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カナダの天然資源大臣は、2002年10月25日、同年6月13日に女王陛下の裁可1 が得られた「核燃料廃棄物の長期管理に関する法律(案)」(略称:核燃料廃棄物法)の施行日を2002年11月15日にすることを発表した。

天然資源大臣は、「本法律の制定は、カナダにおける核燃料廃棄物の長期的な管理に対する解決策を確立する上での重要な第一歩になる」と言及している。同大臣はまた、核燃料廃棄物法は原子力安全管理法と共に、放射性廃棄物の長期的な管理が管理面と財政面での責任の配分、確固としたスケジュールおよび意思決定プロセスを持った形で、カナダの権益を一番に守りながら実施されることを保証する法律になると言及している。核燃料廃棄物法は、核燃料廃棄物の長期的な管理に関し、政府の戦略の重要な柱となるものである。また本法律は、公衆、州政府、廃棄物保有者および他の利害関係者との協議および上院と下院の委員会における数多くの議論に基づいて成立している。

本法律は、原子力企業2 に対する廃棄物管理機関(WMO)【訳者注:廃棄物管理プログラムの実施主体】の設立とWMOの政府への定期的な報告を義務づけている。法律の発効に当たって、WMOが様々な責任を負えるよう、努力がなされてきている。WMOは政府に対し核燃料廃棄物の長期的な管理オプションを提示しなければならない。本法律はまた、汚染者負担の原則に基づき、廃棄物の長期的な管理活動を行うための資金確保策として、信託基金の創設を規定している。これにより、カナダの納税者が今後、廃棄物管理の財政的な負担を負わないことが保証されることとなる。

天然資源大臣は、本法律における法的な枠組みが、核燃料廃棄物の長期的な管理に責任を持った対応を取るというカナダの積極的なアプローチを確立している とコメントしている。本法律は、1996年に政府が公表した「放射性廃棄物の政策的な枠組み」と整合を取ったもので、放射性廃棄物の管理が安全で環境的に健全であり、また費用対効果に見合った、統合的な方法で実施されることを保証するという政府の全般的な公約を反映している。

また本法律では、WMO、原子力事業者、カナダ原子力公社(AECL)の監督責任を政府が行うことを明記している。この監督責任は天然資源省が担当する。天然資源省では、新たな責任と意思決定過程における公衆の参加を促すことを目的として、本法律の施行日である2002年11月15日に「核燃料廃棄物局ウェブサイト」(http://www.nfwbureau.gc.ca/)を開設する予定である。

【出典】

  • カナダ連邦政府天然資源省ホームページ (http://www.nrcan.gc.ca/media/newsreleases/2002/2002127_e.htm)
  • 核燃料廃棄物の長期管理に関する法律(An act respecting the long-term management of nuclear fuel waste)

  1. 上述の女王陛下の裁可とは、連邦議会を通過した法案にカナダの君主である英国国王が法案に対して同意を与える行為のことを言い、カナダでは連邦議会を通過した後にこの裁可を得る手続きがとられている。 []
  2. 核燃料廃棄物法において原子力企業は、オンタリオ・パワー・ジェネレーション社、ハイドロ・ケベック社、ニュー・ブルンスウィック社およびこれらの企業の譲受人、またAECLの譲受人であると定義されている。 []

スイスにおける放射性廃棄物処分概念専門家グループ(EKRA)は、2002年10月9日に放射性廃棄物管理に関して、「スイスにおける放射性廃棄物処分戦略への貢献」という新しい報告書を公表した。EKRAは、放射性廃棄物の処分概念を検討する目的で、1999年に連邦環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)により設立された専門家グループであり、2000年には処分の技術的な観点から「放射性廃棄物の処分概念」という報告書を公表している。一方、UVEKは多くの制度的な問題点にも注目し、EKRAに対して検討を要求していた。EKRAは、今回の報告書で処分事業の進捗が遅い理由を責任体制、法制度、社会的な対話と公衆参加、廃棄物プログラム、研究、資金確保といった観点から分析した上で、以下のような勧告を行っている。

