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ロシアにおける放射性廃棄物管理の実施主体である国営企業ノオラオ社(NO RAO)は、2020年8月26日のプレスリリースにおいて、ロシア中南部のチェリャビンスク州オジョルスク市で計画している浅地中処分場に対して、安全規制機関である連邦環境・技術・原子力監督局(Rostekhnadzor)が立地・建設許可を発給したことを公表した。
NO RAO社のプレスリリースによれば、計画されている処分場の処分容量は22万5千立方メートルであり、主に同じオジョルスク市内で活動している生産合同マヤーク1 から発生する低中レベル放射性固体廃棄物を受け入れる計画である。処分場の建設は2021年から開始する予定であり、建設の第一段階では、管理棟や輸送インフラ、アクセス道路の建設等が実施されるとしている。

低中レベル放射性固体廃棄物の浅地中処分場の立地点(チェリャビンスク州オジョルスク市)

低中レベル放射性固体廃棄物の浅地中処分場の立地点(チェリャビンスク州オジョルスク市)

ロシアではこれまでに、スヴェルドロフスク州のノヴォウラリスク市において、国内で最初となる浅地中処分場の操業が2016年に開始されている。また、NO RAO社は、トムスク州セベルスク市において、シベリア化学コンビナートから発生する低中レベル放射性固体廃棄物を受け入れる浅地中処分場の建設も計画しており、先月2020年7月に連邦環境・技術・原子力監督局から立地・建設許可の発給を受けている

【出典】


  1. 生産合同マヤークでは、使用済燃料の再処理などが行われている。かつては軍事用プルトニウムの生産等を行っていた。 []

ドイツの放射性廃棄物処分実施主体である連邦放射性廃棄物機関(BGE)は、2020年8月21日のプレスリリースにおいて、サイト選定手続きの第1段階となる最終処分に好ましい地質学的な前提条件を満たす「サイト区域」の選定に関して、検討結果を取りまとめた中間報告書を2020年9月28日に連邦放射性廃棄物処分安全庁(BASE)に提出する予定を明らかにした。また、連邦放射性廃棄物処分安全庁も、2020年8月20日のプレスリリースにおいて、サイト選定手続きにおける地域横断的な公衆参加の枠組みとして、「サイト区域専門会議」のキックオフ会合を2020年10月17~18日に開催すること公表した。

■3段階のサイト選定手続きと第1段階で作成される中間報告書の内容

ドイツでは、「高レベル放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に関する法律」(以下「サイト選定法」という)に基づき、2017年9月から高レベル放射性廃棄物処分場の3段階からなるサイト選定手続きが開始されている 。第1段階ではドイツ全土から地上探査サイト地域を選定し、第2段階ではサイト地域の中から地下探査サイトを選定し、第3段階では地下探査サイトの中から処分場サイトを選定していく流れとなっている(下表参照)。なお、サイト選定法では、2031年に処分場サイトを決定することを目標としている。

BGEは、2017年のサイト選定手続きの開始後、第1段階の中間目標である最終処分に好ましい地質学的な前提条件 を満たす「サイト区域」の選定に向けて、各州の地質調査所などが保有する全国の地質学的データの収集を行うとともに、地球科学的な除外基準及び最低要件の適用方法の検討等を行ってきた 。第1段階の中間報告書は、BGEによる検討の結果として「サイト区域」を提案するものである。なお、第1段階の目標である地上探査サイト地域の選定は、サイト区域を対象に行われることになっている。

BGEは、今後2020年9月28日の中間報告書の提出に向けて、動画等による一般向けの情報コンテンツの充実を図っていくほか、中間報告書の公表前から電話や電子メールを通じた問合せや意見の受付を行うなどの情報提供等の活動を行っていくとしている。

表:ドイツにおける高レベル放射性廃棄物処分場のサイト選定手続き
サイト選定段階 活動
第1段階
地上探査サイト地域の選定
ドイツ全土を対象にサイト選定プロセスを開始。BGEが地球科学的な除外基準及び最低要件に基づき、対象外となる地域を除外し、サイト区域を選定。地球科学的な評価基準を適用し、好ましいサイト区域等を選定。結果を中間報告書として提出。
予備的安全評価(第1次予備的安全評価)を実施。地球科学的な評価基準等を適用し、地上からの探査サイト地域を選定。
BGEが地上からの探査サイト地域の提案及び探査計画を提出。連邦法を制定し地上探査サイト地域を確定。
第2段階
地下探査サイトの選定
BGEが地上からの探査を実施。地球科学的な除外基準・最低要件、評価基準を適用するとともに、第1段階より範囲を拡大した予備的安全評価(第2次予備的安全評価)に基づき、サイト間の比較を実施し、地下探査の対象サイトを選定。
BGEの提案に基づき、連邦法を制定し地下探査の対象サイトを確定。
第3段階
処分場サイトの提案・合意
地下探査などの処分の安全性の観点からの詳細な調査を実施。包括的な予備的安全評価を実施し、サイトの比較を実施し、処分場サイトを選定。
連邦法を制定し処分場サイトを確定。

