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米国の放射性廃棄物技術審査委員会(NWTRB)は2019年5月8日に、処分場科学及び国際的な地下研究所(URL)研究活動における最近の進展に関する2019年春季ワークショップ(以下「本ワークショップ」という。)の資料等を公表した。本ワークショップは、2019年4月24日及び25日の2日間にわたって米国サンフランシスコで開催されたものである。なお、NWTRBは、1987年放射性廃棄物政策修正法に基づいて、エネルギー長官が行った高レベル放射性廃棄物処分に係る活動の技術的及び科学的有効性をレビューするため、独立した評価組織として設置されたものである。

本ワークショップの目的は、エネルギー省(DOE)が実施または計画している研究開発活動についてレビューを行うこと、DOEによる研究活動及びNWTRBによるレビューに資する情報を得ることとされている。国際的な経験に関する議論の焦点は、各国の地下研究所で実施されてきた研究について、高レベル放射性廃棄物の地層処分場の長期的挙動の科学的理解、技術、操業に係る最近の進展などに当てられている。なお、2019年2月26日には、本ワークショップの準備のため、DOEの研究活動の現況を確認するNWTRBミーティングが開催されている。

本ワークショップでは、主に以下のような報告や議論が行われた。

  • 国際的な地下研究所プログラムについて、フランス、スウェーデン、スイス及び英国の4カ国からの報告とパネルディスカッション
    • スイス:放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)
    • スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)
    • フランス:放射性廃棄物管理機関(ANDRA)
    • 英国:放射性廃棄物管理会社(RWM社)
  • DOEの地層処分研究開発プログラムの概要、及び国際的な地下研究所での研究との統合
  • DOEにおける地下研究所に関連した研究開発活動(特に、天然バリア、人工バリアの健全性、地下水流動と核種移行、全体システムの挙動)
  • 地下研究所での研究開発プログラムから得られた教訓と重要事項(全体セッション)

なお、現在、DOEは、「使用済燃料処分等研究開発プログラム」(UNFD研究開発プログラム)の中で、処分及び貯蔵・輸送に係る一般的な研究開発活動を実施している。DOEは、2020会計年度の予算要求書において、UNFD研究開発プログラムの大幅な縮小を提案しているが、潜在的な代替処分オプションに関する国際共同研究については継続するとしている。

【出典】

 

【2020年1月30日追記】

米国の放射性廃棄物技術審査委員会(NWTRB)は、2020年1月27日に、「ギャップを埋める:エネルギー省(DOE)の地層処分研究開発プログラムにおける地下研究所(URL)の重要な役割」(以下「地下研究所報告書」という。)を公表した。地下研究所報告書は、地下研究所に関連したDOEの研究開発活動と、使用済燃料・高レベル放射性廃棄物処分プログラムとの関係について、NWTRBが評価した結果を示すものである。NWTRBは、2019年4月に開催した2019年春季ワークショップにおいて、処分場科学及び国際的な地下研究所(URL)研究活動の最近の進展を取り扱っており、今回の地下研究所報告書は、このワークショップ及び準備ミーティングで示された情報に基づくものとされている。

NWTRBは地下研究所報告書において、地下研究所に関連した国際的研究にDOEが参画していることには大きなメリットがあるなどの所見を示した上で、以下のような勧告を行っている。

  • DOEは、地層処分研究開発の能力を強化するため、地下研究所活動に係る国際共同研究を拡大すべきである。国際的プログラムで最大の成果を享受するためには、以下を考慮すべきである。
    • 様々な母岩の地層処分場の設計・許認可・建設・操業のための技術的ニーズに対応できるよう、地下研究所における研究開発を活用
    • 炭素(CO2)貯留など非放射性廃棄物処分への適用も含め、DOEが設計・建設・操業段階に参画可能な地下研究所研究開発の国際的パートナーシップを追及
    • 他国の地下研究所プログラムの経験から、公衆の理解促進や関わり、及びリスクコミュニケーションにおける良好事例や革新的アプローチ、顕著な成功・失敗例の取りまとめ
  • 異なる母岩での兼用キャニスタの直接処分を含め、一般的な地層処分場のセーフティケースが公衆にも分かりやすく示せるよう、地下研究所の研究開発成果を体系的に活用すべきである。
  • DOEは、処分概念の開発・実証を進め、米国の次世代の科学者・技術者の訓練の場を提供するため、米国内で1カ所以上の地下研究所を追及すべきである。米国内での地下研究所プログラムの拡大に際しては、以下を考慮すべきである。
    • 地下研究所の研究開発プログラムを、処分場閉鎖後の性能評価に関する技術的問題のみならず、建設や操業概念の開発・設計も含めるように拡大
    • 廃棄物処分の任務に必要な地層処分研究における、大規模でより公式の訓練機会を支援
    • DOEの地層処分研究開発プログラム以外の者も含め、米国内での地下研究所を国内外の研究者に広く開放
  • DOEは、熱-水-応力-化学に基づく研究やモデル開発を継続するとともに、特に高温環境における地下研究所及び研究所ベースの研究をさらに追及すべきであり、その際には以下を考慮すべきである。
    • 想定外のプロセス・挙動の受入れ余地は残しつつ、地下研究所における技術的活動を仮説や仮定の検証に向けて設計・実施
    • 基礎的プロセスに注目した研究所での実験、モデル化、実地での経験・観察について、双方向的なプロセスの採用
    • 破砕帯の流動・移行モデルにおける地盤力学的拘束条件と熱影響
    • 岩塩層へ焦点を合わせ、岩塩の挙動の構造的モデルの改善のため、廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)におけるヒーター試験の活用

 

時間的及び空間的な観察尺度

 

なお、DOEは、2012年から欧州及びアジアの地下研究所において共同研究を実施してきている。特に、2010年にはユッカマウンテン処分場に係る活動が中止され、DOEが代替母岩(結晶質岩、粘土層、岩塩)に関する一般的な研究を開始したこともあり、DOEは、地下研究所に係る国際共同研究がDOEの使用済燃料・高レベル放射性廃棄物処分の研究プログラムに貢献してきたとしている。

【出典】

フィンランドにおける高レベル放射性廃棄物(使用済燃料)の処分実施主体であるポシヴァ社は、2019年5月3日付けプレスリリースにおいて、地下特性調査施設(ONKALO)の地下深度420mに掘削した実証坑道において2018年から開始している実規模原位置システム試験(FISST:Full-scale In-Situ System Test)の進捗状況を公表した。FISSTでは、実証坑道の床面に2本の試験処分孔を掘削し、銅製キャニスタ、ベントナイト緩衝材を定置した後、実証坑道を埋め戻し、最後に実証坑道の入り口を塞ぐプラグを設置するまでの一連の作業が行われる。キャニスタには、使用済燃料からの発熱を模擬するヒーターを備え付けている。また、キャニスタ・緩衝材の設置、実証坑道埋め戻し等の作業には、機器・装置の試作機(プロトタイプ)を使用している。

FISSTは2018年6月に開始され、これまでにキャニスタ、緩衝材の設置、長さ50mの実証坑道の埋め戻しが2018年末までに行われた。その後、実証坑道の止水や埋め戻し材の流出を防ぐため、プラグと呼ばれるコンクリート製の構造体の設置に向けた準備が進められ、2019年5月3日にプラグのコンクリート打設が行われた。

プラグのコンクリート打設が終了したことにより、人工バリア設置に係る段階は終了し、今後、FISSTはフォローアップ段階に移行し、緩衝材など人工バリアの状態のモニタリングを数年間継続する予定である。このモニタリングは2018年8月よりすでに開始しており、これまでのところ予期しない現象の発生はないとされている。

今後の予定

ポシヴァ社は、今回のFISSTの結果を踏まえて、2023年頃の開始を予定している統合作動試験(joint operation test)で使用するため、実用レベルの機器・装置の設計・製作を行うとともに、実際の処分場の操業で採用する人工バリアの詳細設計を進める計画である。実際の使用済燃料を取り扱う「原子力統合作動試験」は、政府からの処分場の操業許可発給を受けた2024年頃から開始される予定である。

フィンランドでは、地下特性調査施設(ONKALO)を拡張して、使用済燃料処分場の建設が2016年12月より開始されており、主要坑道の最初の部分の掘削、及び主要坑道までの車両アクセス坑道の掘削、キャニスタ搬送リフト用の立坑の掘削などが行われている。また、使用済燃料を銅製キャニスタに封入する設備を収容する地上施設については、これまでに地表での地盤整備が行われており、地上施設本体の建設は2019年に開始予定である。処分場の建設以降、使用済燃料の処分作業を開始するには、別途、操業許可が必要であるが、ポシヴァ社は現在のところ2021年末に操業許可を申請する予定である。

Posiva

処分作業のイメージ(坑道の埋め戻し作業)(出典:ポシヴァ社)

