Top » 海外情報ニュースフラッシュ(全記事表示モード)

カナダ原子力安全委員会(CNSC)は、2021年1月29日、放射性廃棄物の管理に関する規制要件とガイダンスを定めた規制文書「REGDOC-2.11.1 廃棄物管理 第1巻:放射性廃棄物の管理」(以下「REGDOC-2.11.1第1巻」という。)を新規に策定するとともに、関連する既存の規制文書「REGDOC-2.11.1 廃棄物管理 第3巻:放射性廃棄物の処分のためのセーフティケース」(以下「REGDOC-2.11.1第3巻」という。)を改訂したことを公表した。CNSCは2018年12月に、今回策定されたREGDOC-2.11.1の上位文書にあたる規制文書「REGDOC-2.11 カナダにおける放射性廃棄物の管理及び廃止措置の枠組み」を策定しており、その下位に属する廃棄物管理に関する規制文書REGDOC-2.11.1シリーズを以下の3巻の文書で構成する計画であった。今回のREGDOC-2.11.1第1巻の策定により、REGDOC-2.11.1シリーズの規制文書が出揃ったことになる。

  • REGDOC-2.11 カナダにおける放射性廃棄物の管理及び廃止措置の枠組み
    (2018年12月発行)

    • REGDOC-2.11.1 廃棄物管理 第1巻:放射性廃棄物の管理
      (2021年1月発行) ※今回新たに発行
    • REGDOC-2.11.1 廃棄物管理 第2巻:ウラン鉱山廃棄物の岩石及び鉱さいの管理
      (2018年11月発行)
    • REGDOC-2.11.1 廃棄物管理 第3巻:放射性廃棄物の処分のためのセーフティケース
      (2021年1月発行、第2版)※今回第1巻の発行にあわせて改訂

■REGDOC-2.11.1第1巻の概要

今回新たに策定されたREGDOC-2.11.1第1巻は、原子力安全管理法に基づく許認可取得者である事業者に対して、放射性廃棄物管理に係る要件とガイダンスを定めた規制文書である。一般要件として、許認可取得者は、「廃棄物の安全な管理に責任を負わなければならない」、「廃棄物管理の安全性確保のためのプログラムを開発し、実施しなければならない」、「安全性を継続的に改善するために操業経験や類似施設からの教訓、科学技術の進歩を利用しなければならない」などと定め、放射性廃棄物管理の各段階(発生、取扱、処理、輸送、貯蔵、処分)における事業者の責務を示している。その上で、廃棄物の貯蔵施設と処分施設について、それぞれ施設の設計、建設、操業に関する要件を示している。

REGDOC-2.11.1第1巻においてCNSCは、放射性廃棄物の貯蔵施設、処分施設の双方に対する一般要件として、「適用される規制に従い、放射性廃棄物処分施設のライフサイクル全体のセーフティケースの開発、実施、維持」を要求している。さらに、処分施設については、閉鎖後安全評価についても開発、実施、維持を要求している。

■REGDOC-2.11.1第3巻の改訂

REGDOC-2.11.1第1巻におけるセーフティケース及び閉鎖後安全評価の規制要求に対応するため、今回のREGDOC-2.11.1第1巻の策定と同時に、放射性廃棄物処分のセーフティケース開発及びそれを裏付ける安全評価活動に係る規制要件とガイダンスを定めたREGDOC-2.11.1第3巻の改訂も行われた1

CNSCは、廃棄物処分施設の許認可のためにセーフティケースをCNSCに提出しなければならないとしており、放射性廃棄物処分のためのセーフティケースと安全評価の定義を示し、セーフティケースの役割や構成要素、要件などを示している。また、セーフティケースには、サイトの特性や廃棄物の特性、人工バリア及び天然バリアの記述などの処分システム全体に関する定性的・定量的な説明を要求している。

 

【出典】


  1. 今回の改訂により、REGDOC-2.11.1第3巻のタイトルが変更された。2018年5月初版のタイトルは「放射性廃棄物管理の長期安全性の評価」であったが、2019年5月改訂版では「放射性廃棄物の長期管理のためのセーフティケース」となり、今回2021年1月改訂版において「放射性廃棄物の処分のためのセーフティケース」に変わった。 []

