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英国政府の環境・食糧・農村地域省(DEFRA)などが設置した放射性廃棄物管理委員会(CoRWM)は、2004年3月31日付けで環境担当大臣1 に提出した活動プログラムをウェブサイト上で公表した。この活動プログラムは、環境担当大臣の合意を得る必要があり、CoRWMの最初の重要な作業とされている。今回公表された活動プログラムの完了時期は2006年11月とされているが、CoRWMはその設置当初に規約として定められていた2005年末の勧告期限では、公衆との協議が十分に実施できず、公衆からの信頼も得られないとしている。

CoRWMは、この活動プログラムは公衆及び利害関係者の懸念などに関連する全ての事項を特定し、数十年間にわたる政府方針の基礎となりうるよう、包括的で、信頼ができ、明確なものでなければならないとしている。また、2001年9月の協議文書「放射性廃棄物の安全な管理」など、1999年の議会特別委員会の報告書の時期以降になされた様々な検討を反映するともしている。
なお、同プログラムは5つの段階に区分されており、その内容は以下のとおりとなっている。

段階 活動プログラム内容 期日
(第1段階)
第2段階以降に向けた準備
暫定報告項目

  • CoRWMの意思決定プロセス
  • 放射性廃棄物管理オプション評価手法
  • 廃棄物インベントリ
  • 廃棄物管理オプションの定義
  • 管理オプションの選別・評価基準

最終報告項目

  • 第2~5段階におけるプログラムの詳細
  • 第1段階における検討報告書
2004年
 9月
(第2段階)
放射性廃棄物管理オプション検討のための枠組策定
中間報告項目

  • 放射性廃棄物管理オプション評価手法
  • 廃棄物インベントリ
  • 廃棄物管理オプション候補リスト
  • 管理オプションの選別・評価基準

最終報告項目

  • 廃棄物管理オプション検討のための枠組
  • CoRWMの意思決定プロセス
2005年4月
(第3段階)
放射性廃棄物管理オプションの評価基準と管理オプション候補の確定
最終報告項目

  • 放射性廃棄物管理オプション評価手法
  • 廃棄物インベントリ
  • 廃棄物管理オプション候補リスト
  • 管理オプションの選別・評価基準
2005年11月
(第4段階)
放射性廃棄物管理オプション候補の評価
放射性廃棄物管理オプション評価結果の報告(草案) 2006年7月
(第5段階)
最終報告
放射性廃棄物管理オプションについての環境担当大臣への勧告 2006年11月

なお、CoRWMは、英国政府に対して放射性廃棄物の長期管理オプションについての勧告を行う責任を有する組織として2003年に設置され、同年11月から活動を開始している。2004年3月には、CoRWMの2003年11月から2004年2月での活動に関する報告書が四半期報告書として公表されている

【出典】

  • 放射性廃棄物管理委員会(CoRWM)から2004年3月31日付で環境担当大臣に提出された「Programme for work 2004-2006」、http://www.corwm.org/PDF/Programme%20of%20work%20-%20for%20presentation%20to%20Ministers.pdf、2004年4月

  1. 環境担当大臣とは、環境・食糧・農村地域省(DEFRA)大臣、スコットランド・ウェールズ・北アイルランドの各行政府における環境大臣とされている。 []

放射性廃棄物管理委員会(CoRWM)は、英国政府に対して2005年末までに放射性廃棄物の長期管理オプションについての勧告を行う責任を有する組織として2003年に設置され、同年11月から活動を開始していたが、2003年11月から2004年2月での活動に関する報告書を四半期報告書として公表した。CoRWMの規約においては、政府との作業プログラムについての合意、6ヵ月毎の進捗報告、年次報告書の提出、四半期ごとの報告書の提出が求められており、今回がその最初の報告となっている。なお、これらの報告書については全て公開されることとなっている。

今回の報告書によると、この約3カ月間の活動について以下のことが報告されている。

(1)委員長の交替

2003年7月、環境・食糧・農村地域省(DEFRA)から委員長として指名されたキャサリン・ブライアン女史が新しい任務に就くため、2003年12月に現委員長のゴードン・マッケロン氏と交替した。

