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2003年7月22日、原子力規制委員会(NRC)は、エネルギー省(DOE)によるネバダ州ユッカマウンテンにおける高レベル放射性廃棄物の地層処分場の建設認可申請を審査するためのレビュープランの最終版(NUREG-1804、Final Rev. 2)を公表した。 2003年3月24日には、今回の最終版の草案が情報提供のために公開されており、NRCの委員会(NRC内の意思決定を行う委員会)による最終的な承認が待たれていた

このレビュープランについては、2002年3月に草案が公表されてから2002年8月12日までの5ヶ月間にわたり、パブリック・コメントが受け付けられた。NRCは、最終的に、NRCの諮問機関である放射性廃棄物諮問委員会(ACNW)からのコメントも含め、約1,000のコメントを受領したほか、ネバダ州において同草案についての公聴会を3回開催している

今回の最終版の公表を受けて、こうしたパブリック・コメントの要約やそれに対するNRCの回答、最終版に盛り込まれた修正点等が連邦官報に掲載される予定である。

なお、「ユッカマウンテン・レビュープラン最終版」はNRCのウェブサイト(http://www.nrc.gov/reading-rm/doc-collections/nuregs/staff/sr1804/r2/sr1804.pdf)から、PDFファイル版を入手できる。

【出典】

  • 2003年7月22日付けNRCニュースリリース (http://www.nrc.gov/reading-rm/doc-collections/news/2003/03-098.html)
  • ユッカマウンテン・レビュープラン最終版 (http://www.nrc.gov/reading-rm/doc-collections/nuregs/staff/sr1804/r2/sr1804.pdf)

2003年7月16日、環境・食糧・農村地域省(DEFRA)のマーガレット・ベケット大臣は、新たに設置される放射性廃棄物管理委員会(CoRWM)の委員長として、キャサリン・ブライアン女史を指名したことを明らかにした。CoRWMは「放射性廃棄物管理に関する協議文書」で示された協議プロセスの下に、英国の放射性廃棄物の長期的な管理を最良の方法で行うために、政府に勧告を行う責任を有する組織として設置されることが決定されていた

CoRWMの委員長と12名の委員については、3月末に全国紙に募集広告が掲載され、400件を超える応募があった。他の委員の選定には委員長自身も参加することになっており、2003年10月までには残りの委員の選定を終え、CoRWMの活動を開始させる見通しが示されている。CoRWMへの委任事項として、2005年末までに政府に勧告を行うこと、そのために作業計画を準備し、早い段階で政府の同意を得ること、6ヵ月毎に政府と会合を持ち、議会に提出する年次進捗報告書を作成することが求められている。政府はCoRWMによる勧告を受けて、それらをいかに実施するかについての判断を2006年頃に行うとしている。

今回、3年間の任期でCoRWMの委員長に指名されたキャサリン・ブライアン女史は、2002年10月より政府の野生生物に関する諮問機関である自然保護合同委員会の委員長を務めている。ブライアン女史は、植物学、地理学の学士号、生物学で修士号を取得しており、以前にはイングランドとウェールズの環境規制機関(Environment Agency)とその前身の機関の上級職、スコットランド北部水道局の最高幹部を歴任している。

また、ベケット大臣は、英国Nirex社の将来に関する政府の意向も表明しており、この中で、政府は、Nirex社を放射性廃棄物のコンディショニングとパッケージングに関する基準についての重要な役割を担っていることに加えて、CoRWMが検討する放射性廃棄物の管理方法についての広範な知見を有する組織として位置づけている。さらに、Nirex社が、CoRWMが見解をまとめて管理方法を勧告する際に、支援を行うことができる組織にすることが重要であるとしている。政府は、Nirex社の原子力産業界からの独立と政府による管理の強化に向けた最良の方策を模索するため、英国核燃料公社(BNFL)、英国原子力公社(UKAEA)、英国エネルギー社(BE)等のNirex社の株主と協議を行い、今秋にも適切な方法を確立し、公表したいとの考えを示している。

今回のNirex社の将来に関する政府発表について、Nirex社は同日声明を発表し、Nirex社を原子力産業界から独立させた組織とするという政府の意向に対して全面的な歓迎の意を示した。Nirex社の取締役のクリス・マレー氏は、独立したNirex社は、持続可能な長期政策の策定に対して、より正当な形での寄与が可能になると述べている。また、今回のNirex社に関する政府の意向表明は、CoRWMの委員長の指名、6月の原子力廃止措置機関(NDA)設立に向けた法案の草案発表とともに、政府が放射性廃棄物管理問題について、今の世代が責任を持って対処するという決断を下したことを示しているとの見解を述べている。

