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米国

米国では、2015年2月2日に、2016会計年度1 の大統領の予算教書が連邦議会に提出され、大統領府管理・予算局(OMB)のウェブサイトで公表されるとともに、エネルギー省(DOE)のウェブサイトでDOEの予算要求資料が公表された。DOEは、使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物の管理・処分に係る「使用済燃料処分等(UNFD)プログラム」(UNFD、Used Nuclear Fuel Disposition)として、1億836万ドル(約117億円、1ドル=108円で換算)を要求している。ただし、ユッカマウンテン処分場関連予算の要求はない。

DOEの予算要求資料では、使用済燃料処分等(UNFD)プログラムとして、前年度までの「研究開発活動」(代替案を特定するための研究開発及び既存・将来の核燃料サイクルに係る放射性廃棄物処分等の研究開発)と「統合放射性廃棄物管理システムの設計に係る活動」の2分野に加え、「DOE管理の高レベル放射性廃棄物及び使用済燃料の代替処分オプションの検討に係る活動」が追加されている。なお、使用済燃料処分等(UNFD)プログラムの2016会計年度の予算要求額は、2015会計年度の歳出予算額と比較して3,686万ドル(約39億8,000万円)増加しており、DOEは、主な要因として超深孔処分のフィールド試験の開始などを挙げている。

2016会計年度の予算による実施事項のうち、使用済燃料処分等(UNFD)プログラムの「研究開発活動」については、7,536万ドル(約81億4,000万円)の予算要求額であり、以下の事項を行うとしている。

  • 産業界との協力による乾式実証キャスクの設計等
  • 産業界主導による高燃焼度燃料に係る乾式貯蔵の実証プログラムの支援等
  • 既存の輸送・貯蔵キャニスタ、貯蔵キャニスタの直接処分の技術的可能性
  • バリアの安定性等の評価のための熱力学データベース及びモデルの開発
  • 高燃焼度燃料の貯蔵及び輸送時における燃料や被覆管のモデル開発
  • 超深孔処分に係る掘削プロジェクトの地質学的情報等の評価(ボーリング孔のシーリング及び代替処分に係る廃棄物の標準設計の開発を含む)
  • 大口径の超深孔処分の可能性を実証するフィールド試験の開始(実験的なボーリング孔の掘削開始を含む)
  • 高レベル放射性廃棄物の坑道型地層処分などに関する結晶質岩、粘土層/頁岩(シェール)及び岩塩の主要な3岩種の評価(国際的なパートナーとの協力、フィールド試験を含む)
  • 高燃焼度燃料等の長期貯蔵及び輸送に係る技術的基盤の開発
  • 陸上・鉄道輸送時の燃料棒挙動の評価
  • 種々の処分関連の評価を支援する処分システムモデルと解析能力の開発
  • アイダホ国立研究(INL)の使用済燃料取扱い施設の更新

上記のうち、超深孔処分については、使用済燃料等の代替処分オプションの1つとしてDOEが調査研究を行っており、結晶質岩に5,000m以深のボーリング孔を掘削して、下部から2,000mの範囲に廃棄物を定置し、上部3,000mの適切な部分についてシーリングを行う処分概念が考えられている。2016年会計年度の予算においては、今後、応募によってフィールド試験のサイトを選定することとなっており、特性調査のためのボーリング孔の掘削を含めた試験が実施される予定となっている。

また、2016会計年度の予算による実施事項のうち、使用済燃料処分等(UNFD)プログラムの「統合放射性廃棄物管理システムの設計に係る活動」については、放射性廃棄物基金からの2,400万ドル(約25億9,000万円)を含む3,000万ドル(約32億4,000万円)の予算を要求している。本活動は、2013年1月にエネルギー省(DOE)が策定した「使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物の管理・処分戦略」(DOE戦略)を支援するものとされ、以下の事項を行うとしている。

  • 廃止措置された原子炉サイトからの使用済燃料を受け入れるパイロット規模の中間貯蔵施設に焦点を当てた、中間貯蔵実施計画の策定
  • 同意に基づくサイト選定プロセスのための計画策定の継続
  • パイロット規模の中間貯蔵施設への使用済燃料等の大規模な輸送の準備
  • 使用済燃料等の輸送に係る地域等との協働による輸送計画の策定
  • 使用済燃料の輸送を準備するための廃止措置された原子炉サイトの評価の拡充
  • 輸送キャスクなど輸送関連の調達に関する活動の継続
  • 廃棄物管理システムにおける標準化・統合化の可能性の同定と評価
  • 使用済燃料輸送・貯蔵・処分の解析リソースデータシステムのデータベースの拡充
  • パイロット規模の中間貯蔵施設の一般設計のための安全解析レポートの完成とNRCからの追加情報要求への準備

さらに、2016会計年度の使用済燃料処分等(UNFD)プログラムで新たに提案された「DOE管理の高レベル放射性廃棄物及び使用済燃料の代替処分オプションの検討に係る活動」では、将来の意思決定のための情報を提供するものとして、DOEが管理する高レベル放射性廃棄物及び使用済燃料の一部の代替処分オプションの検討を行うとしている。

2014年2月に地下施設で火災事故及び放射線事象が発生した廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)については、復旧に向けた活動が行われており 、復旧活動を支援するためとして、換気システム、排気立坑の更新等の費用を含め、約2億4,300万ドル(約262億円)の予算が要求されている。

なお、原子力規制委員会(NRC)については、ユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可申請書の審査を実施しているものの、予算要求資料においてユッカマウンテン処分場の審査に関する予算は計上されていない。

【出典】

 

【2015年4月3日追記】

米国のエネルギー省(DOE)は、「軍事起源の高レベル放射性廃棄物の独立した処分に関する報告書」(2015年3月)を公表し、DOEが管理している軍事起源の高レベル放射性廃棄物及び使用済燃料の処分について、連邦政府が処分する責任のある民間の原子力発電所から発生する使用済燃料等の処分場計画と切り離して実施するとの方針を示した。これに対して大統領は、2015年3月24日に、DOEによる本計画を法律に照らして是認するとの覚書を公表した。

1982年放射性廃棄物政策法第8条では、費用対効果、保健及び安全、規制、輸送、社会的受容性及び国家安全保障に関連する要因を評価し、軍事起源の高レベル放射性廃棄物の処分場の開発が必要であると大統領が判断した場合、民間から独立した処分場を計画することができると規定されている。今回の大統領による判断は、本法に沿った検討・評価と位置付けられる。

「軍事起源の高レベル放射性廃棄物の独立した処分に関する報告書」においては、DOEが開発する軍事起源の高レベル放射性廃棄物の処分場は、米国の原子力の将来に関するブルーリボン委員会の最終報告書、DOEの「使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物の管理・処分戦略」での方針に従って、段階的で、適応性があり、同意に基づくサイト選定プロセスにより立地を行うとの方針が示されている。また、早期に民間から独立した処分場を実現することにより、DOEの高レベル放射性廃棄物発生サイトでの貯蔵・処理・管理の費用の低減につながるとしている。

【出典】

 

【2015年5月7日追記】

米国の連邦議会下院は、2015年5月1日に、2016会計年度2 のエネルギー・水資源歳出法案を240対177(棄権14)で可決した。本法案では、ユッカマウンテン関連の放射性廃棄物処分予算として1億5,000万ドル(約179億円)、原子力規制委員会(NRC)のユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可手続の予算として5,000万ドル(約59.5億円)が割り当てられている。

