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フランスの放射性廃棄物の長期管理の責任を有している放射性廃棄物管理機関(ANDRA)は、2004年12月のニュースリリースにおいて、オート=マルヌ県とムーズ県にまたがるビュール地下研究所で進められている、高レベル放射性廃棄物および長寿命の中レベル放射性廃棄物を地層処分するための研究開発の状況を発表した。今回のニュースリリースで発表されたのは、ビュール地下研究所の地下445メートルにある粘土層に設けられた実験用ニッチにおいて実施されている研究に関するものである。この実験用ニッチは、以下の写真および図にあるように、アクセス立坑からT字型に掘削された坑道で、幅は約4メートル、総延長は40メートル以上と示されている。

ニュースリリースによると、実験用ニッチにおいて求められている科学的な成果および計画されている実験の目的は、以下の通りである。

実験用ニッチにおいて求められている科学的な成果

  • 原位置での岩盤挙動の確認と掘削によって生じる岩盤への影響(掘削影響領域、EDZ)についての評価。掘削によって岩盤への影響および岩盤の水力学特性に変化が予想されている。実験用ニッチの外側およびニッチから行われる試験は、岩盤が受ける影響の特定および短期間において人工バリアでの物質の遅延挙動と地質についての知見を蓄積すること。
  • 原位置における地球化学組成と閉じ込め特性についてのパラメータ値の確認。地上からのボーリング孔の掘削によって得られた岩盤サンプルについてのデータを補完するデータの取得をすること。

実験用ニッチにおいて計画されている実験の目的

  • アクセス立坑の掘削に対する、粘土層の力学応答の調査
  • 粘土層の透水性と間隙の測定
  • 化学分析のための粘土層の間隙水の採取

実験用ニッチ内の様子

実験用ニッチの概要

なお、フランスでは、1991年の放射性廃棄物管理研究法(詳細は こちら)に基づいて、地下研究所の建設を中心とした可逆性のあるまたは可逆性の無い地層処分、長寿命放射性核種の分離・変換、放射性廃棄物のコンディショニングと長期の地上貯蔵という3つの分野についての研究を同時並行して進めている。また、これらの研究について、政府は2006年までには総括評価を行い、地層処分が最善とされた場合には、地層処分場の建設許可等に関する法案を議会に提出することになっている。

また、ビュール地下研究所は、1999年に建設が決定され、2000年より建設作業と並行して地下研究が実施されている。 2005年1月7日時点において、アクセス立坑は地下505.16メートルまで掘削されている(以前の掘削状況についてはこちらを参照)。

【出典】

  • 放射性廃棄物管理機関(ANDRA)のウェブサイト、http://www.andra.fr/popup.php3?id_article=566、2004年12月
  • 放射性廃棄物管理機関(ANDRA)のウェブサイト、http://www.andra.fr、2005年1月
  • Loi No. 91-1381 du 30 decembre 1991 relative aux recherches sur la gestion des dechets radioactifs(放射性廃棄物管理研究に関する法律 (91-1381/1991.12.30))

2005年1月27日、ベルギーの放射性廃棄物管理の実施主体である放射性廃棄物・濃縮核分裂性物質管理機関(ONDRAF/NIRAS)は、ウェブサイト上で、ONDRAF/NIRASによって設立された地域とのパートナーシップの内の一つであるモル自治体のモル放射性廃棄物協議グループ(MONA)が、最終報告書を地元自治体議会に提出したことを公表した。また、同ウェブサイト上で公表されたONDRAF/NIRAS、モル自治体、MONAの共同プレスリリースによると、最終報告書には、「MONAが提示した全ての条件が満たされることを前提として、モルにおいてベルギーの短寿命・低中レベル放射性廃棄物を処分することは可能である。」という勧告が含まれているとのことである。さらに、ONDRAF/NIRASは同ウェブサイトにおいて、このプレスリリースとともに、短寿命・低中レベル放射性廃棄物管理に関するプレス資料も公表している。