英国の地層処分事業の実施主体である放射性廃棄物管理会社(RWM社)は、2021年1月14日付けのプレスリリースにおいて、英国カンブリア州のアラデール市が地層処分施設(GDF)のサイト選定プロセスにおける「調査エリア(Search Area)」の特定に向けてワーキンググループ(正式名称:アラデールGDFワーキンググループ)を設置したことを公表した。ワーキンググループは、調査エリアの特定を行っていくが、プロセスを進めるための「コミュニティパートナーシップ」の設置に向け、参画する初期メンバーの募集を行うとしている。なお、2018年12月から開始したサイト選定プロセスにおいて、ワーキンググループの設置に至ったのは、2020年11月のコープランド市に続いて今回が2例目である。

■ワーキンググループの設置までの経緯:初期対話

アラデール市は、原子力施設が数多く立地するコープランド市の北に隣接しており、原子力産業に従事している住民が多く居住している。アラデール市は以前、2008年6月に開始された英国白書「放射性廃棄物の安全な管理-地層処分の実施に向けた枠組み」に基づく地層処分場選定プロセスにおいても関心表明を行っていたが、カンブリア州議会での反対多数の議決により、当時の選定プロセスから撤退している 。

英国政府の2018年政策文書『地層処分の実施-地域社会との協働:放射性廃棄物の長期管理』(以下「2018年政策文書」という)で設定されたサイト選定プロセスでは、地層処分施設の設置に関心を示す者、または、設置候補エリアを提案したい者であれば、地層処分事業の実施主体である放射性廃棄物管理会社(RWM社)と初期対話(initial discussion)を開始できることになっている 

アラデール市では、官民再生パートナーシップによる地域再生事業などを手掛けるGenR8 North社1 が地層処分施設の立地に関心を示し、GenR8 North社とRWM社の初期対話が実施された。ワーキンググループのウェブサイトでは、初期対話の期間にRWM社が取りまとめた初期評価レポート(Initial evaluation report)が公表されている。RWM社は、既存の情報に基づけば、GenR8 North社が関心を示すエリア2 は地層処分施設を設置できる可能性を有しているとの結論を示している。

アラデールGDFワーキンググループの検討対象エリア(出典:アラデールGDFワーキンググループウェブサイトの図を一部修正)

アラデールGDFワーキンググループの検討対象エリア(出典:アラデールGDFワーキンググループウェブサイトの図を一部修正)

■ワーキンググループの設置と構成

2018年政策文書で設定されたサイト選定プロセスでは、初期対話において、地層処分施設(GDF)の設置に向け、さらなる検討を進めていくことに合意した場合には、当該地域の自治体組織に報告して、コミュニティ全体での協議に発展させていくための準備組織「ワーキンググループ」を設置することになっている。

今回アラデール市で設置されたワーキンググループでは、議長にヨークシャーデールズ国立公園局の元メンバー3 であるジョスリン・マナーズ-アームストロング氏が就任する。また、ワーキンググループには、アラデール市議会、RWM社及びGenR8 North社が参加する。なお、GenR8 North社の意向もあり、アラデール市のうちの湖水地方の国立公園の敷地は検討対象から除外されることとなっている。

■今後の取組

コープランド市のワーキンググループと同様に、アラデール市のワーキンググループも、今後、コミュニティ全体の市民の参画を得て、市民の意見を理解するとともに、適性を有するサイトや受け入れの意向を持つコミュニティを追求していくため、さらなる検討対象となる「調査エリア」の特定を行っていくとしている。また、RWM社とともにプロセスを前進させていく「コミュニティパートナーシップ」の初期メンバーの募集もワーキンググループの課題となっている。

【出典】

 

【2021年10月7日追記】

(出典:アラデールGDFワーキンググループウェブサイトの図を一部修正)

英国カンブリア州アラデール市に設置された地層処分施設(GDF)のサイト選定プロセスのワーキンググループは、2021年10月5日付のプレスリリースにおいて、同市内から約320平方キロメートルの「調査エリア(Search Area)」を特定したことを公表した。アラデール市では2021年1月にワーキンググループを設置し、地域の地質、環境問題、輸送インフラや安全性などに関する情報を基に調査エリアの特定作業を進めていた。今回特定された調査エリアの範囲については、英国政府の2018年政策文書に基づいて、コミュニティや自治体組織等から協議に参加可能な者が特定できるように、アラデール市の選挙区4 を最小単位として調査エリアが設定されている(図参照)。なお、2018年から開始したサイト選定プロセスにおいて、調査エリアの特定に至ったのは、2021年9月のコープランド市に続いて今回が2例目である。