【出典】

  • 環境・食糧・農村地域省(DEFRA)ウェブサイトの7月16日付けのニュースリリース (http://www.defra.gov.uk/news/2003/030716d.htm)
  • 英国Nirex社ウェブサイトの7月16日付けのニュースリリース (http://www.nirex.co.uk/news/na30716.htm)

2003年7月17日、米国の上院歳出委員会は、高レベル放射性廃棄物処分を含むエネルギー関係等の2004年度予算の歳出法案を承認した。また、下院の歳出委員会においては、2003年7月15日に同様の歳出法案が承認されていた。ただし、両院の歳出法案に織り込まれたユッカマウンテン処分場関連予算の金額は、下院案では約7億6,500万ドルとエネルギー省(DOE)の要求額を上回っているのに対し、上院案では2003年度予算額をも下回る約4億2,500万ドルとなっており、大きな隔たりが生じている。今後は、上院、下院各々の本会議においてこれらの歳出法案が審議されることとなる。

下の表は、今回の上院、下院の歳出法案におけるユッカマウンテン処分場関連予算金額を、DOEの予算要求金額、2003年度予算金額と比較したものである。なお、2003年度のユッカマウンテン処分場関連予算については、約4億6,000万ドルとなっているが、これは当初の要求金額を約1億3,000万ドル下回るレベルで決定されていた。下院の2004年度歳出法案の金額は、2003-2004年度の2年間合計でもDOEの要求額を上回るレベルとなっている。

   2004年度金額  対DOE要求比  対2003年度予算比
上院歳出法案  4億2,500万  △1億6,600万  △3,200万
下院歳出法案  7億6,500万  +1億7,400万  +3億800万

(単位:USドル)

【注】
米国における予算年度は前年の10月1日から当年9月30日までの1年間となっている。予算承認に当たっては13の分野別の歳出法が制定されることとなっており、高レベル放射性廃棄物処分を含むエネルギー関係では「エネルギー・水資源歳出法」が制定されることとなる。ただし、2003年度の予算は大幅に遅れて決定され、歳出法も包括的に制定されていた

【出典】

  • 上院歳出委員会プレスリリース (http:/appropriations.senate.gov/releases/record.cfm?id=206376)
  • 下院歳出委員会プレスリリース (http://www.house.gov/appropriations/news/108_1/04ewfull.htm)

原子力規制委員会(NRC)の諮問機関の一つである放射性廃棄物諮問委員会(ACNW)は、2003年6月9日付けの原子力規制委員会(NRC)委員長に宛てた書簡報告において、全米研究評議会(NRC)1 が発表した報告書「One Step at a Time:高レベル放射性廃棄物の地層処分場の段階的開発」に関するコメントを発表した。この全米研究評議会(NRC)の報告書は、エネルギー省(DOE)民間放射性廃棄物管理局(OCRWM)が全米研究評議会(NRC)に、高レベル放射性廃棄物処分場の段階的開発に向けた戦略について助言を求めて委託していたもので、2003年2月に発表されている。

同報告書では、処分場開発計画のために、継続的な知識の取得と柔軟性の維持に基づく慎重な進め方に重点を置いた「適応性のある段階化」(Adaptive Staging)についての体系的な枠組みを提示するとともに、このアプローチを実際に適用可能にするための提案がなされている。同報告書は、ユッカマウンテンにおけるDOEの処分場計画について、部分的には「適応性のある段階化」の原則に沿うものであるが、全体的なアプローチとしてはより「直線的」であり、「適応性がある」とは言えないと指摘している。

これに対してACNWは、この「適応性のある段階化」は、柔軟性のある、事業開発のマイルストーンが事業の全期間を通じて反復的に再評価される意思決定手続であり、認可申請の前および後における 原子力規制委員会(NRC)の現在の手続と非常に似た考え方であると述べている。特に、ユッカマウンテン認可申請の評価のために開発した現在の計画および手続は、DOEと原子力規制委員会(NRC)間における対話型の戦略を組み込んでおり、すでに十分に反復的で、適応性があるとの考えを表明している。具体的な例として、主要な技術的課題(KTI: Key Technical Issue、詳しくは こちら)の開発、評価、解決のプロセスが認可前段階の時期における情報の進展と精緻化を促し、より改善された認可申請を可能にしている点を挙げている。

