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米国

2013年6月27日に、米国の連邦議会上院のエネルギー天然資源委員会のウェブサイトで「2013年放射性廃棄物管理法」の法案が公表された。本法案については、2013年4月25日に公表された討議用ドラフトに対してコメントを募集していたが、2013年5月24日の期限までに提出された2,500件を超えるコメントを反映して修正を行ったものとしている。本法案は、2名の民主党及び2名の共和党による超党派の上院議員が共同で連邦議会上院に提出したものである。

今回提出された法案について、法案の要点を示した文書で示された規定内容の概要を以下に示す。なお、下線を付した部分は、討議用ドラフトからの変更点などを示している。

放射性廃棄物管理組織

本法案により、一人の長官が指揮を執る新しい連邦政府関係機関(行政府に設置される独立機関)を設立する。長官は、連邦上院の助言・承認に基づいて大統領に任命され、エネルギー省(DOE)が設定した高レベル放射性廃棄物計画を実施する。
また、新しい放射性廃棄物管理組織による計画の実施を監督するため、独立した監視委員会を創設する。監視委員会は、大統領が任命して連邦上院が承認する、異なる任期を持つ5名の委員で構成される。これは、連邦政府の当局者により委員会を構成することを懸念するコメントに対応したものである。

集中貯蔵及び処分場の同意に基づくサイト選定プロセス

本法案では、新しい放射性廃棄物管理組織が、閉鎖された原子炉サイトからの使用済燃料、及び運転中の原子炉から緊急に輸送される使用済燃料を受け入れるパイロット規模の中間貯蔵施設を建設することを規定している。また、民間の使用済燃料及びDOEの国防関連の廃棄物を一時的に貯蔵する1つ、または複数の集中中間貯蔵を建設することも規定している。
本法案により、処分場及び集中貯蔵施設に適用する新しいサイト選定プロセスを策定する。このサイト選定プロセスでは、新しい放射性廃棄物管理組織は、以下を実施する必要がある。

  • サイトを評価するための技術的なサイト選定ガイドラインを開発する
  • 自主的にサイトとなるような州及び自治体を募集する
  • サイト調査実施のための州及び地元の協力を得る。協力協定については、貯蔵サイトは任意とし、処分サイトは必須とする
  • サイト特性調査の開始前(貯蔵サイト、処分サイト)、処分サイトとして適性を最終的に決定する前に、パブリックヒアリングを開催する
  • 処分場、または貯蔵施設のサイトとして選定するための州及び地元の同意を得る
  • 処分場、または貯蔵施設の建設、操業のための原子力規制委員会(NRC)の許認可を得る

貯蔵施設と処分場のサイト選定プロセスとを2つの部分に分けることは、討議用ドラフトからの変更点である。さらに、長官は、法律の施行後の180日以内にパイロット規模の貯蔵施設の公募を開始することが要求され、法律の施行後の1年以内に処分場に関するガイドラインを策定することが要求されている点も、討議用ドラフトとの相違点である。

集中貯蔵施設と処分場とのリンク

本法案は、直ちにパイロット規模の貯蔵施設のサイト選定を開始することを認めるが、貯蔵施設の貯蔵容量に制限を設定しない。長官は、より大規模な貯蔵施設について、法律の施行後10年間は、並行する処分場プログラムの実施のための資金が義務付けられているならば、サイト選定を継続することが可能である。施行後10年以降に関しては、長官は、処分場のための候補地としての評価のために少なくとも1カ所のサイトを選定している場合、新しい貯蔵施設を立地することができる。

放射性廃棄物基金

本法案により、放射性廃棄物管理組織が歳出予算措置を経ずに利用可能となる、新しい運営資本基金を財務省に創設する。新たに創設される基金には、電力会社からの拠出金が預託される。本法案の成立前に収集された拠出金は、従来からの放射性廃棄物基金に残り、歳出予算の対象となる。

【出典】

 

 

【2015年3月19日追記】

米国の連邦議会上院で、2015年3月10日に、「放射性廃棄物インフォームドコンセント法」の法案(S.691)が提出された。全4条からなる同法案は、少数党院内総務のリード議員などが提出したものであり、現在、原子力規制委員会(NRC)で許認可申請書の審査が行われているユッカマウンテン処分場についても、地元ネバダ州の承認を必要とすることを趣旨とした法案になっている。リード議員は、ネバダ州選出で民主党の上院議員であり、かねてからユッカマウンテン計画に反対する態度を鮮明にしてきた。法案の規定内容の概要は、以下のとおりである。

  • エネルギー長官が、処分場候補地の州知事、影響を受ける地方政府、当該地方政府に隣接して輸送経路となる地方政府、及び影響を受ける先住民族と書面による合意を締結しない限り、原子力規制委員会(NRC)は建設認可を発給してはいけない。
  • この法律は、施行時に存在しているか、または、将来提出される建設認可の許認可申請書に対して適用される。

なお、連邦議会下院においても、2015年3月13日に、ネバダ州選出議員により同じ内容の法案(H.R.1364)が提出されている。

リード議員などによる法案の提出に対し、連邦議会上院の歳出委員会エネルギー・水資源小委員会のアレキサンダー委員長は、2015年3月10日のプレスリリースにおいて、「連邦議会は既にユッカマウンテンを米国の放射性廃棄物処分場として承認しており、原子力規制委員会(NRC)も同地において安全に処分できると言っている。ユッカマウンテンに反対し続けることは、法律と科学を無視することである」とした上で、ユッカマウンテンに次ぐ新たなサイトを確保するための法案を準備していること、その法案においてもユッカマウンテンは解決策の一部であることなどを表明している。

【出典】

米国の原子力規制委員会(NRC)は、2013年6月24日に、NRCの文書データベース・システムであるADAMSにおいて、使用済燃料の中間貯蔵に関する「廃棄物保証」1 に関する連邦規則の改定案、ドラフト包括的環境影響評価書(DGEIS)を公表し、今後、環境保護庁(EPA)と共同で75日間のパブリックコメントを開始する意向を示した。