 

■サイト選定手続きにおける公衆参加とサイト区域専門会議の開催スケジュール

サイト選定法に基づくサイト選定手続きでは、連邦レベル、地域横断レベル、地域レベルで公衆参加のための委員会や合議体を設置し、各段階において、住民、地元自治体などの参加を得ながら処分場サイトを選定していくこととなっている 。サイト選定手続きの第1段階においては、BGEによる中間報告書の提出後、地域横断レベルの公衆参加の場となる「サイト区域専門会議」が設置される予定である。

サイト選定手続きを監督するとともに、公衆参加の推進に責任を有する連邦放射性廃棄物処分安全庁(BASE)は、2020年8月20日のプレスリリースにおいて、サイト選定手続きに関する情報提供として、2020年9月からジャーナリスト向けセミナーなどを開始し、BGEによる中間報告書の公表後、サイト区域専門会議の最初の会合であるキックオフ会合を2020年10月17~18日に開催するとしてる。また、2021年前半に3回の会合を開催する予定としている。

ドイツの3段階からなるサイト選定手続きと公衆参加の枠組み

図:ドイツの3段階からなるサイト選定手続きと公衆参加の枠組み

 

【出典】

スイスの処分実施主体である放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)は、2020年8月17日に、ガラス固化体をオーバーパックする施設及び使用済燃料をキャニスタに封入する施設(以下、両者を合わせて「キャニスタ封入施設」という)の立地オプションを比較する報告書を公表した。キャニスタ封入施設は、地層処分場の地上施設を構成する主要な施設の一つ1 であり、サイト選定プロセスの第3段階に残っている3つのサイト地域2 に設定されている地上施設設置区域に建設するケースをメインのオプションとしているが、高レベル放射性廃棄物の大部分が貯蔵されているヴュレンリンゲン放射性廃棄物集中中間貯蔵施設(ZZL)に建設するケースも想定されている。今回のNAGRAの報告書は、前述の2ケース以外のオプションとして、原子力発電所にキャニスタ封入施設を建設するケースなどを加えることにより、立地オプションに関する検討を充実させたものである。

検討の経緯

高レベル放射性廃棄物のキャニスタ封入施設については、地層処分場の地上施設の設置区域に設置する想定で検討が進められてきた。しかし、サイト選定プロセスの第2段階において、処分場の地上インフラ配置案を検討する過程で、チューリッヒ北東部の地域会議はNAGRAに対し、キャニスタ封入施設等をサイト地域外に設置することのメリット及びデメリットを説明して欲しいとの要望を表明していた。これを受けて連邦評議会3 は、2018年11月のサイト選定第2段階終了時にNAGRAに対し、地域会議の要望を考慮した上で、キャニスタ封入施設等をサイト地域外に設置する可能性を検討するよう要求した   。

この検討要求に応えるためにNAGRAは、高レベル放射性廃棄物のキャニスタ封入施設について、①「地層処分場サイトの地上施設設置区域内」での立地をレファレンスケースとして、②「ヴュレンリンゲン放射性廃棄物集中中間貯蔵施設(ZZL)サイト内」、③「ベツナウ中間貯蔵施設(ZWIBEZ)4 サイト内」、④「原子力発電所5 サイト内」、⑤「新規立地」の5つの立地オプションを想定して、輸送、追加で必要となる敷地面積、既存インフラや経験を有する熟練作業員の利用可能性、セキュリティと保障措置、コストといった項目の比較・検討を以下の通り行った。