また、ACNWは、同報告書における「適応性のある段階化」を取る上で、「小規模でのパイロット段階」および処分場定置前に廃棄物を保管および混合するために用いる「バッファ貯蔵施設」概念の導入を推奨していることについて、ユッカマウンテン計画に不必要な混乱と遅延をもたらしかねないと指摘している。

ACNWは、同報告書は利害関係者の参加、公衆の信頼の醸成、効果的な情報伝達戦略に関する手引きを提供するもので、これらの示唆は有用であるが、同報告書はあくまで処分場一般を対象とする性格のものであると述べている。また、同報告書に記述されている手引き、実施面等については、原子力施設の許認可の観点からは特には新しいものではないと結論づけている。

【出典】

  • ACNWの原子力規制委員会(NRC)委員長宛ての2003年6月9日付け書簡報告 http://www.nrc.gov/reading-rm/doc-collections/acnw/letters/2003/1420195.pdf
  • the National Academiesの2003年2月6日付けプレスリリース http://www4.nationalacademies.org/news.nsf/isbn/0309087082?OpenDocument
  • 全米研究評議会(NRC)の「One Step at a Time:高レベル放射性廃棄物の地層処分場の段階的開発」報告書 http://www.nap.edu/catalog/10611.html?onpi_topnews_020603

  1. 全米研究評議会(NRC)は、全米科学アカデミー(NAS)、全米工学アカデミー(NAE)、医学院(IOM) と共に”the National Academies”を形成している非政府の非営利団体である。全米研究評議会(NRC)は、 NAS、NAE、IOMの実働組織として、科学技術的調査、勧告などを政府各機関および議会に提供する役割を担っている。 []

諸外国では、高レベル放射性廃棄物を含む放射性廃棄物の管理に必要な費用を賄うために様々な形で資金確保が行われている。日本を含め多くの国においては、基金制度が導入されており、費用負担責任のある電力会社等は決められた拠出金を基金に払い込む方式を取っている。ただし、基金が設けられている場合でも、基金の対象となる費用の範囲は国により異なっている。

一方フランス、ドイツ、英国では放射性廃棄物処分に関する基金制度が設けられていないため、廃棄物発生者が、各々に将来に必要な資金を引当金として内部留保している。最近、スウェーデン・スイス・カナダが2002年度の基金の情報を公表したことを受けて、以下に基金制度の有無別に、高レベル放射性廃棄物処分に関連する各国の資金確保制度の概要と最新の基金残高または引当金額を表にまとめた。

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カナダの連邦天然資源大臣は、2003年6月25日に、核燃料廃棄物管理の実施を行う核燃料廃棄物管理機関(NWMO)が2002年3月末に公表した年報(既報)に対する声明を公表した。連邦天然資源大臣は、NWMOが広範な対話活動を通じて研究を進めていることを評価し、また「総合的なプログラムを行うにあたっての素晴らしい第一ステップを踏み出した」とコメントしている。大臣による声明には、その他に以下のポイントが示されている。

NWMOの2002年の活動全体に対するコメント:
天然資源大臣は、NWMOの年報で倫理および社会的側面が考慮された廃棄物管理オプションを開発することに重点が置かれている点を評価している。この点は、2002年11月に施行された「核燃料廃棄物の長期管理に関する法律」(略称:核燃料廃棄物法)により要求されている研究の中心事項である。
カナダ政府は、核燃料廃棄物の安全で環境的に健全な管理を優先事項としている。政府は、長期的な管理として今後行われる活動が総合的、かつ経済的に健全な方法で実施されることをカナダ国民に対して保証している。天然資源大臣は、政府の考えと同じことがNWMOの年報でも強調されていることを評価し、核燃料廃棄物の長期的な管理の解決に向けた活動が着実に前進することへの期待を述べている。
広範な対話活動について:
NWMOは2005年11月に複数の長期的な管理オプションを提出することになっており、この目標に向けて研究を3段階で進め、そのなかでさまざまな利害関係者との対話を進めていく方針である。この対話活動では、先住民も含めた、カナダの様々な団体、天然資源省を交えた議論が進められている。天然資源大臣は、これら議論の過程において有益なコンサルテーションが実施されることへの期待を述べている。
「諮問機関」の役割について:
カナダにおける一般公衆の考えを考慮するとともに、NWMOは長期の活動について独立の専門家からの勧告を得る予定となっている。天然資源大臣は、核燃料廃棄物法に基づきNWMOが設置した諮問機関から重要な勧告が得られることへの期待を述べ、諮問機関によって行われるNWMOの活動のレビューがNWMOの活動の透明度を確保することに確信を持っているとコメントしている。
財政的な側面について:
年報では、原子力企業およびカナダ原子力公社(AECL)が信託基金に対して拠出金を支払ったことが示されており、カナダ国民は、原子力業界が、長期的に必要となる財政的な責任を果たす意思があることを確認することができる。
年報での主な記述:
NWMOの年報では、2002年10月の設立後3カ月における以下の活動について報告されている。