今回、改定案が示された連邦規則は、2012年6月に連邦控訴裁判所において無効判決が下されていた「廃棄物保証」規則に相当するものであり、NRCの原子炉等の許認可手続における環境影響評価について定めた10 CFR Part 51「国内許認可及び関連規制機能に対する環境保護規則」の第23条(a)項(以下、「10 CFR Part 51.23(a)」という。)である。2010年9月の改定条項には「いずれの原子炉から発生した使用済燃料も運転許可期限を過ぎても最低60年間は環境に重大な影響を与えることなく貯蔵可能であり、また、高レベル放射性廃棄物及び使用済燃料の処分のため、必要な時期に地層処分場が利用可能」というNRCの決定を示す記述が含まれていたが、上記のとおり裁判で無効となっている。

今回の10 CFR Part 51.23(a)の改定案においては、廃棄物保証に係る包括的環境影響評価書(GEIS、NUREG-2157)の検討・作成により、以下のような結論を得たと規定している。

  • NUREG-2157での解析により、原子炉の運転許可期限を過ぎた使用済燃料の貯蔵に関する環境影響評価の問題についての包括的な対応を行った。
  • NUREG-2157での解析は、原子炉の運転許可期限を過ぎた使用済燃料を安全に貯蔵すること、及び原子炉の運転許可期限を過ぎて60年以内に地層処分場が存在することについて、実現可能であると決定することを支持している。

なお、地層処分場が60年以内に存在するとしたのは、2013年1月11日にエネルギー省(DOE)が公表した「使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物の管理・処分戦略」(DOE戦略)において、2048年に地層処分場の操業開始が示されたことに依拠しているとされている。

NRCは、新規原子炉の建設・運転、原子炉の寿命延長などの許認可に影響があることから、「廃棄物保証」に関する情報をホームページでまとめており、2014年9月までに包括的環境影響評価書(GEIS)及び「廃棄物保証」規則を策定することなどが示されている。

【出典】

 

【2013年09月17日追記】

米国の原子力規制委員会(NRC)は、2013年9月12日のプレスリリースにおいて、使用済燃料の中間貯蔵に関する「廃棄物保証」に関して、連邦規則の改定案、ドラフト包括的環境影響評価書(DGEIS)について、2013年11月27日を期限とする75日間のパブリックコメントを開始することを公表した。

連邦規則(10 CFR Part 51)の改定案は、当初案から大きな変更はなく、2013年9月13日の連邦官報に掲載された。また、ドラフト包括的環境影響評価書(DGEIS)については、2013年9月6日に、NRCの廃棄物保証に関する特設ページに掲載されている。

なお、今回の廃棄物保証の連邦規則等の改定に関しては、全米12カ所でパブリックミーティングを開催するとしており、2013年10月1日のメリーランド州ロックビルにあるNRC本部から開始し、2013年11月14日までの開催予定が2013年9月6日の連邦官報に掲載されている。

【出典】

 

【2014年7月28日追記】

米国の原子力規制委員会(NRC)の運営事務局長(EDO)は、2014年7月21日に、原子炉の許可期間終了後の使用済燃料の貯蔵等に係る「廃棄物保証」に関して、連邦規則を改定する最終規則案、及び包括的環境影響評価書(GEIS、NUREG-2157)案をNRCの委員に提出した。これらの案は、2013年9月に公表された連邦規則(10 CFR Part 51)の改定案とドラフト包括的環境影響評価書(GEIS、NUREG-2157)に対するパブリックコメント等を受けて見直されたものであり、今後、NRCの委員による承認の後、連邦官報で告示される。

NRCのEDOがNRCの委員に提出した文書では、2013年9月公表のドラフトからの変更点が以下のように示されている。

〇連邦規則(10 CFR Part 51)改定に係る変更点

  • 本手続、連邦規則の該当条文(10 CFR Part 51.23(a))及びGEIS(NUREG-2157)で使用されていた「廃棄物保証」(waste confidence)を「使用済燃料の継続貯蔵」(continued storage of spent fuel)という名称に変更
  • 連邦規則の条文中から、地層処分場が利用可能となる時期、及び運転許可期間終了後の使用済燃料貯蔵の安全性についての記述を削除
  • 独立使用済燃料貯蔵施設(ISFSI)の許可更新にも本規則が適用されることを明確化
  • 原子炉の早期サイト許可(ESP)や建設許可における本規則適用を明確化
  • 原子炉や独立使用済燃料貯蔵施設(ISFSI)の許可等で必要とされる環境影響評価書(EIS)には、NUREG-2157が組み込まれていると見なす
  • その他、文章構成変更などによる追加的な変更

〇包括的環境影響評価書(GEIS、NUREG-2157)の変更点

  • 無期限貯蔵における制度的管理に関する情報追加
  • 目的、必要性、代替オプションに関する記述の再構成・明確化
  • 国際的な経験及び規制枠組みに関する情報を追加
  • 高燃焼度燃料に関する付属書を追加
  • 2013年9月の連邦規則(10 CFR Part 51)の改定案及びドラフト包括的環境影響評価書(GEIS)に対するコメントへの回答を追加

【出典】


  1. 廃棄物保証(waste confidence)とは、原子力規制委員会(NRC)の原子炉等の許認可手続における環境影響評価で必要とされる、原子炉から発生する使用済燃料による環境への影響について、NRCが一般的な決定事項を示したものである。具体的には、使用済燃料が安全に処分可能か、処分場またはサイト外貯蔵施設がいつ頃利用可能となるか、原子炉施設等の許可期間が終了した後もサイト外での処分または貯蔵が可能となる時期まで安全に貯蔵可能かという点を示している。この所見に基づいて、NRCの環境影響評価に関する連邦規則である10 CFR Part 51が規定されている。 []

2013年4月25日に、米国の連邦議会上院のエネルギー天然資源委員会は、ブルーリボン委員会の最終報告書・勧告を実施に移すための法案について、4人の超党派の議員により作成した討議用ドラフト法案を公表した。エネルギー天然資源委員会のウェブサイトによると、発電事業者、環境保護団体やブルーリボン委員会委員などのステークホルダーや専門家からの本法案に対するコメントなどを2013年5月24日まで募集するとしている。

本法案の名称は「2013年放射性廃棄物管理法」とされており、討議用ドラフト法案の要点を示した文書においては、ブルーリボン委員会が勧告した放射性廃棄物管理組織の設立、同意に基づく高レベル放射性廃棄物の管理施設のサイト選定プロセスを創設するとしている。また、本法案により、連邦政府の高レベル放射性廃棄物管理に関する義務を果たすとともに、民間の使用済燃料の処分が実現できていないことによる高額な負担を終了させるとしている。さらに、本法案によって使用済燃料の集中貯蔵・処分システムを確立することにより、二酸化炭素の排出のない原子力利用の拡大につながるとしている。