(2)活動状況

委員会の活動は2003年11月に委員の指名によって開始され、同月に初回の会合が開催された。以降、委員会は毎月行われている。初回の会合では、政府がCoRWMに期待していることがDEFRAによって示されるとともに、CoRWMの支援のためにDEFRAの委託のもとロンドン大学によって準備された作業プログラムの概要についての検討が行われた。2004年2月の第4回目の会合以降、委員会は公開となっており、第4回目の会合では50名の一般の参加があった。

委員会は2003年11月の最初の会合において、重要な問題点を理解することと2004年3月の委員会後の政府への詳細作業プログラムの報告という2つの主要課題を確認した。まず、委員会は文献収集や政府の原子力債務管理部門(LMU)(英国の原子力債務については こちらを参照)とNirex社を訪問し、放射性廃棄物管理についての説明を受けるなどを行った。その後、公衆と利害関係者の関与プロセスを中心とした作業プログラムの作成を、2004年3月末の政府への提出に向けて開始した。

委員会は、作業内容や将来行う政府への勧告について公衆から信頼を得るため、透明性を高める方針に合意し、国家機密事項や商業または個人情報について重大な懸念が示されるような例外を除いて、様々な文書などを公開し、一般に入手可能とすることとした。

(3)今後の活動

2004年3月以降、委員会はマンチェスター・タウンホールのような英国各地において開催されることが多くなるとされている。また、環境団体、原子力規制当局、国防省、主な放射性廃棄物発生者である英国核燃料公社(BNFL)や英国原子力公社(UKAEA)から説明を受けたり、カンブリア州セラフィールド及びケースネス州ドーンレイなどの原子力施設のある地域を訪れ、地元組織や住民と会合を持つことになっている。
今後の活動報告書は2004年6月、9月、12月(年次報告書)に公表される予定である。

なお、政府は2005年末までに提出されるCoRWMによる放射性廃棄物の長期管理オプションについての勧告を受けた後、その実施方法についての判断を2006年頃に行うとしている

【出典】

  • 放射性廃棄物管理委員会(CoRWM)ウェブサイト、http://www.corwm.org、2004年4月

ONKALOのレイアウト(地下特性調査計画書より引用)

2004年3月29日、フィンランドの使用済燃料処分の実施主体であるポシヴァ社は、ONKALO地下特性調査施設の建設の第一段階について、建設業者との契約を締結したことをプレスリリースにて発表した。この建設についての主要契約業者は、国内で多くのトンネル工事を何年も手がけているカリオラケンヌス(Kalliorakennus)社とのことである。掘削作業は2004年夏から開始され、約4年ほどかかる予定である。また、同プレスリリースにおいては今回の契約内容について以下のような点が示されている。

  • 岩盤掘削総量 : 180,000m3
  • 深さ417mまでのアクセス坑道の掘削作業など1
  • 坑道の長さ : 4.5km
  • 深さ287mまでの通気及び緊急時の避難用の立坑掘削

ONKALOの建設は第一段階終了後も、深さ約500mまで継続される。最終的にONKALOは長さ5.5kmのアクセス坑道、換気孔、420m及び520mの深さにおける研究地域で構成され、その総容積は33万m3となる。

ONKALO地下特性調査施設は2010年までに建設される予定であり、最終処分場所の一部として使用される予定である。ポシヴァ社の最終処分場の建設申請時期は2012年となっている

なお、ONKALO建設については原子力法上の許可は必要なく、通常の建築法上において2003年8月12日はONKALOに対する建設許可がエウラヨキ自治体から発給されている。

【出典】

  • ポシヴァ社ウェブサイト、http://www.posiva.fi/englanti/index.html、2004年4月
  • ポシヴァ社情報、2004年4月
  • ONKALO-地下特性調査計画書(Posiva 2003-03)」、ポシヴァ社、2003年9月
    (http://www.posiva.fi/raportit/POSIVA_2003-03.pdf) 〔約2.4MB〕
    ※ファイルサイズが大きいのでご注意ください。