この共同プレスリリースによると、MONAは、処分の実現可能性と実現のための条件について、関心を持っている地元住民とともに検討を行うため、2000年2月にONDRAF/NIRASとモル自治体によって設立され、政党および社会・文化・経済団体の代表者、環境団体、地元住民で構成されるワーキンググループによって、専門家の支援を受けながら、あらゆる重要な角度から検討を行ってきたとされている。また、MONAは、浅地中処分概念と地層処分概念を開発しており、モルでの処分を可能にするためのさまざまな条件を提示している。この条件としては、最も重要とされている安全性の他に、原子力についての知見が地域に維持されていくこと、原子力災害対応計画が改良されること、恒久的な周辺環境における放射能モニタリングが実施されることなどが挙げられている。さらに、MONAを通じた地域社会の処分プロジェクトへの参加が維持されることやプロジェクトが地元にとって明らかに付加価値があるものであることも条件とされている。

今後は、モル自治体議会がMONAの最終報告書で提示された条件を評価し、モル自治体として処分場を受け入れる準備があるのか、また受け入れのための条件は何かについての決定をすることになると、今回のプレスリリースでは示されている。

また、ONDRAF/NIRASのプレス資料によると、1998年1月に、政府が短寿命・低中レベル放射性廃棄物の処分に関する解決策を見出すことを決定し、ONDRAF/NIRASはこれを受け、研究開発を行う一方、処分プロジェクトに興味を示した地域との間でパートナーシップを結び、3つの地域で非営利団体を設立するに至ったとされている。そのうちデッセル自治体の低レベル放射性廃棄物調査・協議グループ(STOLA-Dessel)については、既に最終報告書を地元自治体議会に提出している。残るフルール自治体とファルシネ自治体のパートナーシップ(PALOFF)も2005年の上半期に最終報告書を提出すると見込まれている。

同プレス資料によると、各自治体が受け入れを表明した後、処分サイトについての次の意思決定段階では、あらゆるステークホルダーとともに、処分実施のための条件が、具体的に討議されるとのことである。最終的には政府が、技術的な処分概念、処分プロジェクトの社会との融和、立地、資金確保についての決定を行うことも示されている。また、処分場の操業開始は早くても2015年から2020年の間で、操業期間は約30年、閉鎖後は2,3百年間のモニタリングが行われるとされている。

【出典】

  • 放射性廃棄物・濃縮核分裂性物質管理機関(ONDRAF/NIRAS)のウェブサイト、http://www.nirond.be/engels/1_index_eng.html、2005年1月
  • 放射性廃棄物・濃縮核分裂性物質管理機関(ONDRAF/NIRAS)、モル自治体、モル放射性廃棄物協議グループ(MONA)、2005年1月27日付共同プレスリリース、 http://www.nirond.be/engels/PDF/PR%20270105%20-%20Disposal%20in%20Mol.pdf
  • 放射性廃棄物・濃縮核分裂性物質管理機関(ONDRAF/NIRAS)のプレス資料、 http://www.nirond.be/engels/PDF/Press%20file%2027%2001%2005.pdf

【参考】(2005年2月4日追記)
MONAの最終報告書は以下のMONAのウェブサイトにて公表されている。
http://www.monavzw.be/rapporten.htm

オルキルオトにおけるボーリング調査状況
(ポシヴァ社ウェブサイトより引用)


フィンランドにおける高レベル放射性廃棄物(使用済燃料)処分の実施主体であるポシヴァ社は、2004年12月29日付けのプレスリリースにおいて、同社がオルキルオトで行っているボーリング調査についての進捗状況を公表した。プレスリリースによると、ポシヴァ社は2004年秋期に、5つの新たなボーリング孔(KR29-33)の掘削を完了させるとともに、2つのボーリング孔(KR23,KR32)を用いた詳細調査を実施しているとのことである。このうちKR23は、地下特性調査施設(ONKALO)の主要調査深度における岩盤構造の調査のため、それまでの深さ302メートルから460メートルにまで掘削が進められた。なお、同社はオルキルオトにおいて建設中のONKALOのアクセス坑道でも岩盤調査を実施している

プレスリリースによると、新たに掘削された5つのボーリング孔における調査の目的は、既に調査が行われた岩盤構造の連続性を確証することとされている。また、ポシヴァ社は、今回の調査により、岩盤中の破砕帯の位置の確定や地中に存在する岩盤の種類などについて、モデルと実際とを比較できるようになると説明している。最も新しいボーリング孔(KR33)は、母岩における岩盤の破砕帯の構造を調査するために掘削されている。