アラデール市のワーキンググループは、調査エリアの特定やサイト選定プロセスの次の段階に関して、近日中に地域住民へ説明する予定である。

サイト選定プロセスを次の段階に進めるためには、地元コミュニティのメンバー、アラデール市、RWM社などで構成される「コミュニティパートナーシップ」を設立する必要がある。今後、パートナーシップが設立された場合、地層処分施設(GDF)設置の可能性について、より詳細な検討(わが国の概要調査に相当)が行われる。また、パートナーシップを形成するコミュニティ等には、経済振興、環境・福祉向上を目的とするプロジェクトに限定した形で、英国政府から年間最大100万ポンド(1億4,600万円、1ポンド=146円)の資金が提供されることになっている。

 

【出典】

 


  1. GenR8 North社は、カンブリア州に拠点を置く企業である。コープランド市における地層処分施設の立地にも関心を示しており、RWM社との初期対話を行っており、現在、コープランド市のワーキンググループにも参加している。 []
  2. 湖水地方の国立公園を除く、アラデール市の領域と隣接する沿海部を意味している。 []
  3. 英国における各国立公園局(National Park authorities)のメンバーは、法律に基づき、議会や国務長官により任命される。 []
  4. 現在、アラデール市の選挙区は23あり、市議会議員の定数は49名である。今回調査エリアの対象となった13の選挙区の議員定数は、アスパトリア:2名、ブロートンセントブリッジッツ:2名、ダルトン:1名、エレン・ギルクスク:2名、フリンビー:1名、ハリントン・サルターベック:3名、マリポートノース:3名、マリポートサウス:2名、ムーアクローズ・モスベイ:3名、シートン・ノースサイド:3名、セントジョンズ:3名、セントマイケルズ:2名、ステインバーン・クリフトン2名である。 []
潜在的適性地域国家マップ(CNAPI)

潜在的適性地域国家マップ(CNAPI)
(出典:国家放射性廃棄物センターウェブサイト)

イタリアの放射性廃棄物管理の実施主体である「原子力施設管理会社」(SOGIN)は2021年1月5日に、環境・国土・海洋保護省(MATTIM)及び経済開発省(MISE)の承認を得て、国家放射性廃棄物センター(Deposito Nazionale)のサイト選定に向けた潜在的適性地域国家マップ(CNAPI)を公表した。このマップには67カ所の候補サイトが示されており、いずれかの場所において、イタリア国内で発生した極低レベル及び低レベル放射性廃棄物を受け入れる浅地中処分場のほか、高レベル及び中レベル放射性廃棄物の集中貯蔵施設(CSA)を立地する計画である。

イタリアでは、4基の原子炉が運転していたが、1986年のチェルノブイリ原子力発電所での事故を受け、いずれも1990年までに閉鎖された。原子力発電所で発生した低レベル放射性廃棄物などは、発生元で貯蔵されている。一方、使用済燃料は、原則として海外で再処理する方針であり、再処理のため既にフランスと英国へ輸送されている。今後、原子力施設の廃止措置に伴って多くの放射性廃棄物が発生すると見込まれており、また、使用済燃料の再処理によって発生した高レベル及び中レベルの放射性廃棄物はイタリアに返還されることになっている。

■国家放射性廃棄物センター(Deposito Nazionale)の概要

SOGINが計画する国家放射性廃棄物センター(Deposito Nazionale)に設置される浅地中処分場では、極低レベル及び低レベル放射性廃棄物を合計で約7万8,000m3を処分する計画であり、このうち約5万m3は原子炉の運転及び廃止措置により発生した放射性廃棄物で、残りの約2万8,000m3は医療、産業及び研究活動で発生した放射性廃棄物である。なお、処分対象廃棄物のうち4万5,000m3は、今後発生する放射性廃棄物である。

浅地中処分場と同じ敷地内に建設される高レベル及び中レベル放射性廃棄物の集中貯蔵施設(CSA)では、約1万7,000m3の貯蔵容量を予定しており、うち約400m3は、使用済燃料と海外での再処理で発生したガラス固化体とされている。

国家放射性廃棄物センター(Deposito Nazionale)に隣接して、テクノロジーパーク(Parco Technologico)を設置する計画であり、放射性廃棄物管理、放射線防護、環境保護の分野における国際共同研究等の研究開発や訓練センターの構想を具体化していく予定である。

国家放射性廃棄物センターと隣接するテクノロジーパークの地図

国家放射性廃棄物センターと隣接するテクノロジーパークの地図
(出典:国家放射性廃棄物センターウェブサイト)

国家放射性廃棄物処分場に建設される浅地中処分場の概念図

国家放射性廃棄物処分場に建設される浅地中処分場の概念図
(出典:国家放射性廃棄物センターウェブサイト)