  1. 仮設・常設の坑道床、地下水測定用堰、空調、配管、電気配線、防火システム等 []

2004年4月5日、ネバダ州ユッカマウンテン処分場への高レベル放射性廃棄物の輸送は主に鉄道で行うとの連邦エネルギー省(DOE)の決定を、DOE民間放射性廃棄物管理局(OCRWM)がニュースリリースとして発表した。DOEは同時にネバダ州内における鉄道ルートをカリエンテ・ルートに決定したこと、鉄道敷設に向けての環境影響評価を実施していく予定も示している。なお、これらの廃棄物は、現在、全米127カ所で貯蔵されており、一部については道路輸送が必要とされている。

ユッカマウンテン処分場への廃棄物の輸送に関しては、2003年12月に、主に鉄道輸送方法を選択した場合の推奨輸送ルートが決定されていた。ニュースリリースによると、ネバダ州内の既存の鉄道とユッカマウンテン処分場を結ぶ鉄道経路として今回最終的に決定されたのは、推奨ルートとして示されていたカリエンテ・ルートである。また、決定に際して必要とされる意思決定記録(ROD)1 については、2004年4月5日の週内に連邦官報に掲載する予定が示されている。

さらに、DOEのニュースリリースによれば、鉄道建設のために必要となる環境影響評価の実施についての通知も上記RODと共に連邦官報に掲載される予定である。環境影響評価は国家環境政策法の規定により必要とされるもので、カリエンテ・ルートの中での具体的な線路敷設方法について代替案を含めた評価が行われる。ニュースリリースでは、環境影響評価でどのような検討を行うべきかを決定するスコーピングと呼ばれる手続についての公聴会の実施予定も示されている。この公聴会の目的としては、DOEからの鉄道経路及び環境影響評価の進め方についての情報提供や、公衆からのコメント及び情報取得とされている。公聴会は、2004年5月3日~5日にネバダ州内の3カ所で行われる予定である。

なお、輸送に関するDOEのこの決定は、2002年2月のユッカマウンテンサイト推薦に当たって提出されていた最終環境影響評価書に基づくものである。この最終環境影響評価書では、主に鉄道により輸送を行うことが好ましいとのDOEによる評価結果とともに、5ルートが鉄道輸送の経路として評価されていた。今回の決定に当たってはDOEによる補足分析が行われており、決定に伴う環境への影響は最終環境影響評価書において評価されていた範囲内であり、国家環境政策法に基づくさらなる環境影響評価の実施は不要であるとの判断が示されている。

【参考:輸送関係パンフレット】

【4月12日追加:2004年4月8日連邦官報(抜粋)】

【出典】


  1. 意思決定記録(ROD:Record of Decision):米国では連邦政府機関が環境に影響を及ぼす可能性がある措置を実施する際には環境影響評価の実施が国家環境政策法により規定されている。この場合、その最終的な決定内容については、検討した代替案や影響緩和策を含めて「意思決定記録」として連邦官報で告示することが必要とされている。 []

2004年3月26日、米国における超ウラン核種を含む放射性廃棄物(TRU廃棄物)の地層処分場である廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)についての適合性再認定申請書(CRA:Compliance Recertificate Application)が、エネルギー長官から環境保護庁(EPA)に正式に提出されたことが連邦エネルギー省(DOE)のニュースリリースで公表された。同日はWIPPにおいてTRU廃棄物処分が開始された1999年3月26日から5年目で、WIPP土地収用法で定められた再認定申請期限の最終日に当たる。この申請書のドラフトは、既にEPAのウェブサイトで公開されていた

今回のニュースリリースは、WIPPを担当しているDOEニューメキシコ州カールスバッド・フィールド事務所から出されたもので、再認定申請書にはWIPPが操業を開始してからのEPAの処分基準への適合状況や新たに得られた地質学的・科学的データも含まれていることなどが示されている。また、申請書は9,000ページ以上に及ぶが、CD-ROMの配布やインターネット等でも入手可能であることも示されている。下の図は、ニュースリリースに示されたWIPPの処分概念図である。

