Top » 海外情報ニュースフラッシュ(全記事表示モード)

スウェーデンの使用済燃料処分の実施主体であるスウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)は、2004年9月30日付のプレスリリースにおいて「研究開発実証プログラム2004」(RD&Dプログラム2004)を作成、規制機関及び政府に提出したことを公表した。使用済燃料の処分について、2006年に封入施設、及び2008年に地層処分場の建設許可申請(詳細は こちら)を控え、放射性廃棄物プログラムは重要な段階にあるとしている。

このプレスリリースでは以下のように述べられている。

キャニスタに関する研究では、銅製キャニスタの溶接方法に関して大きな前進があった。キャニスタ研究所において2つの溶接方法が開発されており、SKB社は2005年にどちらの溶接方法を採用するかを決定する。SKB社は、キャニスタ封入施設の建設許可申請を2006年に行う予定であり、オスカーシャム自治体にある使用済燃料の集中中間貯蔵施設(CLAB)に隣接して建設する計画である。

地層処分場については、現在サイト調査がエストハンマル自治体およびオスカーシャム自治体において行われており、これまでのところ良好な結果が得られている。SKB社は、サイト選定結果、詳細な環境影響評価書を含めて、地層処分場の建設許可申請を2008年に提出する予定である。

また、プレスリリースによると、RD&Dプログラムでは技術面以外の研究も扱われており、社会経済学的な分野、意思決定過程等について8つのプロジェクトが実施されていることが示されている。さらに、RD&Dプログラム2004は、2008年までのスケジュール、達成目標、プログラムを構成する各部分の連携に焦点を当て、今後の行動計画が示すものであると紹介されている。

今後RD&Dプログラム2004は、原子力活動法等の規定により、原子力発電検査機関(SKI)、放射性廃棄物国家評議会(KASAM)により評価が行われ、その後、政府による承認審査を受けることになる。SKIは、レビュー活動の一環として、放射線防護機関(SSI)、大学・研究機関のほか、関係する県域執行機関、自治体、環境保護団体などへコメントを求めて送付し、それらを取りまとめた上でレビューを行う。

なお、2004年10月4日現在で、RD&Dプログラム2004はスウェーデン語版のみが公表されている。これまでのRD&Dプログラムは英語版も公表されている。

RD&Dプログラムとは、原子力活動法の定めるところにより、使用済燃料を含む放射性廃棄物の安全な管理と処分、原子力発電所の廃止措置と解体に関する総合的な研究開発を実施するSKB社が3年ごとに研究開発等の計画を示すために作成、公表しているものである。前回のRD&Dプログラムは、2001年に公表されている

【出典】

  • スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)2004年9月30日付けプレスリリース http://www.skb.se/upload/Foretaget/Media/Pressmeddelanden/PM_FUD04_septEng.pdf

2004年9月16日付けの韓国産業資源部(MOCIE)のプレスリリースにおいて、同年9月15日に締め切られた韓国の中低レベル放射性廃棄物処分場及び使用済燃料中間貯蔵施設に関する誘致の予備申請について、申請を行った地方自治体は無かったことが発表された。中低レベル放射性廃棄物処分場及び使用済燃料中間貯蔵施設の候補サイトの選定については、2004年2月に発表された公告に沿って、住民投票を組み込んだ新しい方式で公募が開始され、同年5月末の時点で誘致請願を行った地域は7市・郡の10地域であった

政府は今回の結果を、自治体が自主的に下した決定であり謙虚に受け止めるとしている。また政府は、放射性廃棄物の処分施設の必要性をあらためて強調するとともに、今後は早々にサイト選定手続方式についての新たな案を策定し、地元住民、社会・市民団体などとの十分な話し合いを経て、国民のコンセンサスが得られるような透明性のある手続きを通じて、放射性廃棄物の管理事業を進めたいとの考えを示している。