2015年2月2日に公表されたエネルギー省(DOE)の予算要求では、2012年1月のブルーリボン委員会の最終報告書・勧告に基づいて2013年1月にDOEが策定した「使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物の管理・処分戦略」を実施に移すための予算として、使用済燃料処分等(UNFD)プログラムの「統合放射性廃棄物管理システムの設計に係る活動」については、放射性廃棄物基金からの2,400万ドル(約28億6,000万円)を含む3,000万ドル(約35億7,000万円)の予算を要求していた。しかし、今回下院で可決された2016会計年度の歳出法案では、ユッカマウンテン計画の中止に繋がる活動への歳出を禁じる条項が規定されている。

一方、ホワイトハウスは、下院で2016会計年度の歳出法案が採決される前の2015年4月28日に、本法案が成立した場合には拒否権を発動するとの意向を表明しており、その理由の一つとして、DOEのユッカマウンテン計画、NRCのユッカマウンテンの許認可申請の裁決手続への予算配賦等を挙げている。

米国では、1982年放射性廃棄物政策法において、エネルギー省(DOE)が1998年1月31日から民間の使用済燃料引取りを開始することが定められおり、原子力発電事業者との間で処分実施のための契約が締結されている。ユッカマウンテン計画の遅れから、DOEは使用済燃料の引取りを行えないため債務不履行状態にあり、推定債務額は226億ドル(約2兆6,900億円)になることが、2016会計年度の下院歳出委員会報告書で指摘されている。

なお、2014年2月に地下施設での火災事故と放射線事象が発生して復旧に向けた調査・対応が行われている廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)については、2016会計年度の歳出法案の軍事環境クリーンアップの中で、約2億8,586万ドル(約340億円)の予算が復旧に向けた活動のために計上されている。

【出典】

 

【2015年5月25日追記】

米国の連邦議会上院の歳出委員会は、2015年5月21日に、2016会計年度3 のエネルギー・水資源開発歳出法案(以下、「歳出法案」という)を承認し、上院本会議に提出した。本歳出法案では、使用済燃料の中間貯蔵について、前年度まで上院で検討されていた歳出法案と同様に、パイロット規模の中間貯蔵施設の開発等をエネルギー長官に命じる規定に加え、テキサス州やニューメキシコ州で提案されている民間施設でエネルギー省(DOE)が使用済燃料等を貯蔵することを認める規定が置かれている。なお、本歳出法案は、2015年5月1日に下院で可決された2016会計年度エネルギー・水資源開発歳出法案を、すべて上院案に置き換える形で修正したものであり、上院案にはユッカマウンテン関連の予算及び記述は残されていない。

今回上院本会議に提出された歳出法案に織り込まれた中間貯蔵関連の条項では、以下のような内容が規定されている。

集中貯蔵のパイロットプログラム(歳出法案第306条)

  • 使用済燃料等を中間貯蔵するため、政府または民間所有の1つ、または複数の集中貯蔵施設の許認可取得、建設、操業のためのパイロットプログラムを民間パートナーと実施することをエネルギー長官に許可
  • エネルギー長官は、歳出法施行後120日以内に、集中貯蔵施設の建設許可取得や輸送等の協力協定についてのプロポーザルを公募
  • 集中貯蔵施設の立地決定前に、立地サイト周辺等での公聴会の開催、地元州知事、地方政府等との書面による同意協定締結をエネルギー長官に義務付け
  • エネルギー長官は、上記プロポーザル公募から120日以内に、推定費用、スケジュール等を含むパイロットプログラム計画を連邦議会に提出
  • 本活動に係る資金の放射性廃棄物基金からの支出を許可

民間の中間貯蔵施設での貯蔵(歳出法案第311条)

  • エネルギー長官が保有、または引取義務を有する使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物を、原子力規制委員会(NRC)が許可した施設で貯蔵する契約を締結する権限を承認
  • 使用済燃料等の所有権は、本条に基づく貯蔵のための引取り時にエネルギー長官に移転
  • エネルギー長官と原子力発電事業者等との間で締結されている使用済燃料引取り等に係る契約を改定することを許可

米国では、1982年放射性廃棄物政策法において、エネルギー省(DOE)が1998年1月31日から民間の使用済燃料の引取りを開始することが定められおり、原子力発電事業者との間で処分実施のための契約が締結されている。今回上院本会議に提出された歳出法案の第311条は、この契約を改定し、処分ではなく貯蔵のために使用済燃料を引き取ることを認めるものである。

今回の歳出法案と同時に公開された上院歳出委員会報告書では、「使用済燃料処分等プログラム」(UNFD)の研究開発活動の予算として6,400万ドル(約76億2,000万円)が、上記のパイロット規模の中間貯蔵施設開発や民間貯蔵施設での貯蔵等を実施するための予算として3,000万ドル(約35億7,000万円)が計上されている。ただし、ユッカマウンテン処分場関連の歳出予算はゼロとなっており、原子力規制委員会(NRC)でのユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可手続の予算も割り当てられていない。

また、2014年2月に発生した火災事故及び放射線事象 の復旧に向けた活動が行われている廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP) については、約2億4,332万ドル(約290億円)の予算が割り当てられている。上院歳出委員会報告書では、予算問題による復旧遅延が生じることがないよう詳細な予算説明がDOEの予算要求書で示されていないことに不満があるとした上で、エネルギー長官が、安全な操業を予定通り再開するために適切な対応を取ること、WIPP復旧計画の詳細な予算を半年ごとに委員会に提出することを求めている。

なお、テキサス州で中間貯蔵施設の建設を行う意向を2015年2月に正式に表明したウェイスト・コントロール・スペシャリスト(WCS)社は、上院歳出委員会エネルギー・水資源小委員会で歳出法案が採択された2015年5月19日に、使用済燃料の貯蔵に係る民間事業者との契約を認めた規定は、テキサス州での使用済燃料の中間貯蔵施設の操業に向けた第一歩を超党派で実現したものとして、歓迎するメッセージをWCS社ウェブサイトに掲載している。

【出典】

 

【2015年10月2日追記】

米国の連邦議会は、2015年9月30日に、2016会計年度4 のうち、2015年10月1日から2015年12月11日を対象とした継続歳出法案を可決した。これは、エネルギー・水資源開発の分野を含めて、2015会計年度の予算を規定した包括歳出・継続予算法での予算と同レベルの歳出について、2015年10月1日から2015年12月11日も認めるとするものである。継続歳出法案による予算では、原則として前年度予算と同率で比例配分され、特段の規定がない限り、前年度で未計上の事業・プログラム等の実施は認められない。

今回可決された2016会計年度の継続歳出法案では、ユッカマウンテン処分場関連や廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)関連、中間貯蔵施設関連を含め、放射性廃棄物貯蔵・処分に関する特別な規定はない。

【出典】

 

【2015年12月24日追記】

米国の連邦議会は、2015年12月18日に、2016会計年度包括歳出法案を可決した。高レベル放射性廃棄物関連の予算については、本包括歳出法案の条文には記載されていないが、2016会計年度包括歳出予算法案説明文書において、「使用済燃料処分等プログラム」(UNFDプログラム)の歳出予算として8,500万ドル(102億円、1ドル=120円で換算)が計上されており、このうち「研究開発活動」については6,250万ドル(75億円)の歳出予算とされ、残りの「統合放射性廃棄物管理システム」についても予算要求に沿った形での継続が示されている。

ユッカマウンテン計画については、2016会計年度包括歳出法案及び説明文書に記述はなく、ユッカマウンテンでの高レベル放射性廃棄物処分場の開発や許認可手続に関する予算は与えられておらず、放射性廃棄物基金からの支出はゼロとされている。ただし、連邦議会下院の歳出委員会が公表した2016会計年度包括歳出予算法案(エネルギー・水資源開発)要約資料では、2015会計年度と同様に、政治的事項の一つとして、「ユッカマウンテンの将来利用の可能性を維持するための前年予算の継続」が示されている。