■今後の予定

SOGINは、潜在的適性地域国家マップ(CNAPI)の公表と併せて、公衆協議の開始を表明した。今後6カ月間にわたって実施される公衆協議には、候補サイトの地元自治体当局、経済界、労働組合、大学、研究機関が参加し、国家放射性廃棄物センターの建設による経済効果や地域開発などを検討することとしている。公衆協議の結果を踏まえ、SOGINはCNAPIの改訂を行い、環境・国土・海洋保護省(MATTIM)、経済開発省(MISE)、インフラ・交通省(MIT)及び安全規制機関である国家原子力安全・放射線防護監督局(ISIN)の見解を踏まえて、MISEがCNAPIの改訂版である適性地域国家マップ(CNAI)を承認する。その後、SOGINは、地域の関心表明を求め、サイト選定を進めていくとしている。

【出典】

カナダの天然資源省は、2020年11月16日付けのニュースリリースで、放射性廃棄物政策の見直し(modernize)に向けて、公衆、先住民、廃棄物発生者、州政府などの様々なステークホルダーを含む全国民的な関与プロセス(inclusive engagement process)を開始したことを公表した。天然資源省は、カナダの放射性廃棄物政策が、今後も国際的な最良の慣行に合致するとともに、既存及び将来発生する放射性廃棄物の管理活動を牽引するリーダーシップをもたらすものとしたい考えである。また、天然資源省は、この関与プロセスの一環として、カナダの使用済燃料処分の実施主体である核燃料廃棄物管理機関(NWMO)に対して、放射性廃棄物の所有者及び発生者、先住民、カナダ国民と協働して、低・中レベル放射性廃棄物を含めた包括的な放射性廃棄物管理戦略を開発するための対話を主導するよう要請したことを明らかにした。

■放射性廃棄物政策の見直しの背景とスケジュール

カナダの現行の放射性廃棄物政策は、連邦政府が1996年に策定した「放射性廃棄物政策の枠組み」に基づいており、放射性廃棄物の発生者と所有者による処分のための制度と資金確保に関する責任について、以下のように定めている。

  • 連邦政府は、放射性廃棄物処分が安全で、環境に配慮し、包括的に、費用対効果の高い形で、また統合的に実施されるようにする。
  • 連邦政府は、廃棄物発生者と所有者が承認された処分計画に従って資金確保と操業の責任を果たすことができるようにするために、政策を策定し、それらの者を規制・監督する責任を負う。
  • 廃棄物発生者と所有者は、汚染者負担の原則に従い、処分やその他の放射性廃棄物に関して必要となる施設のための資金確保、組織、マネジメント及び操業に責任を負う。
  • 廃棄物発生者は、規制上の審査と承認が必要になる施設や活動に関する計画を策定して実行し、また承認を得たら、報告や遵守に関する審査に加えて、許認可で定められた要件と条件に従う。

「放射性廃棄物政策の枠組み」に基づいて、1997年に安全規制に関する「原子力安全管理法」が制定されたほか、2002年に使用済燃料の長期管理の枠組みを定める「核燃料廃棄物法」が制定され、使用済燃料処分の実施主体である核燃料廃棄物管理機関(NWMO)が設立された

NWMOは、核燃料廃棄物法によって、使用済燃料の長期管理アプローチを開発し、天然資源大臣に提案する任務を与えられた。NWMOは、カナダ国民との関与プロセスを展開し、聴き取った意見を集約・反映して「適応性のある段階的管理」(詳しくは こちら)を提案した。NWMOが提案したアプローチは、天然資源大臣の勧告を踏まえた2007年6月の総督決定により、カナダの使用済燃料の長期管理アプローチとして決定した。NWMOは、2010年5月に使用済燃料処分場のサイト選定を開始し、現在は2カ所の自治体でサイト選定が進められている

一方、低・中レベル放射性廃棄物については、オンタリオ・パワージェネレーション(OPG)社が所有するブルース原子力発電所サイトでの地層処分場(DGR)の建設を目指していたが、プロジェクトに対する賛否を問う先住民による投票結果を受けて、OPG社は2020年1月31日、同サイトにおけるDGRの建設を断念し、代替サイトを検討する方針に転じている

このような状況から、連邦政府は今回、カナダの全ての放射性廃棄物を安全かつ長期にわたって管理するための確固とした政策と明瞭な道筋を示すため、ステークホルダーと協力し、カナダ国民と対話していく考えを表明した。天然資源省は、カナダ国民との対話に向けた特設ウェブサイトを設置しており、廃棄物の最小化(minimization)と貯蔵施設に関する情報提供を行っているほか、質問を提示して回答を求めるディスカッションペーパーを公表している。その他のトピックのディスカッションペーパーも追加される予定である。カナダ国民との関与プロセスは、2021年3月31日までを継続する。天然資源省は、関与プロセスを通じて寄せられた意見を集約した報告書を公表して、コメントを募集した後、2021年秋には最新化した政策を公表する予定である。