  • ①「地層処分場サイトの地上施設設置区域内」での立地
    長所:地層処分場の地上施設の設置区域内のキャニスタ封入施設から地層処分場への輸送のみであり、輸送の負担が非常に軽い。②や③の中間貯蔵施設サイト内での立地と比較すると、既存の施設が現時点で存在しないことから、設計上の制約が少ない。
  • ②「ヴュレンリンゲン放射性廃棄物集中中間貯蔵施設(ZZL)サイト内」での立地
    長所:現状、使用済燃料とガラス固化体の輸送貯蔵兼用キャスクの大部分が貯蔵されており、高レベル放射性廃棄物用の廃棄体積み替えセルを備えている。既存のインフラを利用することにより、施設面積を小さくできる。また、熟練作業員の活用が見込める。コストの面では①「地層処分場サイトの地上施設設置区域内」での立地と比較すると、同等あるいは最大5%の軽減が期待できる。
  • ③「ベツナウ中間貯蔵施設(ZWIBEZ)サイト内」での立地
    長所:ZZL同様、既存インフラを利用することによって施設面積を小さくでき、熟練作業員の活用も可能である。
    短所:現状、廃棄物の輸送貯蔵兼用キャスクの大部分がZZLにあることから、ZZLからZWIBEZへのキャスク輸送を行わなければならなくなる。コストの面では、①「地層処分場サイトの地上施設設置区域内」での立地と比較すると、同等あるいは最大5%増大する。
  • ④「原子力発電所サイト内」での立地と⑤「新規立地」
    短所:既存インフラや熟練作業員の活用等の面では利便性はない。コストについては、①「地層処分場サイトの地上施設設置区域内」での立地と比べて20%程度増大する。

上記の検討の結果、NAGRAは、ケース①と比較してケース②と③のみ、敷地面積を小さくすることが可能であり、採用する余地があるとしている。このうち、ケース②のヴュレンリンゲン放射性廃棄物集中中間貯蔵施設では、使用済燃料の貯蔵容器への詰め替え作業を行っているため、キャニスタ封入施設と類似する作業経験をもつ熟練作業員の活用を見込むことができる。こうした理由から、NAGRAは、①「地層処分場サイトの地上施設設置区域内」での立地と②「ヴュレンリンゲン放射性廃棄物集中中間貯蔵施設(ZZL)サイト内」での立地が好適であるとした。NAGRAは今回の検討結果をもとに、地上施設の設置箇所の決定に向けて、地域会議や関係する州と議論を進めていくとしている。

 

【出典】

 


  1. 地層処分場の地上施設には、低レベル放射性廃棄物の廃棄体製作施設も含まれるが、今回のNAGRAの報告書では、その立地オプションについては検討していない。 []
  2. サイト選定第3段階におけるサイト地域は、地上施設、地下施設、地上・地下のインフラの一部または全てが立地する「インフラ立地自治体」と「その他関係自治体」で構成される。 []
  3. 日本の内閣に相当 []
  4. ZWIBEZはベツナウ原子力発電所内に立地する []
  5. ゲスゲン、ライプシュタット両原子力発電所サイトを想定 []

フィンランドでオルキルオト原子力発電所を運転するテオリスーデン・ヴォイマ社(TVO社)は、2020年8月14日付のプレスリリースにおいて、TVO社がエウラヨキ自治体にある同発電所エリアで計画している極低レベル放射性廃棄物1 の地表埋立て処分事業について、環境影響評価(EIA)手続きの最初のステップとなるEIA計画書を雇用経済省(TEM)に提出したことを公表した。雇用経済省は、2020年8月21日から9月21日の期間、TVO社のEIA計画書について、地表埋立て処分事業によって影響を受ける組織や企業、自治体、公衆からの意見募集を行った後、必要に応じてEIA計画書の変更などを指示することになっている。

TVO社のEIA計画書によれば、同社が1992年から操業している低中レベル放射性廃棄物処分場(地下60~100mに建設されているサイロ型の地下空洞処分場)で処分している廃棄物のかなりの割合は、極低レベル放射性廃棄物(1kgあたり10万Bq未満)に相当する。TVO社は、極低レベル放射性廃棄物の放射能レベルが低いことを考慮すると、現行の低中レベル放射性廃棄物処分場への処分は過剰な方法であり、適したものではないとしている。また、2021年に操業開始予定のオルキルオト原子力発電所3号機の運転に伴って、今後も極低レベル放射性廃棄物の発生が継続するため、将来必要となる低中レベル放射性廃棄物処分場の拡張を抑制するために、地表埋立て処分事業の計画を開始したとしている。

計画している地表埋立て処分場の処分概念は、地表地盤に構築するシーリング層の上に廃棄物パッケージを積み上げた後、雨水の浸入を防止する上部シーリング層を施工して覆土するものであり、広さは90m×115mである。また、底部に排水/集水システムを設置し、浸出水の水質をモニタリングする予定である。廃棄物パッケージは5年毎に処分され、廃棄物が処分された区画は一時的に密閉する。処分される極低レベル放射性廃棄物は、原子力発電所の定期点検中に利用される防護服やプラスチック製の養生シート等である。