また、2016会計年度包括歳出法案説明文書では、放射線事象などにより操業停止している廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)について、復旧の取り組みを支援するためとして、DOE予算要求額より約2割多い2億9,998万ドル(約360億円)の歳出予算が示されている。

なお、2016会計年度の歳出予算については、会計年度が開始される2015年10月1日までに歳出法が制定されず、2015年12月11日までの継続予算が執行されていたが、2016会計年度包括歳出法の制定手続の遅れから、さらに2度にわたる継続予算決議が行われ、2015年12月22日までの継続予算の執行が承認されていた。

【出典】


  1. 米国における会計年度は、前年の10月1日から当年9月30日までの1年間となっており、今回対象となっている2016会計年度の予算は2015年10月1日からの1年間に対するものである。 []
  2. 上記の1.を参照。 []
  3. 上記の1.を参照。 []
  4. 上記の1.を参照。 []

米国テキサス州のアンドリュース郡の理事会(commissioners court)は、2015年1月20日に、低レベル放射性廃棄物のWCSテキサス処分場のサイトにおいて、使用済燃料の中間貯蔵施設を建設するとのウェイスト・コントロール・スペシャリスト(WCS)社の計画を支持することを決議した。WCS社は、2014年12月1日に、中間貯蔵施設の建設計画に関する地元向けの説明会において、地元の支持が得られることを前提として、2015年に原子力規制委員会(NRC)に対して使用済燃料の中間貯蔵施設の建設許可申請を行うことを表明していた。

アンドリュース郡の理事会決議では、中間貯蔵施設の建設計画を支持する理由として、以下の点を挙げている。

  • WCSテキサス処分場は、170名以上の雇用に加え、低レベル放射性廃棄物の処分料金の5%と設定された収入が今後も年間3百万ドル(約3億2,000万円)見込まれるなど、経済効果が大きい
  • 情報提供や意思決定プロセスへの参加を含め、WCS社が住民や環境への責任を果たしてきている
  • 使用済燃料の集中中間貯蔵施設は、「米国の原子力の将来に関するブルーリボン委員会」(以下「ブルーリボン委員会」という)からも迅速な開発が勧告され、テキサス州においても個々の原子力発電所での貯蔵よりも効率的などと評価されている

また、理事会決議においては、テキサス州政府や州選出の連邦議会議員に対して、中間貯蔵施設の建設計画への支持・承認の表明などの施設建設に向けて関係組織等が協力すること、及びアンドリュース郡が連邦政府から施設立地に係るインセンティブを受けられるよう支援することを要請している。

米国では、1982年放射性廃棄物政策法(1987年修正)において、高レベル放射性廃棄物及び使用済燃料の処分は連邦政府の責任であるとされており、同法の規定に基づいてエネルギー省(DOE)が原子力発電事業者らと契約を締結し、1998年1月31日からDOEが民間の使用済燃料の引き取りを開始することが決められている。しかし、地層処分場の開発が遅れているため、DOEは使用済燃料の引き取りを行っておらず、原子力発電事業者からの訴訟により連邦政府による賠償金支払いが行われている。

ブルーリボン委員会の勧告を受けて2013年1月に公表されたDOEの「使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物の管理・処分戦略」(以下「DOE戦略」という)、及び連邦議会上院で検討されていた「2013年放射性廃棄物管理法」の法案では、既に廃止措置された原子力発電所サイトで貯蔵されている使用済燃料を対象として、パイロット規模の中間貯蔵施設を直ちに建設し、DOEが引き取りを開始することが提案されていた。また、2013年放射性廃棄物管理法の法案及びDOE戦略では、中間貯蔵施設の建設に際しては、同意に基づくサイト選定プロセスにより、立地地域への便益の供与を含めた協定の締結を行うものとされていた。なお、2013年放射性廃棄物管理法の法案では、パイロット規模の中間貯蔵施設は、民間による建設も可能とされていた。

一方、1982年放射性廃棄物政策法(1987年修正)では、エネルギー長官に対して、監視付き回収可能貯蔵(MRS)施設1 と呼ばれる中間貯蔵施設の立地・建設・操業を行う権限を認めているが、地層処分施設の建設の許認可が発給されるまで中間貯蔵施設の建設を開始できないことが規定されている。米国では、現政権によるユッカマウンテン計画の中止の方針などもあって処分場建設計画は遅れているため、現時点でDOEが民間の使用済燃料の引き取りを行うためには、1982年放射性廃棄物政策法(1987年修正)のさらなる修正が必要とされている。

今回の中間貯蔵施設の建設が予定されているWCSテキサス処分場は、1985年低レベル放射性廃棄物政策修正法に基づいて、テキサス州及びバーモント州で構成されるテキサス・コンパクトの低レベル放射性廃棄物処分場として2011年11月10日に操業が開始された。現状では、他の州やDOEからの低レベル放射性廃棄物も受入れており、2014年には処分容量の拡大とともに劣化ウランの処分も許可されている。また、WCS社は、テキサス州の低レベル放射性廃棄物関連規則に関して、連邦政府が処分責任のあるクラスCを超える低レベル放射性廃棄物(GTCC廃棄物)について、処分を可能とするための規則の修正を州当局に求めている。

なお、今回のアンドリュース郡理事会の決議に対し、原子力エネルギー協会(NEI)は、2015年1月28日のニュースリリースにおいて、同郡の理事会決議の概要とともに、WCS社が使用済燃料の中間貯蔵施設の建設・操業許可申請の意向通知の提出を近日中に行う予定であることなどを伝えている。

【出典】


  1. 監視付き回収可能貯蔵(MRS、Monitored Retrievable Storage)施設は、1982年放射性廃棄物政策法(1987年修正)において、高レベル放射性廃棄物及び使用済燃料を監視付きの回収可能性を有する中間貯蔵施設に長期貯蔵することが、安全・確実な管理の選択肢であるとし、エネルギー長官に中間貯蔵施設の設置に係る権限を与えている。http://energy.gov/downloads/monitored-retrievable-storage-background []

米国の原子力規制委員会(NRC)は、2015年1月29日に、エネルギー省(DOE)が2008年6月に提出したユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可申請書について、NRCによる安全審査の結果をまとめた安全性評価報告(SER)の第2分冊及び第5分冊を公表した。これにより、以下の表のように、5分冊から成るSERの全分冊が完成した。

安全性評価報告(SER)の分冊構成・公表日
分冊名 公表日
第1分冊「一般情報」 2010年8月23日
第2分冊「閉鎖前の処分場の安全性」 2015年1月29日
第3分冊「閉鎖後の処分場の安全性」 2014年10月16日
第4分冊「管理上及びプログラム上の要求事項」 2014年12月18日
第5分冊「許認可仕様」 2015年1月29日

今回公表された安全性評価報告(SER)のうち、第2分冊においては、DOEが許認可申請した処分場設計は、建設認可へのいくつかの付帯条件を前提として、処分場が閉鎖されるまでの期間における性能目標・要件を規定したNRCの連邦規則(10 CFR §63.111「閉鎖に至るまでの地層処分場操業エリアに関する性能目標」及び10 CFR Part 63サブパートK「閉鎖前の公衆衛生及び環境基準」)に適合しているとの結論が示されている。

安全性評価報告(SER)第5分冊においては、ユッカマウンテン処分場の許認可仕様として、建設認可の付帯条件を整理した上で、ユッカマウンテン処分場の建設認可に係るDOEの許認可申請書は、土地の所有権及び水利権に関する要求事項を除いては、NRCの連邦規則の要求事項を満足しているとしている。また、第5分冊では、SER全体にわたる安全審査の結論が示されている。