■包括的な放射性廃棄物管理戦略の開発

天然資源大臣は、低・中レベル放射性廃棄物を含めた放射性廃棄物政策の見直しに向けたカナダ国民との関与プロセスの開始の公表に先がけ、2020年11月13日に核燃料廃棄物管理機関(NWMO)に書簡を送り、カナダにおける唯一の包括的な放射性廃棄物管理戦略(an integrated strategy)の開発のための対話をNWMOが主導するよう要請していた。

天然資源大臣は、現行の放射性廃棄物政策においては放射性廃棄物の発生者と所有者(以下「事業者」という)に対して、それぞれが個別に廃棄物管理計画(長期を含む)を開発するよう求めており、様々な事業者が多様な取組を検討しているものの、そのような取組が対話を通じてステークホルダーやカナダ国民に周知されなければならないと指摘している。また、事業者は自らが管理する放射性廃棄物の特性を最も良く理解しており、それらの事業者が協力して唯一の包括的な放射性廃棄物管理戦略を開発しなければならないとも考えている。こうした理由から、天然資源大臣は、事業者やステークホルダー、カナダ国民との対話を始めるにあたり、これまで使用済燃料管理と公衆関与のリーダーを果たしてきたNWMOが適任であるとしている。

天然資源大臣は、今後開発していくカナダの包括的な放射性廃棄物管理戦略には、以下の要素が含まれなければならないとしている。

  • 現在と将来における廃棄物量という観点からの、カナダにおける現在の放射性廃棄物管理の状況の説明。なお、小型モジュール炉(SMR)を導入した場合に発生する廃棄物や、廃棄物の特性、場所及び所有権を考慮する。
  • カナダの放射性廃棄物の長期管理や処分方策における現行の計画と進捗のアップデート、及び対処しなければならないギャップ。
  • 現在及び将来の放射性廃棄物インベントリに対応するための概念的なアプローチ。これには、様々なタイプの放射性廃棄物の長期管理や処分のための技術オプション、及びカナダにおける放射性廃棄物の長期管理施設のそれぞれに関するオプションを含む。
  • 廃棄物の長期管理施設の計画、統合、設置及び操業に関する考慮事項。

天然資源大臣からの要請を受けたNWMOは、低・中レベル放射性廃棄物の包括的な管理戦略に関して、実用的な勧告を連邦政府に提示したいとの考えとともに、使用済燃料の長期管理アプローチの開発から実施を通じ、カナダ国民との関与に関する20年にわたる経験と知識を活用して協力する姿勢を明らかにした。

【出典】

 

【2022年8月30日追記】

カナダの核燃料廃棄物管理機関(NWMO)は2020年11月から、天然資源大臣の要請を受けて、低・中レベル放射性廃棄物の包括的な管理戦略に関するカナダ政府への勧告案の検討を行っている。NWMOは2022年8月に、包括的な放射性廃棄物管理戦略(ISRW)に関する特設ウェブサイトにおいて、「パブリックコメント募集のための包括的な放射性廃棄物管理戦略ドラフト版」(以下「ISRWドラフト版」という)を公表するとともに、2022年8月25日から2022年10月24日までの期間でパブリックコメントの募集を開始した。

NWMOは今回のISRWドラフト版において、以下の7項目の勧告案を提示している。

  • 勧告1 低レベル放射性廃棄物は、複数の浅地中処分施設で、廃棄物所有者が処分すべきである。
  • 勧告2 中レベル放射性廃棄物は、国内1カ所の地層処分場(DGR)で処分すべきであり、その実施主体をNWMOとすべきである。
  • 勧告3 実施主体から独立した第三者組織が、包括的な放射性廃棄物管理戦略(ISRW)の遂行を監督すべきである。
  • 勧告4 将来の施設の立地が計画されている地域の地元コミュニティや先住民の同意は、立地の際に取得すべきである。
  • 勧告5 施設の設計では水の保護を最優先にすべきである。
  • 勧告6 処分施設の長期間にわたる管理体制を確立すべきである。
  • 勧告7 我々は今行動すべきであり、将来世代に先送りすべきでない。