  1. NWMOの組織体制
  2. 原子力企業とカナダ原子力公社(AECL)の信託基金設立
  3. 信託基金に対する拠出合計額(5億5000万カナダ・ドル)【429億円(1カナダ・ドル=78円として換算)】

(なお、年報について詳しくは こちらを、また、核燃料廃棄物法の施行およびNWMOの設立については、こちらを参照のこと)

【出典】

  • 天然資源省 核燃料廃棄物局(NFWB)ウェブサイト 大臣の声明   http://www.nfwbureau.gc.ca/english/View.asp?x=645&oid=19#skipnav

2003年6月24日、英国政府は、公的機関の商業用原子力債務の処理を目的とした原子力廃止措置機関(NDA)の設立を規定する「原子力サイトおよび放射性物質法案」の草案を発表した。同草案の発表は、2002年11月の議会開会時において1年間の会期内の実施が予告されていたものであり、政府としての情報公開および透明性についての公約および利害関係者との約束を履行したものである。今回の発表では、NDAの設立に関連する文書類も同時に公開され、同草案については、2003年9月16日を期限としてコメントの募集が行われている。

通称「原子力遺産」とも呼ばれている商業用原子力債務の管理に責任を有する新しい組織の設立については、2001年9月に発表されたコマンドペーパー「放射性廃棄物の安全な管理」の中で原子力債務管理機関(LMA)という名称で、検討オプションの1つとして言及されていた。その後、2001年11月28日に貿易産業相が下院に対して声明を発表し、LMA設立に関する政府の意向を表明した。2002年7月4日にはコマンドペーパー「原子力遺産の管理-実行のための戦略」が発表され、新しい管理計画を実施するための政府提案の詳細が公表され、2002年10月18日までの期間、コメントの募集が行われていた。今回の発表はこの流れを受けたもので、組織の名称をNDAに変更し、設立に向けた法整備への第一歩となっている。

NDAが最初に対象とする商業用原子力債務として、以下のものが挙げられている。

  • 英国原子力公社(UKAEA)と英国核燃料公社(BNFL)によって現在管理・運営されている、1940~60年代に政府の研究計画を支援するために開発された原子力サイトおよび施設、またそれらの計画によって発生した放射性廃棄物、放射性物質、使用済燃料
  • 現在、政府に代わってBNFLが管理・運営している、1960~70年代に設計および建設されたマグノックス炉、マグノックス燃料の再処理のために使用されるプラントや施設および関連する全ての放射性廃棄物および放射性物質

これらの歴史的債務は英国全体の原子力債務の約85%を占め、割引なしの総費用は、2002年3月末の段階で479億ポンド(約8兆9,094億円、1ポンド=186円で換算)と見積もられている。

NDAは、法律に基づくNDPB(政府外公共機関)として、以下の点について政府に代わって機能することが求められている。

  • 原子力債務の戦略的なプログラム管理者として、サイト管理方法を決定する。
  • 最も効果的かつ安全な方法で債務を処理するために、NDAはサイトの許認可取得者(UKAEAおよびBNFL)および、安全、保安、環境規制当局と協力して作業を進める。
  • 競争原理の導入と促進によって、英国内の原子力債務管理および処理についての市場を拡大させる。
  • 管理効率を確保するための枠組みを構築する。
  • 英国の公的機関の商業用原子力債務の管理に対する公衆の信頼感を高める。

今回の草案では、NDAの法的枠組みの確立の他に、最高の技術で最良の結果を得るための競争原理の導入と促進、NDAへの資産と債務の移転と、それに伴うBNFLの再編、処理計画を進めるために必要な権限のNDAへの付与、第三者原子力損害賠償責任に関するパリおよびブラッセル条約に対する変更の履行、1993年放射性物質法の修正による、放射性物質の排出に関する許認可移転プロセスの迅速化等が盛り込まれている。なお、BNFL、UKAEAなどの対象となる機関は、今回の草案の発表について一様に歓迎の意向を示している。