なお、NRCのプレスリリースでは、安全性評価報告(SER)の完成は、NRCが処分場建設を承認するか、承認しないかについてのNRCの決定を示すものではなく、許認可手続のために現在利用可能な額を超える予算が与えられた上で、DOEの環境影響評価書の補足(SEIS)、裁決手続における争点のヒアリング、及びNRCの委員による審査の手続きが行われることにより、許認可発給に係る最終的な決定が可能となるとしている。

ユッカマウンテン処分場に係る安全性評価報告(SER)について、NRCは、2010年8月にSERの第1分冊「一般情報」を公表した後、予算上の制約を理由として、ユッカマウンテン処分場の建設認可に係る審査手続を2011年9月から停止していた。その後、2013年8月13日の連邦控訴裁判所判決によって審査手続の再開を命じられ、2013年11月18日に安全性評価報告(SER)を完成することなどを決定して作業が行われ、SERの第3分冊は2014年10月16日に、第4分冊は2014年12月18日に公表されていた。

【出典】

 

【2015年3月5日追記】

米国の原子力規制委員会(NRC)は、2015年3月4日に、ユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可申請書の安全審査について、今後の活動に関するNRCスタッフに対する指示文書等を公表した。NRCの許認可申請書の安全審査については、安全性評価報告(SER)の完成、補足環境影響評価書(SEIS)の策定、関連文書データベースの整備などが2013年11月18日に決定されていたが、補足環境影響評価書(SEIS)に係る作業については、エネルギー省(DOE)がSEISを策定しない ことによる影響について評価を行うこととされていた。今回公表された指示文書では、安全性評価報告(SER)の全5分冊の完成後の2015年2月3日付けで、以下の活動方針が示されている。

  • 補足環境影響評価書(SEIS)の策定、公表

    • エネルギー省(DOE)が2002年と2008年に策定した環境影響評価書(EIS)について、NRCは、2008年に確認した地下水関連の問題に対応する補足環境影響評価書(SEIS)を策定する。
    • 補足環境影響評価書(SEIS)策定の意向通知を連邦官報で告示後、約6カ月でドラフト補足環境影響評価書を公表してパブリックコメントを開始し、その後、パブリックミーティングを実施した上で、12~15カ月後に最終の補足環境影響評価書(SEIS)を公表する。
ユッカマウンテン補足環境影響評価書(SEIS)のスケジュール(2月開始の場合)
実施事項 予定
補足環境影響評価書(SEIS)策定の意向通知を官報告示 2015年2月
ドラフト補足環境影響評価書(SEIS)を公表し、パブリックコメント開始 2015年8月
NRC本部とネバダ州でパブリックミーティング開催 2015年9月
パブリックコメント締切 2015年10月
最終の補足環境影響評価書(SEIS)を公表 2016年5月
  • 安全性評価報告(SER)の総括に係る活動

    • 安全性評価報告(SER)の準備に使用した文書のアーカイブ化を含めた文書の維持・管理
    • 安全性評価報告(SER)の策定における「ユッカマウンテン・レビュープラン」(NUREG-1804)の使用、NRCの連邦規則10 CFR Part 63「ネバダ州ユッカマウンテン地層処分場での高レベル放射性廃棄物の処分」の実施に係る報告など、許認可手続で得られた教訓に関する報告
  • 許認可支援ネットワーク(LSN)(詳細はこちら)に登録されていた文書のNRCデータベース(ADAMS)における公開
    • 現在ADAMSの非公開エリアに登録されているLSN文書を、検索機能が利用可能となる形で公開

NRCによるユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可申請書の安全審査は、歳出予算の未使用残高の範囲内で行われているが、NRCが利用可能な金額の約1,350万ドル(約14.6億円)に対し、今回示された活動をすべて実施した場合の費用額は約1,290万ドル(約13.9億円)と見積られている。なお、費用見積には不確実性があることから、安全性評価報告(SER)の策定から得られた教訓に関する報告は、補足環境影響評価書(SEIS)のパブリックコメントの締切まで実施しないこととされている。

また、NRCは、連邦議会の関連委員会の指示により、ユッカマウンテン許認可手続に係る月次状況報告書を提出することとされているが、次の月次報告書の提出後に、連邦議会の関連委員会の承諾が得られれば、状況報告は四半期毎に報告することに変更するとしている。

【出典】

 

【2015年3月13日追記】

米国の原子力規制委員会(NRC)は、2015年3月12日に、ユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可申請書の審査に関して、補足環境影響評価書(SEIS)の策定に係る意向通知を連邦官報に掲載した。NRCは、2015年夏後半に補足環境影響評価書(SEIS)のドラフトを公表してパブリックコメントを開始し、パブリックコメントの期間中に合計3回(ネバダ州で2回、メリーランド州のNRC本部で1回)のパブリックミーティングを実施した上で、12~15カ月後に最終の補足環境影響評価書(SEIS)を公表する予定としている。

補足環境影響評価書(SEIS)は、処分場サイトにおける主要な帯水層に対して、処分場から放出される物質が地下水に到達する可能性及びその影響などを評価するものである。エネルギー省(DOE)が2008年の許認可申請時に提出した環境影響評価書(EIS)に対しては、NRCが地下水関連の問題点を指摘していたが、補足環境影響評価書(SEIS)をNRCが策定することで自らの指摘に対応することになる。なお、補足環境影響評価書(SEIS)は、DOEがNRCの指摘を踏まえて改定した技術報告書「ネバダ州ユッカマウンテンでの使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物処分のための地層処分場での閉鎖後の地下水影響の解析(改定版)」を反映して策定されることとなる。

【出典】

 

【2015年8月17日追記】

米国の原子力規制委員会(NRC)は、2015年8月13日に、ユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可申請書の審査に関して、処分場から放出される物質が地下水に到達する可能性及びその影響などを評価した補足環境影響評価書(SEIS)のドラフトを公表した。これは、エネルギー省(DOE)が2008年の許認可申請時に提出した環境影響評価書(EIS)について、NRCが地下水関連の問題点を指摘したものであるが、NRC自らが補足環境影響評価書(SEIS)を検討し、放射線学的にも非放射線学的にも環境への影響は小さいとの結論を示している。

NRCは、2015年8月21日付けの連邦官報で補足環境影響評価書(SEIS)のドラフトの公表が公示された以降、パブリックコメントを開始するとしている。また、パブリックコメントの期間中、2015年9月にメリーランド州のNRC本部、ネバダ州のラスベガス及びナイ郡でパブリックミーティングを実施するとともに、2015年10月初めの電話会議を通じて意見募集等を行うとしている。

NRCは、提示されたコメントに基づいて、必要に応じてドラフトの補足環境影響評価書(SEIS)を改定し、2016年初めに最終版の補足環境影響評価書(SEIS)を公表するとしている。

【出典】

 

【2015年8月24日追記】

米国の原子力規制委員会(NRC)は、2015年8月21日付けのプレスリリース及び連邦官報において、ユッカマウンテン処分場に関する補足環境影響評価書(SEIS)のドラフトの公表とともに、パブリックコメントの募集を2015年8月21日から2015年10月20日までの期間で実施することを公表した。

プレスリリース及び連邦官報の告示では、パブリックコメントの期間中のパブリックミーティングとして、2015年9月3日にメリーランド州のNRC本部、2015年9月15日にネバダ州ラスベガス、2015年9月17日にネバダ州ナイ郡アマルゴサバレーで開催するとともに、2015年10月15日に電話会議を開催することも示されている。また、プレスリリースにおいては、NRCのパブリックミーティングの予定一覧において、今後、詳細を掲載することが示されている。

【出典】

 