一方、2003年7月24日に立地候補地として一旦選定された扶安郡蝟島(プアン郡ウィド)については、2004年2月の告示で、住民投票が実施されて可決した場合には、本申請が完了したものと見なされることが示されているが、政府はこの住民投票の実施は事実上困難と考えている。政府はウィドについて、新たな放射性廃棄物処分施設の推進策を策定する過程で、プアン住民、自治体などと緊密な協議を行うなど、解決策作りに取り組む方針を示している。

なお、2004年5月31日の誘致請願以降の動きとして、誘致地域に対する政府の支援意思を明確にする目的で、「放射性廃棄物処分施設の誘致地域への支援などに関する特別法」についての立法予告が2004年7月12日付けのMOCIEのプレスリリースにおいて発表されている。この立法予告においては、支援対象地域の市、郡、区単位の行政区域への拡大、廃棄物の搬入手数料の新設、誘致地域に提供される特別支援金(約3,000億ウォン(約270億円))の根拠の明確化、誘致地域支援委員会及び誘致地域実務委員会の設置などが示されており、誘致に向けた法制度の整備が進められていた。

【注】
韓国の地方自治体としては、広域自治体(ソウル特別市、仁川などの6つの広域市、道)とその下に基礎自治体(市(シ)、郡(グン)、特別市及び広域市の自治区(グ))があり、この基礎自治体の下部行政単位として邑(ウプ)、面(ミョン)、洞(ドン)がある。ここでの地方自治体は基礎自治体を指す。

【出典】

  • 産業資源部(MOCIE)プレスリリース、2004年9月16日
  • 産業資源部(MOCIE)プレスリリース、2004年7月12日
  • 放射性廃棄物処分施設誘致地域支援などに関する特別法(案)
  • カナダにおける核燃料廃棄物管理の実施主体である核燃料廃棄物管理機関(NWMO)は、2004年9月15日、「選択肢についての理解 カナダの使用済燃料の長期管理」と題する報告書を公表した。この報告書は使用済燃料の長期管理方法の決定に向けた公衆との議論を行うための第2回目の報告書で、第1回目の報告書「適切な問題を設定しているか?」は、2003年11月に公表されている。NWMOのニュースリリースによると、この第2回報告書では、国民の価値観、倫理的考察や技術面での専門家のアドバイスに基づいた枠組みが示されており、以下の4つの点を示すことによって、将来カナダがどのように使用済燃料を管理すべきかについての対話を進めるとしている。

    • NWMOが国民や専門家から学んだことの報告
    • 現在検討されている使用済燃料管理アプローチの記述
    • 管理アプローチを評価する枠組みがどのように構築されてきたかの記述
    • 議論のための管理アプローチの予備的な評価の提示

    また、NWMOが国民や専門家から学んだこととして、全国で開催した対話集会から得た国民の価値観等や第1回報告書に対する意見やアドバイス等が示されるとともに、現在検討されているサイト貯蔵、集中貯蔵、地層処分の3つのアプローチに関する詳細記述及び予備的な評価がなされ、それぞれの利点、欠点が述べられている。なお上記以外のアプローチに関しては、評価の対象外としているが、ある程度、国際的に関心を集めているアプローチ、特に核種分離・変換技術や国際共同処分場に関しては、引き続き注意を払うことが述べられている。

    本報告書では、NWMOの今後の活動として、検討中の管理アプローチそれぞれの経済面での評価を含めた特徴、カナダ楯状地以外の地層での処分、また管理すべき廃棄物のタイプや量及び再利用の可能性を検討していくとともに、管理アプローチの実施計画の策定も始め、これらの作業が終了し、本報告書についての意見を得た後、最終報告書の草案作成に着手する予定となっている。NWMOは、この草案を公表することにより、最終報告書作成以前に国民の意見等を得ることを望んでいるとしている。

    NWMOのウェブサイトでは、NWMOが国民の意見等に今後も継続的に耳を傾けていくことが重要であるとし、本報告書を通して、幅広く意見等を募っており、特にNWMOが提案する管理アプローチを比較するための方法やそれぞれのアプローチの利点、欠点についての意見を求めている。