WIPPの処分概念図 (DOEニュースリリースから引用)

なお、DOEカールスバッド・フィールド事務所の2004年3月30日のニュースリリースでは、「遠隔操作が必要なTRU廃棄物」(RH廃棄物)の処分に関するDOEの特性調査の実施計画がEPAにより承認されたことが伝えられている。RH廃棄物は、既に処分が行われている通常のTRU廃棄物と比較して強い放射能を持つもので、過去の国防活動から発生したものである。このタイプの廃棄物は、WIPPで予定されている処分量全体の約4%を占めるものとされている。処分の実施のためには、RH廃棄物が貯蔵されている13カ所のサイトごとに特性調査及び処分に対するEPAの承認が更に必要なほか、ニューメキシコ州環境省からの有害物質に関する承認も取得する必要がある。

【出典】

カナダにおける核燃料廃棄物管理の実施を行う核燃料廃棄物管理機関(NWMO)は、2004年3月26日に、2003年の年報「対話から意思決定へ:核燃料廃棄物管理」を天然資源大臣に提出、公開した。この年報は、2002年11月に施行された「核燃料廃棄物の長期管理に関する法律」(略称:核燃料廃棄物法)における規定(第16条(1)および第26条(1))に基づくもので、設立後約3ヶ月で発行された第一回目の年報に引き続き、今回が二回目のものである。

この年報によると、2003年における公衆や様々な団体との対話活動として、円卓会議やワークショップの開催のほか、上半期に250回を超える非公式な対面形式の会合をもったこと、全国を対象に1900人規模の電話意識調査を実施したことが紹介されている。また、公衆との議論を進めるために計画された第一段の報告書「適切な問題設定をしているか? カナダの使用済燃料の長期管理」を11月28日に公表し、この報告書についての意見募集の活動を開始したことが示されている。

2004年の活動予定については、公衆との議論を進めるために計画された第二段の報告書「選択肢についての理解」の公表に向けて、核燃料廃棄物の様々な管理アプローチの評価に重点をおいた活動を行うとされている。管理アプローチの評価のために、NWMOは、社会問題、市民の関与、科学、原子力工学、環境保護、経済学、リスク評価などの分野に精通する人から構成される評価チームを結成したことが紹介されている。

年報によれば、NWMOは今後以下の報告書を作成する予定としている。

  1. 2004年中頃に、公衆との議論を進めるための第二段の報告書「選択肢についての理解」の発表
  2. 2005年初頭に、第三段の報告書「進むべき道の選択-草案」の発表
  3. 核燃料廃棄物法に基づき、核燃料廃棄物の管理アプローチの比較評価、実施計画、および最終的な勧告を含む報告書「進むべき道の選択」を2005年11月15日までに天然資源大臣に対して提出

カナダでは核燃料廃棄物管理の資金確保のために信託基金が設置されている。NWMOの2003年度の年報には以下のように、各原子力企業が核燃料廃棄物法に規定された2003年の拠出金を納付したことが示されている。(2002年における拠出金額は既報を参照)

オンタリオ・パワージェネレーション社 1億CAD(85億円)
ハイドロ=ケベック社 400万CAD(3.4億円)
ニューブランズウィック社 400万CAD(3.4億円)
カナダ原子力公社(AECL) 200万CAD(約1.7億円)

(CAD=カナダドル、1CAD=85円として換算)

なお、核燃料廃棄物法では、信託基金に拠出された資金は、最終的な核燃料廃棄物管理アプローチが決定された後、そのアプローチを実施する目的のためだけに引き出すことが可能であると規定されており、現在のNWMOの活動費用は、AECLを除くカナダの原子力企業が、その使用済燃料の保有量に基づいて負担している。