【2015年12月17日追記】

米国の原子力規制委員会(NRC)の委員会秘書室(SECY)及び原子力安全・許認可委員会パネル(ASLBP)は、2015年12月1日付けのNRC委員宛文書において、ユッカマウンテン処分場の許認可手続に関して、過去に許認可支援ネットワーク(LSN)(詳細はこちら)に登録されていた文書(以下「LSN文書」という。)の公開作業を開始することを報告した。LSN文書は、ユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可申請書の審査再開時に、NRCデータベース(ADAMS)の非公開エリアに登録する作業が行われたが、今回、ADAMSの公開エリアに移し、検索機能が利用可能となる形で公開する作業を開始するものである。

LSN文書の公開については、2015年2月3日の指示文書において、補足環境影響評価書(SEIS)のパブリックコメント募集が終了するまでは作業を開始しないこととされていた。2015年12月1日付けのNRC委員宛文書では、補足環境影響評価書(SEIS)の策定及び安全性評価報告(SER)の総括に係る活動の費用が推定費用を超えないこと、及びLSN文書の公開に係る作業に十分な予算が残されていることを確認したとしている。LSN文書の公開に係る作業は、2016年9月までに終了の見込みとされている。

なお、2015年8月21日に公表されたドラフト補足環境影響評価書(SEIS)に対するパブリックコメント募集については、コメント募集期間が当初の2015年10月20日から1カ月間延長され、2015年11月20日に締め切られている。

【出典】

 

【2016年8月22日追記】

米国の原子力規制委員会(NRC)は、2016年8月19日に、ユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可手続に関して、過去に許認可支援ネットワーク(LSN)(詳細はこちら)に登録されていた370万点近くの文書(以下「LSN文書」という)について、NRCのデータベース(ADAMS)において公開したことを公表した。ユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可手続では、裁決手続による争点のヒアリングを行うとして、299の争点の有効性が承認されていたが、2011年9月に裁決手続が停止された際にLSNも閉鎖されていた

今回NRCのADAMSデータベースにおいて公開された新たなLSNライブラリには、強化された検索機能やオンラインの利用ガイドも備えられている。なお、ADAMSデータベースにも検索機能が備わっているが、LSN文書の検索は独立した専用のページから行う形とされている。

LSN文書の公開は、2013年8月13日の連邦控訴裁判所の判決を受け、ユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可申請書の審査の再開への対応の一つとしてNRCが決定したものである。LSN文書の公開のための作業は、2015年12月から開始され、2016年9月までに終了の見込みとされていた。

【出典】

米国の原子力規制委員会(NRC)は、2014年12月18日に、エネルギー省(DOE)が2008年6月に提出したユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可申請書について、処分場の管理上及びプログラム上の要求事項に関する審査結果をまとめた安全性評価報告(SER)の第4分冊「管理上及びプログラム上の要求事項」を公表した。NRCのプレスリリースにおいて、NRCは、DOEの許認可申請書はNRCの連邦規則(10 CFR Part 63「ネバダ州ユッカマウンテン地層処分場での高レベル放射性廃棄物の処分」)における管理上及びプログラム上のほとんどの要求事項を満たしているが、土地の所有権と水利権に関する規則の要求事項は満たしていないとしている。また、建設認可の付帯条件として、将来において安全上の疑問を解決するために研究開発プログラムを実施した場合について、NRCへの報告義務が提案されている。

ユッカマウンテン処分場に係る安全性評価報告(SER)は、5分冊で構成されている 。NRCは、2010年8月にSERの第1分冊「一般情報」を公表した後、SER策定作業を停止していた。しかし、2013年8月13日の連邦控訴裁判所判決を受けて、2013年11月18日にSERの完成方針を決定し、2014年10月16日にはSER第3分冊「閉鎖後の処分場の安全性」を公表している。今回公表されたSER第4分冊では、安全上の疑問を解決するための研究開発プログラム、性能確認プログラム、管理システムが評価対象とされている。

「性能確認プログラム」は、処分場の性能目標の遵守を評価する際に使用された仮定、データ及び解析の適切さを評価するため、処分サイトなどで試験、実験、解析を行うものであり、長期にわたる地層処分場の性能評価における不確実性に対応するための高レベル放射性廃棄物処分に独自の要件である。性能確認プログラムは、サイト特性調査の段階から開始され、地質工学及び設計パラメータの確認、設計試験、廃棄物パッケージのモニタリングなどによって性能評価の有効性を確認し、実質的に処分場の閉鎖の判断のための情報を提供するものである。10 CFR Part 63においては、「地層処分の設計は、廃棄物の定置期間中及びその後の期間を通じて、性能確認プログラムで得られた情報に関するNRCの審査が完了するまでの期間にわたり、廃棄物の回収可能性が維持されるものでなければならない」と規定されている。

なお、今回公表された安全性評価報告(SER)第4分冊において、10 CFR Part 63の要求事項を満たしていないと指摘された土地の所有権と水利権の取得については、それぞれ連邦議会による法律制定とネバダ州による許可が必要となる。

安全性評価報告(SER)の分冊構成・公表日

分冊名 公表日
第1分冊「一般情報」 2010年8月23日

第2分冊「閉鎖前の処分場の安全性」

(今後公表予定)

第3分冊「閉鎖後の処分場の安全性」

2014年10月16日

第4分冊「管理上及びプログラム上の要求事項」

2014年12月18日

第5分冊「許認可仕様」

(今後公表予定)

【出典】

米国の原子力規制委員会(NRC)は、2014年10月16日に、エネルギー省(DOE)が2008年6月に提出したユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可申請書について、「閉鎖後の処分場の安全性」に関する審査結果をまとめた安全性評価報告(SER)の第3分冊を公表した。NRCのプレスリリースでは、第3分冊で評価対象としているDOEの処分場設計は、高レベル放射性廃棄物を環境から隔離する多重バリアの構成などのNRC連邦規則(10 CFR Part 63サブパートE)に規定された閉鎖後の性能目標、並びに10 CFR Part 63サブパートLの個人防護・人間侵入・地下水保護の基準を満たしているとしている。

ユッカマウンテン処分場に係る安全性評価報告(SER)は5分冊で構成されるが、NRCは、2010年8月にSERの第1分冊「一般情報」を発行した後、予算問題を理由として、ユッカマウンテン処分場の建設認可に係る審査手続を2010年10月から停止していた。その後、2013年8月13日の連邦控訴裁判所判決によって審査手続の再開を命じられ、2013年11月18日には安全性評価報告(SER)を完成することなどの審査再開による実施事項を決定し、SERの第2分冊から第5分冊の作業が行われていた。SER第3分冊は2014年11月6日の公表予定とされていたものであり、残りの分冊も2014年12月中に完成する予定が示されている

なお、NRCのプレスリリースにおいて、安全性評価報告(SER)第3分冊の公表は、NRCが処分場建設を承認するか否かを示唆するものではなく、許認可手続のために現在利用可能な額を超える予算が与えられた上で、SER全分冊の完成、DOEの環境影響評価書の補足(SEIS)、原子力安全・許認可委員会(ASLB)による裁決手続における争点のヒアリング、及びNRCの委員による審査が行われて初めて、許認可発給に係る最終的な決定が可能となることを指摘している。

今回の安全性評価報告(SER)第3分冊の公表に対する反応として、ユッカマウンテンの許認可手続にも参加している原子力エネルギー協会(NEI)は、SER第3分冊の公表は許認可手続の重要なマイルストーンであるとして歓迎した上で、許認可手続の次の段階に進むためにはDOEの積極的な参加が必要として、連邦議会による許認可手続予算の確保と現政権による処分場プログラムの再構築を求めるとしている。また、連邦議会の下院エネルギー・商務委員会の委員長や上院エネルギー天然資源委員会の少数党最上席議員からも同様に歓迎のプレスリリースが出されている。一方、ユッカマウンテンの地元のネバダ州原子力プロジェクト室からは、許認可手続の流れの外で一部のSERのみを公表することは間違った印象を与えること、今回公表されたSERでは、NRCが既に認めている200以上の争点が適切に対応されているかが不明などとの懸念を表明するニュースリリースが出されている。