以下では、討議用ドラフト法案の要点を示した文書においてコメントを募集している事項として、「放射性廃棄物管理組織」、「集中貯蔵及び処分場の同意に基づくサイト選定プロセス」、「集中貯蔵施設と処分場との関連」、「放射性廃棄物基金」に関する法案での規定内容の概要を示す。

「放射性廃棄物管理組織」についての規定内容の概要

本法案により、一人の長官が指揮を執る新しい連邦政府関係機関(行政府に設置される独立機関)を設立する。長官は、連邦上院の助言・承認に基づいて大統領に任命され、エネルギー省(DOE)が設定した高レベル放射性廃棄物計画を実施する。また、大統領府管理・予算局(OMB)の副長官、陸軍工兵部隊のチーフエンジニア、エネルギー副長官により構成される監視委員会を創設し、新しい放射性廃棄物管理組織による計画の実施を監督する。

「集中貯蔵及び処分場の同意に基づくサイト選定プロセス」についての規定内容の概要

本法案では、新しい放射性廃棄物管理組織が、閉鎖された原子炉サイトからの使用済燃料、及び運転中の原子炉から緊急に輸送される使用済燃料を受け入れるパイロット規模の中間貯蔵施設を建設することを規定している。また、民間の使用済燃料及びDOEの国防関連の廃棄物を一時的に貯蔵する1つ、または複数の集中中間貯蔵を建設することも規定している。
また、本法案により、処分場及び集中貯蔵施設に適用する新しいサイト選定プロセスを策定する。このサイト選定プロセスでは、新しい放射性廃棄物管理組織は、以下を実施する必要がある。

  • サイトを評価するための技術的なサイト選定ガイドラインを開発する
  • 自主的にサイトとなるような州及び自治体を募集する
  • サイト調査実施のための州及び地元の同意を得る
  • 調査の開始、またはサイトとして選定する段階での多数のパブリックヒアリングを開催する
  • 処分場、または貯蔵施設のサイトとして選定するための州及び地元の同意を得る
  • サイトとなることの同意協定の連邦議会による承認を得る
  • 処分場、または貯蔵施設の建設、操業のための原子力規制委員会(NRC)の許認可を得る

「集中貯蔵施設と処分場との関連」についての規定内容の概要

本法案は、直ちに集中貯蔵施設のサイト選定を開始することを認めるが、貯蔵施設の貯蔵容量に制限を設定しない。本法案では、貯蔵施設の建設・操業中に、長官に対して、自身のミッションプランに照らしながら、処分場のサイト選定及び建設を継続して進展させることを求める要件を提案している。長官、または監視委員会は、処分場に関して着実な進展がなされていないと判断した場合には、すでに貯蔵している放射性廃棄物はそのままとしながらも、貯蔵施設への輸送を停止する。

「放射性廃棄物基金」についての規定内容の概要

本法案により、放射性廃棄物管理組織が歳出予算措置を経ずに利用可能となる、新しい運営資本基金を財務省に創設する。新たに創設される基金には、電力会社からの拠出金が預託される。本法案の成立前に収集された拠出金は、従来からの放射性廃棄物基金に残り、歳出予算の対象となる。

【出典】

 

【2013年6月6日追記】

米国の連邦議会上院のエネルギー天然資源委員会は、「2013年放射性廃棄物管理法」の法案へのコメント募集を2013年4月25日に開始していたが(期限は2013年5月24日)、2013年6月5日に、提出を受けた意見・コメント等を集約して法案へのコメント募集の特設サイトに掲載した。

現状、法案への意見・コメント等の内容の分析結果などは示されていないが、3,211ページに及ぶコメントがほぼそのままの形で掲載されている。

コメントを提出しているのは、原子力エネルギー協会(NEI)などの業界団体、米国原子力学会(ANS)、ユッカマウンテンの地元であるネバダ州ナイ郡、エナジーソリューションズ社などの原子力関連会社、地球の友(FoE)などとなっている。

【出典】

2013年4月10日に、米国で2014会計年度1 の大統領の予算教書が連邦議会に提出され、大統領府管理・予算局(OMB)のウェブサイトで公表された。2012年1月26日に公表されたブルーリボン委員会の勧告に基づいて、高レベル放射性廃棄物管理の包括的な計画の枠組みをDOEが検討を行い、2013年1月11日に「使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物の管理・処分戦略」(以下「DOE戦略」という)を公表していた。今回公表された大統領の予算教書では、このDOE戦略を実施に移すための予算として6,000万ドル(55億8,000万円、1ドル=93円で換算)を要求している。なお、ユッカマウンテン処分場関連予算の要求はない。

大統領の予算教書とともに各省庁の予算概要が公表されており、このうち、DOEの予算概要では、DOE戦略を実施に移すものとして、以下のような活動を行うとしている。

  • DOE戦略の実施のための基盤となる輸送、貯蔵、処分、サイト選定に係る活動
  • 上記に関連する研究開発

また、今後、エネルギー省(DOE)のウェブサイトにおいて、DOEの予算要求資料が公表される見込みである。

なお、ユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可申請書の審査を担当している原子力規制委員会(NRC)については、大統領の予算教書・各省庁の予算概要に記載がない。また、NRCの予算要求資料では、2014会計年度の高レベル放射性廃棄物処分関連として、将来的な処分の代替戦略のための研究・フィールド調査などの予算が記載されているが、ユッカマウンテン処分場の審査に関する予算要求は記載がない。

【出典】

【2013年4月15日追記】

2013年4月11日に、米国のエネルギー省原子力局(DOE/NE)は、高レベル放射性廃棄物処分、使用済燃料の中間貯蔵などのDOE戦略の実施を含む2014会計年度の予算の説明資料を公表した。この中で、パイロット規模の中間貯蔵施設の建設・操業、大規模な中間貯蔵施設及び地層処分場の計画の実施に当たって、今後10年間で56億ドル(約5,200億円、1ドル=93円で換算)の予算が必要と評価している。

また、2014会計年度の予算による実施事項のうち、「研究開発」については、3,000万ドル(27億9,000万円、1ドル=93円で換算)の予算で以下の事項を行うとしている。