【出典】

  • 核燃料廃棄物管理機関(NWMO)ウェブサイト3月28日ニュースリリース http://www.nwmo.ca/default.htmx?DN=553,50,19,1,Documents
  • From Dialogue to Decision Managing Canada’s Nuclear Fuel Waste, 2004, NWMO
  • 核燃料廃棄物の長期管理に関する法律 (An act respecting the long-term management of nuclear fuel waste)

2004年3月24日、米国の原子力規制委員会(NRC)は、核物質安全・保障措置局内に高レベル放射性廃棄物処分を専門に担当する高レベル放射性廃棄物処分安全部を既存の組織から分離・設置したことをニュースリリースとして発表した。これはNRCによる高レベル放射性廃棄物に関する問題への取組み体制を強化し、ユッカマウンテン処分場の認可に係る包括的な活動を実施するためのもので、3月22日付で組織変更が行われている。

今回の組織変更は、これまでNRC内で放射性廃棄物管理全般を扱っていた放射性廃棄物管理部を分割し、高レベル放射性廃棄物処分安全部及び廃棄物管理・環境防護部を新たに設置したものである。新設の両部の責任者には、従来の放射性廃棄物管理部の副部長及び部長がそれぞれ就任している。NRCは大統領によって任命される委員長を含む5人の委員からなる委員会を核とする組織であるが、委員会の政策や決定を実行するために運営事務局長(EDO)が置かれ、さらにEDOの下には7つの専門局、4つの地域局、及び4つの管理局が設置されている(NRCの組織図はこちら)。

NRCはニュースリリースの中で、今回の組織変更によって組織の効率性が向上し、高レベル放射性廃棄物、廃止措置、環境保護及び低レベル放射性廃棄物の分野における重要な事項に対する資源の集中、取組みの強化が可能になるとしている。

なお、2004年12月にDOEからNRCに提出が予定されているユッカマウンテン処分場建設の認可申請に向けては、安全基準、認可の審査におけるレビュープラン、及び膨大な分量となる申請関連文書を取扱う認可支援ネットワーク(LSN)など、NRCによる認可の審査のために必要な体制も既に整備されてきている。

処分の安全基準については、放射性廃棄物政策法(NWPA)及び1992年エネルギー政策法の規定によってNRCが策定すべきとされたユッカマウンテン処分場の安全基準が、2001年11月に10 CFR Part 63最終規則として定められている。また、DOEによる申請に対してNRCが審査を行い、修正を要求する際のNRCの品質、画一性、一貫性の保証を主目的とするレビュープランについても、2003年7月に公示が行われている。さらに、認可手続に関わる文書を一元管理し、文書のやり取り等に要する時間を短縮することを目的として、関連書類は全てDOEによる申請書提出前にインターネットを通じて利用可能な状態にするための認可支援ネットワーク(LSN)の整備も行われている。

【出典】

放射性廃棄物管理共同組合(Nagra)は2004年3月16日、世論調査会社への委託により、スイス国内で放射性廃棄物の処分に関するアンケート調査を行ったことをプレスリリースで公表した。今回の調査は、2003年11月17日から12月5日にかけて、ドイツ語およびフランス語を話すスイス人1000人以上を対象にしたものであり、放射性廃棄物の処分概念、技術および時間的な面での実現可能性について、スイス国民の考え方を明らかにすることを目的としたものである。調査の結果は以下の通りである。

可能な限り早期の処理を要望

この調査における回答者の83%が、地下深部の地層中に建設された処分施設における放射性廃棄物の安全な処分ができるだけ早い時期に実施されることを望んでいるほか、地表における長期間にわたる中間貯蔵には明確に反対する姿勢を示した。現在すべての放射性廃棄物は、原子力発電所の中間貯蔵建屋、ヴュレンリンゲン中間貯蔵施設(ZWILAG)及びヴュレンリンゲンにある連邦中間貯蔵施設(BZL)において貯蔵されている。

国内における廃棄物処分義務には高い評価

回答した4人のうち3人は、放射性廃棄物をスイス国内の地下深部の地層中に建設された処分施設に処分することを望んでいる。スイスの放射性廃棄物を外国において処分するオプションを支持したのは、わずか17%であった。 

