スイスの放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)は、2013年11月20日付のプレスリリースにおいて、放射性廃棄物処分に関する世論調査の結果を公表し、スイス国民は安全性を重要視すること、処分は技術的・政治的に解決可能であること、国外処分は多数が選択肢として考えていないとの結果を得たとしている。この世論調査は2013年夏に、NAGRAが外部の世論調査会社に委託して実施したものであり、スイス国内から無作為に抽出した1,000人以上を対象としたアンケート調査が行われたものである。
NAGRAはこれまでに同様な世論調査を2003年と2005年、2007年に実施している。スイスでは2008年から、3段階からなるサイト選定が進められており、現在、第2段階にある1 。今回のNAGRAの世論調査は、サイト選定が開始された以降で初めての調査である。今回、NAGRAが世論調査結果の概要として公表した回答内容と回答者の割合は以下の通りである。
- 地層処分場のサイト選定においては、地元による受け入れ支持の度合いではなく、安全性が最も重要である: 81%
- 「放射性廃棄物の安全な処分は可能である」という科学者を信用する: 68%
- 放射性廃棄物処分問題は政治的に解決可能である: 68%
- 放射性廃棄物処分の問題は可能な限り早期に解決されるべきである: 67%
- 近隣に地層処分場が立地することになった場合、その結果を受け入れる: ほぼ60%
- しかし、近隣への地層処分場立地に対しては否定的な意見である: 上記回答者のうちの45%
- 放射性廃棄物はスイス国内において処分すべきである: 81%
以前の世論調査結果と比較して、『「放射性廃棄物の安全な処分は可能である」という科学者を信用する』という回答率が徐々に高まっており(2003年:61%、2005年:65%、2007年:66%、2013年:68%)2 、NAGRAは、放射性廃棄物の地層処分に対する技術的な解決可能性に対する信頼が徐々に高まっているとの見方を示している。また、サイト選定が開始される前の2007年の調査では、「地層処分場において放射性廃棄物を可能な限りに迅速に処分すべきである」と回答した人の割合は83%であったが、今回の調査でNAGRAは「放射性廃棄物処分の問題は可能な限り早期に解決されるべきである」と回答した人の割合が67%へと低下したことを指摘している。
【出典】
- NAGRAプレスリリース、2013年11月20日
http://www.nagra.ch/de/medienmitteilungdetail.htm/newsID/2874
- 第2段階に入った直後の2012年1月にNAGRAは地層処分場の地上施設が設置される可能性がある20カ所を提案し、現在絞り込みが行われている 。 [↩]
- NAGRAプレスリリース、2004年3月16日 、2005年5月31日 及び 2007年7月17日 を参照 [↩]
(post by yamamoto.keita , last modified: 2023-10-11 )