  • 使用済燃料の長期貯蔵を支援するための研究開発
  • 代替処分環境に関する研究開発(モデル化、評価、試験等)
  • 発熱性の廃棄物の処分に対する岩塩処分科学の促進のためのフィールド試験の実施
  • ボアホール研究:深部結晶質岩の水理地球化学、物理地質学、構造地質学、地球物理学的状態、工学的特性のさらなる理解のために必要な研究開発の実施
  • 既存の国際的知見を活用するための国際機関との関与の促進
  • 長期貯蔵燃料の輸送をサポートする研究開発:輸送中の実際の荷重を評価するためのフィールド試験

さらに、2014会計年度の予算による実施事項のうち、「高レベル放射性廃棄物管理及び処分システムの設計活動」については、3,000万ドル(27億9,000万円)の予算で以下の事項を行うとしている。

  • 同意に基づくサイト選定プロセスのための計画策定の継続
  • 廃止措置された原子炉サイトからの最初の使用済燃料の輸送の解析の完了
  • 一般的な貯蔵施設及び輸送支援システムの概念設計の継続
  • 種々の使用済燃料管理システムのシステム構成及び動作評価の実施
  • 貯蔵、輸送、将来の処分のため標準のコンテナの評価の継続
  • 輸送問題に関する州の地域グループとの協力した取組の継続
  • 廃止措置した原子炉から一般的な集中貯蔵施設への最初の輸送に対応するための国家輸送計画のアップデート

また、DOE戦略に係るその他の予算としてDOEは、環境保護庁(EPA)による「サイトを特定しない処分基準」の改定に係る費用が別途計上されているとしている。処分基準は、使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物処分のサイト選定に当たっての指針的な役割を担うものとしている。

【出典】

【2014年1月20日追記】

米国の連邦議会は、2014年1月16日に、2014年包括歳出法案を可決した。「使用済燃料処分等プログラム」(UFD)を含む燃料サイクル研究開発プログラムの歳出予算については、本法案の条文には記載されていないが、付随する説明文書においてエネルギー省(DOE)の予算要求額を上回る1億8,650万ドル(約182億8,000万円)と示されている。

また、2014年包括歳出法案では、ユッカマウンテン処分場に関する記述はなく、ユッカマウンテンでの高レベル放射性廃棄物処分場に係る開発関連予算は計上されていない。ただし、連邦議会下院の歳出委員会が公表した歳出予算要約資料では、政策事項の一つとして、「ユッカマウンテンの将来利用のための可能性を維持し、安全性評価報告(SER)の第3分冊を完成させるための先年予算の継続」が示されている。SERの第3分冊は「閉鎖後の処分場の安全性」である。

なお、2014年度の歳出予算については、会計年度が開始された2013年10月1日までに歳出法案が制定されず、2013年10月17日から継続予算が執行されていた。

【出典】


  1. 米国における会計年度は、前年の10月1日から当年9月30日までの1年間となっており、今回対象となっている2014会計年度の予算は2013年10月からの1年間に対するものである。 []

米国のエネルギー省(DOE)は、2013年1月11日に、「使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物の管理・処分戦略」(以下「戦略」という)を公表した。米国では連邦議会が、ブルーリボン委員会の最終報告書の公表後6カ月以内に使用済燃料などの管理戦略を策定するようDOEに求めており、DOEは戦略の策定に向けた取り組みを続けてきた。

今回公表された「戦略」では、連邦政府や連邦議会が使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物の管理・処分に関する国家的プログラムを策定することができるようにするため、ブルーリボン委員会の最終報告書で示された基本的な考え方に沿って、実施可能な枠組みが示されている。また、使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物の処分という連邦政府の責任の実施に向けたプログラムの策定と実施の基礎となるものであるとともに、短期的にDOEが実施すべき措置を示している。

スケジュール

「戦略」では、使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物の包括的な管理と処分システムの構築のため、段階的で、適応性があり、同意に基づくアプローチが示されており、今後10年にわたって、以下のスケジュールで関連施設の建設を行うための計画を進めるとしている。

  • 2021年までに、最初は閉鎖された原子炉のサイトからの使用済燃料の受け入れに焦点を当て、パイロット規模の中間貯蔵施設の立地、設計と許認可、建設と操業の開始。
  • 2025年までに、より大規模な使用済燃料の中間貯蔵施設が使用可能となるように、サイト選定と許認可を実施。この中間貯蔵施設は、廃棄物管理システムに柔軟性をもたらすことができ、今後の政府の債務1 を抑制しうるような貯蔵容量を持つものとする。
  • 2048年までに、地層処分場を実現するよう、処分場のサイト選定とサイト特性調査を進める。

さらに、地層処分場と中間貯蔵施設との設置の時期的なリンクを図るため、地層処分場のサイト選定は2026年までに、サイト特性調査、処分場の設計及び許認可を2042年までに、処分場の建設及び操業の開始を2048年とすることを実施の目標としている。

管理・処分の実施主体

「戦略」では、実施主体の組織形態がどのようなものになるとしても、組織の安定性やリーダーシップの継続性、監督と説明責任、及び公衆の信頼が成功のための重要な要素であるとして、連邦議会とも協力し、実施主体の設立が、その任務の遂行のために必要となる十分な権限やリーダーシップの確保につながるようにするとしている。さらに、実施主体の任務の規定は慎重に行わなければならず、実施主体が利用できる資金は、放射性廃棄物の管理・処分という使途にのみ用いられるようにすべきであるとしている。

資金確保

資金確保に関して「戦略」では、使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物の管理・処分という任務の遂行のため、適宜、信頼できる形で、過去に徴収され、今後徴収される拠出金と利息を利用できるようにすることを主要な課題としている。この目的を達成するために、現在の資金確保制度の刷新が必要であり、新しい制度には、継続的な裁量的歳出予算、予算上の取扱い変更による毎年の拠出金へのアクセス、及び将来における放射性廃棄物基金(NWF)の残高へのアクセスといった要素が必要であるとしている。

立法が必要な事項

「戦略」では、その実現のためには連邦議会による歳出承認と立法措置が必要であり、今後10年にわたって、以下の活動を許容し、または対処するためには、早期の立法措置が必要であるとしている。