ONKALOの区域内には、ONKALOの換気用立坑となる予定の場所にボーリング孔(KR24)がある他、2つのボーリング孔(KR30,31)が存在している。これらのボーリング孔による調査結果は、ONKALOのモデル構築のために利用される。また、これまでの調査はオルキルオト道路の北側に集中していたが、今回、南側において初めてモニタリング用のボーリング孔(KR29)が掘削されたとのことである。

今後、物理探査および水文地質学的測定が、2005年に入っても継続され、約2ヶ月にわたり実施されることになっている。

なお、オルキルオトにおけるONKALOの完成は2010年に予定されている。また、最終処分施設の建設許可申請は2012年までに政府に提出されることになっており、操業開始は2020年の予定とされている

【出典】

韓国政府は、2004年12月17日付けの韓国産業資源部(MOCIE)のプレスリリースにおいて、同日開催された第253回原子力委員会(委員長:首相)で、中低レベル放射性廃棄物処分場と使用済燃料の中間貯蔵施設を同一サイトに立地するこれまでの放射性廃棄物管理政策を見直し、これを分離して推進することを議決したことを発表した。

同プレスリリースでは、今回の原子力委員会の決定は、政府がここ18年間進めてきた放射性廃棄物管理政策の基本的な枠組みを変更した画期的な政策転換であると位置付けており、すでに国際的に安全性が立証され、管理経験の蓄積された中低レベル放射性廃棄物処分場のみを優先的に建設することで、今後の施設の誘致を行うことになる自治体の負担が大きく緩和されるものと期待すると述べられている。また、使用済燃料の中間貯蔵施設については、中低レベル放射性廃棄物処分場のサイトには建設を行わず、時間的余裕をもって十分な話し合いを経て、国民のコンセンサスを得た上で最適な解決策を模索するとしている。

また、同プレスリリースでは、韓国では中低レベル放射性廃棄物のサイト内貯蔵容量の余裕がないため、廃棄物処分場がスムーズに建設できない場合、電力供給の40%を占める原子力発電に影響が生じるおそれがあるとしている。そのため、MOCIEはサイト内貯蔵容量の飽和が予想される2008年までに中低レベル放射性廃棄物処分場を建設するように最善の努力を傾けるとしている。

さらに、MOCIEは中低レベル放射性廃棄物処分場のサイト選定に向けた新たな手続きを策定する過程で、地元住民、市民・社会団体、学会、関連のある専門家などの意見を十分に聞き、透明性のある手続きとすると同時に、住民の受容性の向上および混乱の解消に向けた多角的な方策を講じることも打ち出している。

韓国では、これまでは中低レベル放射性廃棄物処分場と使用済燃料の中間貯蔵施設を組み合わせたサイト選定を行ってきており、2004年2月に発表された新たな候補サイトの誘致公募手続きに基づき、2004年5月31日の地域による誘致請願の期限までには7市・郡10地域が請願を行った。しかし、2004年9月15日に期限を迎えた誘致の予備申請を行った自治体は無く、政府は早々にサイト選定手続方式についての新たな案を策定し、地元住民、社会・市民団体などとの十分な話し合いを経て、国民のコンセンサスが得られるような透明性のある手続きを通じて、放射性廃棄物の管理事業を進めたいとの考えを示していた

なお、2003年のサイト選定によって激しい住民間の対立が生じた扶安(プアン)郡に対して、政府は住民投票の実施は事実上困難との見解を示していた。今回、政府は同プレスリリースで、政府を挙げての迅速な混乱の解消および地域経済の活性化策などを策定していく計画であることを表明している。

【注】
韓国の地方自治体としては、広域自治体(ソウル特別市、仁川などの6つの広域市、道)とその下に基礎自治体(市(シ)、郡(グン)、特別市及び広域市の自治区(グ))があり、この基礎自治体の下部行政単位として邑(ウプ)、面(ミョン)、洞(ドン)がある。ここでの地方自治体は基礎自治体を指す。

【出典】

  • 産業資源部(MOCIE)プレスリリース、2004年9月16日
  • 産業資源部(MOCIE)プレスリリース、2004年7月12日
  • 放射性廃棄物処分施設誘致地域支援などに関する特別法(案)

スイスの連邦環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)は、2004年12月10日付のプレスリリースで、連邦評議会が新しい原子力令(KEV)を制定したことを発表した。この新原子力令は、連邦会議が可決して公布されていた新原子力法(KEG)(詳しくは こちらを参照)の施行規定を定めた法規命令であり、原子力施設に対する重要な安全要件などもこれによって定められることになる。この新原子力令は新原子力法と共に、2005年2月1日に施行されることも同プレスリリースで示されている。