スイスにおける処分は技術的に可能

回答したスイス国民の61%は、スイスの科学者が安全な処分技術を実現できる点について信頼感を抱いている。また回答者の86%は、処分施設のサイト選定が何よりもまず安全性に対する配慮に基づいて行われるべきだという見解を示した。住民の政治的な受け入れまたは地域経済への影響がサイト選定において決定的な役割を果たす可能性があるとしたのは、回答者の13%にすぎなかった。 

スイスでは、高レベルおよび長寿命の中レベル放射性廃棄物については、「処分の実現可能性実証プロジェクト」の報告書が2002年末にNagraから政府に提出されている。同報告書に対する国内外の評価の実施後、2006年頃に連邦評議会が、国内での処分オプションに関する将来の調査をチュルヒャー・ヴァインラント地方の母岩としてのオパリナス・クレイに集中させることを提案する同報告書に対する最終的な評価についての見解を示す予定である 。一方、低中レベル放射性廃棄物については、Nagraによって処分場サイトに選定されていたニドヴァルデン州ヴェレンベルグにおいて、同州が探査坑掘削許可を与えることについて州民投票で否決されたことにより、サイトとして断念することが決定し、実施主体であるヴェレンベルグ放射性廃棄物管理共同組合(GNW)は解散し、調査坑の埋め戻し作業も完了している というのが現状である。

今回の調査結果を受けて、Nagraは、放射性廃棄物の持続的な処分がスイスの国境内で可能な限り速やかに実施されなければならないという判断が明確に示されており、スイス国民の過半数が、科学者が安全な処分のための方策を技術的に実現できるものと考えているほか、処分場サイトを選ぶ際には安全性への配慮が最優先されるべきだと考えていることが明らかになったと考えている。

【出典】

2004年3月18日、米国における超ウラン核種を含む放射性廃棄物(TRU放射性廃棄物)の地層処分場である廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)についての連邦エネルギー省(DOE)による適合性再認定申請書(CRA:Compliance Recertificate Application)のドラフトが環境保護庁(EPA)のウェブサイトで公表された。同サイトでは、DOEが提出した申請書ドラフトに加え、EPAが作成した各章の概要説明も公表されている。

WIPPは、連邦政府の国防活動から生じたTRU廃棄物の処分場としてDOEによって設置された地層処分場である。ニューメキシコ州南東部に位置し、地下約655mの岩塩層にTRU廃棄物の処分が行われている。WIPPの開発は1970年代から行われていたが、最終的には1996年10月に11万ページに及ぶ適合性認定申請書(CCA:Compliance Certificate Application)がDOEからEPAに提出され、1998年5月にEPAによって承認されている。実際の廃棄物の処分活動は1999年3月26日から行われている。

WIPPの規制枠組の基本を定めているWIPP土地収用法では、処分の最終規則(40 CFR Part191サブパートB)への適合について定めており、DOEからEPAに対するCCAと呼ばれる適合性認定申請手続を規定している。同法ではさらに、この認定は定期的な再認定が必要であり、DOEは適合状態が継続していることを示す書類を5年ごとに提出し、EPAは書類受領後6カ月以内に適否の決定を行わなければならないことを定めている。廃棄物搬入後5年が経過する2004年3月26日が最初の適合性再認定申請書の提出期限となる。

今回ドラフトが公表されたCRAと呼ばれる適合性再認定申請書は、全体的には当初のCCAの様式を継承しているが、その後EPAとの間で承認されてきた変更事項も全て織込んで作成されている。DOEによって示された主な変更ポイントは以下の通りである。

  • インベントリ:CCA記載のTRU廃棄物量を最新の情報に更新すると共に、定置済みの数量を記載。
  • 処分場設計:安全性強化等のため設計細部を若干変更。
  • パネルの閉鎖:パネル閉鎖法の設計を具体化。
  • 処分方法:第1パネルへの廃棄物収容に伴い、定置区画の一部変更。
  • 人工バリア:酸化マグネシウムの充填・設置方法を変更。