【出典】

米国の連邦議会上院の環境・公共事業委員会は、2019年4月24日付けのプレスリリースにおいて、「2019年放射性廃棄物政策修正法案」の討議用ドラフト及び逐条解説を公表した。2019年放射性廃棄物政策修正法案は、2018年5月に連邦下院本会議で可決された「2017年放射性廃棄物政策修正法案」(H.R.3053、会期終了にともない廃案)と同様の法案であり、1982年放射性廃棄物政策法(1987年修正)を修正するものとなっている。同プレスリリースにおいて今回の討議用ドラフトは、使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物の処分に係る連邦政府の義務の履行を確実にするため、米国の放射性廃棄物管理政策の現実的な改革を行うものであるとしている。環境・公共事業委員会のウェブサイトでは、今回公表された法案の討議用ドラフトについて、検討する公聴会を2019年5月1日に開催する予定が示されている。

今回公表された2019年放射性廃棄物政策修正法案の討議用ドラフトにおける法案の構成及び主要条文タイトルは以下の通りであり、2017年放射性廃棄物政策修正法案(H.R.3053)において下院本会議で採択された修正案も織り込まれた内容となっている。

第I章 監視付き回収可能貯蔵1
監視付回収可能貯蔵(第101条)、権限と優先度(第102条)、監視付回収可能貯蔵協定の条件(第103条)、サイト選定(第105条)、便益協定(第106条)、許認可(第107条)、財政的支援(第108条)

第Ⅱ章 恒久処分場
土地収用・管轄権・保留地(第201条)、申請手続とインフラ活動(第202条)、申請中の処分場許認可申請(第203条)、軍事廃棄物専用処分場開発の制限(第204条)、輸送経路に関する連邦議会意見(第205条)

第Ⅲ章 エネルギー省(DOE)の契約履行
物質[使用済燃料]の所有権(第301条)

第Ⅳ章 立地自治体に対する便益
同意(第401条)、協定の内容(第402条)、対象となる地方政府(第403条)、高等教育機関への優先資金供与(第405条)、使用済燃料処分(第406条)、更新レポート(第407条)

第Ⅴ章 資金
見積り及び拠出金の徴収(第501条)、放射性廃棄物基金の使用(第502条)、複数年度予算要求の年次提出(第503条)、一定金額の利用可能性(第504条)

第Ⅵ章 その他
基準(第601条)、申請書(第602条)、輸送安全の支援(第603条)、民間放射性廃棄物管理局(OCRWM)(第604条)、海洋底下処分(subseabed disposal)または海洋処分(ocean water disposal)(第605条)、五大湖近傍での放射性廃棄物貯蔵に関する連邦議会意見(第606条)、予算上の効果(第607条)、残置された放射性廃棄物(第609条)

上院環境・公共事業委員会のプレスリリースでは、法案の討議用ドラフトのポイントとして以下を示している。

  • 停止状態のユッカマウンテン許認可審査の解決を支援し、処分場の許認可発給及び建設が可能かを決定する公式の許認可手続を可能とする。
  • 電気料金負担者を守るため、破綻した資金メカニズムを改革し、DOEが多世代に亘るインフラプロジェクトを建設・操業するために適切な資金が確保できるようにする。
  • ユッカマウンテン処分場の手続を進める間に、閉鎖された原子力発電サイトの使用済燃料を集約するための中間貯蔵プログラムを進めることを、非連邦組織との契約締結権限を含めて、DOEに指示する。
  • ネバダ州及び地域ステークホルダーが、処分場の立地地域として利益を享受できる取決めを連邦政府と行う機会を提供する。
  • 放射性廃棄物プログラムをより効果的に実施できるようDOEのプログラム管理及び組織を強化する。

今回の2019年放射性廃棄物政策修正法案の討議用ドラフトの公表に対して、ユッカマウンテンが立地するネバダ州選出の上院議員からは、連邦議会はネバダ州の意思を尊重すべきなどとし、ユッカマウンテン計画の再開を図る動きには強く反対することを表明するプレスリリースが出されている。

【出典】

 

【2019年5月7日追記】

米国の連邦議会上院の環境・公共事業委員会は、2019年5月1日に、「2019年放射性廃棄物政策修正法案」の討議用ドラフトに関する公聴会を開催した。本公聴会では、ネバダ州選出の連邦議会上院議員2名のほか、電力会社、州公益事業委員会、非営利環境団体の代表らが証人として出席し、証言と質疑応答が行われた。

公聴会の終了後に環境・公共事業委員会のウェブサイトに掲載されたプレスリリースでは、2019年放射性廃棄物政策修正法案によってユッカマウンテン計画を進めることが解決策だとする見解をバラッソ委員長(共和党、ワイオミング州選出)が示す一方で、カーパー少数党最上席議員(民主党、デラウェア州選出)からは、同意に基づくサイト選定が重要であるなどの見解が示されている。

また、証人として出席した2名のネバダ州選出の上院議員からは、ユッカマウンテン計画への強い反対が示されたほか、ネバダ州知事からも書簡が提出された。一方、ユッカマウンテンが立地するネバダ州ナイ郡からは、ユッカマウンテン処分場に係る原子力規制委員会(NRC)の許認可審査手続きの完了を求める書簡が提出されている。

さらに、連邦議会上院では、2019年4月30日に、「2019年放射性廃棄物管理法案」(S.1234)も提出された。本法案は、上院エネルギー・天然資源委員会の委員長、歳出委員会エネルギー・水資源小委員会の委員長及び少数党最上席議員の3名が共同提出した超党派法案であり、過去に提出された「2013年放射性廃棄物管理法案」等と同様の法案とされている。

上院エネルギー・天然資源委員会の委員長のプレスリリースでは、2019年放射性廃棄物管理法案の主要な内容として、以下の点が示されている。

放射性廃棄物管理組織
行政府に放射性廃棄物プログラムを管理する独立組織を設置する。同組織の長官は、大統領が指名し、上院の承認を経て任命される。

処分場及び集中貯蔵施設の同意に基づくサイト選定プロセス
閉鎖された原子力発電所からの使用済燃料などの優先的な使用済燃料のためのパイロット貯蔵施設、及びその他の使用済燃料のための集中中間貯蔵施設の建設を新組織に命じる。
貯蔵施設及び処分場のサイト選定プロセスを確立する。

貯蔵施設と処分場のリンク
パイロット貯蔵施設の建設は、貯蔵量の制限なしに直ちに承認する。
優先的な使用済燃料以外のための新たな貯蔵施設については、並行して進められる処分場プログラムの進捗を条件として、サイト選定を可能とする。

放射性廃棄物基金
放射性廃棄物管理組織が歳出予算措置を経ずに利用可能となる、新しい運営資本基金を財務省に創設し、電力会社が拠出金を払い込む。本法案の成立前に払い込まれた拠出金は、従来からの1982年放射性廃棄物政策法(1987年修正)に基づく放射性廃棄物基金に残り、歳出予算の対象となる。

軍事起源廃棄物
エネルギー長官が、軍事起源廃棄物を民間の使用済燃料と共同で処分するとした方針を見直すことを認め、必要、適切と判断された場合には軍事起源廃棄物の専用処分場の開発を認める。

なお、ネバダ州選出議員からは、処分場に関する放射性廃棄物基金からの支出には、州知事などの関係者の承認・協定締結を必要とすることなどを規定する「放射性廃棄物インフォームドコンセント法案」(S.649、H.R.1544)や、「2019年廃棄物よりも雇用法案(Jobs, Not Waste Act of 2019)」(S.721)が提出されている。

【出典】


  1. 監視付き回収可能貯蔵(MRS、Monitored Retrievable Storage)施設は、1982年放射性廃棄物政策法(1987年修正)において、高レベル放射性廃棄物及び使用済燃料を監視付きの回収可能性を有する中間貯蔵施設に長期貯蔵することが、安全・確実な管理の選択肢であるとし、エネルギー長官に中間貯蔵施設の設置に係る権限を与えている。 []

ビューラッハにおけるボーリング孔掘削の様子

スイスの処分実施主体である放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)は2019年4月15日に、地質学的候補エリア「北部レゲレン」でのボーリング調査の地点であるビューラッハ(Bülach)において、2018年12月に開始したサイト選定第3段階で最初となるボーリング孔の掘削作業に着手した。最大2,000メートルの深度までボーリング孔を掘削する計画であり、処分場の母岩となるオパリナス粘土層の厚さ、透水性、組成の調査等を行う。ボーリング掘削作業には、6~9ヶ月を要する見込みである。

NAGRAは、作業現場に情報公開コーナーを設置するほか、オープンデーを設けて現地見学を可能にする予定であり、市民・ステークホルダーに対してボーリング調査に関する情報提供を行うとしている。