同法案の議会への提出は2003年/2004年の会期中になると予想されている。今後の予定では、NDAの設立は2004年の秋となり、2005年4月には本格的な活動が開始される見通しである。

【出典】

  • 貿易産業省(DTI)ウェブサイトの6/24付けの新着情報 (http://www.gnn.gov.uk/gnn/national.nsf/TI/0980487C8BF0FD3E80256D4F00332B2D?opendocument)
  • 原子力サイトおよび放射性物質法案の草案 (http://www.dti.gov.uk/nuclearcleanup/pdfs/print-05publication.pdf)
  • DTIの過去の原子力債務の管理に関するウェブサイト (http://www.dti.gov.uk/nuclearcleanup/index.htm)
  • BNFLウェブサイトの6/24付けの新着情報 (http://www.bnfl.com/website.nsf)

2003年6月11日、使用済燃料管理及び放射性廃棄物管理の安全に関する条約(略称:放射性廃棄物等安全条約)の締結が国会で承認された。この条約締結の承認を求める議案は2003年3月に国会に提出され、同5月13日に衆議院で承認されており、この度参議院においても全会一致で承認されたものである。今後は、国会での承認を受けて内閣による批准が行われることになる。

放射性廃棄物管理に関しては、1994年9月に開催された国際原子力機関(IAEA)の第38回総会において、放射性廃棄物管理の安全に関する基本原則を定めるための条約を早急に検討開始することが決議されていた。この後、この決議に基づいて検討が行われ、1997年9月にウィーンで開催された外交会議において放射性廃棄物等安全条約が採択された。

放射性廃棄物等安全条約は前文及び44条の本文からなっており、概要は以下のとおりである。

  1. 締約国は、放射性廃棄物等の管理の安全を確保するため、放射性廃棄物等管理施設の立地、設計及び建設、安全に関する評価・使用の各段階において適当な措置をとる。
  2. 締約国は、条約に基づく義務を履行するために必要な法令上、行政上、その他の措置をとり、安全を規律するための枠組みの策定・維持並びにその実施にあたる規制機関を設立または指定する。
  3. 締約国は、放射性廃棄物等の自国から他国への移動は当該国への事前通報・同意がある場合にのみ認められるよう、適当な措置をとる。
  4. 締約国は、条約に基づく義務を履行するためにとった措置に関する報告を提出し、その内容を検討するための会合を開催する。

4に示した報告義務については、3年以内ごとに報告書の提出及び検討会合の開催が必要とされている。

この放射性廃棄物等安全条約は、25カ国による批准・承認等が行われてから90日後にあたる2001年6月18日に発効した。条約は42カ国によって署名されているが、批准・承認等の手続を終えた締約国は、2003年4月15日に批准書を寄託した米国を含めて31カ国となっている。なお、条約の発効後に批准・承認等を行った国については、批准書等が事務局機関であるIAEAに寄託されてから90日後に効力を生じることとなる。

【参考】

【出典】

  • 外務省ウェブサイト (http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/atom/after.html)
  • 国際原子力機関(IAEA)ウェブサイト (http://www-rasanet.iaea.org/conventions/waste-jointconvention.htm)
  • 参議院ウェブサイト (http://www.sangiin.go.jp/japanese/frame/joho5.htm)

2003年5月27日に、スイスにおいて新原子力法が公布された。2003年3月21日に連邦議会で可決されたこの新原子力法は、去る5月18日に行われた原子力利用に関する国民発案1 が否決されたことにより公布に至った(新原子力法制定に関する詳細の情報はこちらを、原子力利用に関する国民発案の否決に関する詳細な情報は こちらを参照)。

同法の施行に当たっては、任意の国民投票2 が適用されることが規定されているため(同法第107条)、公布後100日目に当たる2003年9月4日までに5万人以上の署名が集まれば、2004年に同法施行の是非が国民投票にかけられることとなる。

しかし、グリーンピースのウェブサイト情報によると、スイスにおける主な環境団体は、署名運動を行わない方針を示している。放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)からの情報でも、上述の国民投票の結果により反原子力発案を国民が明確に否決したため、新原子力法施行の是非を問う国民投票を行うための動きは少なく、国民投票には至らないと見ている。