UVEKのプレスリリースなどによると、この新原子力令の草案は意見募集のために2004年5月12日から8月13日までの間公開され、この期間中に合計68件の意見が提出されていた。今回制定された新原子力令では、草案に含まれる規定はそのまま採用しつつ、寄せられた多くの批判を考慮した修正が加えられているとしている。
これらの修正のうち重要な変更点に関し、地層処分については「深地層処分特別計画(詳細は こちら)」について規定した新原子力令第5条が追加されたことが述べられている。

また、UVEKのプレスリリースによると、連邦評議会が2004年8月18日に採択した保障措置令も新原子力法を法的根拠としているために、新原子力法・令と同時に施行されることとなっている。この保障措置令は、1978年にスイスと国際原子力機関(IAEA)との間で締結された保障措置協定と2000年の付属議定書の合意を具体化したものである。また、新原子力法の施行に伴って整備されるその他の法規命令として、原子力施設の作業員についての要件等に関する法規命令が、2005年半ばには意見募集のために公表される予定であるとしている。

なお、新原子力法は、2003年3月21日に連邦会議で可決され 、2003年5月27日に公布されている 。施行に当たっては、公布後100日目までに5万人以上の署名が集まれば、施行の是非が国民投票にかけられる制度が適用されることになっていたが、国民投票は実施されず、そのまま施行されることになっていた。2005年2月1日に新原子力法が施行されることにより、これまでの「原子力の平和利用に関する法律(原子力法、1959年)」および「原子力法に関する連邦決議(1978年)」が廃止されるほか、新原子力令によって、「原子力分野の定義と許認可に関する法規命令(原子力令、1984年)」、「最終処分場設置の準備行為に関する法規命令(1989年)」など4つの法規命令が廃止され、「原子力施設安全委員会(KSA)に関する法規命令(1983年)」など4つの法規命令が変更されることになる。

【出典】

  • 環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)2004年12月10日付プレスリリース
    http://www.uvek.admin.ch/dokumentation/medienmitteilungen/artikel/20041210/02124/index.html?lang=de
  • エネルギー庁(BfE)ウェブサイト、2004年12月21日
    http://www.energie-schweiz.ch/internet/03362/index.html?lang=de
  • 新原子力令 Kernenergieverordnung (KEV)
    http://www.uvek.admin.ch/imperia/md/content/gs_uvek2/d/energie/div/23.pdf
  • ベルギーの放射性廃棄物管理の実施主体である放射性廃棄物・濃縮核分裂性物質管理機関(ONDRAF/NIRAS)は、2004年11月5日付のニュースリリースで、ONDRAF/NIRASによって設立された地域とのパートナーシップの内の一つであるデッセル自治体の低レベル放射性廃棄物調査・協議グループ(STOLA-Dessel)が、最終報告書を地元自治体議会に提出したことを公表した。ニュースリリースによると、デッセルの住民は、報告書の提出により、ベルギーの短寿命・低中レベル放射性廃棄物の長期管理のための持続可能な方策を提案する用意があることを示しているとしている。

    ベルギーでは、短寿命・低中レベル放射性廃棄物は、現在、中間貯蔵施設の立地するデッセル自治体で貯蔵されている1。1998年1月、ベルギー政府は、ONDRAF/NIRASに対して、この短寿命・低中レベル放射性廃棄物の処分に関する恒久的、段階的、可逆的な解決策を見つけることを委託した。これを受け、ONDRAF/NIRASは、原子力施設のある自治体の一つであるデッセル自治体との間に、大学等の協力の下、1999年7月に地域パートナーシップを結び、同年9月に協議のための母体として非営利団体であるSTOLA-Desselを設立していた。STOLA-Desselは、技術的および社会的な問題を統合した処分プロジェクトを開発することを最終目的としており、立ち上げ段階、研究段階、開発段階および決定段階の四段階で進められてきた。このパートナーシップには76人の地元住民の参加もあり、約4年半の議論の末、2004年11月5日にSTOLA-Desselの最終報告書が地元自治体へ提出された。