極低レベル放射性廃棄物の地表埋立て処分は、スウェーデン等の世界各国で実施されており、フィンランドでも法律上はそのような処分が可能となっているものの、これまでフィンランド国内での実施例はなかった。

今後の予定

雇用経済省(TEM)は、TVO社のEIA計画書について、約1ヶ月間の公衆意見募集を行うほか、新型コロナウイルス感染症の状況を勘案しつつ、2020年9月8日にエウラヨキ自治体において公聴会を開催する予定である。なお、TVO社は、EIA計画書において、極低レベル放射性廃棄物の地表埋立て処分場は重大な原子力施設ではないため、政府による原則決定、建設・操業許可は必要としないものの、TVO社が地表埋立て処分場を操業するためには原子力法に基づき放射線・原子力安全センター(STUK)が発給する許可が必要となると説明している。TVO社は、極低レベル放射性廃棄物処分を2023~2024年頃に開始し、2090年頃まで継続する計画である。

<参考>環境影響評価(EIA)

フィンランドでは環境に重大な影響が生じる可能性がある事業について、市民を含む利害関係者が情報を事前に入手し、計画策定や意思決定に参加する機会を増やすことを目的として、環境影響評価制度が設けられている。

EIAは、①EIA計画書の作成段階と、②EIAを実施して報告書にまとめる段階から構成されている。事業者がEIA計画書を監督官庁(原子力施設の場合は雇用経済省)に提出し、監督官庁が対象地域住民を含めた利害関係者に意見を求め、寄せられた意見を踏まえて、監督官庁は、必要に応じて計画書に変更を指示することとなっている。

雇用経済省は、原子力法の規定に基づき、地元自治体で公聴会を開催するとともに、公告を通じた意見募集で寄せられた意見を踏まえ、実施されたEIAの適切さについての判断を意見書として取りまとめることとなっている。

環境影響評価(EIA)手続きの概要

環境影響評価(EIA)手続きの概要

【出典】


  1. フィンランドでは原子力利用に伴い発生する廃棄物を「原子力廃棄物」と定義しており、その他の放射線利用で発生する放射性廃棄物と区別している。原子力廃棄物は使用済燃料以外に放射能濃度に基づき「中レベル廃棄物(intermediate-level waste: ILW)」、「低レベル廃棄物(low-level waste: LLW)」、「極低レベル廃棄物(very low-level waste: VLLW)」と区分しているが、この記事ではVLLWについて、わが国でも使用されている「極低レベル放射性廃棄物」の表記を用いる。 []

英国の地層処分の実施主体である放射性廃棄物管理会社(RWM社)は、2020年8月4日に、英国内の地層処分に関する科学技術や専門知識の結集と形成、及び次世代の研究者の育成サポートを目的として、マンチェスター大学、シェフィールド大学と共同で「RWM研究サポートオフィス」(以下「RWM RSO」という)を設立したことを公表した。RWM社は、RWM RSOに対して最長10年間、総額約2,000万ポンド(約27.6億円、1ポンド=138円で換算)の資金提供を行うとしており、地層処分に関連する広範な研究活動を支援し、その成果をRWM社の活動に活用していく考えである。

■RWM RSOのスタッフ構成

RWM RSOは、地層処分に関連する9つの学問領域の研究開発を支援するとして、事務所はマンチェスター大学に設置されている。RWM RSOは発足時点で28名のスタッフで構成されており、このうち、支援対象となる研究プロジェクトの企画、組織化を担当するRSOプロジェクトチームには、マンチェスター大学から5名、シェフィールド大学から1名の計6名が参画している。また、RWM RSOの運営と活動を支援するため、RWM社から16名が参画している。その他に、学問領域ごとに研究リーダーを置いており、現在は9つの学問領域のうち、6領域の研究リーダーをマンチェスター大学から4名、シェフィールド大学から2名選任している。RWM RSOは、不在となっている3領域の研究リーダーを英国内の大学から募集している。

■RWM RSOが支援する地層処分に関連する学問領域

「RWM研究サポートオフィス」(RWM RSO)は、RWM社が行う地層処分と関連性をもつ学術的な研究を支援するとしており、支援対象となる学問領域を9領域に大別している。

  1. 先進製造(Advanced manufacturing)
  2. 応用数学(Applied mathematics)
  3. 応用社会科学(Applied social science)
  4. 環境科学(Environmental science)
  5. 地球科学(Geoscience)
  6. 材料科学(Materials science)
  7. パブリック・サイエンスコミュニケーション(Public communication of science)
  8. 放射化学(Radiochemistry)
  9. トレーニング(Training)