連邦エネルギー庁(BFE)のウェブサイト情報によると、現時点における見込みとして、国民投票が行われない場合の新原子力法の施行は、以下の関連法令の制定・改正を行い、2005年1月1日には可能であろうとしている(今後の新原子力法の発効までの流れは下図を参照)。

  1. 原子力令の新規作成
  2. 放射線防護、緊急時対応、廃止措置基金、放射性廃棄物管理基金に関する政令の改正
  3. エネルギー令の改正

新原子力法が施行されると、原子力発電事業者は、政府に対して「放射性廃棄物管理計画書」を提出しなければならない(第32条)。この計画書は、原子力発電所の閉鎖までの資金計画を含む必要がある。計画書は連邦評議会が指定する機関によるチェックと、定期的な見直しが必要とされている。なお、計画書を提出する具体的な日程は連邦評議会が決定するとされている。

新しい原子力法の発効までのフロー図

【出典】

  • 新原子力法(Kernenergiegesetz) 2003.3.21
  • 連邦環境・運輸・エネルギー・通信省ウェブサイト 2003年5月18日プレスリリース (http://www.uvek.admin.ch/gs_uvek/de/dokumentation/ medienmitteilungen/artikel/20030518/01404/index.html)
  • 連邦エネルギー庁(BFE)ウェブサイト (http://www.energie-schweiz.ch/bfe/de/recht/gesetzgebungbund/index/html)
  • グリーンピースのウェブサイト (http://info.greenpeace.ch/de/atom/pressreleases_atom/pr230503)
  • 放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)提供情報より

  1. 国民発案および国民投票はスイスの憲法で認められているもので、国民は憲法の全面改正または一部改正を直接請求出来る権利を有している。連邦レベルでは、憲法の全面改正または一部改正を求める国民発案が提出された後、18カ月以内に10万人の署名が集まれば国民投票にかけらることができる。成立のためには、国民および州の両方で過半数の賛成が必要となる。なお、この場合の国民投票は下記の2)で説明する「任意の国民投票」との比較において、「義務的な国民投票」と呼ばれる。 []
  2. 任意の国民投票とは、連邦法や連邦政府の決定に対して、公布後100日以内に5万人の署名が集まればその施行の是非を国民投票にかけることができるというスイス特有の制度である。 []

フランス放射性廃棄物管理機関(ANDRA)は、2002年5月15日の事故以来建設工事が中断していたビュール地下研究所について、2003年4月16日に補助立坑の壁のコンクリート打ちなどの準備作業を実施し、2003年4月30日に立坑の掘削作業を再開したことを発表した。ビュール地下研究所の掘削作業は、今後夏にかけて段階的に本格化するとされている。なお、工事の再開については、2002年11月に大審裁判所より許可が下されていた。

また、2003年5月19日付けの仏リベラシオン紙は、ANDRA会長のイヴ・ル=バール氏は、地層処分研究についての当初のスケジュールに遅れが生じることは不可避であることを否定しなかったと報じた。1991年の放射性廃棄物管理研究法(詳細は こちら)では2006年の議会への総括評価報告の提出が規定されているが、地下研究所建設の中断などによる地層処分研究の遅れについては、CNEの第8回評価報告書でも懸念が示されていた

さらに、ANDRAは2003年1月から9月までの間に、ビュール地下研究所近傍のシルフォンテーヌ・オン・オルノワ、モントルーイユ・シュール・トナンス、ノメクール、デモンジュ・オー・ゾの4つのコミューンにおいて、7つの新たなボーリング孔の掘削を行うことを発表した。これは、最下部での直径が12cmのボーリング孔を350mから850mの深さで掘削し、地下研究所が設置される粘土層の上下に存在する石灰岩層における地下水の流動特性をより詳細に調べることを目的としているほか、ボーリングコアを収集することで粘土層の鉱物組成の連続性を確認することも想定している。最初に作業が始められたシルフォンテーヌ・オン・オルノワでは、2003年3月29日に掘削が終了している。

このボーリング孔の掘削活動については、CNEの第8回評価報告書において、ビュールにおける地層処分研究の遅れを補うため、特に同サイトの複数の地点でできるだけ速やかに掘削を行い、より詳細な水文地質学的研究の実施を行うべきとの勧告がなされていた。

【出典】

  • ANDRAウェブサイト(http://www.andra.fr/fra/labo/Bure-0001.htm)
  • リベラシオン紙(2003年5月19日付)