ボーリング調査の許可手続きと進捗状況

サイト選定プロセスを定めた特別計画「地層処分場」(詳細はこちら)によると、サイト選定第3段階では、概要承認の申請書提出に向けた準備を行う上で、安全性の観点からの詳細な比較を可能とするため、必要に応じて弾性波探査、ボーリング調査などの地球科学的調査を行って、サイト特有の地質学的知見を収集することになっている。サイト選定第3段階には、3つの地質学的候補エリア「ジュラ東部」「北部レゲレン」「チューリッヒ北東部」が残っている。

三次元弾性波探査については、NAGRAがサイト選定第2段階の期間において先行的に実施済みである 。ボーリング調査のような地下に影響を及ぼす地球科学的調査の実施にあたっては、スイスの原子力法に基づき、環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)の許可が必要とされている。UVEKが2019年1月に公表したボーリング調査の許可発給状況によれば、NAGRAは3つの地質学的候補エリア内の合計23の調査候補地点についてボーリング調査の許可申請を行っており、うち4地点について許可発給を受けている。

NAGRAは、今回のビューラッハに続き、既にボーリング調査の許可発給を受けている地質学的候補エリア「チューリッヒ北東部」のトリュリコン(Trüllikon)において、2019年夏にボーリング調査を開始する予定としている。

 

【出典】

 

【2019年12月4日追記】

スイスの処分実施主体である放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)は2019年11月28日、地質学的候補エリア「北部レゲレン」でのボーリング調査の地点であるビューラッハ(Bülach)において、2019年4月15日に開始されたボーリング孔の掘削作業が終了したことを公表した。ビューラッハは、サイト選定第3段階で行われる一連のボーリング調査における最初の掘削地点である。NAGRAは、地下1,370mに達するボーリング孔を掘削してボーリングコアを採取したが、処分場の母岩となるオパリナス粘土層の厚みが100mを超えており、オパリナス粘土の組成や硬度などから、地層処分場への適性に関して肯定的なデータが得られたとしている。

NAGRAは、ビューラッハでの掘削現場に情報公開コーナーを設置しており、ボーリング調査が行われた約7ヶ月間に2,000人以上が現地を見学し、地元自治体や住民、公衆との協力が円滑に行われたとしている。なお、スイスでは、規制機関である連邦原子力安全検査局(ENSI)が、3つの地質学的候補エリアである「ジュラ東部」「北部レゲレン」「チューリッヒ北東部」のそれぞれに、関係自治体や州、隣接するドイツの自治体(該当する場合)が参加する「ボーリング調査情報共有グループ(Begleitgruppen)」を設置しており、関係自治体等のボーリング調査に関する情報ニーズを取りまとめ、連邦政府、NAGRAから情報提供を受ける受け皿として活動している

NAGRAは、3つの地質学的候補エリアを比較するには、すべてのエリアでのボーリング調査が必要であり、現時点でどのエリアが最適であるかを示す段階ではないと強調している。NAGRAは3つの地質学的候補エリアで合計23地点を対象にボーリング調査の許可を申請しており、2019年11月までに環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)から16地点について許可発給を受けている。地質学的候補エリア「チューリッヒ北東部」での最初のボーリング調査は2019年8月に開始しており、「ジュラ東部」では2020年に開始する予定である。

 

【出典】

米国のエネルギー省(DOE)は、超ウラン核種を含む放射性廃棄物(TRU廃棄物)の地層処分場である廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)について、2019年3月26日付の適合性再認定申請書(CRA)(以下「2019年CRA」という。)をウェブサイトで公表した。WIPPでは、1999年3月26日から、軍事起源のTRU廃棄物の地層処分が実施されているが、1992年WIPP土地収用法により、廃棄物の定置開始以降の5年毎に、廃止措置段階が終了するまで、連邦規則(CFR)の要件に適合していることの認定を受けることが要求されている。これまで3回の適合性再認定申請を行い、環境保護庁(EPA)が適合性認定の決定を行っており、今回が4度目の適合性再認定申請となる。

適合性再認定申請 適合性再認定の決定
1 2004年3月26日 2006年3月29日
2 2009年3月24日 2010年11月18日
3 2014年3月26日 2017年7月13日

前回の2014年3月26日に提出された3度目の適合性再認定申請書(以下「2014年CRA」という。)は、2013年1月1日までのデータに基づいて策定されていたが、その提出直前の2014年2月に、WIPPで火災事故及び放射線事象が発生し、微量の放射性物質が環境モニタリングで検出された。この放射線事象を受けてWIPPの操業は一時停止され、復旧活動が進められたが、DOEは、この放射線事象は処分場の長期的性能に影響するものではなく、WIPPはEPAの連邦規則である「使用済燃料、高レベル放射性廃棄物及びTRU廃棄物の管理と処分のための環境放射線防護基準」(40 CFR Part 191サブパートB・C)の要件を引き続き遵守しているとして、2017年1月に処分場の操業を再開している。EPAは、2017年7月13日に、WIPPが引き続きEPAの連邦規則に適合しているとして、適合性再認定の決定を行った。

DOEは、今回提出した2019年CRAの要約版において、今回の適合性再認定のサイクルは、次の2点で従来のサイクルとは異なるとしている。

  • 2014年CRAに係るEPAの決定が遅れたため、次の2019年CRAまでの間隔が短くなった。
  • 2014年CRAに係るEPAの決定文書では、DOEが2019年CRAで対応すべき技術的懸念や勧告が示されていた。

このため、DOEとEPAは2017年12月に、2019年CRAにおける性能評価(PA)の提出を2019年後半まで遅らせることで合意していた模様である。DOEは、2014年CRAの決定文書でEPAが指摘した技術的懸念事項への回答は、後に性能評価とともに提出されるとしている。なお、2014年CRAに係るEPAの決定の後、DOEはEPAの承認を必要とするような変更要求(PCR、planned change request)を行っていないことから、2014年CRAにおける性能評価は、2019年CRAにおいても引き続き性能評価のベースとして参照されているとしている。なお、DOEは、2014年CRA以降に、EPAの連邦規則への適合性に影響するような新たな情報は確認されていないとしている。

【出典】

 

【2019年7月4日追記】

米国のエネルギー省(DOE)環境管理局(EM)は、2019年7月2日付けのニュースにおいて、超ウラン核種を含む放射性廃棄物(TRU廃棄物)の地層処分場である廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)で、1999年の操業開始から12,500回目となるTRU廃棄物の受入れを行ったことを公表した。

WIPPでは、2014年2月に発生した火災事故及び放射線事象により操業が停止されていたが、2017年1月4日にはTRU廃棄物の定置を再開し、2018年1月には地下施設の掘削活動も再開された。また、連邦規則への適合性に関する4回目の再認定申請についても、2019年3月26日に環境保護庁(EPA)へ提出されている。

今回のニュースによれば、12,500回目の受入れとなったTRU廃棄物は、アイダホ国立研究所(INL)から搬出されたものであり、2019年6月27日にWIPPで受入れが行われた。WIPPへのTRU廃棄物の輸送距離は延べ1,490万マイル(約2,400万km)以上となっており、178,500以上の廃棄体容器の輸送が行われた。WIPPの輸送手順は、TRU廃棄物の発生サイトを出発してからWIPPに到着するまで一つの問題も発生しないように実施されており、輸送業界の中で最も厳しいものの一つとされている。

なお、WIPPでTRU廃棄物の受入れが開始されたのは1999年3月26日であり、操業開始から20周年となる2019年3月26日には、WIPPの20周年の記念式典も行われていた。WIPPウェブサイトによれば、2019年7月1日現在のTRU廃棄物の処分量は、約96,300m3となっている。

【出典】

 

【2019年9月30日追記】

米国でエネルギー省(DOE)が提出した廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)に係る適合性再認定申請書について、申請書の完全性の審査を実施している環境保護庁(EPA)は、2019年9月25日付けの連邦官報において、パブリックコメントの募集を開始することを告示した。軍事起源のTRU廃棄物の地層処分場であるWIPPについてEPAは、DOEの適合性再認定申請書のすべての側面についてコメントを求めるとしている。

EPAは、DOEの適合性再認定申請書の完全性が確認されたと決定したときには、DOEに書面で通知するとともに、連邦官報で告示することとしている。また、パブリックコメントの募集期限は、完全性の決定後、改めて連邦官報に掲載するとしている。なお、1992年WIPP土地収用法においては、EPAは完全性の決定から6カ月以内に適合性再認定の決定を行うことと規定されている。

【出典】

フランスの国家討論委員会(CNDP)1は、2019年4月10日に自身のウェブサイトにおいて、政府が策定中の2019~2021年を対象とした「放射性物質及び放射性廃棄物の管理に関する国家計画」(PNGMDR)に関する公開討論会を2019年4月17日より開始するとし、討論会の日程を公表した。PNGMDRは、フランスにおける全ての放射性物質と放射性廃棄物の管理の現状分析と管理方策の実現に向けた取組(研究開発を含む)を取りまとめたものであり、公開討論会は2019年9月25日までの予定でパリをはじめ、フランス国内の各都市で開催される。

