スウェーデンの原子力発電検査機関(SKI)は2008年3月20日付で、スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)が2006年10月に提出した、使用済燃料の最終処分場の長期安全性評価「SR-Can1 」報告書に対して、SKIと放射線防護機関(SSI)が合同で実施した評価結果を取りまとめた報告書を公表した。SKB社のSR-Can報告書は、同社が2009年末に予定している最終処分場の建設許可申請時までに必要となる「予備的安全報告書」の準備として、サイト調査の初期段階で得られたボーリング調査データなどに基づき、処分場の安全評価の結果を取りまとめたものである。SR-Can報告書は、処分場の建設許可申請に直接関係する安全報告書ではないが、最終処分場のサイト調査段階の半ばまでに得られているデータを活用した安全評価を行うことにより、SKB社がサイト調査プログラムや地下施設などの最終処分場の設計作業へのフィードバックを図るとともに、処分場の安全評価方法、及びその結果の説明内容に対する法規制の遵守状況などについて、規制当局と事前協議することを目的としたものである。
SKIとSSIの合同評価報告書によると、SR-Can報告書の評価に際して両機関は、「サイト調査データ」、「人工バリア設計」、「安全評価方法」を観点とする3つの国際レビューチームを組織し、これらのレビューコメントをもとに評価を取りまとめている。合同評価報告書の要約において、SKIとSSIは、SR-Can報告書に対する評価結果の概略を以下のように整理している。
- SKB社がSR-Can報告書で示した安全評価方法は、全体的には現行法規制において要求される条件を満足するものであるが、許可申請に向けて更に開発すべき部分が残っている。
- SR-Can報告書は、許可申請で要求される品質保証レベルにまでは達していない。
- 最終処分場の長期安全性のリスク評価に関係する、幾つかの重要プロセスの知識基盤の強化が必要である。
- 許可申請の前に、処分場を構成する要素について想定する初期の特性と、それらの製造、試験及び操業の品質確保とのリンクを強化する必要がある。
- 処分場からの放射性物質の放出が早い段階から始まる可能性については、より入念な説明を行う必要がある。
この合同評価報告書は、2008年3月20日にSKIとSSIの各Webサイトでスウェーデン語版が公開されたが、今後、英語版も発行される予定である。また、同Webサイトでは、SKIとSSIが合同で組織した3つの国際レビューチームがそれぞれ取りまとめた報告書も公開されている。
【出典】
- スウェーデン原子力発電検査機関(SKI)2008年3月20日付けプレスリリース、http://www.ski.se/extra/news/?module_instance=1&id=578
- SKI:s och SSI:s gemensamma granskning av SKB:s säkerhetsrapport SR-Can, SKI Rapport 2008:19 / SSI Rapport 2008:4, Mars 2008(SKB社のSR-Can報告書に対するSKIとSSIの合同評価報告書)〔スウェーデン語〕
- International Expert Review of SR-Can: Site Investigation Aspects – External review contribution in support of SSI’s and SKI’s review of SR-Can, SKI Report 2008:09 / SSI Report 2008:11, March 2008
- International Expert Review of SR-Can: Engineered Barrier Issues – External review contribution in support of SKI’s and SSI’s review of SR-Can, SKI Report 2008:10, March 2008
- International Expert Review of SR-Can: Safety Assessment Methodology – External review contribution in support of SSI’s and SKI’s review of SR-Can, SKI Report 2008:15 / SSI Report 2008:5, March 2008
- 「SR-Can」とは、「安全報告書」(SR)と「キャニスタ」(Canister)を表す。当初SKB社は、使用済燃料のキャニスタ封入施設と最終処分場のそれぞれの建設許可申請に添付される予備的安全報告書として、SR-Can報告書とSR-Site報告書(Siteは最終処分場の「サイト」を表す。)を取りまとめる計画であった。その後、キャニスタ封入施設と最終処分場は、相互に依存するものであるため、それぞれの許可申請書に対して、同じ予備的安全評価書を用いることになり、SR-Site報告書が2施設の建設許可申請書に添付される予備的安全報告書となる。 [↩]
(post by sahara.satoshi , last modified: 2023-10-10 )