    今後のスケジュールとしては、2005年初頭に、「進むべき道の選択-草案」という最終報告書の草案を第3回目の報告書として公表し、2005年11月15日に天然資源大臣に対して最終報告書を提出した後、最終的には、2006年に管理アプローチが決定される予定である。

    【出典】

    • 核燃料廃棄物管理機関(NWMO)9月15日付けニュースリリース http://www.nwmo.ca/Default.aspx?DN=740,50,19,1,Documents
    • 核燃料廃棄物管理機関(NWMO)ウェブサイト 9月15日 http://www.nwmo.ca/Default.aspx?DN=164,163,159,18,1,Documents
    • Understanding the choices. The Future Management of Canada’s Used Nuclear Fuel, 2004, NWMO

    欧州連合(EU)のプレスリリースによると、欧州委員会は、2004年9月8日に「使用済燃料と放射性廃棄物の管理に関するEURATOM指令」(案)(以下「放射性廃棄物管理指令案」という)の修正案(以下「修正指令案」という)を閣僚理事会に提出した。この修正指令案は、2003年1月に示された放射性廃棄物管理指令案に対し、欧州議会による修正および閣僚理事会での議論や様々な機関との協議に基づき作成されたものである。主な修正点は、処分サイト開発等の許認可発給までの期限を加盟国自身が設定することや、加盟国が提出を義務付けられている放射性廃棄物管理計画(以下「廃棄物管理計画」という)をレビューする専門家委員会を設立することである。なお、この修正指令案は、同時に提案されていた原子力施設の安全確保指令(案)の修正案とともに閣僚理事会に提出された。

    放射性廃棄物管理指令案をめぐるこれまでの動き

    放射性廃棄物管理指令案は、欧州原子力共同体(EURATOM)条約の第31条および32条に基づいて作成されたもので、2003年1月30日に欧州委員会で採択された後、3月26日に欧州経済社会委員会による見解を受けた上で2003年4月30日に欧州議会と閣僚理事会に提出された。なお、廃止措置を含む原子力施設の安全確保指令案も同時に提案されていた。欧州議会は、2003年12月1日に、放射性廃棄物管理指令(案)の修正提案を作成し、2004年1月13日にこの修正提案を承認していた。しかし、閣僚理事会では、2004年6月28日に理事会結論を採択したが、この中では、放射性廃棄物等安全条約や国際原子力機関(IAEA)による基準やアプローチなどの国際的な枠組みの中での各国の廃棄物管理責任を強調し、EUとして加盟国に対し拘束力のある放射性廃棄物管理指令の採択は行わなかった。今回の修正指令案は、これらの動きを受けて提出されたものである。

    放射性廃棄物管理指令案からの修正点

    今回の修正指令案の中で強調されている修正点としては、処分サイトの開発等に関する許認可発給の期限に関するものが挙げられる。放射性廃棄物管理指令案では、各加盟国は長期的な管理を含めた廃棄物管理計画の作成、提出を義務付ける規定がされており、また、処分に対する適切な代替案がなく、利用できる状態でない場合には、加盟国は廃棄物管理計画に明記すべき放射性廃棄物処分サイトの開発等に関する許認可の発給に具体的期限が示されていた。欧州議会による修正提案では、これらの期限は削除され、各国が独自の期限を設定するように修正されていた。また、閣僚理事会での議論においても、この統一的なスケジュールの設定に対する加盟国の反発が強かったため、今回の修正指令案では、放射性廃棄物の長期管理のためのスケジュールを廃棄物管理計画の中に含めることとし、処分に対する適切な代替案がなく、利用できる状態でない場合には、廃棄物管理計画の中でそれぞれの国が処分サイトの開発等の許認可発給期限を独自に設定できるようになっている。下の表は、放射性廃棄物指令案および修正指令案において、適切な代替案がない場合に必要とされる処分サイトの開発スケジュールに関する規定内容である。