    この報告書では、放射性廃棄物はいつかは処分する必要があり、この問題は単に技術的な問題だけでなく、社会的な問題でもあり、また、経済的な基準でのみ決定がなされるものであってはならず、将来が短期的な利益で危うくされることがあってはならないとしている。更に、以下の条件が満たされる場合には、デッセル住民は、この放射性廃棄物の処分場を受け入れる用意があるとしている。

    • 安全が確保され、環境・健康へのフォローアップ、技術面での進展を継続すること。
    • STOLAによって開発された浅地中または地層処分場概念オプションによること。
    • このSTOLAが目的を果たして終了した後も、地域社会が参加でき、コミュニケーションを図ることが出来る恒久的なフォーラムが設立されること。
    • デッセル持続性基金の設立、環境計画への参加など、地域社会にプラスがあること。
    • 処分の最終段階まで、放射性廃棄物管理に対する透明性の確保、原子力に関する中核的拠点としての機能維持および雇用確保などが確約されること。

    今後、デッセルの地域住民代表は、処分サイトに関係する企業、自治体の上位にある監督機関との間で、今回の報告書で提示された提案や条件等に関する交渉を行い、住民の大多数の支持のもと、法的拘束力のある合意に達する必要がある。また、この問題の管轄は地元当局にあるが、STOLAは、政府の決定が出るまで、処分プロジェクトの進捗を監視し、状況を地域住民へ公表し続ける機関の設立を要求するとしている。

    今回、STOLA-Desselが開発した技術的および社会的な問題を統合した処分プロジェクトは、STOLA-Desselの総会で承認された後、地元のデッセル自治体へと委ねられたものである。これを受けてデッセル議会は、デッセル議会として、処分プロジェクトを継続するか否かを検討した上で、ONDRAF/NIRASおよび連邦政府に対して勧告を行うこととなっている。

    STOLA-Desselによる浅地中処分概念図
    (STOLA-Dessel最終報告書より引用)

    STOLA-Desselによる地層処分概念図
    (STOLA-Dessel最終報告書より引用)

    【出典】

    • 放射性廃棄物・濃縮核分裂性物質管理機関(ONDRAF/NIRAS) 2004年11月5日付ニュースリリース
      http://www.niras.be/engels/1_index_eng.html
    • Does it belong in Dessel? An integrated disposal project with technical and social implications. STOLA-Dessel 2004年11月(STOLA-Dessel最終報告書)
    • 放射性廃棄物等安全条約に基づくベルギー国別報告書(第1回) First meeting of the Contracting Parties to the Joint Convention on the Safety of Spent Fuel Management and the Safety of Radioactive Waste Management; November, 2003

    1. ベルギーにおける放射性廃棄物はONDRAF/NIRASによって管理されており、デッセル自治体の中間貯蔵施設はONDRAF/NIRASの子会社であるベルゴプロセス社によって操業されている。 []

    米国のユッカマウンテンにおける高レベル放射性廃棄物処分場建設の認可申請については、当初、2004年12月末とされていたが、2005年にずれ込むことを連邦エネルギー省(DOE)が明らかにした。これは、DOEが原子力規制委員会(NRC)との四半期管理会議1 の席上で示したものとして既に報道されていたが、この度NRCのウェブサイトにおいて会議の議事概要が公表されたものである。以下は、この議事概要に示されたユッカマウンテン処分場プロジェクトに関する最新状況である。

    NRCへの認可申請時期の遅延は、先ずDOEの民間放射性廃棄物管理局(OCRWM)の局長から明らかにされた。同局長によれば、認可申請の草案は2004年7月26日に作成され、レビュー後の改訂版について更にDOE内でレビューを行っている段階である。一方で、DOEは、環境保護庁(EPA)の放射線防護基準の一部無効判決や許認可支援ネットワーク(LSN)(詳細は こちら)への書類登録証明問題の影響を考慮した結果として、2004年12月としていた認可申請目標の見直しを行っている。変更後のスケジュールは未定であるが、遅延は大幅なものでは無いと述べられている。また、LSNへの書類登録再証明は2005年春に予定しているとのことである。

    なお、認可申請の予定については、次回の管理会議迄には明らかに出来るとの見解が別のDOEのスタッフから示されている。

    ユッカマウンテンでの処分に関する基準については、EPAは基準見直しの時期や方法について未だ明らかにしていないこと、NRCはEPAの見直しに適合する形でNRCのユッカマウンテン処分規則(10 CFR Part 63)の見直しを行うことが、NRCの核物質安全防護局局長から表明されている。