  • 放射性廃棄物の地層処分に対する権限は、連邦レベルに委ねられるべきである。
  • 連邦政府は、放射性廃棄物の処分場の操業開始について拘束力のあるスケジュールを設定し、計画管理体制を整えるべきである。
  • 許可発給および安全規制を行う連邦官庁は、膨大な任務を効果的に遂行するために財政的および組織的に強化がなされるべきである。
  • 放射性廃棄物管理に関連する機関は、達成されるべき目的に則した実施計画を策定すべきである。
  • 放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)の予算、資金計画および事業計画は、独立した組織による評価が行われるべきである。
  • 安全性に関連するすべての活動に対する高質の安全管理システムのための概念が提案されるべきである。
  • 「廃棄物管理協議会」(訳者注:放射性廃棄物管理は社会的な対話が必要となる問題であるため、そのような社会的な対話や公衆参加を促進するための協議会)を設立する根拠が国内外の知見を活用して、用意されるべきである。
  • 独立した学際的な廃棄物管理研究プログラムおよび深い地層への処分実施に関する特定の調査研究プログラムを進め、これに対する財政支援が行われるべきである。
  • 地層処分を実現化するためには、財政面からのバウンダリー・コンディション(例えばモニタリング期間やその技術的な側面など)が明確に規定されるべきである。
  • 「原子力における賠償責任に関する法律」が改正された場合を想定して、安全性の理由から実施される廃棄物の回収に対する保険制度の確立について検討が行われるべきである。

【出典】

  • 環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)連邦エネルギー庁(BFE)プレスリリース http://www.energie-schweiz.ch/bfe/de/information_links/medienmitteilungen/2002/oktober/unterseite1/index.html
  • EKRA「スイスにおける放射性廃棄物処分戦略への貢献」 http://www.energie-schweiz.ch/imperia/md/content/informationenlinks/broschren/13.pdf
  • EKRA「付録:報告書の背景」 http://www.energie-schweiz.ch/imperia/md/content/informationenlinks/broschren/14.pdf

2002年9月30日、米国の原子力規制委員(NRC)は、1月25日に連邦官報に掲載されたネバダ州ユッカマウンテンの放射性廃棄物処分場に関する規則案(10 CFR Part 63の一部修正)に変更を加えずに最終化することを発表した。この規則案は、処分場が性能評価において地下水防護と人間侵入に関する線量基準を満たすか否かを判断する際に、「発生する確率の低い」考慮する必要のない地質学的、水文学的、気候学的FEP(特性、事象、プロセス)を決定するための確率を規定している。今回の規則案は、高レベル放射性廃棄物処分実施から10,000年間に発生する確率が10%未満のFEP(特性、事象、プロセス)を「確率の低い」ものとして、地下水防護と人間侵入を評価するシナリオから除外することとし、具体的な数値を示したものである。

NRCは、ユッカマウンテンに適用する規則(10 CFR Part 63)の策定に当たっては、1992年に制定されたエネルギー政策法(EnPA)に従い、環境保護庁(EPA)の策定した環境放射線防護基準(40 CFR Part 197)を取り入れている。この中でEPAは、地下水防護と人間侵入に関する線量基準について、「確率の低い」FEP(特性、事象、プロセス)または連続するプロセスを除外することを規定している。この確率限度については、EPAはこれを明確化しないまま環境放射線防護基準(40 CFR Part 197)を最終化しており、今回のNRCの決定が待たれていた。

新しい規則案は1月25日にパブリックコメントの得るために連邦官報に掲載されたが、コメントによる修正はなく、NRCは提案した規則案をそのまま最終化することとした。なお、この「確率が低い」FEPは、個人防護基準(15mrem/年、0.15mSv/年)を満たすかどうかを判断する際には考慮する必要がある。

この規則の修正をもって、ユッカマウンテンに係るNRCの安全基準がすべて整うこととなる。

【出典】

  • 連邦官報 Vol. 67 No. 17 (Federal Register Vol. 67 No. 17 Friday, January 25, 2002 / Proposed Rules)
  • 原子力規制委員会(NRC)ニュースリリース 9月30日 (http://www.nrc.gov/reading-rm/doc-collections/news/2002/02-115.html)