  • パイロット規模の中間貯蔵施設及びフルスケールの中間貯蔵施設のサイト選定と、地層処分場のサイト選定及びサイト特性調査のため、広範な、国家的な、同意に基づいたプロセスへの積極的な関与
  • 最初は閉鎖された原子炉のサイトからの使用済燃料の受け入れに的を絞った、パイロット規模の中間貯蔵施設のサイト選定、設計、許認可及び操業の開始
  • システムに柔軟性をもたらし、連邦政府の債務の抑制を可能とする、より大規模な中間貯蔵施設のサイト選定と許認可における目に見える前進
  • 閉鎖された原子炉からの使用済燃料の移動を開始するための輸送能力(人員、プロセス、設備)の開発
  • 従来通りの裁量による予算配分を維持し、また、拠出金等の予算上の区分変更など、追加的な資金を必要に応じて確保しうる資金確保制度の刷新
  • プログラムの実施のための新しい組織の設置。新しい組織は、引き続き行政府や立法府の監督を受けつつ、より大きな自律性を備えたものとする。

なお、「戦略」では、現行の法的枠組みの中で実施可能な事項として、廃棄物管理システムの設計概念の検討、同意に基づくサイト選定プロセスの計画の立案、処分場への種々の地質の適性に関する研究開発の実施を挙げている。

【出典】


  1. DOEは1982年放射性廃棄物政策法(NWPA)の規定に基づいて原子力発電事業者と契約を締結しており、原子力発電事業者は放射性廃棄物基金への拠出金の支払を行い、DOEは1998年1月31日までに使用済燃料を引き取ることとなっている。処分場開発の遅れにより使用済燃料の引き取りが行われていないため、多くの訴訟が原子力発電事業者等から提起されており、債務不履行による賠償金の支払が既に一部確定している。 []

米国・廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)のウェブサイトに2012年11月29日付で公表されたニュースレター(TeamWorks)によると、超ウラン核種を含む放射性廃棄物(TRU廃棄物)の地層処分場であるWIPPでのTRU廃棄物の輸送の受入れが、2012年11月20日で11,000回に達したとのことである。なお、WIPPは、法律により、軍事関係で発生したTRU廃棄物のみが処分対象と制限されている。

TRUPACT-IIIパッケージのモデル

TRUPACT-IIIパッケージのモデル

ニュースレターによると、エネルギー省(DOE)のカールスバッド・フィールド事務所(CFO)の輸送チームは、原子力規制委員会(NRC)の容器承認を受けたB型輸送容器(TRUPACT-II、HalfPACT、RH-72B及びTRUPACT-III)による輸送を管理しており、廃棄物発生場所からWIPPまでの総輸送距離は、延べ1,300万マイル(約2,090万km)を超えたとされている。また、11,000回目の輸送は、イリノイ州シカゴ近郊のアルゴンヌ国立研究所(ANL)で発生した「遠隔ハンドリングが必要なTRU廃棄物」(RH廃棄物)のものであり、距離は1,720マイル(約2,770km)に及ぶものであったとされている。なお、WIPPでは、TRU廃棄物の5,000回目の受け入れは2006年9月に、9,000回目の受け入れは2010年10月に、10,000回目の受け入れは2011年9月に、それぞれ達成している。

一方、WIPPへの「直接ハンドリングが可能なTRU廃棄物」(CH廃棄物)の輸送では、円筒縦型のTRUPACT-IIが主に使用されてきたが、2011年6月にNRCの容器承認を受けたTRUPACT-IIIも使用されている。容器承認書によれば、TRUPACT-IIIは、主として車両による輸送を想定して設計された角型輸送容器であり、幅2,500mm、奥行き4,288mm、高さ2,650mmとなっている。また、内容物の最大重量は5,210kgであり、内容物を含めた輸送容器の最大重量は25,000kgとなっている。

TRUPACT-IIIパッケージの写真

TRUPACT-IIIパッケージの写真
http://www.flickr.com/photos/departmentofenergy/7515730204/in/photostream/

TRUPACT-IIIパッケージの写真(2)

TRUPACT-IIIパッケージの写真(2)
http://www.flickr.com/photos/departmentofenergy/7515730406/in/photostream/


【出典】

米国において、民間組織が使用済燃料の中間貯蔵施設の建設を計画している。この計画は、エディ・リー・エナジー・アライアンス(ELEA)がニューメキシコ州のカールスバッド市の近郊に使用済燃料の中間貯蔵施設を立地するというものであり、フランス・AREVA社の米国法人の2012年10月5日付のプレスリリースでは、AREVA社を中心とする企業体が本計画のパートナーとして選定されたとしている。

ELEAは、ニューメキシコ州南東部のエディ郡、リー郡、カールスバッド市及びホッブズ市の4自治体で構成される企業体である。かつてELEAは、計画が中止された国際原子力エネルギー・パートナーシップ(GNEP)での統合使用済燃料リサイクル施設の立地調査に応募しており、ELEAが提案したサイトが選定された経緯がある。また、カールスバッド市では、軍事用の超ウラン核種を含む放射性廃棄物(TRU廃棄物)の地層処分場である廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)が1999年より順調な操業を続けている。

高レベル放射性廃棄物等の管理政策を定めた1982年放射性廃棄物政策法(1987年修正)では、ユッカマウンテンでの地層処分場開発とともに、エネルギー長官に対して、監視付き回収可能貯蔵(MRS)施設1と呼ばれる中間貯蔵施設の立地・建設・操業を行う権限を認めている。ただし、エネルギー長官による高レベル放射性廃棄物等の中間貯蔵は、処分地が決定する目処が立つまで中間貯蔵施設のサイト選定を実施できないこと、地層処分施設の建設の許認可が発給されるまで中間貯蔵施設の建設を開始できないなど、地層処分計画が進まないと実施できないような規定内容となっている。

今回のELEAの計画の他、民間の使用済燃料の中間貯蔵施設の建設計画としては、原子力発電事業者が共同で設立した民間燃料貯蔵(PFS)社が、1997年6月に原子力規制委員会(NRC)に対して、ユタ州ソルトレイクシティの近傍であるスカルバレーバンドにおいて、使用済燃料の中間貯蔵施設の建設許可申請を提出していたものがある。NRCは2006年2月に建設許可を発給したものの、PFS社とスカルバレーバンドとの土地貸借契約、輸送のための国有地の使用に関する許可が内務省から得られず、プロジェクトは無期限に延期されている。

現政権によるユッカマウンテン計画を中止し、代替案を検討するとの方針に従って、エネルギー長官が設置した「米国の原子力の将来に関するブルーリボン委員会」は、2012年1月に提出した最終報告書において、中間貯蔵施設の建設を重要な課題と位置付け、以下の点を指摘している。