NWMOは、カナダのあらゆる放射性廃棄物を、後世代においても安全に、責任のある形で、効果的に管理できるようにするための最善のオプションについて、その考え方を見い出して共有するため、2021年1月から2022年6月までの18カ月にわたって、産業界、教育・研究機関、市民団体、議員や若年者の代表を含む国民や先住民と様々なエンゲージメント(engagement)活動を行ってきた。この期間においてNWMOは、国際的なベンチマーク、実績調査、技術的及びコスト見積り評価などの情報提供も行い、幅広く意見を求めている。

今回のISRWドラフト版のパブリックコメント募集期間が終了した後、NWMOはコメント等を踏まえて、包括的な放射性廃棄物管理戦略(ISRW)に関する最終的な勧告を取りまとめる予定である。NWMOは、カナダ政府が改定作業を進めている、新たな「放射性廃棄物管理及び廃止措置の政策」とISRWに関する勧告とが整合したものとなるようにする必要性から、ISRWに関する最終的な勧告の提出は、2022年後半に予定されているカナダ政府による新たな政策の公表の後とするとの考えを表明している。

【出典】

フランスの放射性廃棄物管理機関(ANDRA)は2020年11月6日に、地層処分場(CIGÉO)の設置に関する公益宣言(DUP)について、2020年8月3日にエコロジー移行省へ申請したことを明らかにするとともに、2021年第2四半期に予定されている公開ヒアリングに向けた資料一式(下記コラム参照)を公表した。ANDRAは、地層処分場プロジェクトが環境に与える影響の防止策、地域におけるメリットを示した上で、同プロジェクトがDUPを受けるに値する公益性を持つことを主張している。

公益宣言(DUP)は、開発プロジェクトの公益性や正当性を政府が認定するものである。政府は、開発プロジェクトを実施する事業者からの申請を受けて、公開ヒアリングを実施し、申請内容の審査を行う。その後、政府の諮問機関であり、行政最高裁判所でもある国務院(Conseil d’État)の勧告を経て、政府がDUPをデクレ(政令)として発出する。DUPは、開発プロジェクトに必要な手続きの上位要素とみなされ、開発プロジェクトの都市計画への編入や、事前の工事の許認可取得に必要とされる。また、公用収用法典に基づいて、公共目的で行う開発のために私有地を収用する際の行政手続きとしても、政府によるDUPの発出が必要とされる。なお、地層処分場(CIGÉO)の建設には、DUPとは別に、設置許可を申請し、設置許可の発給を受けることが必要となる。

ANDRAは、DUP申請に関する公開ヒアリング向けて公開した資料において、地層処分場(CIGÉO)プロジェクトが環境に与えるマイナス影響の評価と影響を抑制するために講じる措置、地層処分プロジェクトによる地域へのメリット等について説明している。ANDRAは、環境へのマイナス影響について、人間の健康への影響はないとしているが、環境影響を抑制するため、以下のような措置を講じるとしている。

  • 一部森林の維持等、景観を損なわないための措置
  • 排水の汚染防止処理等、地上及び地下水源への影響を抑制する措置
  • 主に建設期間中の騒音・粉じん対策、道路の渋滞防止措置
  • 地層処分場(CIGÉO)の操業開始後の放射性排気や廃液の放射性物質の濃度を規制限度以下に抑えるための措置
  • 地域における生物多様性や生態系を維持するための措置

一方、ANDRAは、地層処分場(CIGÉO)プロジェクトによって地域におけるメリットとして以下を挙げている。

  • 経済発展と雇用創出
    ANDRAやその他関連設備やインフラ等の工事を実施する事業者により、建設期間中には最大2,000人、操業期間中には600人程度の新規雇用が創出される。
  • 地域の人口構成の変化
    2030年までに、ムーズ県南部で1,000人程度の住民増(大半は15歳~64歳の現役世代)となる見通しがある。
  • 税収
    地域における税収は、地層処分場の建設から操業までの期間中に総額59億ユーロ(約7,000億円。2017年3月時点での試算値)に上る。
  • 生活枠組みの改善と地域の魅力の増大
    2019年10月に政府と地域の関係者、ANDRA、事業者等が締結した地域開発計画(PDT)では、以下の方向性が提示されている。

    • 地層処分場(CIGÉO)の建設と操業に必要なインフラ整備の実施
    • 地層処分場近傍地域における社会・経済的ポテンシャルの強化
    • 整備措置を適切に組み合わせることによるムーズ県及びオート=マルヌ県の地域の魅力の向上
    • これら2県が備える経済・環境の魅力を維持する取り組み

今回ANDRAが公開したDUPに関する公開ヒアリング向け資料は、以下の8テーマ・19の文書から構成されている。なお、ANDRAによるDUP申請については、2021年第2四半期中にも公開ヒアリングが開始される計画である。