PNGMDRは2006年の放射性廃棄物等管理計画法により、政府による3年ごとの策定・改定が義務付けられており、前回2016~2018年を対象としたPNGMDRは2017年2月に公表されている。2017年の法改正2 を受けて、2019~2021年を対象とする新たなPNGMDRの策定に先がけて、公開討論会が開催されることとなった。

今回の公開討論会は、2018年2月に環境連帯移行省が国家討論委員会(CNDP)に対し、PNGMDRに関する公開討論会の実施を付託したものである。環境連帯移行省は、今回の公開討論会を地層処分プロジェクトに関する透明性強化の方針に沿ったものであると説明している。国家討論委員会(CNDP)は2018年中に、公開討論会を主導する特別委員会(CPDP)を設置し、以下のメンバーを任命していた。

  • イザベル・アレル=デュリトゥ(委員長):フランスにおける司法訴訟の最高裁判所である破棄院の首席書記官
  • ピエール=イヴ・ジュイエヌフ:農業経済学者であり、公衆参加や協議の分野の専門家
  • アントワーヌ・ティロワ:独マックスプランク研究所の理論物理学者
  • カトリーヌ・ラレール:哲学者、パリ第一大学教授
  • イサベル・バルト:元グルノーブル都市圏議員、CNDPが過去に実施した公開討論会の情報提供及び公衆参加を監督する2名の保証人(garants)を務めた経験を有する
  • ミッシェル・バドレ:土木技術者、社会経済環境審議会(CESE)の副会長
  • フィリップ・クエヴレモン:土木技術者、CNDPの保証人(garants)を務めた経験を有する
  • ジュリエット・ロワド:ニュース解説を専門とする組織の設立者、市民参加に関するコンサルタント

国家討論委員会(CNDP)は、PNGMDRに関する公開討論会のための特設ウェブサイト(https://pngmdr.debatpublic.fr/)を開設しており、同ウェブサイトから意見表明や討論を行えるプラットフォームにアクセスできる。また、TwitterやFacebook等のソーシャルネットワークサービス(SNS)やニュースレターによる情報発信も行われている。

公開討論会は、以下の日程で実施される予定である。

日程 開催都市 テーマ
2019年4月17日 パリ 開会
4月24日 カン CAFÉ PHILO : 放射性廃棄物について・・・次世代に何を引き継ぐのか?
5月18日~19日 パリ 15人の市民パネル会合
5月24日~25日 パリ PNGMDRとそのガバナンスに関する分野横断的な学生グループ会合
5月28日 リール 放射性物質及び放射性廃棄物の管理
6月4日 ヴァランス [討論会] 原子力発電所の廃止措置で発生する廃棄物の対応
6月6日 ナルボンヌ [討論会] ウラン転換によって発生する廃棄物とその管理
6月11日 シェルブール [討論会] 使用済燃料の再処理の戦略と長期的影響
6月13日 レンヌ 放射性物質及び放射性廃棄物の管理
6月18日 ヌヴェール [討論会] 使用済燃料の貯蔵容量ひっ迫への対応
6月20日 バール・ル・デュック [討論会] 地層処分以外の最終処分のオプション
6月25日 リヨン CAFÉ PHILO : 放射性廃棄物に関するリスクとは?
6月27日 サクレー [討論会] 放射性物質と廃棄物との区別
7月2日 ボルドー 放射性物質及び放射性廃棄物の管理
7月4日 ルーアン [討論会] 放射性物質の輸送
7月9日 トゥール [討論会] 放射性廃棄物管理による健康や環境への影響
7月11日 ストラスブール 放射性物質及び放射性廃棄物の管理
9月4日 マルクール [討論会] 歴史的廃棄物
9月5日 サンテティエンヌ [討論会] 過去のウラン採掘サイトの健康や環境への影響
9月11日 パリ [討論会] 放射性物質と廃棄物の発生量の抑制
9月12日 グラヴリーヌ [討論会] 原子力事故で発生した廃棄物の管理
9月17日 トロワ [討論会] 長寿命低レベル放射性廃棄物の管理
9月19日 パリ [討論会] 放射性廃棄物管理のガバナンス
9月24日 パリ 公開討論会全体の振り返り
9月25日 パリ 閉会

 

【出典】

 

【2019年9月30日追記】

フランスの国家討論委員会(CNDP)は、2019~2021年を対象とした「放射性物質及び放射性廃棄物の管理に関する国家計画」(PNGMDR)に関する公開討論会について、2019年4月17日に開会した討論会が2019年9月25日に閉会したことを公表した。討論会期間中には全国で約20回の討論会等が開催され、一般から延べ3,000人を超える者が参加した。

一連の討論会では、PNGMDRを策定している環境連帯移行省と原子力安全機関(ASN)や、放射性廃棄物管理機関(ANDRA)、放射線防護・原子力安全研究所(IRSN)、フランス電力株式会社(EDF社)、Orano社等の関係機関に加え、グリーンピース等の環境保護団体等による説明に基づいて議論が行われた。公開討論会の特設ウェブサイト上には、討論会で使用された説明資料のほか、関係機関や環境保護団体等が一般公衆向けに取りまとめた資料等、合計約300件の資料が集約されており、閲覧可能となっている。

CNDPは今後、2019年11月25日までに、公開討論会を総括する報告書を公表する予定である。

【出典】


  1. 国家討論委員会(CNDP)は、環境に多大な影響を及ぼす大規模公共事業や政策決定を行うにあたり、事業実施主体の付託を受けて公開討論会を開催する独立した行政委員会である。 []
  2. 環境に重大な影響を及ぼす可能性のある意思決定に関する情報提供や公衆参加を確保するための手続き及び事業、計画等に係る環境影響評価に関する2017年4月25日のデクレ2017-626 []

ベルギーの放射性廃棄物管理の実施主体である放射性廃棄物・濃縮核分裂性物質管理機関(ONDRAF/NIRAS)は、2019年4月5日に、短寿命の低・中レベル放射性廃棄物(カテゴリーAと呼称されている)の浅地中処分場の設置に関する環境影響評価(EIA)報告書案について、公開協議を開始したことを公表した。ONDRAF/NIRASは、ベルギー北部のデッセル自治体に浅地中処分場を建設する予定であり、EIA報告書案の環境に関する分野について、下記の3点についてコメントを求めている。なお、公開協議は、2019年5月3日まで実施される予定である。

  • 地域レベルでの環境条件や問題点、懸念
  • 計画されている処分場の建設・操業に関する懸念
  • 想定される代替オプション、影響の緩和策等

今後、ONDRAF/NIRASは、寄せられた意見等を踏まえてEIA報告書を最終化して環境許可申請書を取りまとめ、デッセル自治体を管轄するフランダース地域政府に提出することとなっている。フランダース地域政府は、EIA報告書の内容を審査し、環境許可発給の是非を判断することになっている。なお、審査段階においても、公衆の意見聴取が実施される予定である。

デッセル自治体に建設予定の浅地中処分場の概観イメージ

図 デッセル自治体に建設予定の浅地中処分場の概観イメージ(EIA報告書案より引用)

ベルギーでは2006年6月に、短寿命の低・中レベル放射性廃棄物の処分場をデッセル自治体に設置することが決定され、2013年1月には、ONDRAF/NIRASが浅地中処分場の建設許可申請書を連邦原子力管理庁(FANC)に提出していた。ONDRAF/NIRASは2019年2月に、浅地中処分場の安全報告書の改訂版をFANCに再提出しており、安全審査が進められている。今回の浅地中処分場の設置に関するEIA報告書は、安全報告書とともに、許認可取得に向けて必要となる提出書類の一つである1 。なお、FANCとフランダース地域政府は、それぞれの審査を円滑に進めるため、協定を結んでいる。

 

【出典】

 


  1. ベルギーの浅地中処分施設の許認可プロセスは、「電離放射線の危険に対する公衆、職業人、環境の防護に関する一般規則を定める2001年7月20日の王令」(GRR-2001)に基づくものである。また、環境影響評価に関しては、欧州指令1985/337/EEG及びユーラトム条約第37条の適用に関する欧州委員会の勧告2010/635/Euratomに基づき作成する必要がある。 []

スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)は2019年4月4日付けのプレスリリースにおいて、使用済燃料最終処分場の立地・建設許可申請書等に関して、キャニスタの長期閉じ込め能力に関する補足説明書を、政府(環境省)に提出したことを公表した 。今回の補足説明書の提出は、環境法典に基づく許可発給が可能となるための条件として、土地・環境裁判所による2018年1月23日付けの意見書での指摘に対応したものである。SKB社は、この補足説明書を同社の技術報告書として発行しており、KBS-3概念1 を採用した処分により、放射線安全機関(SSM)が定めている安全要件を遵守できるとの結論を示している。