  • 中間貯蔵は、廃止措置された原子炉サイトからの使用済燃料の撤去を可能にする
  • 中間貯蔵によって連邦政府の廃棄物受入れ義務の履行開始を可能にする
  • 中間貯蔵は、福島及びその他の事象から学んだ教訓に対応するための柔軟性をもたらす
  • 中間貯蔵は、処分場プログラムをサポートする
  • 中間貯蔵は、廃棄物管理システムのための技術的機会をもたらす
  • 中間貯蔵は、貯蔵機能及び将来の廃棄物取扱い機能の柔軟性及び効率性の向上のための選択肢を提供する

なお、1982年放射性廃棄物政策法(1987年修正)での高レベル放射性廃棄物等の中間貯蔵施設のサイト選定・建設と、地層処分場の計画の進捗とをリンクさせて制限する条項については、ブルーリボン委員会の最終報告書において、この制限を撤廃するための法改正などの必要性が指摘されている。

【出典】

【2013年1月7日追記】

米国のユタ州ソルトレイクシティ近傍のスカルバレーバンドにおいて、使用済燃料の中間貯蔵施設の建設を計画していた民間燃料貯蔵(PFS)社は、2012年12月20日付で原子力規制委員会(NRC)に書簡を提出し、NRCに対して中間貯蔵施設の建設許可の終了を要求した。PFS社は、2006年2月21日に、NRCより中間貯蔵施設の建設許可の発給を受けていたが、今回の書簡により、PFS社による中間貯蔵施設の建設に向けたプロジェクトは中止されることとなる。
今回の書簡においては、プロジェクトを中止させる理由として、以下の3点が示されている。

  • 建設許可証の条件19において、施設の操業開始当初の貯蔵容量としてNRCに提示した量の使用済燃料を貯蔵できる施設を建設するのに十分な資金を確保しなければ建設を開始できないと規定されていたが、資金確保はなされず、建設は行われなかったこと。
  • 建設許可証の条件20において、使用済燃料に関する全費用を顧客に転嫁する契約を締結して、NRCの原子力安全・許認可委員会(ASLB)に提出して承認を受けなければ施設の操業を開始できないと規定されていたが、こうした契約が締結されなかったこと。
  • PFS社とスカルバレーバンドとの土地貸借契約に関する許可が、内務省(DOI)によって承認されなかったこと。

【出典】

 

【2015年5月8日追記】

米国のエネルギー関連企業であるホルテック・インターナショナル社は、2015年4月30日のプレスリリースにおいて、ニューメキシコ州のカールスバッド市近郊で使用済燃料の半地下の中間貯蔵施設を建設することについて、エディ・リー・エナジー・アライアンス(ELEA)と覚書を締結したことを公表した。ELEAのホームページには、ホルテック・インターナショナル社などとの2015年4月29日の記者会見に関するライブストリームの情報が記されている。

本建設計画については、ELEAの構成員であるニューメキシコ州南東部のエディ郡、リー郡、カールスバッド市及びホッブズ市の4自治体の支持に加えて、ニューメキシコ州知事も2015年4月10日にエネルギー長官宛てに書簡を送付しており、その中で、ELEAの計画を支持することが記されている。

ELEAとホルテック・インターナショナル社との覚書では、ホルテック・インターナショナル社が原子力発電所で建設実績のある使用済燃料のサイト内貯蔵システムであるHI-STORM UMAX(Holtec International STORage Module Underground MAXimum securityの頭字語)を拡張した中間貯蔵システムの設計、許認可、建設及び操業を行い、ELEAがサイト特性調査に係るデータの取得・整備、地元への働き掛けを行うとしている。

計画している中間貯蔵施設は、100年間の供用が可能な施設とし、貯蔵キャニスタを取り出して移送できるように設計される。施設の規模に制約はなく、ユッカマウンテン処分場の処分容量に相当する施設の広さは32エーカー(約13万平方メートル)としている。

なお、記者会見にも参加していた原子力エネルギー協会(NEI)が本建設計画を支持するプレスリリースを出している一方で、ニューメキシコ州選出・民主党のユーダル、ハインリッヒ両上院議員は、廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)の操業再開に注力すべきであること、地層処分計画の存在しない状態ではどのような場所での中間貯蔵計画も支持できないとの声明を出している。

【出典】


  1. 監視付き回収可能貯蔵(MRS、Monitored Retrievable Storage)施設は、1982年放射性廃棄物政策法(1987年修正)において、高レベル放射性廃棄物及び使用済燃料を監視付きの回収可能性を有する中間貯蔵施設に長期貯蔵することが、安全・確実な管理の選択肢であるとし、エネルギー長官に中間貯蔵施設の設置に係る権限を与えている。http://energy.gov/downloads/monitored-retrievable-storage-background []

米国の原子力規制委員会(NRC)は、2012年9月6日のプレスリリースにおいて、使用済燃料の中間貯蔵に関する「廃棄物保証」に関する決定及び規則の改定、環境影響評価書(EIS)の作成をNRCスタッフに指示したことを明らかにした。これは、「廃棄物保証」規則の2010年改定を無効とした2012年6月8日の米国連邦控訴裁判所判決へ対応するものであり、EISの作成及び規則等の再改定を今後24ヵ月以内に完了することとしている。なお、NRCは、2012年8月7日の覚書及び命令において、上記の無効判決への対応が完了するまでは、原子炉の一括許認可(COL)等の審査は継続するものの、新たな許認可は発給しないとする決定を行っていた。

具体的なNRCの指示が示された2012年9月6日付けの委員会指示文書は、2012年7月9日付のNRCスタッフ提案文書に対応する形で出されているが、スタッフ提案文書においては、連邦控訴裁判所判決が指摘した不足事項を以下の3つと整理している。

  • 不足事項A:必要な時期に十分な容量の処分場が設置されなかった場合の環境影響の考察
  • 不足事項B:将来的に発生が想定される潜在的な使用済燃料の貯蔵プールの漏洩による環境影響の解析
  • 不足事項C:貯蔵プールにおける火災の確率及び影響の解析