スイスのニドヴァルデン州ヴェレンベルグで計画中の低中レベル放射性廃棄物処分場に関して、同州が探査坑掘削許可を与えることについての州民投票が2002年9月22日に行われ、反対57.5%により否決された。探査坑は、処分場としての適性を調査するために掘削される予定となっていた。州民投票で否決されたことにより、ヴェレンベルグ・プロジェクトは、永久にでなければ、数年間、政治的に中断されることとなる。

現在、原子力発電所から発生する放射性廃棄物は、原子力発電所および貯蔵施設ZWILAGで貯蔵されているが、少なくとも40年間の原子力発電所操業から発生する廃棄物を貯蔵するだけの容量は確保されており、低中レベル放射性廃棄物管理についての時間的な問題はない。しかし、貯蔵では廃棄物管理の長期的な解決とはならないため、最終処分場を探すことは引き続き必要である。スイスの原子力発電所の操業者は、連邦政府に対し、低中レベル放射性廃棄物管理問題の解決が実現できるような政治的および法的な環境を整備するよう求めている。

スイスにおいては、すべての廃棄物の処分場に対し、積極的な管理によらないで安全を確保することが求められている。そのため、低中レベル放射性廃棄物処分場においてもこのような安全を確保することが要求されており、この処分場サイトとして1993年にニドヴァルデン州のヴェレンベルグが選定された。処分場の建設および探査坑での地下調査に対しては、連邦からの許可に加え、州からの許可が必要となるため、州はプロジェクトに対する拒否権を有している。ニドヴァルデン州の場合、州からの許可は州民投票の対象となっており、今回の州民投票結果により、この許可は発給されないことになった。

ヴェレンベルグ問題に対する州民投票は、今回で2回目となる。1995年に行われた第一回目の州民投票では、(処分場の建設と操業を行う)ヴェレンベルグ放射性廃棄物管理共同組合(GNW)は、探査坑掘削と処分場建設の申請を同時に行ったために、いくつかの政治団体からの反対され、反対52.5%で否決された。今回は段階的なアプローチが取られ、最初に探査坑に対する州民投票が行われ、この調査結果が望ましいものであった場合は、次の建設許可について投票が行われる予定であった。また、処分概念も、モニタリング期間が延長され、廃棄物の回収が可能となるように改善されていた。このアプローチは、第三者的ワーキンググループ(EKRA等)によって推奨されたものであったが、反原子力グループは、「探査坑は処分場に向けての後戻りすることのできない第一歩を踏み出すことである」としてプロジェクトに反対、州民も許可を拒否した。サイトにおける地層の適性については連邦および専門家により確認されているため、問題は政治的なものとなる。

【出典】

  • ヴェレンベルグ放射性廃棄物管理協同組合(GNW)プレスリリースより抜粋 (http://www.nagra.ch/english/aktuell/presse/wlb.pdf)

2002年9月10日時点でのサイト調査の進捗状況は下記のとおりである。

(1) 空中物理探査

2002年の夏から開始されたヘリコプターによる空中物理探査は、当初の予定より多少遅れて2002年9月18日に終了する予定である。遅延の理由は、測定機器に技術的な問題が生じたことと、強風のために数日間測定を行うことができなかったことである。

(2) ボーリング調査

最初のボーリング孔の掘削は、週4日24時間体制で実施されており、現在地下458mに達している。金曜日には機械および測定システムの点検が行われ、掘削は行われない。現時点での評価としては、亀裂の発生頻度が1mあたり1カ所程度であることと、地下水の流入量が少ないこととが報告されている。

(3) その他の調査

上記に加えて、現在、Geocon社によるGPSの設置、スウェーデン地質調査所(SGU)による地質調査、農業大学による土壌調査が行われている。また、2002年9月中は、SGUにより川、湖、海から水の採取が行われる予定である。

(4) 準備状況

エストハンマル自治体におけるサイト調査エリア

調査地点へのアクセスを容易にするためのサイト内道路改良計画が、県域行政機関と森林保護機関から許可された。整備予定は図に示されているとおりで、特にブールンド湾周辺の道路(図中実線)が整備される。カーブを緩やかにして補強工事と舗装を行うとともに、側溝を敷設し、電線および光ファイバーケーブルを設置する予定である。ストゥールシェーレット(第三ボーリング孔近辺)への道路(図中点線)は、周辺の牧草地・遊牧地保護の観点から舗装工事のみが行われる。工事は2002年末までに終了する予定である。