図 フォルスマルクに建設予定の使用済燃料処分場のイメージ(SKB社提供)

フォルスマルクに建設予定の使用済燃料処分場のイメージ(SKB社提供)

■銅製キャニスタの腐食に関する補足説明の内容

土地・環境裁判所は、2018年1月23日にスウェーデン政府に宛てた意見書において、SKB社による安全性の立証は信頼に足るものであると評価しつつも、使用済燃料を閉じ込める銅製キャニスタの腐食や機械的強度に影響を与えるプロセスの影響の大きさに関する説明は不十分であるとし、銅製キャニスタの腐食に関する以下の5点について補足説明の必要性を指摘していた 。

①無酸素水との反応による腐食
②硫化物との反応による孔食(熱水効果〔塩濃縮〕の影響の考慮を含む)
③硫化物との反応による応力腐食(熱水効果の影響の考慮を含む)
④水素脆化
⑤放射線照射が孔食、応力腐食及び水素脆化に及ぼす影響

SKB社は、今回提出した補足説明の技術報告書において、地下水に含まれる硫化物が銅製キャニスタと接触した際に、銅の母相界面に形成される局部電池が誘発するガルバニック腐食現象に起因する孔食(上記②)の可能性は無視できないとした。SKB社は、キャニスタでの孔食発生を組み込んだ安全解析を実施し、銅製キャニスタと地下水とが接触する時期が早まる悲観的なケースにおいても、スウェーデンにおいて自然放射線によって受ける被ばく線量の約100分の1、放射線安全機関(SSM)のリスク基準の約10分の1にとどまるとの結果を示している。

SKB社は、今回のキャニスタの長期閉じ込め能力に関する補足説明書の提出にあたり、技術的・科学的な品質を確保するために外部のピアレビューを受けたと説明している。また、SKB社は、今回の補足説明書の提出により、環境省において、使用済燃料の最終処分場の立地・建設許可申請に対する政府としての意思決定に向けた検討作業を進めることができるようになったと述べている。

【出典】

 

【2019年4月26日追記】

スウェーデン政府(環境省)は2019年4月25日付けのプレスリリースにおいて、スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)が提出したキャニスタの長期閉じ込め能力に関する補足説明書に対する意見募集を開始したことを公表した。意見募集先は、環境法典と原子力活動法のそれぞれを根拠として、放射線安全機関(SSM)や他の政府機関、大学、環境団体のほか、エストハンマル自治体などを対象としているが、指定された組織以外の個人等も意見書を提出することが可能となっている。意見書の提出期限は2019年9月13日となっている。

【出典】

 

【2019年10月2日追記】

放射線安全機関(SSM)は、2019年10月1日付けのプレスリリースにおいて、スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)が提出したキャニスタの長期閉じ込め能力に関する補足説明書について、SSMの意見書を政府(環境省)に提出したことを公表した。SSMは、環境法典と原子力活動法のそれぞれに基づく意見書を政府(環境省)に提出しており、いずれの意見書においても、SSMが2018年1月に政府に提出した意見書の結論と同様に、SKB社に対する許可発給は可能であるとの結論を示している。
なお、政府(環境省)は、SKB社のキャニスタの長期閉じ込め能力に関する補足説明書に対して、大学や環境団体等から提出を受けた22件の意見書を公表している。

【出典】


  1. KBS-3概念とは、スウェーデンで開発された使用済燃料の処分概念であり、使用済燃料を銅製のキャニスタに封入し、地下約500メートルに設けられる処分坑道の床面に掘削した処分孔に縦置きに定置して、キャニスタの周囲を緩衝材(ベントナイト)で囲うというもの。本概念を検討した報告書の略称に由来しており、フィンランドも同様な概念を採用している。 []

カナダの使用済燃料処分の実施主体である核燃料廃棄物管理機関(NWMO)は、自身のウェブサイトにおいて、「適応性のある段階的管理」(APM詳細はこちら))の実施に関して、2019年から2023年までの5カ年の実施計画書を公表した。NWMOは、毎年、今後5年間の行動計画をまとめた実施計画書を公表している。今回の実施計画書の対象期間には、NWMOが1カ所の好ましいサイトの特定を予定する2023年が含まれている。なお、2019年4月現在、NWMOは5つの自治体において、サイト選定プロセスの第3段階「使用済燃料処分場の潜在的な適合性の予備的調査」の第2フェーズとして現地調査を実施している

NWMOは、今回公表した実施計画書において、2023年を重要なマイルストーンと位置付け、それに向けた取り組みとして下記の7つの優先事項を挙げ、それぞれにおける実施内容を示している。

  1. 工学技術:工学的設計をさらに発展させ、その有効性を実証する。
    • プロトタイプの処分容器、緩衝材、定置システムの設計、製造、試験を完了する。
    • ボーリング調査、予備的な環境ベースライン調査で得られたデータを活用したサイト固有の概念的な処分場設計の整備を行う。
    • 人工バリアの評価のためのプロトタイプ試験及び実証施設を維持する。
    • 必要に応じてAPMの概念設計とコスト見積りを更新するとともに、使用済燃料取扱システムの設計と開発を開始する。
  1. サイト評価:候補サイトにおける詳細な現地調査を継続し、社会的・技術的両面でのサイト評価を実施していく。
    • ボーリング調査を継続するとともに、プロジェクトの要件に合致する可能性が高い地域における地球科学的、工学的、環境的及び安全性の要因と先住民の有識者や地域社会によって特定された要因の評価について情報提供するために現地調査を拡大する。
    • 地域社会との調査結果の再検討を通じて、調査対象地域の絞り込みを継続する。
  1. 安全性:サイト固有の予備的なセーフティケースを構築し、長期安全性を確認する取り組みを強化する。また、国際機関や諸外国の実施主体との協力に基づく研究を継続する。
    • カナダ国内外の大学との共同研究を通じてプロジェクトの科学的側面の理解を深め、その結果を学術誌、会議論文、技術報告書で提示する。
    • IAEA「使用済燃料管理及び放射性廃棄物管理の安全に関する条約」に基づくカナダの国際的義務を継続する。
    • 諸外国の研究者とともに、スイスのモン・テリ岩盤研究所プロジェクト及びグリムゼル試験サイトでの研究に引き続き協力する。
    • カナダ原子力学会、OECD/NEAやIAEAなどが主催する国内及び国際会議、ワークショップ、国際共同研究への参加を継続する。
    • 学術界と産業界の研究者による地球科学セミナーの開催を継続する。
    • カナダ自然科学・工学研究会議(NSERC)の奨学金プログラムを通じて、大学院生を支援する。
    • 地域住民の安全に対する理解を深めるための討論の場を構築・支援する。
    • 地下水の流れ、閉じ込め容器からの放出と移行及び熱-水-力学連成プロセスの評価を含めて、安全評価モデルを整備・改良する。
    • 処分場の安全性に影響を与える可能性があるプロセスについて科学的理解を促進する。
    • 地層処分場閉鎖後の安全評価のサイト固有のじ実例を通して、技術的安全性の考慮事項の調査を継続する。
  1. 人材の確保:2023年のサイト特定以降の段階に備え、NWMOの要員確保などに関する戦略を立案するとともに、地域における雇用の促進に向けた取り組みを強化する。
    • 将来の許認可申請をサポートするため、選定された地域の詳細なサイト特性調査、環境アセスメント、工学的設計及びセーフティケースの開発を進めるためのワークプランを検討し、要員の要件を評価する。
    • 選定された地域に建設される専門技術センターの概念等を検討する。
    • 潜在的なサイトでの現地スタッフのプレゼンスを構築し、プロジェクトに関する現地契約の機会を提供する。
    • 地方自治体の青少年及び住民の能力向上を支援するとともに、先住民がAPMプロジェクトやその地域の他の大規模プロジェクトに関連する就業機会を確保するためにサイト選定プロセスに関与を促す。
  1. 許認可:許認可や規制上の承認を得るための戦略を立案・実施するとともに、持続可能性の確保のための、自然環境、健康及び社会福祉の変化を特定するための調査を行う。
    • 立地地域と協力して影響評価手法を開発する。
    • 地域の持続可能な開発へのプロジェクトの貢献のために必要な情報を提供するプログラムを開発する。
    • 地域住民や先住民の有識者と連携して、潜在的なサイトにおけるベースライン環境モニタリングを確立する。
    • カナダ原子力安全委員会(CNSC)などの規制当局と協力して、規制プロセスの要件を理解することにより、NWMOの戦略を説明できるようにする。
    • 潜在的な受入地域と協力して、規制プロセスにおける役割を明確にし、プロセスに参加できるよう関与を促進する。
    • 地元の伝統的な知識を評価に織り込むための先住民との共同作業など、地域社会などの人々と協力しながら地域の自然環境に対する理解を深める機会を創出する。
  1. 輸送:関心のある自治体、個人及びグループの関与を促進し、輸送計画に対する信頼構築のための技術的作業(リスク評価、輸送方法の検討等)を行う。
  1. 公衆の関与:2023年にサイトを特定するために、地域での関与や現地調査を進め、自治体とのパートナーシップ協定締結に向けた取り組みを行う。
    • 「適応性のある段階的管理」(APM)の実施、サイト選定プロセス、サイト選定後の取り組み及びNWMOに対するカナダ国民の認識を高めるとともに、受け取った情報を一般に報告する。
    • プロジェクトに対する若年層の認識と理解を深め、APMに関連する将来の意思決定能力を高める。
    • 核燃料の最終的な輸送の計画を含むAPMの進捗状況について、カナダの原子力立地地域に説明する。
    • 以下との関係を構築し維持する。
      • サイト選定プロセスへの参加を選択した関心のある地域、その地域の先住民及びその周辺地域
      • APM及びサイト選定プロセスの進捗状況を共有するための国、州及び地域レベルに設けられている先住民組織
      • 地方自治体が重要と考える観点をより良く理解し、協力してAPMを実施していくために設けられている自治体連合体(複数州にまたがる連合体)
      • 連邦、州、地方自治体
    • 先住民地域の文化や言語、慣習、取り組みは多様であることを認識しつつ、先住民の有識者を含む潜在的に影響を受ける先住民との協力を続ける。
    • より具体的に「社会的受容(social acceptance)」及び「喜んで受け入れる(willing host)」という用語を定義し、どのように立証できるか理解するために、サイト選定プロセスに関与する自治体、地域、先住民と協働する。
    • 地域などでの議論をサポートするための展示やわかりやすいコミュニケーション資料、視聴覚ツールの開発を継続する。
    • NWMOのWebサイト及びソーシャルネットワークサービス(SNS)を通じた関与を拡大する。

