カナダにおける核燃料廃棄物の長期管理の実施主体である核燃料廃棄物管理機関(NWMO)は、2008年3月25日に、2007年度の年報を公表した。この年報は、2002年11月に施行された「核燃料廃棄物の長期管理に関する法律」(略称:核燃料廃棄物法)に基づいて連邦天然資源大臣に提出、公表されるものであり、2007年6月に使用済燃料の長期管理アプローチとして「適応性のある段階的管理」が決定 されて以降、最初の年報となる。
同年報によると、NWMOは2007年6月の政府決定を受けて、2007年10月には、NWMOの実施主体としての活動に関する電力会社3社の役割、責任及び費用負担の調整を目的とした新たな取り決めが交わされ、新しい定款が定められている。また2008年には、NWMOが実施する技術開発を第三者的に評価し、理事会、諮問評議会に定期的に報告する技術評価グループの設置が予定されている。
また同年報では、「適応性のある段階的管理」の実施に向けて予め決められたスケジュールは設定せずに、以下の3つの段階に沿った概念的な作業スケジュールを適用するとしている。
- 第一段階:集中施設(中間貯蔵、地層処分)のサイト選定に向けたプロセスの協調的な設計及び実施
- 第二段階:詳細な情報の提供及び地域の受入れ意思に基づいたサイト選定に続き、必要な許可を得た後のサイト特性調査、処分場の詳細設計の実施
- 第三段階:許可取得後の処分場建設、操業開始
NWMOは「適応性のある段階的管理」の実施に向けた7つの戦略的目標を策定した。この目標に基づき、初期の実施計画を2008年中に完成するとしている。
今回の年報は、長期管理アプローチの決定後に初めて作成、公表されるものであるが、翌会計年度に確保すべき資金額の算定式とその根拠、及び原子力発電会社とカナダ原子力公社(AECL)が納付すべき拠出金額とその割合の根拠を提案し、連邦天然資源大臣の承認を得なければならないことが核燃料廃棄物法で規定されている。
核燃料廃棄物管理費用の見積りについては、2006年6月末時点で存在する使用済燃料集合体(約188万体)について、処分場を開発、建設し、2035年に輸送及び操業を開始する場合に要する費用を48億カナダドル(2008年価格、5,520億円)と見積っている。2006年6月末以降に発生した使用済燃料については、輸送、処分場の拡張、操業及び監視に要する追加費用を基に算出した集合体1体当たりの費用によって見積られることになっている(1カナダドル=115円で換算)。
処分場の建設以降に要する費用(32億カナダドル(3,680億円))については信託基金によって確保することとされ、2007年12月末現在の信託基金の残高は約14億カナダドル(1,610億円)となっている。残りの約18億カナダドル(2,070億円)については、2008年から2035年までの期間にわたって現在価値に相当する額を年々拠出する方式が提案され、各発生者の信託基金の見込み利回りで増減することが提案されている。
発生者による費用負担については、2006年6月末までに生じた使用済燃料集合体数を基に、処分場に輸送する時期を考慮して決定し、少なくとも5年毎に更新する方式が提案されている。発生者の負担割合は、2035年から輸送の開始を想定しているオンタリオ・パワージェネレーション社は90.8%、2050年に輸送の開始を想定している他の3社については、ハイドロ=ケベック社が3.9%、ニューブランズウィック・パワー社が4.2%、AECLが1.2%となっている。
【出典】
- 核燃料廃棄物管理機関(NWMO)、2008年3月25日付けニュースリリース
http://www.nwmo.ca/Default.aspx?DN=e99873b6-5d85-417d-b3a9-7f8f44862235 - Moving Forward Together, Annual Report 2007, NWMO
(post by 原環センター , last modified: 2023-10-10 )