これにあわせて、第二、第三のボーリング孔を掘削するための準備が行われている。ボーリング調査にあたっては、まず表層を剥いで新鮮部を露出させ、分布図のデ-タを取得するために岩種と亀裂を調査し、その後砂利を敷き詰める。第二ボーリング孔では現在調査が行われており、第三ボーリング孔でも引き続き作業が実施される予定である。これらの作業は、2002年秋のうちに完了する予定である。

(5) サイト見学

2002年の夏期には、フォルスマルク発電所の見学ツアーの一環として、ボーリング調査場の見学が行われた。これまで約3,000人がボーリング調査を見学している。

なお、弊センターでは、今後も随時サイト調査の状況について報告予定である。

【出典】

  • SKBニュースレター2002年9月10日号

2002年7月29日、英国の環境・食糧・農村地域省(DEFRA)は、放射性廃棄物の管理に関する次の協議段階についての発表を行った。これは、2001年9月の英国政府とスコットランド、ウェールズ、北アイルランド行政府による「放射性廃棄物管理に関する協議文書」の発表以降、半年間にわたって行われてきた協議が今年3月12日に終了し、その協議報告書「放射性廃棄物管理に関する協議文書:協議文書への見解の概要、2001年9月~2002年3月」が出されたことを受けたものである。なお、管理対象となっている廃棄物は、固体の長寿命放射性廃棄物で、現在貯蔵中のものが1万トン以上、将来の発生が50万トンと見込まれる廃棄物である。

環境・食糧・農村地域省は、まず、放射性廃棄物管理方法のレビュー・プロセス(検討経緯)を監督するための独立の組織を2002年の末までに設立するとしている。このレビュー・プロセスにおいては、利害関係者、公衆、そして政府各省庁の見解を求めることになる。

上記の新しい組織は、公衆の信用を勝ち得ることができ、開かれた、透明性のある包括的な方法で運営されるべきであるとされている。また、レビューは利害関係者や公衆が関与した形で行われなければならないとされている。レビューの第1ステップは、対象となる廃棄物、各廃棄物の管理方法、それぞれの管理方法が評価されるべき基準について、広く合意を得ることによって、議論のための枠組みを設定することである。続く第2ステップは、今後必要とされる新しい研究の提示も含めて、それぞれの管理方法についての評価を行うことである。最終ステップでは、関係大臣への勧告を作成するとされている。

また、「放射性廃棄物管理に関する協議文書」で示された5つの段階の協議プロセスについては、これまでの協議で得られた様々な見解と研究の結果を考慮して、以下のような4つの段階からなるプロセスに修正されている。その第1段階は「放射性廃棄物管理に関する協議文書」の発表と協議であり、次の第2段階は、今回発表された新しい独立組織の設立によって始まる。この第2段階では、管理方法のレビューが行われ、政府決定の発表と説明がなされるまで続けられる。第3段階は、2006年頃となる見通しで、サイト選定基準を含む、政府決定が実行される方法についての公開討論がなされる。最後の第4段階は、2007年頃になり、必要な法整備をも含めた実行プロセスが開始される。

さらに今回の発表では、廃棄物管理方法の評価において、現在廃棄物として区分されているものだけでなく、使用済燃料と分離されたプルトニウムやウランも含まれるとしており、長期間において廃棄物として管理される可能性のあるその他の物質も対象とすることが重要であると明言されている。

今後の予定として、2002年の夏から秋にかけて、新しい独立組織とその権限、第2段階についてのより詳細な提案等が発表されることとなっている。

【出典】

  • 英国環境・食糧・農村地域省プレスリリース (http://www.defra.gov.uk/news/2002/020729c.htm)
  • 英国環境・食糧・農村地域相の議会への書簡 (http://www.defra.gov.uk/environment/radioactivity/waste/pdf/radwaste_sofs-letter.pdf)
  • 「放射性廃棄物管理に関する協議文書:協議文書への見解の概要、2001年9月~2002年3月」 (http://www.defra.gov.uk/environment/radioactivity/waste/pdf/radwaste_response-summary.pdf)