《参考》カナダにおける核燃料廃棄物処分場のサイト選定プロセス

カナダにおける核燃料廃棄物処分場のサイト選定プロセス

【参考出典】『連携して進む:カナダの使用済燃料の地層処分場選定プロセス』(NWMO, 2010年)

【出典】

米国で2019年3月11日に、2020会計年度1 の大統領の予算教書が連邦議会に提出され、大統領府管理・予算局(OMB)のウェブサイトで公表された。また、エネルギー省(DOE)のウェブサイトでは、DOEの予算要求のファクトシートが公表され、使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物(以下「高レベル放射性廃棄物」という。)の管理については、「ユッカマウンテン及び中間貯蔵」プログラムとして116百万ドル(約131億円、1ドル=113円で換算)が要求されている。また、原子力規制委員会(NRC)のウェブサイトでは予算要求に係る概要資料が公表され、ユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可申請書の審査手続のための予算として、38,500千ドル(約43億5,000万円)が要求されている。

大統領の予算教書では、今回の予算要求は、中間貯蔵プログラムの実施を支援し、ユッカマウンテン地層処分場の許認可審査手続を再開することにより、トランプ政権の決意を示すものであるとしている。また、予算教書では、現在は停止されている原子力発電事業者からの放射性廃棄物基金への拠出金 について、2022会計年度から徴収を再開することも示されている。

DOEの予算要求に関して、2019会計年度の歳出法では、DOEの高レベル放射性廃棄物処分関連の活動について、使用済燃料処分等(UNFD)研究開発プログラムとして63,915千ドル(約72億2,240万円)、このうち22,500千ドル(約25億4,250万円)を「統合放射性廃棄物管理システム」(IWMS)に割り当てる歳出予算が計上されているが、2019年3月11日時点では2020会計年度のDOEの予算要求に係る詳細資料は公表されておらず、「ユッカマウンテン及び中間貯蔵」プログラムの詳細は不明である。

一方、NRCの予算要求資料では、処分場の建設認可に係る許認可申請書の審査活動を支援する高レベル放射性廃棄物の予算として、38,500千ドル(約43億5,000万円)が計上されているが、NRCの予算要求についても詳細資料は公表されておらず、予算要求の内訳等は不明である。

なお、ユッカマウンテン計画に反対するネバダ州では、知事及び同州選出の連邦議会議員から、ユッカマウンテン関連の予算が要求されたことを非難するプレスリリースが出されている。

【出典】

 

【2019年3月20日追記】

米国の原子力規制委員会(NRC)は2019年3月18日に、2020会計年度2 の予算要求に係る詳細資料(以下「NRC予算要求資料」という。)を公表した。NRC予算要求資料では、ユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可申請書の審査活動を再開するため、NRCが高レベル放射性廃棄物の予算として要求している38,500千ドル(約43億5,000万円)について、項目別の内訳が示されるとともに、裁判形式の裁決手続の再開準備など、主要な活動内容が示されている。

NRC予算要求資料によれば、ユッカマウンテン処分場に係る2020会計年度の高レベル放射性廃棄物の予算の内訳は、以下のとおりとされている。

・許認可審査: 30,600千ドル (約34億6,000万円)
・監督: 200千ドル (約2,000万円)
・規則策定活動: 1,300千ドル (約1億5,000万円)
・任務支援・監督: 5,400千ドル (約6億1,000万円)
・訓練: 400千ドル (約5,000万円)
・旅費交通費: 700千ドル (約8,000万円)
合計: 38,500千ドル (約43億5,000万円)
※予算の桁数の関係から、額の合計は合計の値と合っていない。

また、NRC予算要求資料では、2020会計年度における高レベル放射性廃棄物の予算要求に係る主要な活動として、以下が示されている。

  • ヒアリング施設及び情報技術(IT)/視聴覚支援のためのインフラ整備活動の実施
    (許認可支援ネットワーク(LSN)(詳細はこちら)、電子情報交換、電子ヒアリング記録(Electronic Hearing Docket)などのITシステムの試験、検証、訓練を含む)
  • 裁判形式の裁決手続の再開
    (証言録取、事件管理協議、略式決定動議などのプレヒアリング活動を含む)
  • 継続中の連邦訴訟の準備及び参加
  • 申立てや取調べ活動、地層処分場操業区域(GROA)に関連する規則策定の継続などの活動の支援

なお、エネルギー省(DOE)の2020会計年度の予算要求については、予算の概要資料が2019年3月18日に公表されており、2017年1月に操業を再開した廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)については、2019会計年度と比較して5,133千ドル減の398,334千ドル(約450億1,200万円)の予算要求額が示されている。

【出典】

 

【2019年4月3日追記】

米国のエネルギー省(DOE)は2019年4月2日に、DOEのウェブサイトにおいて、2020会計年度3 の原子力関連等の予算要求に係る詳細資料(以下「DOE予算要求資料」という。)を公表した。2020会計年度の予算要求については、2019年3月11日に大統領の予算教書が公表されたが、使用済燃料管理等に係るDOEの予算要求資料については、概要資料のみが公表されていた。なお、DOEの予算要求に対して連邦議会では、上下両院でエネルギー長官を証人とした公聴会が開かれており、実質的に2020年度歳出法案の策定プロセスが開始されている。

DOE予算要求資料では、ユッカマウンテン許認可申請書の審査手続の再開及び中間貯蔵の体制を確立するために新設する「ユッカマウンテン及び中間貯蔵」プログラム(YMISP)について、2020会計年度に行う事項として、以下が示されている。

ユッカマウンテン(106,084千ドル(約120億円、1ドル=113円で換算)、2019会計年度要求額は110,000千ドル)4

  • ユッカマウンテン許認可手続への参加の支援
  • 高度に技術的・詳細な質問への対応のため、処分場の閉鎖前・閉鎖後の解析活動を実施
  • 訴訟対応として技術的・科学的・法的支援を提供
  • 争点の解決に係る成果を反映して許認可申請書及び関連文書を更新・維持
  • 許認可申請書の支援文書との一貫性等を確保
  • 証言書の準備・レビュー
  • 原子力規制委員会(NRC)の原子力安全・許認可委員会(ASLB)の裁決手続によるヒアリングにおけるDOE側の証人・証言の準備
  • 裁決手続での証拠開示手続の準備
  • 裁決手続での質問書への対応・準備
  • 裁決手続での動議その他法的手続の支援
  • 許認可手続の支援に必要な地質学的試料・施設の維持
  • 他の政府機関、地方政府、公衆等に対する効果的なコミュニケーション提供の義務を支援する包括的なコミュニケーション戦略構築の継続