      放射性廃棄物管理指令案
    (2003年1月30日)
    修正指令案
    (2004年9月8日)
    放射性廃棄物処分サイトの開発許認可 遅くとも2008年までに発給を行うこと。(高レベルおよび長寿命放射性廃棄物処分場の場合は地下でのさらなる期間をかけた詳細調査の条件付許認可とすることができる) 廃棄物管理計画に発給の期日を記すこと。
    処分場の操業許認可 高レベル放射性廃棄物に関しては、2018年までに発給を行うこと。 廃棄物管理計画に発給の期日を記すこと。
    なお、加盟国は複数のカテゴリーの放射性廃棄物を同一処分場に処分する決定ができる。
    短寿命の低中レベル放射性廃棄物に関しては、2013年までに発給を行うこと。

    この他に、放射性廃棄物管理指令案では、指令に基づく各国の国内法化期限を2004年5月としていたが、修正指令案では、指令施行後2年以内という期限が設定されている。また、修正指令案では、廃棄物管理計画において加盟国が深地層処分を優先する研究を行うことを求めている。さらに、修正指令案では、加盟国の提出する廃棄物管理計画をレビューするための専門家委員会の設置が謳われている。この専門家委員会は、各加盟国によって任命された専門家によって構成される。

    なお、プレスリリースの中で欧州委員会副委員長は、拡大されたEU内で原子力安全に関して非常に重要なこの修正指令案が閣僚理事会ですみやかに議論され、採択されることを望んでいると述べている。

    【参考】

    • 欧州委員会(The European Commission)
    • 閣僚理事会(The Council of the European Union)
    • 欧州議会(The European Parliament)
    • EU法については 既報を参照。

    【出典】

    • 欧州委員会のウェブサイト プレスリリース(2004年9月8日) http://europa.eu.int/rapid/pressReleasesAction.do?reference=IP/04/1080&format=HTML&aged=0&language=EN&guiLanguage=en
    • 修正指令案 Amended proposal for a COUNCIL DIRECTIVE (Euratom) laying down basic obligations and general principles on the safety of nuclear installations, Amended proposal for a COUNCIL DIRECTIVE (Euratom) on the safe management of the spent nuclear fuel and radioactive waste. http://europa.eu.int/cgi-bin/eur-lex/udl.pl?REQUEST=Service-Search&LANGUAGE=en&GUILANGUAGE=en&SERVICE=all&COLLECTION=com&DOCID=504PC0526
    • 放射性廃棄物管理指令案 Proposal for a Council Directive (EURATOM) on the management of spent nuclear fuel and radioactive waste. http://europa.eu.int/eur-lex/en/com/pdf/2003/com2003_0032en01.pdf
    • 欧州議会修正提案 Report on the proposal for a Council directive (Euratom) on the management of spent nuclear fuel and radioactive waste – Committee on Industry, External Trade, Research and Energy. http://www2.europarl.eu.int/omk/sipade2?PUBREF=-//EP//NONSGML+REPORT+A5-2003-0442+0+DOC+PDF+V0//EN&L=EN&LEVEL=2&NAV=S&LSTDOC=Y
    • 原子力安全に関する閣僚理事会結論 閣僚理事会プレスリリース(2004年6月28日)

    米国のDC巡回区控訴裁判所1 は、2004年9月1日、原子力エネルギー協会(NEI)による環境保護庁(EPA)規則に関する再審理請求を棄却した。NEIは、EPAのユッカマウンテン環境放射線防護基準の一部を無効とするなどの連邦控訴裁判所判決を不服として、控訴裁判所での再審理を2004年8月23日に請求していた。棄却決定から7日後には判決が執行されるため、EPAのユッカマウンテン環境放射線防護基準(40 CFR Part 197)において1万年という基準遵守期間を定めた規定は、2004年9月8日には無効となる。