2002年7月23日、米国大統領はユッカマウンテン・サイトの立地承認に関する連邦議会の合同決議(H.J.RES.87)に署名をした。放射性廃棄物政策法(NWPA)第115条(c)では、処分場の立地承認決議を可決した場合、同決議は法律となることが規定されており、今回の大統領の署名により、ユッカマウンテン・サイトへの処分場の立地承認決議は法律として成立したことになる。

7月23日に出された大統領報道官の声明においては次のように述べられている。10年にもわたる科学的研究の末に、米国の高レベル放射性廃棄物を安全に処分する処分場の設置について、次の段階に進むことが認められることとなった。現在、高レベル放射性廃棄物は39の州の131カ所で一時的に保管されている。ユッカマウンテン・プロジェクトを成功裏に完了させることは、米国が環境と市民を守るために、放射性廃棄物を処分する安全で確実な地下施設を持つことを保証することになる。

一方、この立地承認決議への大統領の署名を受けて、ネバダ州知事は同日コメントを発表した。その中で同知事は、大統領が立地承認決議に署名したという事実は、ただ政治的なプロセスが終了したということに過ぎないと述べている。また、ユッカマウンテンが高レベル放射性廃棄物を処分するのに安全な場所ではないという点について、公平な裁判官が事実と科学的な議論を聞く場となる連邦裁判所において、ユッカマウンテン・プロジェクトを覆すための最大の機会が得られると信じていると述べている。このほか、ユッカマウンテン・プロジェクトに関する建設等の許認可を判断する原子力規制委員会(NRC)に対しても、その責任の重要性から徹底的な科学的検証の実施を訴えている。

【出典】

  • ホワイトハウスのプレスリリース
    (http://www.whitehouse.gov/news/releases/2002/07/20020723-2.html)
  • ネバダ州のプレスリリース
    (http://gov.state.nv.us/pr/2002/7-23YUC.htm)
  • 1982年放射性廃棄物政策法(1987年修正)
    Nuclear Waste Policy Act

2002年7月9日、米国の上院本会議は、米国における高レベル放射性廃棄物処分場サイトとしてネバダ州のユッカマウンテンを認める決議案を承認した。この決議案は、2002年4月8日の地元ネバダ州知事による不承認通知を覆し、ユッカマウンテン・サイトを承認するためのものである。これにより1982年放射性廃棄物政策法(1987年修正)において唯一のサイト候補地とされてきたユッカマウンテンが最終的に承認され、今後は処分場建設の許認可手続が開始されることになる。

ネバダ州知事の不承認を覆してユッカマウンテンが高レベル放射性廃棄物処分場サイトとして承認されるためには、連邦議会上下院における過半数での承認決議が必要とされていた。連邦議会では、既に2002年5月8日に下院本会議、2002年6月5日には上院エネルギー・天然資源委員会で各々承認が行われており、残すは上院本会議のみとなっていた。今回の上院本会議の承認により、1982年放射性廃棄物政策法(1987年修正)に定められたサイト決定手続は最終的に完結したこととなる。

現在ネバダ州から合計5件の訴訟が起こされてはいるが、基本的な今後の動きとしては、実施主体である米国エネルギー省(DOE)が建設許可申請を原子力規制委員会(NRC)に提出することとなる。1982年放射性廃棄物政策法(1987年修正)の規定では、この建設許認可申請はサイト決定から90日以内とされているが、DOEに拠れば申請書の提出は遅れる見込であり、2002年2月のエネルギー長官から大統領へのサイト推薦書の中では2004年末の予定と述べられている。

【出典】

  • 米国エネルギー省(DOE)のプレスリリース (http://www.energy.gov/HQPress/releases02/julpr/pr02140.htm)
  • 1982年放射性廃棄物政策法(1987年修正) (Nuclear Waste Policy Act

フィンランドでは、処分場の建設前に地下特性調査施設(ONKALO)を建設し、処分場予定地の地下情報を集めることが計画されている。フィンランドの実施主体であるポシヴァ社(Posiva Oy)は、6月上旬、地下施設までのアクセス方式として斜坑方式を採用することを決定した(下図参照)。