なお、RWM社は、これまでに地層処分の研究開発を行っており、2013年から地層処分に係る科学・技術研究における構造と範囲、地層処分事業を実施する上で重要なアウトプットをステークホルダーに提示することを念頭に置いて、『科学技術プログラム』を取りまとめている。RWM RSOは、支援対象となる上記の9つの学問領域は、RWM社が実施している研究開発活動のニーズに対応するものであるとしている。また、前述したRWM社から参画している16名については、RWM社で「一般的な条件における処分システムセーフティケース」(gDSSC)の開発などを担当した科学技術の専門家、コミュニティの参画や持続的開発などの専門家であり、RWM RSOの枠内で行われる研究活動を支援することとなっている。

【出典】

フランスの国家評価委員会(CNE)は、第14回評価報告書を2020年7月16日に議会科学技術選択評価委員会(OPECST)に提出し、CNEウェブサイトで公表した。CNEは、2006年の放射性廃棄物等管理計画法の規定に基づいて、放射性廃棄物等の管理に関する取組や調査研究等の進捗状況について毎年評価を行い、評価結果を報告書に取りまとめて議会に提出することになっている。なお、前回の第13回報告書は、2019年6月27日に公表されている

フランス政府は2020年4月に、2019年から2028年を対象として、温室効果ガス排出量の削減やエネルギー効率向上、再生可能エネルギーの開発促進等を目標とした基本政策となる「多年度エネルギー計画」(PPE)を発行している。原子力発電に関しては、2035年までに発電量に占める比率を50%とすること等を示しており、これを実現するため、現在MOX燃料が装荷されている90万kW級原子炉の閉鎖等を計画する等、燃料サイクルや放射性廃棄物等の管理のあり方にも影響を与えるものとなっている。CNEは、第14回評価報告書において、多年度エネルギー計画(PPE)による燃料サイクルへの影響を分析し、以下のような章構成にて報告書を作成している。

第Ⅰ章:多年度エネルギー計画(PPE)の影響と燃料サイクル
第Ⅱ章:廃止措置及び極低レベル放射性廃棄物
第Ⅲ章:長寿命低レベル放射性廃棄物の管理
第Ⅳ章:地層処分場(CIGÉO)
第Ⅴ章:貯蔵と長寿命低レベル放射性廃棄物の処分に関する国際的展望

各章におけるCNEの主な勧告と見解は以下の通りである。

<多年度エネルギー計画(PPE)の影響と燃料サイクル>

  • 原子力発電比率の縮減を達成するには、早い時期に導入された原子炉を閉鎖することになる。閉鎖される原子炉には、現在MOX燃料の装荷許可を受けている24基の90万kW級原子炉のうち、12基が含まれる。EDF社は、MOX燃料需要を維持するため、130万kW級原子炉にMOX燃料を装荷する計画である。CNEは、130万kW級原子炉へのMOX燃料装荷に必要となる許認可の取得に要する作業を過小評価しないよう勧告する1
  • 政府は、多年度エネルギー計画(PPE)において、天然ウラン資源が豊富に存在し、ウラン価格が低い水準で安定していること等から、第4世代のナトリウム冷却高速炉(SFR)の原型炉ASTRID開発計画を中止し、高速炉研究プロジェクトを長期的に再検討していく方針を示した。しかしながら、このことは、将来的に天然ウラン燃料を必要とせず、再処理で回収されたプルトニウムを主体として発電を行うクローズド燃料サイクルの実現を可能とするとともに、高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)において主要な発熱源となっているマイナーアクチノイド核種の変換を実施する上で必要な高速炉開発に関して、プロジェクトが延期されることに結び付いている2 3。CNEは、これまでの蓄積されてきた科学技術的知見の喪失を避けるには、野心的な研究計画を立案する必要があると指摘する。CNEは、原子力・代替エネルギー庁(CEA)が提案している研究計画は不十分であり、国際協力の可能性も限定的であることから、少なくとも欧州レベルで、中性子照射施設を設置することに意義があることを強調する。
  • 多年度エネルギー計画(PPE)において政府は、使用済燃料の再処理による分離プルトニウム及び使用済燃料のストックを一定水準以下に抑制するため、軽水炉を利用したプルトニウムのマルチリサイクルに関する研究を継続する方針を示している。軽水炉でのマルチリサイクルの実施計画はまだ具体化していない。CNEは、事業者等に対して、2020~2021年に予定しているヒアリングにおいて、より具体的な計画を提示するよう要請する。