【出典】

米国のエネルギー省(DOE)は、2014年9月30日に、廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)に関する復旧計画を公表した。米国の軍事起源のTRU廃棄物の地層処分場であるWIPPは、DOEがニューメキシコ州カールスバッド近郊に設置・操業を行っていたが、2014年2月に発生した火災事故及び放射線事象に対応するため、処分場の操業は停止され、今なお事故調査が進行中である。今回公表された復旧計画は、WIPPの操業を再開するための計画と位置づけられ、復旧戦略、スケジュール及び費用が示されており、この中で、WIPPの操業の再開は2016年第1四半期としている。

WIPPの復旧計画では、復旧戦略の重要な要素として以下の7項目が示されている。

1.安全性
安全性は最優先されるものであり、火災事故及び放射線事象の事故調査委員会(AIB)の事故調査報告書で指摘された要改善事項を踏まえて安全文書を見直し、それらが実施された時点で操業を再開する。復旧は確実に進める。

2.規制遵守
施設の変更を伴う復旧活動については、規制当局であるニューメキシコ州環境省(NMED)及び環境保護庁(EPA)により確立された手続きに従う。
NMEDからは、火災事故及び放射線事象の後、地上施設の検査等の遵守に関する命令、放射線事象に関連した廃棄物の取扱等に関する規則の変更命令、一部の廃棄物パッケージの隔離計画策定命令が出されており、復旧に向けた許可の変更とともに、NMEDの承認が必要となる。
また、DOEとEPAは、1995年に、「有害大気汚染物質の国家排出基準」(40 CFR Part 61)の遵守に係る覚書(MOU)を交わしているほか、復旧活動で処分場の長期的性能に影響するものは、現在進められている5年ごとの適合性再認定に織り込まれることになる。

3.除染
除染はWIPP復旧計画の重要な要素となる。WIPPでは、第7処分室、排気坑道及び排気立坑の汚染が確認されているが、他の汚染箇所及び汚染濃度は今後確認が必要である。復旧計画では、技術的、コスト的、またはスケジュール的に困難な除染は行わず、クリーンな区域と汚染区域を分離する戦略が採られており、今後のWIPPの操業のあらゆる面に影響が生じる。

4.換気
地下施設での安全な操業のために換気能力の強化は重要となる。進行中のフィルター強化に続いて、補助的な換気システムを整備した上で、最終的には新排気立坑建設を含む新たな換気システムにより、以前のWIPPの換気能力を回復する。

5.鉱山安全性と地下施設の居住性
作業員の安全と健康を確保するため、放射線区域の確認・明示、機器の整備等を含め、鉱山安全性と地下施設内の居住性を改善する。

6.作業員の再訓練
復旧活動の費用対効率の最大化とWIPP作業チームの長期的任務達成のため、従来の作業員を最大限活用し、事故調査委員会(AIB)に指摘された問題点を含めて再訓練を行い、より複雑化するWIPPでの操業に対応する。

7.受入れ廃棄物の管理
放射線事象の原因となったロスアラモス国立研究所(LANL)からの廃棄物パッケージと同じストリームの硝酸塩を含む廃棄物パッケージは、WCSテキサス処分場で厳重に貯蔵されている。LANLを含むDOEの国立研究所からは、今後もTRU廃棄物が輸送されるが、同じ特性を持った廃棄物パッケージは無いことが確認されている。

なお、放射線事象に繋がった廃棄物パッケージの破損の原因については、現在も確認作業中であり、事故調査委員会(AIB)の事故調査報告書(フェーズ2)は2014年の終わりに出されることが見込まれている。その後、DOEが技術評価チームでの検討を実施することにしており、復旧活動に影響するような新たな情報が得られた時点で復旧計画を変更することが予定されている。

復旧計画では、WIPPの操業を再開するための費用は約2億4,200万ドル(約237億円)と見積られている。さらに、WIPPを完全な操業状態まで回復するためには、新規の恒久的な換気システム及び排気立坑が必要であり、さらに約7,700~3億900万ドル(約75~303億円)が必要になるとしている。

【出典】

 

【2015年4月8日追記】

米国のエネルギー省(DOE)は、2015年3月26日に、1本の廃棄物ドラムが放射線事象の原因とする評価結果を示した「廃棄物隔離パイロットプラント技術評価チーム報告書」(2015年3月17日)を公表した。技術評価チームは、廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)で2014年2月14日に発生した放射線事象について、事象発生のメカニズム、化学反応を評価することを目的として、DOEの国立研究所に所属する6人の技術的専門家から構成されている。

技術評価チーム報告書の要旨では、サバンナリバー国立研究所(SRNL)が中心となり、SRNL、ローレンスリバモア国立研究所(LLNL)、オークリッジ国立研究所(ORNL)、パシフィックノースウェスト国立研究所(PNNL)及びサンディア国立研究所(SNL)の関連分野の専門家で技術評価チームを組織したこと、放射性物質の漏洩事象の理解のために過去のデータのレビュー、サンプルの採取・分析、研究所での試験、コンピュータ計算を行ったことが示されている。

技術評価チームの評価結果として、ロスアラモス国立研究所(LANL)から運び込まれた廃棄物ドラム番号68660について、化学的に不適合な内容物と廃棄物ドラム中の物質配置の物理的な条件との組合せにより、発熱化学反応が熱暴走を引き起こしたとしている。

技術評価チームの評価結果を導出する上での重要な判断内容として、以下の5項目が示されている。

  • 廃棄物ドラム番号68660の内容物は、化学的に不適合である
  • 廃棄物ドラム番号68660は、内部の化学反応の結果として破損しているが、化学反応によって熱、並びに、ドラムのベント及びシールを超えるようなガスが発生している。
  • 廃棄物ドラム番号68660は、WIPPでの放射能汚染の発生源である。
  • 熱暴走の開始は内部的なものであり、廃棄物ドラム番号68660の外部現象によるものではない。
  • WIPPの第7パネルの第7処分室で観測された漏洩事象及び破損の発生における物質の移動は、熱及び圧力の影響によるものであり、漏洩は爆轟(デトネーション、detonation)によるものではない。

なお、技術評価チームの報告書の公表と同時に、報告書の概要をまとめたファクトシートも公表されており、事象及び技術評価チームの結論の概要、技術評価チームの目的・構成、評価方針・方法、評価の制約条件、結論及び5項目の重要な判断内容が示されている。また、放射線事象に係る「事故調査報告書(フェーズ2)」は、2015年4月中に公表する予定であることが示されている。

【出典】

 

【2015年8月4日追記】

米国のエネルギー省(DOE)は、2015年7月31日に、廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)の2014年9月30日付けの復旧計画について、2016年第1四半期(3月)までの操業再開が達成できないとして、操業再開スケジュールを見直しすることを公表した。操業再開スケジュールの遅延は、事故調査委員会(AIB)による指摘事項への対応、より厳格化されたDOEのサイト固有の文書化安全解析(Documented Safety Analysis, DSA)の基準を満足すること、暫定的な換気システムの製造等の調達・品質保証に係る契約者の監督に関する問題への対応など、復旧計画の策定時には想定されていなかった活動が必要になったためとしている。

DOEは現在、これらの問題に対応中であり、2015年秋には操業再開に向けたスケジュール及び費用の見直しが完了する見込みとしている。

【出典】

 

【2016年6月3日追記】

米国のエネルギー省(DOE)カールスバッド・フィールド事務所(CBFO)は、2016年6月2日に、廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)での安全性解析報告書(Documented Safety Analysis, DSA)の対応を完了し、模擬廃棄物容器を用いたコールドによる操業(以下「コールド操業」という)について、2016年6月1日から8週間の予定で開始したことを公表した。WIPPは、火災事故及び放射線事象が2014年2月に発生して以来、現在まで操業が停止されており、コールド操業は公式の操業準備審査(ORR)前において、作業員の習熟・装備類の検証を行うことが目的とされている。