また、上記の不足事項への対応策について、NRCのスタッフは、以下の4つのオプションによる対応が考えられるとしていた。

  1. NRCでは、既に原子炉の操業停止後60年以降の期間を対象とした「長期廃棄物保証プロジェクト」において、環境影響評価書(EIS)の作成及び規則の策定の取り組みを開始しており、その中で不足事項に対応すること。
  2. 判決で指摘された不足事項に対応して「廃棄物保証」規則を再改定する。
  3. 「廃棄物保証」規則の再改定が完了するまでは、不足事項についての一般的解析を行った上で、個別の許認可手続での環境影響評価において一般的解析の結果を適合させながら使用する。
  4. 判決への対応の進め方を示した委員会の計画に関する政策文書を発行する。

NRCスタッフ提案文書においては、上記の2.と3.とを並行的に進める案を提案していたが、委員会指示文書では、2.による環境影響評価書(EIS)の作成を指示しており、実施中の原子炉許認可手続きでサイト個別のEISを実施する3.適用については、止むを得ない場合に限定すべきとしている。

また、委員会指示文書では、NRCのスタッフは、可能な限り2010年の「廃棄物保証」規則の改定におけるNRCによる環境アセスメント(EA)を活用すべきであり、連邦控訴裁判所判決が指摘した不足事項に対する追加的な分析に焦点を当てるべきとしている。

【出典】

米国の連邦控訴裁判所1 は、2012年6月1日に、全米公益事業規制委員協会(NARUC)などが放射性廃棄物基金への拠出金の徴収の停止を求めていた訴訟に関して、現時点でエネルギー省(DOE)に対して徴収の停止は指示しないとする一方で、6カ月以内に拠出金額の妥当性の評価を実施するよう指示するとの判決を行った。

1982年放射性廃棄物政策法では、民間で発生する使用済燃料、高レベル放射性廃棄物の処分については、発生者が費用を負担する責任を有すことが規定されており、廃棄物発生者である原子力発電事業者は原子力発電1kWh当たり1ミル(0.001ドル)を放射性廃棄物基金に拠出している。また、1982年放射性廃棄物政策法では、エネルギー長官が拠出金額の妥当性について毎年評価することを規定している。

DOEは、2008年にユッカマウンテン処分場での処分に基づいて評価を行い、放射性廃棄物基金への拠出金額が妥当であるとの判断を示していた。その後、DOEは、ユッカマウンテン計画を中止する方針を示した後、2010年に過剰、または不十分な拠出金額を徴収していると判断する合理的証拠はないなどとする覚書を示し、この覚書に基づいて拠出金額の変更をしないとする決定を示していた。この覚書では、具体的な処分費用の見積りや処分費用を賄うために必要とされる拠出金額などは示されていなかった。

NARUCなどは、訴訟において、DOEが高レベル放射性廃棄物の処分費用の評価を実施していないなどとし、1982年放射性廃棄物政策法に規定された義務を履行していないとしていた。また、ユッカマウンテン計画が中止されたため、処分計画は不確実で処分費用を見積ることができないとして、新たな処分計画の策定まで拠出金の徴収を停止するよう求めていた。

今回の連邦控訴裁判所の判決では、2010年にDOEが示した拠出金額に関する決定について法的に不適切であるとしたが、拠出金の徴収を停止することは時期尚早であるとしている。そのうえで、DOEに対して拠出金の妥当性の評価を実施するという法的な義務を6カ月以内に果たすよう指示している。

【出典】

【2013年1月22日追記】

エネルギー省(DOE)は2013年1月16日に、連邦控訴裁判所の指示に従い、放射性廃棄物基金への拠出金額の妥当性に関する評価報告書(以下「妥当性評価報告書」という。)を公表した。
エネルギー長官は、妥当性評価報告書で示された評価結果に基づいて、1982年放射性廃棄物政策法(1987年修正)の規定により連邦政府が負担する費用を賄うために徴収されている金額に過不足はなく、現時点で放射性廃棄物基金への拠出金額の変更は提案しないとしている。
妥当性評価報告書においては、DOEが2013年1月11日に公表した「使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物の管理・処分戦略」において示した処分システムの構成及びスケジュールを前提として用いており、地層処分場の操業開始は2048年と想定している。また、妥当性評価のための費用見積りでは、集中中間貯蔵施設のサイト選定、建設、操業、廃止措置等のための費用も考慮されている。

【出典】

【2013年2月1日追記】

全米公益事業規制委員協会(NARUC)は、2013年1月31日に、連邦控訴裁判所に対して、訴訟手続を迅速に再開し、放射性廃棄物基金への拠出金額の妥当性に関するエネルギー省(DOE)による決定を審理すること、DOEに対する拠出金の徴収停止の命令を求めることを内容とする申立書を提出した。
申立書において、2013年1月16日にDOEが公表した拠出金額の妥当性評価報告書は、検討で前提とされた「使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物の管理・処分戦略」が1982年放射性廃棄物政策法の規定に沿ったものではなく、今後の連邦議会の承認が必要であること、追加での拠出金の必要性が十分に示されていないことなどから、妥当性評価報告書には欠陥があり、拠出金の徴収は停止されるべきであるとしている。

【出典】


  1. 連邦控訴裁判所のうち、コロンビア特別区(D.C.)巡回区控訴裁判所が担当(米国の首都ワシントンD.C.地区における訴訟事件を取り扱う)。 []

2012年2月14日に、米国で2013会計年度1 の大統領の予算教書が連邦議会に提出され、大統領府管理・予算局(OMB)のウェブサイトで公表されるとともに、エネルギー省(DOE)のウェブサイトでDOEの予算要求資料が公表された。DOEの予算要求資料では、2012年1月26日に公表されたブルーリボン委員会の勧告への対応に関連した研究開発が含まれる「使用済燃料処分等プログラム」(UFD、Used Nuclear Fuel Disposition)について、5,966万8,000ドルが要求されたことが示されている。また、ユッカマウンテン処分場関連予算については要求されていない。

DOEの予算要求資料では、オバマ政権は連邦議会やステークホルダーと協力してブルーリボン委員会の勧告を十分に検討し、使用済燃料などの管理の実施シナリオを評価していくとしている。さらに、2012会計年度の歳出法に示されたように、6カ月以内に検討結果を連邦議会に対して報告するとしている(2011年12月20日追記参照)

DOEの予算要求資料では、ブルーリボン委員会の研究開発に関連した短期的な優先事項に基づいて、2012会計年度のUFDにおいて予算配分を調整しているとしており、以下のような活動を行っているとしている。

