOは第3段階に進む意思を表明した12地域については、2014年内に第3段階の第1フェーズの作業を完了させる予定である。

 

サイト選定プロセスの第3段階における絞り込み

使用済燃料処分場のサイト選定プロセスの第3段階は、当該地域の潜在的な適合性の予備的評価を行うことになっており、2つのフェーズで構成されている。第1フェーズでは、机上調査により、地層科学的な評価、並びに処分プロジェクトが地域や周辺地域の福祉に及ぼす可能性のある影響の評価が実施される。第2フェーズでは、詳細な技術調査とフィールド調査を実施し、潜在的な適合性をさらに評価していく。NWMOは、2013年4月に公表した「適応性のある段階的管理」(詳細はこちら)の実施に関する5カ年の実施計画書において、第1フェーズの作業完了後に潜在的な適合性が低いと判断した地域をサイト選定プロセスから除外していき、第2フェーズの作業終了後に、第4段階へ進む可能性がある地域として1つまたは2つの地域を選定する意向を示していた

今回の先行8地域を対象とした第1フェーズの評価では、NWMOは以下の7つの項目を検討して絞り込みを行っている。第1フェーズの作業終了時点では、判断材料として利用できる情報は限定的であるが、項目①~③については、比較対象の8地域のいずれについてもサイト選定プロセスから除外すべき点は見当たらなかったとしている。また、項目④~⑦については、8地域間で差異が見られたとし、NWMOが第2フェーズの調査実施地域を絞り込む際に重視したとしている。

 

地域間での差異が大きくない評価項目 地域間で重要な差異が見られた評価項目

①地層処分場の建設作業
(エンジニアリング)

②使用済燃料の輸送

③住民及び環境に対する安全

④地層科学的な適合性

⑤当該地域の福祉に対する寄与のあり方

⑥当該地域での関心維持の見通し

⑦当該地域の周辺エリアを含めた福祉への寄与と関心維持の見通し

今回の第2フェーズの調査の実施地域の絞り込みにおいて重視した項目について、NWMOの判断の考え方は以下のようになっている。

○地層科学的な適合性

8地域はいずれもカナダ楯状地に位置しているが、各地域で見られる地質環境は多様である。いずれの地域も地層処分場を立地できる可能性がある広いエリアが存在しているが、地層科学的な観点の不確実性や複雑性の度合いについての各地域間の相違を特定し、それらの度合いが大きい地域ほど適合性が低いと判断するとしている。

○当該地域の福祉に対する寄与のあり方

核燃料廃棄物の長期管理アプローチ「適応性のある段階的管理」(APM)プロジェクトの実施によって各地域はいずれも便益を得ることができる。しかし、全体的に見た場合、福祉向上に向けて各地域が重視する長期目標や優先事項に対して、NWMOが進めるプロジェクトがマッチする度合いは異なっている。この相違が大きい場合には、プロジェクトからの離脱や地域の結束に好ましくない影響が生じるおそれがあると判断するとしている。また、地域発展に関して住民間で意見の分裂が見られる場合も、プロジェクトがマッチできなくなるおそれがあるとしている。

○当該地域での関心維持の見通し

各地域のさまざまなリーダー・住民との18カ月以上にわたるコミュニケーションの結果、各地域ともプロジェクトへの関心が維持される見通しはある。ただし、実際に関心を維持していくために克服すべき課題の程度については相違が見られた。プロジェクトについての学習への全体的な関心度が低い地域、また、不安や根本的な懸念が地域内での衝突・敵対・誤情報・分裂につながっている地域は、関心維持のための努力が今後どれだけ必要か不明確であるため、適合性が低いと判断するとしている。

○当該地域の周辺エリアを含めた福祉への寄与と関心維持の見通し

NWMOは、最初に関心表明を行った地域との間で長期のパートナーシップを確立し、その後で当該地域の周辺地域や先住民コミュニテイに参画してもらうように拡大していく考えである。現時点でNWMOは、関心表明を行った地域のビジョンに対するプロジェクトのマッチングに重点的に取り組んでおり、当該地域の意思が明確になるまでは周辺地域への関与は限定的なものにとどめている。NWMOは、サイト選定プロセスが進むに従って、周辺地域の参画が得られる可能性を重視していくことになると考えている。第3段階の第2フェーズの作業を通じて、NWMOが候補地域数をさらに絞り込んでいく際には、周辺地域の参画見通しの観点を考慮していくとしている。

 

 

【出典】

  1. NWMOが地域福祉準備基金を設立し、同基金から各地域に支援金を提供する。なお、NWMOは、8地域以降に第3段階の第1フェーズを完了した地域にも同様に支援金を提供するとしている []

(post by sahara.satoshi , last modified: 2023-10-11 )