今回のコールド操業の前提となっている安全性解析報告書(DSA)は、WIPPの管理・操業契約者により策定され、2016年4月29日に、DOEカールスバッド・フィールド事務所により承認されていた。DSAでは、火災や爆発、放射性物質漏出など7種類の事象を解析・評価した上で、安全要件の設定などが行われている。DSAの実施については、2016年5月29日に完了が確認されていた。

コールド操業は、机上演習、現場調査、綿密に計画された手順での実施作業など、段階的なアプローチで実施され、作業員が習熟するまで実施される。また、ランダムな中断や異常事態等への対応などの緊急時対応の訓練も実施される他、暫定的に設置された換気システムを含む機器・装備類の検証なども行われる。

コールド操業の完了後は、管理・操業契約者による自己評価の実施後、DOEカールスバッド・フィールド事務所と管理・操業契約者による公式の操業準備審査(ORR)が実施される。操業準備審査で確認された問題点への対応が完了し、ニューメキシコ州環境省(NMED)による規制審査、承認を得ることにより、管理・操業契約者によるWIPPにおける実際のTRU廃棄物の定置の再開をDOEが承認できることとなる。

【出典】

米国の原子力規制委員会(NRC)は、2014年8月26日付のニュースリリースにおいて、使用済燃料の継続貯蔵(continued storage of spent nuclear fuel)による環境影響に関する連邦規則を承認するとともに、連邦規則が発効した後、一時的に中断していた原子炉の許認可発給・更新について再開することを公表した。今回承認された連邦規則は、NRCの原子炉等の許認可手続における環境影響評価について定めた10 CFR Part 51「国内許認可及び関連規制機能に対する環境保護規則」の第23条(a)である。

2012年6月の連邦控訴裁判所の判決において、2010年のNRCによる「廃棄物保証」規則の改定を無効とし、NRCに対して地層処分場が建設されない場合の使用済燃料の継続貯蔵が環境に影響を与える可能性の検討及び使用済燃料プールの漏えいと火災をさらに分析するよう指示していた。今回のNRCによる承認は、これに対するNRCの対応が完了したものとされている。なお、NRCは、2012年9月に、判決に対応した包括的環境影響評価書(Generic Environmental Impact Statement、GEIS)の作成及び連邦規則等の再改定については、24カ月以内に完了することとしていた

今回のプレスリリースによると、使用済燃料の継続貯蔵に関する連邦規則は、運転許可期間を過ぎた原子炉サイトにおける使用済燃料の貯蔵が環境に与える影響に関して、包括的環境影響評価書(GEIS)の知見を採用したものであるため、使用済燃料の継続貯蔵による一般的な環境への影響は、個別の許認可における環境に関する審査において再度分析する必要はないものとされている。なお、GEISは、運転許可期間を過ぎた原子力発電所において貯蔵されている使用済燃料が環境に与える影響について、60年(短期)、短期シナリオ終了後の100年(長期)、及び無期限の3つの時間枠で分析しているが、今回承認された連邦規則は、原子力発電所における使用済燃料の無期限の貯蔵を承認するものではないとされている。

なお、今回の連邦規則及び包括的環境影響評価書(GEIS)の承認に際して、これまで使用されていた「廃棄物保証」という名称が、「使用済燃料の継続貯蔵」と改められた。これは、最終規則の実体や内容を正確に反映すべきであるという大多数のパブリックコメントを反映したものとされている。

【出典】

 

【2014年9月2日追記】

米国の原子力規制委員会(NRC)は、2014年8月26日付けで承認した使用済燃料の継続貯蔵による環境影響に関する連邦規則及び包括環境影響評価書(GEIS)等について、委員会決定文書、原子炉等の許認可発給の再開に関する委員会命令文書等を公表した。

NRCの委員会からスタッフに対する指示文書では、使用済燃料の継続貯蔵に関する連邦規則10 CFR Part 51について、連邦規則案と包括環境影響評価書(GEIS)案の細かな記述修正のほか、連邦政府が使用済燃料の長期貯蔵に係る費用を負担する可能性があることをパブリックコメントへの回答に反映すること、包括環境影響評価(GEIS)の知見を原子炉等のサイト個別の環境影響評価で活用する際には透明性のあるアプローチを採用することなどが指示されている。

なお、使用済燃料の継続貯蔵による環境影響に関する連邦規則及び包括環境影響評価書(GEIS)は、全委員の承認投票により決定されたが、委員長の投票では、包括環境影響評価書(GEIS)での無期限貯蔵の評価において制度的管理が喪失した場合についても解析すべきとして、一部が不承認とされた。委員長が投票に添えたコメントでは、制度的管理が喪失した場合についても可能な範囲で定量的評価を行った上で最悪の事態を想定した結果を示すべきであり、それによりエネルギー省(DOE)によるユッカマウンテン処分場の補足環境影響評価書(SEIS)における「何もしない」オプションに対する評価を拡充することが可能になるなどの見解が示されている。

また、NRCが一時的に中断していた原子炉等の許認可発給の再開に関しては、許認可手続中の全申請者に宛てた命令が発行され、使用済燃料の継続貯蔵による環境影響に関する連邦規則が発効した時点で中断を解除することが正式に決定されている。

【出典】

 

【2014年9月22日追記】

米国の連邦官報で、2014年9月19日に、使用済燃料の継続貯蔵に関する連邦規則である10 CFR Part 51「国内許認可及び関連規制機能に対する環境保護規則」の改定を反映した最終規則が告示された。今回改定された連邦規則は、2014年10月20日に有効となる。

なお、使用済燃料の継続貯蔵に関する包括環境影響評価書(GEIS)の最終版については、2014年9月10日付けで、原子力規制委員会(NRC)のウェブサイトで公表されている。

【出典】

米国ニューメキシコ州で廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)を操業するエネルギー省(DOE)カールスバッド・フィールド事務所(CBFO)及び管理・操業(M&O)契約者は、2014年5月30日に、WIPPの地下処分施設における一部の廃棄物容器の隔離計画案をニューメキシコ州環境省(NMED)に提出した。WIPPでは、2014年2月14日に発生した放射線事象の原因究明の調査において、第7パネル第7処分室で廃棄物容器1本の蓋部の損傷が確認されており、NMEDは、2014年5月20日に、同様の廃棄物が処分されている第6パネル及び第7パネル第7処分室について、廃棄物容器の隔離計画を提出するように行政命令を発出していた。

WIPPの放射線事象については、原因究明のための調査が進行中であり、2014年4月2日からは地下処分施設への入坑による調査が数次にわたって行われている。2014年5月15日に行われた地下処分施設での調査では、第7パネル第7処分室に定置された廃棄物容器1本の蓋部の開口、発熱反応による変色が確認された。

蓋部の開口及び熱変色が確認された廃棄物容器(2014年5月15日撮影)

蓋部の開口及び熱変色が確認された廃棄物容器(2014年5月15日撮影)

蓋の開口部のクローズアップ(2014年5月22日撮影)"

蓋の開口部のクローズアップ(2014年5月22日撮影)

損傷が確認された廃棄物容器は、ロスアラモス国立研究所(LANL)から搬入されたものであり、硝酸塩とともに、硝酸塩との反応性が高い有機系物質が封入されていたことが確認されている。ロスアラモス国立研究所では、処分のために液体廃棄物を浸み込ませる吸収材が有機系の製品(猫砂(kitty litter)が使用されている模様)に変更されていたことが判明しており、今回の事象発生の原因として有力視されている。2014年5月30日に行われた地下処分施設の調査では、損傷した廃棄物容器の周辺からサンプルが採取されたが、2014年6月3日時点では分析結果は公表されておらず、最終的な原因特定はされていない。