    ユッカマウンテン環境放射線防護基準(40 CFR Part 197)に定められた1万年という基準遵守期間については、全米科学アカデミー(NAS)の勧告に基づいて同基準を制定することを求めた1992年エネルギー政策法の規定に反するため無効であるとの判決が、2004年7月9日にDC巡回区控訴裁判所から示されていた

    なお、2004年9月7日現在では、NEI、EPA、連邦エネルギー省(DOE)および原子力規制委員会(NRC)からのプレスリリースは公表されていない。

    【出典】

    【2004年9月22日追記】

    本棄却決定を受けて、NEIは9月8日に判決の執行停止の申立てを行った。このため9月22日現在では判決は執行されていない。

    【2004年10月14日追記】

    NEIによる判決の執行停止の申立ては、2004年10月8日に棄却された。なお、ユッカマウンテンに係る判決は棄却決定から7日後に有効となる。


    1. DC・・・コロンビア特別区。DC巡回区控訴裁判所は、米国の首都ワシントンDC地区における訴訟事件を取り扱う。 []

    米国の原子力規制委員会(NRC)は、2004年8月31日のニュースリリースにおいて、連邦エネルギー省(DOE)による許認可支援ネットワーク(LSN)(詳細はこちら)への書類登録証明はNRCの規則に適合してないとの決定を、NRCの原子力安全・許認可委員会(ASLB)が行ったことを公表した。ASLBはNRCの下部組織で、ユッカマウンテン許認可関連書類のLSNへの登録に関する紛争解決に当たる「許認可申請前段階監督官」(PAPO)として指名されていた。米国では、ユッカマウンテン処分場建設の許認可に当たり、関連書類をLSNと呼ばれるネットワーク上で利用可能とすることが必要とされており、DOEによる書類登録証明は2004年6月30日に行われていた

    今回のASLBによる決定は、ユッカマウンテンの地元ネバダ州が2004年7月12日に行ったDOE書類登録証明の削除申立てを受けてなされたものである。ASLBは、2004年7月27日に、ネバダ州、DOEおよびNRCスタッフによる口頭審議を行っていた。ASLBは、DOEの書類登録がNRC規則(10 CFR Part 2)に適合していない理由として次の3点を示している。

    • DOEは登録日を自ら選択できること、書類の発生から登録までに要する時間的ギャップが大きいこと、登録前レビューの不完全さ等を考え合わせると、DOEが誠実に全書類を利用可能にするための努力を果たしたとは認められない
    • 最低限6カ月間はDOEの書類を公に利用可能とすることは、LSNについて規定した10 CFR Part 2 サブパートJの核心部分であることなどから、同規則はDOEの書類がLSNの中に索引付きで登録されることを求めていると解すべきである
    • DOEの登録証明は、基づいた登録方針も不完全で、またDOEが訴訟関係のサポートを委託している会社(CACI社)に引き渡した提出書類に限定したものであり、規則に適合していない

    10 CFR Part 2では、NRCによるヒアリングを含む許認可手続の関係者全てがその関連書類をLSNに電子的に登録することを求めており、ネバダ州およびヒアリング参加者はDOEの書類登録後90日以内に自らの書類を登録することが必要とされている。今回の決定では、この登録期限は、DOEが書類登録の再証明を行ってから90日以内とされることも示されている。

    このASLBの決定に対しては、決定の送達後10日以内にNRCの最上位組織である委員会への不服申立てが可能である。

    【出典】

    【2004年11月16日追記】

    2004年9月10日にDOEは不服申立てを行ったが、2004年11月10日にNRCは申立てを一時未決とする決定を行った。

    カナダにおける核燃料廃棄物管理の実施主体である核燃料廃棄物管理機関(NWMO)は、2004年8月26日のニュースリリースで、使用済燃料の長期管理に対する市民の意見に関する調査プロジェクトの報告書を公表した。このプロジェクトは、全国12の都市で市民との対話集会を開催し、合計462人から得られた意見を分析したもので、研究機関であるカナダ政策研究ネットワーク(Canadian Policy Research Network, CPRN)と合同で行われたものである。