公益宣言(DUP)に関する公開ヒアリング向け資料一覧(8テーマ・19文書)

<①地層処分プロジェクトの紹介>

  • 資料0:地層処分場(CIGÉO)に関する非技術的な紹介
  • 資料1:プロジェクトの目的や必要性に関する説明
  • 資料2:地層処分場(CIGÉO)配置図
  • 資料3:工事全体図面
  • 資料4:最も重要な構造物の主な特徴
  • 資料11:工事による道路の通行止めの防止策

<②環境:影響と影響緩和策>

  • 資料6-1:地層処分場(CIGÉO)プロジェクトの環境影響評価
  • 資料6-2:地層処分場(CIGÉO)プロジェクトの環境影響評価の非技術的な要約

<③法的枠組み>

  • 資料7:法律、行政関連情報
  • 資料8:地層処分場(CIGÉO)プロジェクトについて提起された政府諮問機関等の見解
  • 資料10:公益宣言(DUP)申請に関するANDRA理事会の2019年12月12日の決定

<④公衆との協議>

  • 資料9:地層処分場(CIGÉO)プロジェクト検討への公衆参加に関する総括

<⑤経済>

  • 資料5:概算費用見積書
  • 資料13:地層処分場(CIGÉO)プロジェクトで開発する輸送インフラの社会経済的評価

<⑥都市化>

  • 資料12:都市計画文書との整合性確認

<⑦国土>

  • 資料14:国土開発整備の見通しに関する総括

<⑧読者の理解を助ける補足資料>

  • 資料15:用語集及び略語集
  • 資料16:読解ガイド
  • 資料17:附属書

【出典】

英国カンブリア州のコープランド市は、2020年11月4日付のプレスリリースにおいて、地層処分施設(GDF)のサイト選定プロセスにおける「調査エリア(Search Area)」の特定に向けてワーキンググループ(正式名称:コープランドGDFワーキンググループ)を設置したことを公表した。ワーキンググループは、情報発信を目的としたウェブサイトを開設するとともに、調査エリアの特定と提案、並びに「コミュニティパートナーシップ」の設置に向け、コミュニティパートナーシップに参画する初期メンバーの募集を行うとしている。なお、2018年12月から開始したサイト選定プロセスにおいて、ワーキンググループの設置に至ったケースは今回のコープランドが初めてとなる。

■ワーキンググループの設置までの経緯:初期対話

コープランド市には、セラフィールド酸化物燃料再処理工場(THORP)などの多くの原子力施設が立地している。同市は以前、2008年6月に開始された英国白書「放射性廃棄物の安全な管理-地層処分の実施に向けた枠組み」に基づく地層処分場選定プロセスにおいても、関心表明を行っており、コープランド市議会は次段階に進むことを賛成多数で可決していたが、カンブリア州議会での反対多数の議決により、コープランド市は当時の選定プロセスから撤退している

英国政府の2018年政策文書『地層処分の実施-地域社会との協働:放射性廃棄物の長期管理』(以下「2018年政策文書」という)で設定されたサイト選定プロセスでは、地層処分施設の設置に関心を示す者、または、設置候補エリアを提案したい者であれば、地層処分事業の実施主体である放射性廃棄物管理会社(RWM社)と初期対話(initial discussion)を開始できることになっている。コープランド市のワーキンググループは、ウェブサイトにおいて、地層処分施設の立地に関心を示した4者とRWM社の初期対話の期間にRWM社が取りまとめた4つの初期評価レポート(Initial evaluation report)を公表している。

  • コープランド市議会(対象エリア:コープランド市とその沖合)
  • 民間企業(対象エリア:低レベル放射性廃棄物処分場(LLWR)近郊の沖合)
  • 民間企業(対象エリア:コープランド市とその沖合)
  • 個人(対象エリア:ギル・スコーア採石場と海岸の平原)

RWM社は、既存の情報に基づけば、コープランド市議会を含む4者が関心を示しているエリアはいずれも地層処分施設を設置できる可能性を有しているとの結論を示している。

 コープランド市のワーキンググループの検討対象エリア(出典:コープランドGDFワーキンググループウェブサイトの図を一部修正)


コープランドGDFワーキンググループの検討対象エリア(出典:コープランドGDFワーキンググループウェブサイトの図を一部修正)