  • 標準的な輸送・貯蔵・処分コンテナの開発及び許認可のサポート
  • 処分場の地層の特性調査
  • サイトに依存しない地層処分に関する研究開発
  • 貯蔵オプション及びそれぞれの利点の評価
  • 有力なパートナーシップの仕組みを含め、使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物の代替管理方策の評価の開始
  • 使用済燃料の貯蔵の安全性に関連した課題へのDOEの評価能力の強化

また、2013会計年度の予算要求では、2012会計年度の活動を踏まえ、高レベル放射性廃棄物処分などに関連した活動では、以下に焦点を当てるとしている。

  • 集中中間貯蔵及び輸送の課題の評価(最初は廃止措置された原子炉サイトを対象)
  • 産業界と協力して使用済燃料管理アプローチの標準化
  • 使用済燃料貯蔵の長期化をサポートするため材料試験の実施
  • 使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物の安全輸送に関する全米科学アカデミー(NAS)レポートのレビューによって特定された実施作業の開始
  • 代替環境での地層処分の研究の開始(システムモデル化、天然バリア、人工バリア、設計概念の評価及び試験)

なお、ユッカマウンテン処分場の許認可申請書の審査を担当している原子力規制委員会(NRC)の予算要求資料では、2012会計年度に引き続き、2013会計年度の高レベル放射性廃棄物処分関連の予算要求はゼロとなっている。NRCは、2011年9月にユッカマウンテン処分場の許認可申請書の審査手続きを停止している。

【出典】

【2012年2月16日追記】

エネルギー省(DOE)は、2012年2月15日付けのプレスリリースにおいて、エネルギー長官がジョージア州のヴォーグル原子力発電所を訪問した際の発言の内容を公表した。この中でエネルギー長官は、ブルーリボン委員会の最終報告書での勧告の評価を行うとともに、勧告に基づいて使用済燃料などの長期管理戦略を策定するためのワーキンググループをDOE内に設置することを明らかにした。

なお、エネルギー長官の発言の中で、ヴォーグル原子力発電所の3・4号機は、2012年2月10日に原子力規制委員会(NRC)が建設・運転の一括許認可(COL)を発給したものであり、DOEは、融資保証、新たな原子炉の炉型(AP 1000)の承認においてサポートを行ったとしている。

【出典】

【2012年9月25日追記】

2012年9月22日、米国の連邦議会上院は、9月13日の下院での可決に引き続いて、2013会計年度2 のうち、2012年10月1日~2013年3月27日を対象とした継続歳出決議を可決した。これは、2012会計年度のエネルギー・水資源歳出法などを含む、2012会計年度の歳出法での予算と同レベルの歳出を認めるものである。継続歳出決議による予算では、原則として前年度予算と同率で比例配分され、特段の指定が無い限りは前年度で未計上の事業・プログラム等の実施は認められない。
2012会計年度のエネルギー・水資源歳出法の予算においては、エネルギー省(DOE)に対して、ブルーリボン委員会の最終報告書を受けた使用済燃料などの管理戦略の策定、「使用済燃料処分等プログラム」(UFD、Used Nuclear Fuel Disposition)が認められており、継続予算の下でも実施可能となる。
一方、原子力規制委員会(NRC)のユッカマウンテン処分場に係る許認可審査関連費用については、2012会計年度のエネルギー・水資源歳出法で予算が割り当てられていなかったため、継続予算においても予算はゼロとなる。

【出典】

【2012年11月8日追記】

1982年放射性廃棄物政策法(1987年修正)に基づいて高レベル放射性廃棄物処分に係る勧告等を連邦議会及びエネルギー長官に対して行う目的で設置された放射性廃棄物技術審査委員会(NWTRB)は、2012年10月17日に、NWTRBの全体会議を開催しているが、今般、エネルギー省(DOE)による「使用済燃料処分等プログラム」(UFD)の取組状況の資料が公開された。
DOEの資料によると、UFDにおける処分に関する研究開発の目標は、以下の3点とされている。

  • 実施可能な複数の処分オプションが存在しているという点についての確かな技術的根拠の提示
  • 一般的な条件での処分概念のロバスト性(頑健性)に対する信頼性の向上
  • ボアホール処分の概念を立証するための短期的な計画を策定すべきとする「米国の原子力の将来に関するブルーリボン委員会」(以下、「ブルーリボン委員会」という。)の勧告の評価

また、DOEの資料では、UFDの枠組みにおいて進められている研究開発として、以下の2点が示されている。

  • 一般的な条件での処分概念の開発(岩塩、結晶質岩、粘土/頁岩)
  • 共同研究開発の実施(スイス・モンテリ岩盤研究所及びグリムゼル試験サイト、韓国原子力研究所(KAERI)地下研究トンネル(KURT)における研究計画への参画、「熱-水-応力-化学連成モデルの開発・確証に関する国際共同プロジェクト」(DECOVALEX)の2012年春に開始された計画への参画)

なお、ブルーリボン委員会の最終報告書の公表後6カ月以内に策定するよう連邦議会が指示していた使用済燃料などの管理戦略については、現在、DOEで検討を実施中としている。

【出典】

【2013年3月26日追記】

米国の連邦議会は、2013年3月21日に、2013年包括・再継続歳出法を可決した。2013年包括・再継続歳出法は、既に可決している2012年10月1日~2013年3月27日を対象とした継続歳出決議を補うものとして、2013年9月30日までの2013会計年度全体に対して、2012会計年度のエネルギー・水資源歳出法などを含む、2012会計年度の歳出法での予算と同レベルの歳出を認めるものである。

2013年包括・再継続歳出法による予算は、原則として2012会計年度予算に計上されていた事業・プログラム等に同率で比例配分される。したがって、2012会計年度のエネルギー・水資源歳出法においてエネルギー省(DOE)に対して認められていた「使用済燃料処分等プログラム」(UFD、Used Nuclear Fuel Disposition)などは、2013年包括・再継続歳出法による予算の下でも実施可能となる。

【出典】


  1. 米国における会計年度は、前年の10月1日から当年9月30日までの1年間となっており、今回対象となっている2013会計年度の予算は2012年10月からの1年間に対するものである。
    []
  2. 米国における会計年度は、前年の10月1日から当年9月30日までの1年間となっており、本来、2013会計年度の予算は、2012年10月からの1年間に対するものである。しかし、今回のような継続歳出決議は、歳出法案が成立しないなどの場合、期限を切って予算を立てるために上下院で決議が行われる。 []