    このニュースリリースにおいて、CPRNの理事長は、使用済燃料の長期管理に関する決定にあたり、以下に示す6つの価値観に従うべきであると市民が述べていることを伝えている。このうち最初の3つは、世代間で権利や責任がどのように分担されるべきかということに、また残りの3つはどのように決定がなされ、誰がその決定をするのかということに関連している。

    ・責任 自らの責任を果たし、自らが作り出した問題への対処
    ・順応性 新たな知識の発展、利用
    ・管理責任 資源を大切にし、将来の世代への健全な遺産を継承する義務
    ・説明責任と透明性 信頼の再構築
    ・知識 現在と将来において、より良い決定のための公共の財産
    ・参加 すべての人が果たすべき役割を持つこと

    また使用済燃料の長期管理にあたり、市民は以下に示すようなことを要望している。

    • 自分たちの使用した電気を作るために発生した廃棄物に関して責任を持ち、現段階で行動すること
    • 将来の世代が新たな知識や技術に基づき、今日の決定に立ち戻ることができること
    • 使用済燃料の長期管理に関する決定に貢献するために必要な情報を適切に受け取れること
    • 情報が提供されているか、政府や企業が役割を果たしているかを監視する専門家や市民の代表からなる独立機関の設置すること

    CPRNの理事長は、最も重要なことは市民がNWMOの行っているアプローチを承認し、将来の意思決定のモデルと考えているということであるとしている。

    NWMOの理事長は、市民が明らかにしたこれらの価値観は、NWMOのこれからの活動に生かされ、使用済燃料の長期的管理方法の最終的な推薦に反映されるであろうと述べている。

    なお、このプロジェクトの対話集会は、2004年1月24日および25日にオタワとモントリオールから始まり、3月27日まで全国各地で開催された。NWMOは、対話集会に先立って2003年11月に、市民との議論を行うために第一回目の報告書を発表している。また、2004年中には、議論のための第二回報告書を発表する予定である。

    【出典】

    • 核燃料廃棄物管理機関(NWMO)ウェブサイト8月26日ニュースリリース http://www.nwmo.ca/Default.aspx?DN=716,50,19,1,Documents
    • カナダ政策研究ネットワーク(CPRN)ウェブサイト http://www.cprn.org/en/doc.cfm?doc=1050

    米国の原子力エネルギー協会(NEI)は、2004年8月23日、環境保護庁(EPA)のユッカマウンテン環境放射線防護基準の一部を無効とするなどの連邦控訴裁判所判決を不服として再審理の請求を行ったことをニュースリリースで公表した。EPAによるユッカマウンテン環境放射線防護基準(40 CFR Part 197)に定められた1万年という遵守期間については、全米科学アカデミー(NAS)の勧告に基づいて同基準を制定することを求めた1992年エネルギー政策法の規定に反するため無効であるとの判決が、2004年7月9日にDC1 巡回区控訴裁判所判決で示されていた

    NEIのニュースリリースでは、再審理を請求した理由として以下のような点が示されている。

    • EPAは、NASの報告書を先ず踏まえた上で、政策上の検討要因を加えて基準を策定したのであり、[法律の規定に]従っている
    • EPA環境放射線防護基準の1万年という遵守期間は、他の放射性廃棄物管理における例(基準)と整合性がある
    • NASは1995年のEPAに対する勧告の中で、NASの調査では科学的なことしか扱っていないため、EPAは規則制定に当たって政策的問題を考慮する必要があると述べている

    また、同ニュースリリースでは、EPAが地下水について独立の防護基準を設けたことが1992年エネルギー政策法違反であるとしてNEIが起こしていた訴訟についても、NEIの再審理請求に含まれていることが示されている。EPA基準における線量限度は地下水からのものも含む全ての経路を考慮しており、基準の追加によって新たに保護されるものは何もないとNEIは主張している。