<廃止措置及び極低レベル放射性廃棄物>

  • フランス国内で発生し、処分が必要な極低レベル放射性廃棄物の大半は廃止措置作業により発生するものである。CNEは、多年度エネルギー計画(PPE)に示された既存炉の閉鎖計画に照らして、極低レベル放射性廃棄物の発生量予測をアップデートするよう勧告する。また、極低レベル放射性廃棄物の発生量の縮減や、リサイクルを想定した除染等の研究を継続するよう、強く勧告する。

<長寿命低レベル放射性廃棄物の管理>

  • 長寿命低レベル放射性廃棄物は、原子炉のみでなく様々な活動から発生しており、総量も比較的多いことから、各廃棄物の放射能レベルや化学組成に応じた処分方法を検討しなければならない。長寿命低レベル放射性廃棄物のうち、黒鉛及びラジウム含有廃棄物の処分場に関しては、2008年にANDRAが開始したサイト選定が途上であるが、1カ所あるいは複数個所のサイトを特定するため、ANDRAは取組を継続すべきである。

<地層処分場(CIGÉO)>

  • ANDRAは2020年春に、政府による公益宣言(DUP)4 申請に必要な文書を提出し、2020年末に設置許可申請を行う予定である。過去数年、設置許可申請は何度も先送りされている。CNEは、ANDRAに対して、より適切にスケジュール管理を行うよう勧告する。
  • ANDRAは設置許可申請の提出に向けて、十分に成熟した科学技術的知見を獲得している。CNEは、ANDRAに対して、処分予定の放射性廃棄物の基準インベントリと整合する形で、地層処分場のレファレンスとなる形状や配置を特定するよう勧告する。
  • CNEは、地層処分場の150年にわたる操業期間を通じた長期的な作業の枠組みを明確にするために、デジタル模型等を活用し、地層処分場の形状や配置の管理プロセスを確立するよう勧告する。
  • CNEは、ANDRAに対して、ビチューメン(アスファルト)固化体の管理に関する国際レビューで提示された、急激な発熱反応のリスクを排除するための地層処分場の設計変更等の勧告内容に早急に着手し、その結果を地層処分場の設置許可申請において提示するよう勧告する。
  • 地層処分場設置に関してANDRAが実施中の社会経済的影響評価については、評価結果が出次第、CNEに報告するよう要請する。

<貯蔵と長寿命低レベル放射性廃棄物の処分に関する国際的展望>

  • 多くの国では、使用済燃料並びに高レベル及び長寿命中レベル放射性廃棄物の貯蔵が長期にわたっている。CNEは、長期貯蔵は成り行きを見守る方針であるため、これと同時に永続的な処分によるソリューションを開発するための積極的な方針が必要であることを指摘する。
  • 世界における長寿命低レベル放射性廃棄物(黒鉛含有廃棄物、ラジウム含有廃棄物等)の管理計画は初期的な段階にある。地表付近での処分よりも地下深部で処分する方が、より高度な廃棄物の閉じ込めと隔離を提供するため、推奨される。

【出典】


  1. 本文章は、CNE報告書の翻訳を精査した結果、2020年9月14日に修正致しました。 []
  2. 高レベル放射性廃棄物の発熱量は、地層処分場の面積を大きくする要因の一つとなっている。 []
  3. 本文章は、CNE報告書の翻訳を精査した結果、2020年9月9日に修正致しました。 []
  4. 公益宣言(DUP)は、公用収用法典に基づいて、公共目的で行う開発のために私有地を収用する際の行政手続きである。当該開発プロジェクトを実施する事業者からの申請を受けて、公開ヒアリングを実施したうえで、政府が公益宣言を発出する。 []

ロシアにおける放射性廃棄物管理の実施主体である国営企業ノオラオ社(NO RAO)は、2020年7月13日のプレスリリースにおいて、ロシア中部のトムスク州セベルスク市で計画している浅地中処分場に対して、安全規制機関である連邦環境・技術・原子力監督局(Rostekhnadzor)が立地・建設許可を発給したことを公表した。
NO RAO社は、立地・建設許可を受けた浅地中処分場において、セベルスク市にあるシベリア化学コンビナート1 から発生する低中レベル放射性固体廃棄物を主に処分する計画であり、処分容量は15万立方メートルになるとしている。また、処分場の建設は2021年の第3四半期から開始する予定であるとし、建設の第一段階では、管理棟などの建屋や処分場の輸送インフラ、サイトへのアクセス道路の建設等が実施されるとしている。
今回の許可発給に先立ち、地元自治体において2018年11月に公聴会が開催されていた。また、2019年5月にNO RAO社は、国家環境審査において環境影響評価書に対する肯定的声明を受け取っていた。国家環境審査での肯定的声明は連邦環境・技術・原子力監督局による許可発給に必要な条件となっている。