    また、議事概要によれば、この日の管理会議では、NRCおよびDOEの各プログラムの最新状況として、以下のような項目が報告されている。

    • 主要な技術的課題(KTI)の検討
    • LSNへの再登録証明
    • 閉鎖前段階の設計に要求される詳細度
    • 解析・モデル報告書を含めた品質保証問題
    • 作業者効率の改善
    • 輸送用キャスクシステムの調達問題

    この内、主要な技術的課題(KTI、詳しくはこちら)とは、ユッカマウンテンの処分に関して認可申請前段階における検討を進めるものとして、NRCとDOEの間で合意した主要な技術的課題である。全部で293に整理された検討課題の内で、最終的にNRCにより完了とされたものは124だが、残りの169についてもDOEがNRCから要求された回答の提出は2004年8月末迄に終了していることが議事概要に示されている。また、認可申請が行われた場合はKTI等の認可申請前段階活動は終了し、規則に基づいた審査に切り替えられることとされている。

    なお、今回LSNへの再登録証明の時期が2005年春と示されているが、NRCは再登録証明後6カ月を経過するまでは認可申請を受理出来ないことがNRC許認可手続規則(10 CFR Part 2)に規定されている。(既報を参照)

    【出典】

    • NRC・DOE四半期管理会議(2004年11月22日)概要(pdf, 722KB
    • NRCウェブサイト情報(www.nrc.gov/waste/hlw-disposal.html)

    1. このNRCとDOEの管理会議は、通常四半期ごとに行われており、ユッカマウンテン・プロジェクト進行上の重要な問題について意見・情報交換が行われている。NRCの申請前段階活動の一つとしてDOEとの覚書に基づいて実施されているものである。 []

    ○放射性廃棄物管理委員会(CoRWM)の年次報告書

    放射性廃棄物管理委員会(CoRWM)1 は、第1回年次報告書を同委員会のウェブサイトで公開した。この年次報告書は、CoRWMの規約において、毎年12月1日までに環境担当大臣2 に提出することが求められていたものである。今回の年次報告書では、CoRWMが活動を開始した2003年11月から2004年11月までの活動内容や環境担当大臣と合意に至った今後の活動プログラムの概要などが示されている。また、同報告書には、2005年6月に最終的に決定する予定の放射性廃棄物管理オプション候補リスト(2004年11月に公表)に関する情報も示されている。なお、CoRWMは2004年9月をもって4つの段階からなる放射性廃棄物管理方針の検討段階の第1段階を終了しており、現在は2005年6月に終了予定の第2段階にある。

    今回の年次報告書で示されたCoRWMの2003年11月から2004年11月における主な活動は以下のとおりとされている。

    • 活動プログラムの作成・実施
    • 放射性廃棄物管理方針の検討段階の第1段階終了、第2段階の活動詳細の決定および開始
    • 当初5つの段階で構成されていた管理方針の検討段階を4つの段階に変更
    • 公衆・利害関係者参画(PSE)プログラムと呼ばれている大規模な公衆の関与と協議プログラムの作成・実施
    • 予備的な放射性廃棄物管理オプション候補リストの作成

    また、CoRWMによる今後の活動プログラムについては、放射性廃棄物管理検討段階の第2段階での活動スケジュールおよび第3,4段階の活動概要が示されている。

    ○上院科学技術特別委員会の放射性廃棄物管理に関する報告書

    2004年12月10日の英国議会上院のプレスリリースによると、上院科学技術特別委員会は、政府による放射性廃棄物管理方針策定の進捗が遅いことを批判する報告書を公表した。

    プレスリリースによると、同委員会は、政府が政府内の科学専門家に諮問することなく、また地下処分または地下貯蔵が安全な長期管理オプションであるという圧倒的な国際的科学的合意があるにもかかわらず、新たな諮問組織である放射性廃棄物管理委員会(CoRWM)に放射性廃棄物管理方針の検討を白紙の状態から開始させたことに驚きを示している。