    なお、連邦控訴裁判所における再審理請求は45日以内までに行うものと規定されているが、この期限を過ぎた2004年8月27日現在でも、EPAや連邦エネルギー省(DOE)からは本件に関する公式なプレスリリースは発表されていない。

    また、EPA基準における1万年の放射線防護の遵守期間がNASの勧告に従っていないとする訴訟は、ユッカマウンテンの地元ネバダ州などがEPAなどを相手取って起こした訴訟であるが、NEIによる地下水防護基準に対する訴訟などと併合して取り扱われていた

    【出典】

    • 原子力エネルギー協会リリース(2004年8月23日)
      (http://www.nei.org/index.asp?catnum=4&catid=615)

    1. DC・・・コロンビア特別区。DC巡回区控訴裁判所は、米国の首都ワシントンDC地区における訴訟事件を取り扱う []

    英国では2004年7月22日にエネルギー法が成立し、同法に基づき原子力遺産と称される英国の過去の原子力債務を管理するための機関である原子力廃止措置機関(NDA)が設置されることとなっている。一方、同時期に環境・食糧・農村地域省(DEFRA)は、放射性廃棄物の処理とパッケージ基準の設定などを現在は行っているNirex社を原子力産業界から独立させる方針を発表するなど、バックエンド事業推進に向けた準備が進められている。以下では、英国におけるバックエンド事業の最近の動向として、NDAの活動準備状況とNirex社の独立についての情報をまとめた。


    NDAの活動準備状況

    NDA長の任命

    2004年7月27日、エネルギー担当大臣のステファン・ティムズ氏はNDA長にアンソニー・クリーバー氏を任命した。同氏は1994年まで英国IBM社、1993年から2001年まで英国原子力公社(UKAEA)の社長を歴任している。

    人員募集

    原子力廃止措置対象サイトとNDAの4つの活動地域(NDAウェブサイトより引用)

    NDAはウェブサイトを立ち上げ、人員の募集の第一段階を開始しており、2004年秋には採用を終了する予定である。人員の募集は、20の原子力廃止措置対象サイトをNDAの本部が置かれるウェスト・カンブリア、オックスフォードシャー支部、チェシャー支部、ケースネス支部の4地域に分けて行われている(右図参照)。

    活動資金

    財務省は2004年歳出レビュー白書において、NDAの年間予算を約20億ポンド(約3,780億円)とすることを決定した。これは政府支出と商業活動からの収入によって賄われる。また、このうちの年間10億ポンド(約1,890億円)以上が、原子力廃止措置の重要性を鑑みて、貿易産業省(DTI)から支出されることになっている。なお、NDAは2005年4月1日から政府外公共機関(NDPB)として活動を開始する予定である。


    Nirex社の原子力産業界からの独立

    2004年7月21日、環境・食糧・農村地域省(DEFRA)は、貿易産業省(DTI)とともに新たに設立する保証有限会社(CLG)1 にNirex社の株式を譲渡し、同社の事業を監視させることを発表した。Nirex社は放射性廃棄物発生者によって1982年に設立、1995年に株式会社とされ、同社の株式は、現在、英国核燃料公社(BNFL)、BNFLの一部であるマグノックス・エレクトリック社、英国原子力公社(UKAEA)、ブリティッシュ・エナジー(BE)社などによって所有されている。また、今回の政府決定は2003年7月のDEFRAによって発表されていた方針に沿ったものであるとされている。なお、放射性廃棄物管理オプションについてのレビューを実施している放射性廃棄物管理委員会(CoRWM)が政府へ勧告を行う2006年に、政府は、放射性廃棄物管理方針及びNirex社の長期展望を決定するとされている。

    新体制においてのNirex社の活動資金は、NDAとの契約及び放射性廃棄物処理とパッケージ基準についての原子力産業界との契約を通して、その大部分が賄われることになる。なお、Nirex社はNDAとは別の独立した会社とされる。