中間貯蔵(9,916千ドル(約11億2,000万円)、2019会計年度要求額は10,000千ドル)5

  • 集中中間貯蔵の能力及び関連する輸送を開発・評価・取得するために必要な活動、マイルストーン、資源を含む計画の策定
  • 使用済燃料貯蔵及び輸送の能力の取得に向けた基盤開発の継続
  • 将来の使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物の輸送に備えるため、地域・州等の輸送当局との関係の維持
  • 物流上の要件や解析能力に対する最低限の支援の維持

また、DOEの高レベル放射性廃棄物処分関連の活動のうち、DOE原子力局(NE)の燃料サイクル研究開発プログラムの下の「使用済燃料処分等研究開発プログラム」(UNFD研究開発プログラム)については、2019会計年度予算要求 と同様に、高燃焼度燃料の性能の研究、多様な使用済燃料等を対象とした潜在的な代替処分オプションに関する国際共同研究に焦点を当てた活動を行うとした上で、前年度要求額の2分の1の5,000千ドル(約5億6,500万円)の予算が要求されている。なお、オバマ前政権がUNFD研究開発プログラムの中で行ってきたその他の活動、及び「統合放射性廃棄物管理システム」(IWMS) については、廃止が提案されている。ただし、従来はIWNSに含まれていた中間貯蔵及び輸送計画に関する活動については、新設された「ユッカマウンテン及び中間貯蔵」プログラムに移管されている。

連邦議会では、DOEの2020会計年度の予算要求に関する公聴会が開催されている。公聴会は、以下に示すとおりの日程で上下両院の関連委員会が開催したものであり、エネルギー長官が証人として出席して2020会計年度の予算要求について説明するとともに、各委員会の委員による質疑が行われた。エネルギー長官の証言書では、ユッカマウンテン許認可申請書の審査手続の再開及び中間貯蔵プログラムの開始に係るトランプ政権の意思が改めて表明されている。6

  • 2019年3月26日:下院歳出委員会エネルギー・水資源小委員会
  • 2019年3月27日:上院歳出委員会エネルギー・水資源小委員会
  • 2019年4月 2日:上院エネルギー・天然資源委員会

なお、上院エネルギー・天然資源委員会の公聴会では、ネバダ州選出のマスト上院議員が耐震評価問題などを採り上げてユッカマウンテン計画への強い反対を示した他、ネバダ州選出の下院議員3名は、下院歳出委員会エネルギー・水資源小委員会の委員長等に宛てた書簡で、ユッカマウンテンにおける高レベル放射性廃棄物処分を阻止するための条項等を歳出法案に盛り込むよう要請している。ネバダ州知事も、2019年4月2日のプレスリリースにおいて、ユッカマウンテン計画に対する反対の戦いを続けることを表明している。

【出典】

 

【2019年5月22日追記】

米国の連邦議会下院の歳出委員会は、2019年5月21日に開催した法案策定会合において、2020会計年度7 のエネルギー・水資源開発歳出法案(以下「歳出法案」という。)の草案を承認した。ユッカマウンテン処分場の許認可審査手続きの再開等のための予算については、エネルギー省(DOE)や原子力規制委員会(NRC)から要求されていたが、今回承認された歳出法案には含まれていない。

歳出法案に付随する下院歳出委員会報告書の草案では、DOEの高レベル放射性廃棄物処分関連の活動について、「使用済燃料処分等(UNFD)プログラム」の一般的な研究開発活動を継続するための予算として62,500千ドル(69億3,750万円、1ドル=111円で換算)が計上されているほか、「統合廃棄物管理貯蔵(IWMS、Integrated Waste Management Storage)」の予算として47,500千ドル(52億7,250万円)が計上されている。IWMS予算のうち25,000千ドル(27億7,500万円)は、使用済燃料が残された廃止措置済みの原子力発電所サイト等における準備活動を含め、地域的な輸送協定や輸送の調整を再開する「集中中間貯蔵プログラム(consolidated interim storage program)」の開始など、使用済燃料の中間貯蔵の活動のための予算とされている。

また、下院歳出委員会報告書の草案では、種々の核燃料サイクルや技術的なオプションのメリットと実現可能性についての評価を、全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)に指示している。本評価は、廃棄物の輸送・貯蔵・処分など燃料サイクルのすべての要素間の関係や、より広範な安全性・セキュリティ・核不拡散上の懸念について、説明するものとなるとしている。

一方、今回の歳出法案に計上されなかった「ユッカマウンテン及び中間貯蔵」プログラムの予算、及びユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可申請書の審査手続のための予算に関して、下院歳出委員会の法案策定会合では、歳出委員会エネルギー・水資源小委員会の少数党最上席議員(共和党)から、これらの予算を計上する修正案が提出されたが、25対27で否決された。

ネバダ州選出のタイタス下院議員からは、ユッカマウンテン許認可審査手続きを再開するための修正案が否決されたことを伝え、今後も連邦議会下院議長やネバダ州知事らとともに反対を続けていくことを表明するプレスリリースが発出されている。

なお、2019年5月21日に開催された下院歳出委員会の法案策定会合においては、技術的な事項に係る修正案等が承認されているが、これらの修正事項を反映し、法令番号を付した歳出法案は2019年5月22日時点で公表されていない.。

【出典】

 

【2019年6月24日追記】

米国の連邦議会下院は、2019年6月19日の本会議において、2020会計年度8 「労働省、保健福祉省、教育省、その他関連機関の歳出法案」(H.R.2740、以下「本歳出法案」という。)を、226対203で可決した。本歳出法案は、労働省等の2020会計年度の歳出法案(H.R.2740)に「エネルギー・水資源歳出法案」(H.R.2960)など、4つの歳出法案をまとめた「ミニバス法案」である。本歳出法案において高レベル放射性廃棄物管理に係る予算については、2019年5月21日に下院歳出委員会で承認された内容からの修正はなく、ユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可審査手続きの再開等のための予算は計上されていない。なお、本歳出法案に付随する委員会報告書は、2019年5月21日に下院歳出委員会で承認されたものとなっている。

本歳出法案の下院本会議における審議に向けては、ユッカマウンテン許認可審査手続きを再開するための予算を含めるような修正案も提出されたが、本会議で審議された本歳出法案には当該予算は含まれなかった。本歳出法案の下院本会議における審議については、下院議事運営委員会で承認された修正案のみが本会議で審議されることとなっていたが、ユッカマウンテン許認可審査手続きの再開に係る修正案は、事前に行われた議事運営委員会における投票において4対7で否決されていた。

ネバダ州選出の下院議員からは、ユッカマウンテン許認可審査手続きの再開のための予算が本歳出法案に計上されなかったことを評価し、今後もネバダ州における処分場建設には反対を続けていくことを表明するプレスリリースが発出されている。

【出典】

 

【2019年9月17日追記】

米国の連邦議会上院の歳出委員会は、2019年9月12日に、2020会計年度9 の「エネルギー・水資源開発歳出法案」(S.2470、以下「歳出法案」という。)を承認し、上院本会議に提出した。2020会計年度の歳出法案では、使用済燃料の中間貯蔵について、前年度に上院本会議に提出された2019会計年度の歳出法案(S.2975)と同様に、中間貯蔵施設のパイロットプログラムの実施等をエネルギー長官に命じる規定が置かれている。

なお、ユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可審査手続きの再開等のための予算については、エネルギー省(DOE)や原子力規制委員会(NRC)から要求されていたが、今回承認された2020会計年度の歳出法案には計上されていない。

2020会計年度の歳出法案に付随する「上院歳出委員会報告書」(S.Rept.116-102、以下「委員会報告書」という。)では、DOEの高レベル放射性廃棄物処分関連の活動について、「使用済燃料処分等(UNFD)プログラム」の一般的な研究開発活動を継続するための予算として27,500千ドル(30億5,250万円、1ドル=111円で換算)が計上されているほか、「統合廃棄物管理貯蔵(IWMS、Integrated Waste Management Storage)」の予算として22,500千ドル(24億9,750万円)が計上されている。IWMS予算のうち10,000千ドル(11億1,000万円)は、エネルギー長官が現行の権限内で、使用済燃料の中間貯蔵に係る民間事業者との契約などを締結するための予算とされている。

軍事起源のTRU廃棄物の地層処分場である廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)については、DOEの予算要求を上回る396,907千ドル(約440億5,670万円)が2020会計年度の歳出法案に計上されている。

2020会計年度の歳出法案に盛り込まれた中間貯蔵関連の条項では、2019会計年度の上院版の歳出法案(S.2975)と同様に、以下のような内容が規定されている。

集中中間貯蔵のパイロットプログラム(歳出法案(S.2470)第306条)