これらは個々にはEPAとの間で承認されてきたものであるが、CRAでは複合的な実効線量など、こうした変更の複合的な影響についても評価が行われている。

 EPAによれば、DOEが最終的な適合性再認定申請書を2004年3月26日までに提出した後は、最低120日間のパブリックコメント期間が設けられる予定である。EPAの最終決定は、上述の通りDOEの書類提出から6カ月以内に行われることとなる。

【出典】

米国における高レベル放射性廃棄物処分場については、2002年7月にユッカマウンテンが正式に立地サイトに指定され、2004年末予定の認可申請に向けた作業が続けられている。ここでは2004年3月に入って行われたユッカマウンテンに関連する3件の議会証言等から、プロジェクトに関連する最近の動きを報告する。議会証言は、2005会計年度予算、輸送ルートの検討状況、および珪肺症に関するものである。

【2005年度予算関係】

予算に関する議会証言は、2004年3月11日にエネルギー長官が下院歳出委員会エネルギー・水資源開発小委員会で連邦エネルギー省(DOE)の2005年度予算要求についての見解を示したもので、例年行われている。ユッカマウンテン関係は重要な項目として取りあげられ、8億8,000万ドルの要求予算により2004年末までの認可申請が可能となること、歳出予算の大幅増のために放射性廃棄物基金への拠出金を新たな資金確保制度として利用する立法措置を提案していることなどが示されている

プロジェクトの今後の予定としては、従来通り、2004年末に原子力規制委員会(NRC)への認可申請、そして2010年の廃棄物受入れ開始が示されている。

【輸送ルート関係】

輸送関係の証言は、3月5日にラスベガスで開かれた下院輸送・インフラ委員会鉄道小委員会のヒアリングで、DOE民間放射性廃棄物管理局(OCRWM)の担当官が行ったものである。今後の予定に関連するものとして以下のような内容が示されている。

  • DOEは昨年、推奨輸送ルートを発表したが、近い将来に輸送方法と輸送経路選択についての意思決定記録(ROD)1 を発行する。
  • 予定鉄道線路の決定には環境影響評価(EIS)が必要であり、輸送経路選択時に環境影響評価の実施の告示を行う。
  • 輸送ルートの確保のために、DOEは2003年12月末に1マイル幅のルートの土地収用申請書を内務省土地管理局に既に提出した。

【珪肺症関係】

2004年3月15日にはユッカマウンテンにおける作業員の珪肺症問題についてのOCRWM担当官の証言が、上院歳出委員会エネルギー・水資源開発小委員会で行われた。この問題に関しては、ユッカマウンテンにおける坑道掘削作業が開始された1992年から90年代半ばにかけてシリカ(珪石粉)の吸入限度がオーバーしていた時期があったことが判明したことを受けて、2004年1月に全作業員を対象とした珪肺症検査プログラムが発表されていた。なお、現在は規制に適合した作業が行われており、今後の坑道掘削作業の安全性には問題がないとしている。

【出典】

  • 連邦エネルギー省(DOE)ウェブサイト(議会証言コーナー) (http://www.energy.gov/engine/content.do? PUBLIC_ID=15241 &BT_CODE=PR_CONGRESSTEST &TT_CODE=PRESSSPEECH )
  • 民間放射性廃棄物管理局(OCRWM)ウェブサイト(輸送関係証言) (http://www.ocrwm.doe.gov/pm/program_docs/testimonies/03_05_04.shtml)
  • 民間放射性廃棄物管理局(OCRWM)ウェブサイト(珪肺症関係証言) (http://www.ocrwm.doe.gov/pm/program_docs/testimonies/03_15_04.shtml)

  1. 意思決定記録(ROD:Record of Decision):米国では連邦政府機関が環境に影響を及ぼす可能性がある措置を実施する際には環境影響評価の実施が国家環境政策法により規定されている。この場合、その最終的な決定内容については、検討した代替案や影響緩和策を含めて「意思決定記録」として連邦官報で告示することが必要とされている。 []