    プレスリリースでは、同委員会の結論として、以下の点が示されている。

    • CoRWMは、宇宙処分などの国際社会によって放棄されている管理オプションを検討するような時間の浪費をやめ、様々な地下処分または地下貯蔵オプションに注力すべきである。
    • CoRWMは放射性廃棄物管理オプションを評価するための関連する科学的・技術的専門性を欠いている。
    • 担当大臣は、環境・食糧・農村地域省(DEFRA)の科学アドバイザー長に諮問しなかったため、CoRWMが設置される際に適切な科学的勧告を受けていない。
    • 政府は地球科学、材料工学、土木工学の専門家をCoRWMの委員として追加指名するか、CoRWMの下に技術諮問委員会を設けるべきである。
    • 政府は放射性廃棄物の長期管理戦略の策定の遅延を、原子力発電の将来についての決定を先送りする口実として利用すべきでない。

    【出典】

    • 放射性廃棄物管理委員会(CoRWM)年次報告書、http://www.corwm.org/pdf/735%20-%20First%20Annual%20Report%2020041130%20_latest.pdf、2004年12月
    • 上院の2004年12月10日付のプレスリリース、http://www.parliament.uk/parliamentary_committees/lords_press_notices/pn101204st.cfm

    1. CoRWMは、高レベル、中レベル、一部の低レベル放射性廃棄物とウラン、プルトニウム、使用済燃料についての長期管理オプションに関する勧告を政府に対して行う責任を有するものとして2003年に環境・食糧・農村地域省(DEFRA)などが設置した機関であり、2003年11月から活動を開始している。 []
    2. 環境担当大臣とは、環境・食糧・農村地域省(DEFRA)大臣、スコットランド・ウェールズ・北アイルランドの各行政府における環境大臣とされている。 []

    2004年12月13日の英国貿易産業省(DTI)のプレスリリースによると、英国政府は、海外から受け入れた使用済燃料の再処理によって発生する中レベル放射性廃棄物について、高レベル放射性廃棄物と等価交換することを承認する決定を行った。DTIは、2004年1月30日に「中レベル放射性廃棄物の等価交換のための提案についての協議文書」を発表し、2004年4月30日までの3カ月間、公開協議を行っていた。今回の決定は、協議文書に対して寄せられた325の意見のうち90%が等価交換に賛同したことを受けたものであるとされている。

    公開協議の結果を要約した文書によると、この協議文書は約1,600部配布されており、配布先は議員・原子力産業界・労働組合・環境団体・英国民・地方政府・外国政府・日本の電気事業者および日本国民・その他の広範囲に及んでいた。325の返答のうち302が肯定的な意見、13が否定的な意見、10がその他の意見であった。

    プレスリリースによると、今回の決定により、環境と経済の両面において便益が得られるとしており、特に以下のような便益があげられている。

    • 海外から受け入れた使用済燃料の再処理によって発生する放射性廃棄物を早期に返還できる。(高レベル放射性廃棄物との等価交換の場合は2017年に終了。等価交換しない場合は2033年に終了。)
    • 英国核燃料公社(BNFL)による海外顧客への放射性廃棄物の輸送回数が6分の1に減少する。
    • 原子力廃止措置機関(NDA)によるその他の商業再処理事業の収益とともに、中レベル放射性廃棄物の等価交換によってNDAにもたらされる追加収益が、NDAによるクリーンアップ事業に当てられることになり、結果的に長期にわたって納税者の利益となる。

    英国政府は1990年代始めに、この等価交換問題を詳細に検討しており、これまでの政府方針は1995年に発表されたコマンドペーパー「放射性廃棄物管理政策レビュー」(Cm2919)において、海外の使用済燃料の再処理により発生した放射性廃棄物は、再処理の委託国に返還すべきとされていた。今回の決定により、同コマンドペーパーで示されていた方針が変更され、現行のBNFLの契約の下、海外から受け入れた使用済燃料の再処理によって発生する中レベル放射性廃棄物の保有と長期管理を行うことになるとされている。

    プレスリリースによると、等価交換による中レベル放射性廃棄物の増量分は、英国全体での発生量の約1.4%に当たるとされている。しかし、放射線学上で等価の高レベル放射性廃棄物がBNFLの海外顧客に返還されることになり、放射線学上の観点からは英国において中立が保たれることになるとのことである。なお、前述のコマンドペーパーにおいて、政府は、既にドリッグに低レベル放射性廃棄物処分場が存在することから、低レベル放射性廃棄物を高レベル放射性廃棄物と等価交換することは認めている。