ロシアではこれまでに、スヴェルドロフスク州のノヴォウラリスク市において、国内で最初となる浅地中処分場の操業が2016年に開始されている。NO RAO社は、チェリャビンスク州オジョルスク市などでも低中レベル放射性固体廃棄物の浅地中処分場を立地する計画である。

低中レベル放射性固体廃棄物の浅地中処分場の立地点(トムスク州セヴェルスク市)

低中レベル放射性固体廃棄物の浅地中処分場の立地点(トムスク州セヴェルスク市)

【出典】


  1. シベリア化学コンビナート(SCC)では過去に軍事用プルトニウムの生産が行われていた。現在は商業用のウランの精錬、転換、濃縮等が行われている。 []

英国の原子力廃止措置機関(NDA)は2020年7月10日に、スコットランド北部にあるドーンレイサイトのサイト許可会社1 (SLC)及びイングランド北西部のドリッグ村近郊に位置する低レベル放射性廃棄物処分場(LLWR)のSLCの2社を、NDAの完全子会社に移行することを公表した。ドーンレイサイトのSLCは2021年3月に、LLWRのSLCは2021年7月に、NDAの完全子会社となる予定である。

ドーンレイサイト及びLLWRの操業は、両サイトを所有するNDAとの契約に基づき、SLCであるドーンレイサイト復旧会社(DSRL)及び低レベル放射性廃棄物処分場会社(LLWR社)がそれぞれ行っている。SLCの株を所有して経営する親会社(PBO)は、競争入札によって選定されており 、現在DSRLのPBOはキャベンディッシュ・ドーンレイ・パートナーシップ社2 、LLWR社のPBOは英国放射性廃棄物管理会社(UKNWM社)3 となっている(下図参照)。

図:NDAのPBO契約による事業実施体制

図:NDAのPBO契約による事業実施体制

今回のSLCの子会社化についてNDAは、強固に結集したNDAグループを構築し、サイトのクリーンアップや廃止措置をより効率的・効果的に実施しようとするNDAの戦略的な計画の一環であると説明している。また、先行してNDAの完全子会社化が実施されたセラフィールド社及びマグノックス社では、グループ間の協力が強固となり、組織横断的な相乗効果が得られたことも、今回の決定につながったとしている。

【出典】


  1. 原子力施設のサイト許可を持ち、サイトの管理・運営を行う会社 []
  2. キャベンディッシュ・ニュークリア社、ジェイコブズ社及びアメンタム社の共同企業体 []
  3. アメンタム社、スタズビック社及びOrano社の共同企業体 []

スイスの環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)は2020年6月8日付で、放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)がサイト選定第3段階において、3つの地質学的候補エリア「ジュラ東部」、「チューリッヒ北東部」、「北部レゲレン」でのボーリング調査の許可申請について、合計21の調査候補地点に対する許可発給を完了した。NAGRAは2016年9月、2017年8月の2回に分けてボーリング調査に必要な許可申請書を提出しており、必要な地点数に余裕をとって23地点でボーリング調査を行う予定としていたが、北部レゲレンの2地点の申請を取り下げていた。UVEKは、NAGRAによるボーリング調査の許可申請書の審査を順次進め、2018年8月に発給した3地点を皮切りに  、16回に分けて許可を発給した。

■ボーリング調査の実施状況

NAGRAは、許可を受けた複数の地点でボーリング調査を実施しており、最大2,000mの深度までボーリング孔を掘削する計画である。2020年6月現在のボーリング調査の実施状況は以下のとおりである。

  ボーリング地点 地質学的候補エリア 期間
1 ビューラッハ 北部レゲレン 2019年4月~2019年11月
2 トリュリコン-1 チューリッヒ北東部 2019年8月~2020年4月
3 マルターレン チューリッヒ北東部 2020年2月~ (実施中)
4 ベツベルク-1 ジュラ東部 2020年4月~ (実施中)

※複数箇所ボーリングする場合は、ハイフン(-)以降の数字で識別

NAGRAはボーリング調査の作業場所に情報公開コーナーを設置し、現地見学を受け入れている   。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、2020年3月から見学者の受け入れを停止していたが、2020年6月12日にベツベルク-1で「オープン・パビリオン」と題する見学ツアーを開催するとともに、マルターレンでも現地見学の受け入れを再開する。