計画によれば、地下特性調査施設(ONKALO)の建設は、許可取得後、2004年に開始される予定である。フィンランドではエウラヨキ自治体のオルキルオトを使用済燃料の最終処分場予定地とする原則決定(詳細は こちら)が2001年5月に議会で承認されており、現在は最終処分場の建設許可申請に必要とされる地下の詳細情報を集めるため、地下特性調査施設(ONKALO)建設のための準備が進められている。

ONKALOは、処分場が建設される予定の深さ(地下約400~500m)に建設され、最終的には処分施設の一部として使用される予定である。地下にアクセスする方式として、これまで立坑方式(地上より垂直に掘削を行い、エレベータ等により地下に達する)と、斜坑方式(地上より斜めにトンネルを掘り進み、トラックなどにより地下に達する)とが検討されてきたが、今回斜坑方式を採用することに決定したものである。トンネルの総延長距離は約5kmである。主要調査深度(~400m)における調査活動は、建設開始から3~4年後には開始できる見込みである。

地下特性調査施設(ONKALO)が建設され、地下特性調査が完了した後は、実際の処分場施設の建設許可、建設へと進むこととなり、使用済燃料の最終処分は2020年には開始される予定である。

地下特性調査施設(ONKALO)のレイアウト

【出典】

  • ポシヴァ社のプレスリリース http://www.posiva.fi/englanti/index.html

2002年6月13日、カナダにおける高レベル放射性廃棄物管理の枠組みを定めた「核燃料廃棄物の長期管理に関する法律(案)」(核燃料廃棄物法)がカナダ連邦議会の上院において可決され、同日、女王陛下の裁可1 が得られた。この法案は、2001年4月25日に連邦天然資源省(NRCan)のRalph Goodale大臣によって下院に提出されており、既に2002年2月26日に下院を通過していた。なお、本法律の施行日については現在確認中である。

核燃料廃棄物法は、法律の目的、適用、廃棄物管理組織、資金確保、廃棄物管理組織による研究、廃棄物管理組織による報告、アプローチの変更、受益権者による取消し、記録、会計帳簿および財務諸表、違反罰則、施行の各規定項目から構成されている。本法律の主なポイントは、原子力企業2 に対し、廃棄物管理プログラムを実施する主体として廃棄物管理機関(WMO)を設立すること、また、廃棄物管理のための資金確保の方策として信託基金を創設すること等を規定している点である。WMOは、以下の3つの核燃料廃棄物管理アプローチについての研究を実施し、連邦天然資源(NRCan)大臣に研究成果を提出しなければならないとされている。

  1. カナダ楯状地での深い地層中への処分。この処分方法は、1994年にAECLが作成した「カナダの核燃料廃棄物の処分概念に関する環境影響評価書」に記述された概念に基づくものであるとともに、1998年に環境評価パネルが公表した「核燃料廃棄物管理と処分概念の環境評価パネルの報告書」で説明されている見解を考慮したものである。
  2. 原子力発電所サイト内での貯蔵。
  3. 地上または地下での集中貯蔵。

さらに、WMOは核燃料廃棄物法に基づき、諮問会議を創設しなければならない。この諮問会議の役割は、廃棄物の長期管理に対し提案されたアプローチおよび要求された報告書を吟味しコメントすることである。

今後の予定として、新設されるWMOは、上述の3つの核燃料廃棄物管理アプローチについての研究を法律の施行後3年以内に連邦天然資源大臣に提出しなければならない。また、原子力企業は、法律の施行後10日以内に信託基金に第一回目の拠出金の納付を行うよう求められている。

【出典】

  • カナダ連邦議会ホームページ http://www.parl.gc.ca/common/Bills_ls.asp?lang=EParl=37&Ses=1&ls=C27&source=Bills_House_Government
  • 核燃料廃棄物の長期管理に関する法律(An act respecting the long-term management of nuclear fuel waste)

  1. 「女王陛下の裁可」とは、連邦議会を通過した法案に国王が法案に対して同意を与える行為のことを言い、カナダでは連邦議会を通過した後にこの裁可を得る手続きがとられている。 []
  2. 核燃料廃棄物法において原子力企業は、オンタリオ・パワージェネレーション社、ハイドロ=ケベック社、ニューブランズウィック社およびこれら の企業の譲受人、またAECLの譲受人であると定義されている。 []