WIPPでは、廃棄物の定置が完了した処分パネルから、パネルの第1次封鎖が行われ、その後に処分パネルへの坑道を埋め戻す恒久的封鎖が行われる計画となっているが、今回のニューメキシコ州環境省(NMED)による廃棄物容器の隔離計画の提出命令は、上記のロスアラモス国立研究所の硝酸塩を含んだ廃棄物容器が定置されている第7パネル第7処分室及び第6パネルにおいて、類似の事象発生による被害を未然に防ぐために発せられたものである。DOE等が提出した廃棄物容器の隔離計画案に拠れば、今回の事象で爆発は生じていないと見られており、第7パネルに設置されていた圧力隔壁に圧力が掛かった痕跡も認められないことから、圧力隔壁等による第1次封鎖でも十分に有効との評価を示した上で、第1次封鎖の完了後に早期に恒久的封鎖を行う計画が示されている。恒久的封鎖については、掘削時に発生した岩塩で坑道を埋め戻す方式が提案されている。

なお、ニューメキシコ州環境省(NMED)の2014年5月20日の行政命令では、廃棄物容器の隔離計画の実施スケジュールも求められていたが、今回の廃棄物容器の隔離計画案では、放射線事象の原因も最終的に確認されていない中で多くの前提条件に基づいていること、様々な作業を並行的に行うことなどから、主要な工程ごとの作業日数が示されているのみであり、具体的な実施期日は示されていない。

【出典】

 

【2015年6月3日追記】

米国エネルギー省(DOE)及びニューメキシコ州環境省(NMED)は、2015年6月2日に、廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)で2014年2月14日に発生した放射線事象の原因となった廃棄物容器の隔離が完了したことを公表した。今回の廃棄物容器の隔離は、2014年5月20日のNMEDの行政命令を受けたものであり、WIPPの地下に設置された処分パネルのうち、放射線事象の原因と断定されたロスアラモス国立研究所(LANL)から搬出された硝酸塩を含むTRU廃棄物が処分されている第6パネル及び第7パネル第7処分室について、それぞれ2015年5月13日及び5月29日に早期封鎖が完了したとしている。

第6パネル及び第7パネル第7処分室の封鎖は、吸気側及び排気側のそれぞれの坑道について、定置された廃棄物容器の側に金網(chain link)及び張出布(brattice cloth)を設置した上で、鋼製バルクヘッド(steel bulkhead)を設置することにより行われている。第6パネルの封鎖では、下図に示すように、廃棄物面に接する形で岩塩等を積み上げた障壁が設置されている。

なお、WIPPでは、2014年9月30日に復旧計画が公表され、2016年第1四半期の操業再開に向けて復旧活動が行われている。WIPPの放射線事象については、2015年4月16日に、DOEの事故調査委員会(AIB)の「事故調査報告書(フェーズ2)」が公表されており、2013年12月にロスアラモス国立研究所(LANL)で処理した1本の廃棄物容器での有機物質と硝酸塩との混合による発熱化学反応が放射線事象及び放射性物質の漏洩の原因と結論づけられている。

第6パネル封鎖の概念図(坑道の断面図)

第6パネル封鎖の概念図(坑道の断面図)

第7パネル第7処分室の封鎖のための金網・張出布の設置作業

第7パネル第7処分室の封鎖のための金網・張出布の設置作業

第7パネル第7処分室の入り口を密封する鋼製バルクヘッド

第7パネル第7処分室の入り口を密封する鋼製バルクヘッド

【出典】

エネルギー省(DOE)の環境管理局(EM)は、2014年4月24日に、廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)の地下施設内で2014年2月14日に発生した放射線事象についての初めてとなる「事故調査報告書(フェーズ1)」を公表した。WIPPでは、今回の放射線事象における放射性物質の漏洩場所の特定及び原因究明のための地下施設内の調査を実施中であるが、本報告書では、事故調査の第1段階として、放射性物質の地上環境への漏洩とWIPP職員の被ばく、事象発生後の対応、管理体制が中心に取りまとめられている。なお、事故調査の進捗に伴って、放射性物質の漏洩の直接的な原因を中心とした補足報告書が発行される予定としている。

2014年4月23日に開催されたタウンホール・ミーティングで示されたDOEの事故調査委員会(AIB)の資料では、放射性物質の地上環境への漏洩の根本原因は、WIPPを運営・管理するDOEカールスバッド・フィールド事務所(CBFO)と管理・操業(M&O)契約者とが、放射線の危険性を十分に理解・管理していなかったためとしている。また、換気システムの設計及び操作性が不適切であり、安全管理プログラムや安全文化の劣化と合わせて累積的に影響したこと、漏洩の認識及び対応が遅延し、効果的でなかったことが放射性物質の漏洩につながったとしている。

今回公表された事故調査報告書(フェーズ1)では、原子力安全、メンテナンス、放射線防護及び緊急事態管理の各プログラム、行動規範、安全文化・監督の各項目について、事故調査委員会の結論・問題点(CON)と措置必要事項(JON)が示され、一覧表に整理されている。

なお、2014年4月23日に行われた漏洩場所の特定及び原因究明のための調査では、漏洩場所と想定される地下処分施設の第7パネルの第7処分室に調査チームが到達しており、処分室の天井の崩落などは認められず、目視可能な範囲では廃棄物パッケージの異常も認められていない。

2014年4月23日の地下施設内の調査ルー

2014年4月23日の地下施設内の調査ルート

第7パネル第7処分室の状況

第7パネル第7処分室の状態

2014年4月23日のタウンホール・ミーティングでDOEカールスバッド・フィールド事務所(CBFO)が示した復旧計画では、2014年5月末までに原因の特定と再開計画の策定を行い、2014年6月から除染、換気能力増強などの安全対応、是正プログラムの実施などの安全プログラムの強化を行った上で、施設の操業再開に向けた独立のレビューを受けるとの予定が示されている。

【出典】

米国のエネルギー省(DOE)の環境管理局(EM)は、2014年3月14日に、廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)の地下施設内で2014年2月5日に発生した岩塩運搬車の火災事故についての事故調査報告書を公表した。本事故調査報告書は、DOEが2014年2月7日に設置した事故調査委員会による調査結果の最終報告書である。

DOEのEMのニュースリリースでは、事故調査報告書は火災に繋がった事象と火災に対する対応について徹底的な検証を行ったものであり、今後のWIPPの安全な操業に多くの教訓を与えるものとしている。また、事故調査委員会の公式調査と並行して、独自のレビューと対策を実施してきているが、事故調査報告書で指摘された問題に対する正式な是正措置計画は策定中としている。

事故調査報告書では、火災事故の直接原因(DC)は、岩塩運搬車の油圧作動油、または軽油が過熱した触媒コンバータなどに接触したことでエンジンルームの火災となったとしており、タイヤ2本も焼失したとことが報告されている。また、火災事故の根本原因(RC)としては、日常のメンテナンス不足、火災抑制システム解除などの管理・操業(M&O)契約者の不適切な管理が問題とされており、さらに、火災事故に繋がった寄与要因(CC)として、放射性廃棄物に直接関連しない機器・活動の管理上の問題、不十分・不適切なメンテナンス・プログラム、訓練などの10項目が挙げられている。また、調査により確認された22項目の問題点(CON)及び35項目の措置必要事項(JON)も示されている。

なお、DOEは、2014年3月14日に、WIPPが立地するニューメキシコ州カールスバッド市でタウンホール・ミーティングを開催しており、事故調査委員会の委員長から火災事故に関する事故調査報告書の概要が説明されている。

【出典】