■今後の予定

NAGRAは、3つの地質学的候補エリアの計21地点でボーリング調査の許可発給を受けているが、これら全てでボーリング調査を実施するものではなく、先行したボーリング調査で得られた結果に基づいて、他の地点でのボーリング調査の実施必要性を個別に判断していくとしている。NAGRAはボーリング調査の結果を踏まえて、2022年頃に高レベル放射性廃棄物と低中レベル放射性廃棄物の処分場を異なる地質学的候補エリアに設置するか、両処分場を1つの地質学的候補エリアに設置するかを決定する予定である。

 

<参考:ボーリング調査の許可手続き>

サイト選定プロセスを定めた特別計画「地層処分場」(詳細はこちら)によると、サイト選定第3段階では、概要承認(詳細はこちら)の申請書提出に向けた準備を行う上で、安全性の観点からの詳細な比較を可能とするために、必要に応じて弾性波探査、ボーリング調査などの地球科学的調査を行って、サイト特有の地質学的知見を収集することになっている。ボーリング調査のような地下に影響を及ぼす地球科学的調査の実施にあたっては、スイスの原子力法に基づき、環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)の許可が必要とされている。

 

【出典】

スウェーデン議会(国会)は2020年6月10日に、政府が提出してした法改正パッケージ案「原子力活動に関する国の責任の明確化」(Ett förtydligat statligt ansvar för visa kärntekniska verksamheter)を可決した。法改正パッケージの可決にともなって、2020年11月1日に発効する改正原子力活動法においては、原子力活動の安全に関する責任を果たすことができる者がいない場合、その責任が国に移管される旨が規定された。また、使用済燃料や放射性廃棄物の地層処分場の閉鎖は、政府の許可が必要な許認可プロセスの一つとして位置づけられた。さらに、地層処分場が閉鎖された後は、政府が定める機関が必要な対応を行う旨が規定された。

■法改正の背景

スウェーデン政府(環境省)は、2017年に原子力活動調査委員会を設置し、法制度の見直しを進めていた。当時、スウェーデンの原子力発電事業者は、経済的理由から2020年までに原子炉4基を早期に運転終了する計画を公表しており、政府は、閉鎖された原子力施設の廃止措置や放射性廃棄物の処分を安全に行う責任と、それらの活動に要する資金確保の責任とを区別して明確化する必要があると考えていた。また、スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)が2011年3月に提出した使用済燃料処分場の立地・建設許可申請書等の審査が進むなか、政府は、地層処分場の「段階的な許認可」(step-wise licensing)手続きを法律において規定する必要性を認識していた。

2019年4月に原子力活動調査委員会は、調査報告書(SOU 2019:16)の中で、スウェーデンが締約国となっている原子力安全条約や放射性廃棄物等安全条約の義務を履行するため、原子力活動に係わる国の副次的責任(subsidiary responsibility)を明示的に国内法に反映するとともに、国の究極的な責任(ultimate responsibility)として、地層処分場の閉鎖後の責任を国に移管する規定を設けるよう提案した。原子力活動調査委員会は、現行の原子力活動法の規定内容は維持するものの、制定から35年の間に30回以上の改正を行った法律を刷新すべきものとして、法律を全面改正するよう提案していた。この提案を受けた環境省は、大幅な法改正を伴わない法改正パッケージ案を検討し、2020年4月16日に国会に提出していた。今回成立した法改正パッケージは、原子力活動法の他、環境法典及び原子力活動に伴って発生する残余生成物の取り扱いのための資金確保措置に関する法律(資金確保法)の一部を改正するものである。

今回の法改正により、SKB社の使用済燃料処分場の立地・建設許可申請書等に関して、環境法典に基づく審理を実施していた土地・環境裁判所が2018年1月に政府に宛てた審査意見書で指摘した「処分場の閉鎖後における責任の所在を予め明確にする必要性」への対応が整ったことになる。使用済燃料処分場の建設予定地があるエストハンマル自治体は、同自治体が最終的な責任を負うことに対して反対していた。

今回の法改正を受けてSKB社は2020年6月11日付けのプレスリリースにおいて、使用済燃料処分場と短寿命の放射性廃棄物処分場(SFR)が立地するエストハンマル自治体にとって、これらの処分場の閉鎖後の責任の所在を明確にすることは重要な問題であったと指摘するとともに、SKB社にとって、処分場の責任を国に移管するために必要な条件が今後整備されることが明確になったことを歓迎するとしたコメントを公表している。

【出典】