    DEFRAのマーガレット・ベケット大臣によると、2004年10、11月には詳細を詰め、2005年4月1日から新体制に移行したいとのことである。また、Nirex社のプレスリリースによると、同社のクリス・マーレイ取締役は今回設立される新会社によるNirex社の株式取得と原子力産業界からのNirex社の分離についての政府決定を、英国における放射性廃棄物管理の透明性の向上と説明責任を果たすための必要かつ重要な一歩としている。


    【出典】

    • 貿易産業省(DTI)の7月27日付けプレスリリース
      http://www.gnn.gov.uk/environment/detail.asp?ReleaseID=124855&NewsAreaID=2&NavigatedFromDepartment=False
    • 貿易産業(DTI)のウェブサイト、http://www.dti.gov.uk/nuclearcleanup/wn.htm#recruitment、2004年8月
    • 原子力廃止措置機関(NDA)のウェブサイト、http://www.ndajobs.co.uk/、2004年8月
    • 環境・食糧・農村地域省(DEFRA)の7月21日付のプレスリリース、http://www.defra.gov.uk/news/2004/040721b.htm
    • Nirex社の7月21日付のプレスリリース、http://www.nirex.co.uk/news/na40721.htm
    • 総務省、法人制度研究会報告書、平成11年9月、http://www.moj.go.jp/PRESS/990903/990903-1.html
    • 中央経済社、英和会計経理用語辞典[第2版]

    1. 保証有限会社(CLG)とは、1985年会社法に基いた会社形態で、非営利事業などに用いられる。また、会社法上、会社が清算手続きに入った場合、社員は会社の負債について、定款に定めた保証額の限度で責任を負う。なお、1980年12月以降に設立された保証有限会社は株式を発行することができないとされている。 []

    米国の原子力規制委員会(NRC)は、2004年7月30日のプレスリリースにおいて、高レベル放射性廃棄物処分場の建設が予定されているユッカマウンテンに関する同委員会の書類が電子的に利用可能になったことを発表した。今回利用可能となったのは、連邦エネルギー省(DOE)により予定されている処分場建設の申請についてのヒアリングに関係するNRCの文書類で、DOEによる書類は2004年6月30日に利用可能となっていた

    ニュースリリースでは、ユッカマウンテンの許認可手続に参加する全ての者は、その書類を電子形式で利用可能にすることがNRCの許認可手続規則(10 CFR Part 2)で必要とされていると示されている。必要とされる書類は、関係者や関係者になる可能性があるもの及び政府機関が許認可手続において論拠として使用する予定のものなどとされている。(許認可手続規則の詳細は既報を参照)

    NRCは24,000以上の書類を許認可支援ネットワーク(LSN)(詳細はこちら)において利用可能な状態としたことがニュースリリースでは示されている。これらの書類の内、約100点以外は全てLSNに索引登録されてネットワークを通じて利用可能となっている。残りについてはNRCの文書データベース・システムであるADAMSを通じて利用可能となっており、LSNでの索引登録は後日行われるものとされている。

    ニュースリリースではこの他にも、NRCの原子力安全・許認可委員会が書類提出に関する紛争解決に当たること、3名が委員として指名されたことも示されている。

    また、ニュースリリースでは2004年7月9日に示されたDC巡回区控訴裁判所のユッカマウンテンに関する判決についても言及されている。その内容として、同判決及びその持ち得る影響については未だ分析中であり、当面は遅れの出ないように書類をネットワークで利用可能にすることを継続していくとのコメントが示されている。

    なお、NRCのニュースリリースで同判決に関する言及が行われたのはこれが初めてである。

    【参考】
    ・NRC許認可支援ネットワーク(LSN):(http://lsnnet.gov/)
    ・NRC文書データベース(ADAMS):(http://www.nrc.gov/reading-rm/adams/web-based.html)

    【出典】

    • 原子力規制委員会(NRC)プレスリリース(2004年7月30日)
      (http://www.nrc.gov/reading-rm/doc-collections/news/2004/04-089.html)