    【出典】

    • 貿易産業省(DTI)ウェブサイトの2004年12月13日付けのニュースリリース、
      http://www.gnn.gov.uk/environment/detail.asp?ReleaseID=139081&NewsAreaID=2&NavigatedFromDepartment=False
    • 貿易産業省(DTI)ウェブサイト、http://www.dti.gov.uk/consultations/consultation-1205.html、2004年12月
    • コマンドペーパー「放射性廃棄物管理政策レビュー 最終結論」(Cm2919)、1995年7月
    • 環境・食糧・農村地域省(DEFRA)、協議文書「放射性廃棄物の安全な管理」、2001年9月

    【2006年10月2日追記】

    2006年9月27日、原子力廃止措置機関(NDA)は、ブリティッシュ・ニュークリア・グループ(BNG)社が実施した等価交換による返還高レベル放射性廃棄物量の算出に対して、コンサルタント会社の協力の下に独立した評価及び監査を行った結果、BNG社の報告結果は妥当であり、NDAが等価交換の実施方法について承認する旨を発表した。

    等価交換に関しては、2004年に政府が中レベル及び低レベル放射性廃棄物と放射線学的に等価な高レベル放射性廃棄物量の算出のために、「廃棄体の交換比率の算定に用いる指標」(ITP:Integrated Toxic Potential)を用いることを発表しており、政府はNDAにITPによる計算の妥当性を確認するように求めていた。

    なお、プレスリリースでは、今回NDAがコンサルタント会社に作成させた評価・監査報告書も公表されており、その中で、BNG社によって算出された等価交換による高レベル放射性廃棄物の追加量の割合について、最終的な結果などが示されている。

    • 原子力廃止措置機関(NDA)ウェブサイトの2006年9月27日付けのプレスリリース
      http://www.nda.gov.uk/News–News_1944).aspx?pg=1944

    ONKALOの建設状況
    (ポシヴァ社ウェブサイトより引用)


    フィンランドにおける高レベル放射性廃棄物(使用済燃料)処分の実施主体であるポシヴァ社は、2004年12月3日付けのプレスリリースにおいて、同社がオルキルオトで、2004年6月から建設を行っている地下特性調査施設(ONKALO)の進捗状況を公表した。プレスリリースによると、坑道掘削距離は122メートルに達しており、ポシヴァ社とONKALO建設作業の主契約業者であるカリオラケンヌス(Kalliorakennus)社によって、掘削及び掘削により露出した岩盤への調査が実施されている。なお、ONKALOの完成は2010年の予定である。また、最終処分施設の建設許可申請は2012年までに政府に提出されることになっており、操業開始は2020年の予定とされている

    ONKALO建設のための掘削作業については、通常の岩盤工事との違いはないが、坑道周囲の岩盤のグラウト1 には特に注意が払われている。坑道は発破掘削工法により1回当たり約5メートルずつ掘削されている。一週間あたりの掘削は通常、平均週3回、最大で週7回実施されている。また、削孔段階では、岩盤構造に応じて、合計で32~42の発破孔が削孔されている。

    坑道は、掘削3回毎にグラウトされ、同時に水の流量測定や散逸試験も実施されている。グラウト後、次の掘削に入る前に、地質学者が岩盤構造の調査を実施している。地質学者は、最終処分場のための岩盤の適合性についての正確な情報を得ることで、事前に作成されたオルキルオトの岩盤モデルの補完を可能としている。

    なお、ONKALOで実施される研究プログラムについては、2003年10月にポシヴァ社より公表された「ONKALO地下特性調査及び研究プログラム」に示されている。また、フィンランドにおける放射性廃棄物管理全般に関する研究開発計画としては、ポシヴァ社より2003年12月に公表された「オルキルオト、ロヴィーサ原子力発電所の放射性廃棄物の管理:2004-2006年の研究・開発・設計プログラム」(TKSレポート2003)がある

    【出典】

    • ポシヴァ社ウェブサイト、 http://www.posiva.fi/cgi-bin/newsarcposiva.cgi?
      dataf=20041203140128.txt & dpic=20041203140230.gif & title=ONKALO+tunnel+reaches+122+metres+in+depth & arctype=ESITE & arcfile= & arctitle= & newstype=uutinen & lang=eng & date=20041203000000

    1. 地盤や構造物の間隙・割れ目・空洞に強化や止水を目的として固結材を注入する工法 []