  • 使用済燃料等を中間貯蔵するため、1つまたは複数の連邦政府の集中貯蔵施設の許認可取得、建設、操業のためのパイロットプログラムを実施することをエネルギー長官に許可
  • エネルギー長官は、歳出法案の施行後120日以内に、集中貯蔵施設の建設許可取得や輸送等の協力協定についてのプロポーザルを公募
  • 集中貯蔵施設の立地決定前に、立地サイト周辺等での公聴会の開催、地元州知事、地方政府等との書面による同意協定の締結をエネルギー長官に義務付け
  • エネルギー長官は、上記プロポーザルの公募から120日以内に、推定費用、スケジュール等を含むパイロットプログラム計画を連邦議会に提出
  • 集中中間貯蔵のパイロットプログラム活動に係る資金の放射性廃棄物基金からの支出を許可

また、委員会報告書では、エネルギー長官に対して、以下の報告を連邦議会に行うように指示している。

  • 費用対効果が高く、短期間で実施可能な技術オプションなど、高レベル放射性廃棄物の処分及び使用済燃料管理に係る革新的なオプションについて、90日以内に報告
  • 全米科学アカデミー(NAS)と契約して、先進炉の廃棄物に係る包括的、独立的な研究を実施し、20カ月以内に報告
  • 放射性廃棄物処理に係る電磁技術の科学的基盤の評価や考え得る効果等について、180日以内に報告

【出典】

 

【2019年10月2日追記】

米国の連邦議会は2019年9月26日に、2020会計年度(2019年10月1日~2020年9月30日)のうち、2019年10月1日から2019年11月21日を対象とした継続歳出法案(H.R.4378)を可決し、継続歳出法案は2019年9月27日に大統領の署名を得て法律(Public Law No.116-59)として成立した。継続歳出法案(H.R.4378)は、連邦議会下院本会議では2019年9月19日に301対123で、連邦議会上院本会議では2019年9月26日に81対16で、それぞれ賛成多数で可決された。

今回成立した2020会計年度の継続歳出法(Public Law No.116-59)は、規定された期間について、前年度である2019会計年度の歳出法での予算と同じレベルでの歳出を認めるものである。エネルギー・水資源分野については、2019会計年度の歳出法として、ミニ包括歳出法(Public Law No.115-244)が制定されていた。継続歳出法による予算は、原則として前年度予算と同率で比例配分され、特段の規定が無い限り、前年度で未計上の事業・プログラム等の実施は認められない。

なお、2020会計年度の継続歳出法(Public Law No.116-59)では、ユッカマウンテン処分場、廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)、中間貯蔵施設等の関連を含め、放射性廃棄物の貯蔵・処分に関する特別な規定は無い。

【出典】

 

【2019年11月26日追記】

米国の連邦議会は2019年11月21日に、2020会計年度(2019年10月1日~2020年9月30日)のうち、2019年12月20日までを対象とした「追加的継続歳出法案」(H.R.3055)を可決し、本法案は2019年11月21日に、大統領の署名を得て法律(Public Law No.116-69)として成立した。2020会計年度の歳出予算については、2019年11月21日までを対象とした継続歳出法(H.R.4378)が2019年9月26日に成立していたが、今回、上下両院で可決された「追加的継続歳出法案」は、前回の継続歳出法で設定された継続予算の期限を2019年12月20日まで延長するものとなっている。

なお、今回成立した2020会計年度の「追加的継続歳出法」(Public Law No.116-69)では、ユッカマウンテン処分場関連、廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)関連、中間貯蔵施設関連を含め、放射性廃棄物の貯蔵・処分に関する特別な規定は無い。

【出典】

 

【2019年12月24日追記】

米国の連邦議会は、2019年12月19日に、2020会計年度10 のエネルギー・水資源開発分野を含む追加的包括歳出法案(H.R.1865、以下「歳出法案(H.R.1865)」という。)を可決し、2019年12月20日に大統領の署名を得て法律(Public Law No.116-94)として成立した。2020会計年度のエネルギー・水資源開発歳出法案については単独の法案として、連邦議会下院では2019年6月19日の本会議において可決されていたが、連邦議会上院では2019年9月12日に上院歳出委員会で承認されたのみで可決に至らず、年度が新しくなった2020会計年度の2019年10月からは継続予算が執行されていた。今回成立した歳出法案(H.R.1865)は、両院で超党派のミニ歳出法案11 として検討されていたものであり、2019年12月17日に下院本会議で、2019年12月19日には上院本会議で、それぞれ可決された。なお、詳細な予算額や指示事項などについては、法案付随の説明文書(Explanatory Statement、以下「付随説明文書」という。)で示されている。付随説明文書は、歳出法案と同じ効力を持つものとされている。

2020会計年度の歳出予算については、ユッカマウンテン処分場計画の再開のための予算がエネルギー省(DOE)及び原子力規制委員会(NRC)の予算要求に盛り込まれていたが、最終的に成立した歳出法案(H.R.1865)ではユッカマウンテン関連の予算は計上されていない。高レベル放射性廃棄物関連の予算としては、使用済燃料処分等(UNFD)研究開発プログラムとして、2019会計年度歳出予算 から微減の62,500千ドル(約67億5,000万円、1ドル=108円で換算)、「統合放射性廃棄物管理システム」(IWMS)として25,000千ドル(約27億円)を割り当てる歳出予算が計上されている。

現在、ニューメキシコ州で操業中の軍事起源のTRU廃棄物の地層処分場である廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)については、2019会計年度の歳出予算と同額の396,907千ドル(約428億6,600万円)が計上されている12

なお、歳出法案(H.R.1865)にユッカマウンテン計画再開のための予算が含まれなかったことについて、反対を表明しているネバダ州選出の連邦議会議員の多くからは、予算計上を阻止したことなどを伝えるプレスリリースが発出されている。

その他、付随説明文書では、放射性廃棄物管理に関連するものとして、以下の報告を行うことをエネルギー長官及び全米アカデミーに指示している。

  • エネルギー長官は、高レベル放射性廃棄物処分及び使用済燃料管理の革新的オプションについて、90日以内に報告を行うこと
    • 費用対効果が高く、短期で実施可能であり、サイト選定のステークホルダー関与を考慮した技術オプションを優先
  • エネルギー長官は、放射性廃棄物の電磁的技術による処理について、180日以内に報告を行うこと
    • 技術の科学的基盤の評価、放射性廃棄物及びその貯蔵に対して考え得る効果、原子力産業へのメリット、核セキュリティへの意義を含む
  • 全米アカデミーは、DOEと契約を締結し、さまざまな核燃料サイクル・技術オプションのメリットと可能性について、全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)による評価を実施し、20カ月以内に報告すること
    • 廃棄物輸送・貯蔵・処分などの燃料サイクルの全要素間の関連を考慮に入れて評価を行い、先進炉からの廃棄物の研究も実施

【出典】


  1. 米国における会計年度は、前年の10月1日から当年9月30日までの1年間となっており、今回対象となっている2020会計年度の予算は2019年10月1日からの1年間に対するものである。 []
  2. 米国における会計年度は、前年の10月1日から当年9月30日までの1年間となっており、今回対象となっている2020会計年度の予算は2019年10月1日からの1年間に対するものである。 []
  3. 米国における会計年度は、前年の10月1日から当年9月30日までの1年間となっており、今回対象となっている2020会計年度の予算は2019年10月1日からの1年間に対するものである。 []
  4. プログラム管理費用(19,600千ドル(約22億1,000万円))を含む []
  5. プログラム管理費用(3,400千ドル(約3億8,000万円))を含む []
  6. 上院環境・公共事業委員会では、2019年4月2日に、原子力規制委員会(NRC)の予算要求に係る公聴会が開催されている。 []
  7. 米国における会計年度は、前年の10月1日から当年9月30日までの1年間となっており、今回対象となっている2020会計年度の予算は2019年10月1日からの1年間に対するものである。 []
  8. 米国における会計年度は、前年の10月1日から当年9月30日までの1年間となっており、今回対象となっている2020会計年度の予算は2019年10月1日からの1年間に対するものである。 []
  9. 米国における会計年度は、前年の10月1日から当年9月30日までの1年間となっており、今回対象となっている2020会計年度の予算は2019年10月1日からの1年間に対するものである。 []
  10. 米国における会計年度は、前年の10月1日から当年9月30日までの1年間となっており、今回対象となっている2020会計年度の予算は2019年10月1日からの1年間に対するものである。 []
  11. H.R.1865は、8分野の2020会計年度歳出法案を統合したミニ包括歳出法案として連邦議会両院で審議された。8分野の歳出法案のみの統合であることから、通常の包括(Omnibus)歳出法案に対し、ミニ包括(Minibus)歳出法案と呼ばれている。 []
  12. 廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)については、DOE予算要求書では保障措置・セキュリティ予算の一部として別途6,692千ドル(約7億2,270万円)が要求されていたが、付随説明文書では保障措置・セキュリティ予算の内訳が明示されていないため、保障措置・セキュリティ予算を除くWIPP関連の歳出予算額を示している。 []