■ワーキンググループの設置と構成

2018年政策文書で設定されたサイト選定プロセスでは、初期対話において、地層処分施設(GDF)の設置に向け、さらなる検討を進めていくことに合意した場合には、当該地域の自治体組織に報告して、コミュニティ全体での協議に発展させていくための準備組織「ワーキンググループ」を設置することになっている。コープランド市は、RWM社の初期評価レポートの提出を受け、2020年7月にコープランド市議会執行部において、以下の条件の下でワーキンググループの設置に向けて、RWM社と検討を進めることを決定した。

  • 現在、湖水地方の国立公園の敷地内にあるコープランド市の領域は、最初から検討対象として除外すること1
  • 現在コミュニティと進められているプロセスでは、GDFを沖合に設置することも可能となっていることを踏まえ、沖合も検討対象とすること
  • 市議会は、ワーキンググループの議長として、信頼できる独立した人物を任命したいと考えており、また市議会が負担するサイト選定プロセスに参加するために必要な正当な費用は全て補償されるべきであると考えていること

地層処分施設の設置に関心を示していた4者及びRWM社間でワーキンググループの設置に同意が得られたことを受けて、今回、初期のワーキンググループのメンバーのうち、自治体組織であるコープランド市からワーキンググループの設置が公表されることとなった。ワーキンググループの議長には、カンブリア州の南に位置するランカシャー州・ランカスター市議会の事務総長等を歴任してきたマーク・カリナン氏が就任する。なお、ワーキンググループのメンバーには、RWM社も含まれる。

■今後の取組

ワーキンググループは、今後、コミュニティ全体の市民の参画を得て、市民の意見を理解するとともに、適性を有するサイトや受け入れの意向を持つコミュニティを追求していくため、さらなる検討対象となる「調査エリア」の特定と提案を行っていくとしている。また、RWM社とともにプロセスを前進させていく「コミュニティパートナーシップ」の初期メンバーの募集もワーキンググループの課題となっている。

【出典】

 

【2021年10月5日追記】

英国カンブリア州コープランド市に設置された地層処分施設(GDF)のサイト選定プロセスのワーキンググループは、2021年9月29日付のプレスリリースにおいて、同市内から2箇所の「調査エリア(Search Area)」を特定したことを公表した。コープランド市では2020年11月にワーキンググループを設置し、地域の地質、環境問題、輸送インフラや安全性などに関する既存の情報を基に調査エリアの特定作業を進めていた。今回特定された調査エリアの範囲については、英国政府の2018年政策文書に基づいて、コミュニティや自治体組織等から協議に参加可能な者が特定できるように、コープランド市の選挙区2 を最小単位として調査エリアが設定されている(図参照)。

Copeland Search Areas

(出典:コープランドGDFワーキンググループウェブサイトの図を一部修正)

同プレスリリースにおいてワーキンググループは、今回特定した調査エリアそれぞれを含む選挙区で構成される「コミュニティパートナーシップ」の設立に関して、数週間のうちにコープランド市議会で決定される3 予定であることを明らかにした。コープランド市のコミュニティパートナーシップは、最大で2つ設立される可能性がある。

今後、コミュニティパートナーシップが設立された場合、地層処分施設(GDF)設置の可能性について、より詳細な検討(わが国の概要調査に相当)が行われる。また、パートナーシップを形成するコミュニティ等には、経済振興、環境・福祉向上を目的とするプロジェクトに限定した形で、英国政府から年間最大100万ポンド(1億4,600万円、1ポンド=146 円)の資金が提供されることになっている。

【出典】


  1. RWM社による初期評価の対象となった場所についてサイト調査への関心を表明した、コープランド市議会以外の3者も、湖水地方の国立公園の敷地は検討対象から除外するべきであるとの見解を示していた。 []
  2. 現在、コープランド市の選挙区は17あり、市議会議員の定数は33名である。今回調査エリアの対象となった4つの選挙区(図A~D)の議員定数は、A:2名、B:1名、C:3名、D:2名である。 []
  3. コミュニティパートナーシップを設立するには、調査エリアを含む自治体組織の同意と参加が必要となる。コープランド市の場合、コープランド市議会がすでにワーキンググループのメンバーとして、これまでの検討にも参加している。 []

ドイツでは、「高レベル放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に関する法律」(以下「サイト選定法」という)に基づき、処分実施主体である連邦放射性廃棄物機関(BGE)が、2017年9月からサイト選定手続きの第1段階である「地上探査の対象サイト地域の選定」を進めている。BGEは2020年9月28日に、ドイツ全土から地質学的な基準・要件を満たす「サイト区域」の選定結果を盛り込んだ『サイト選定手続き第1段階の中間報告書』(以下「中間報告書」という)を、連邦放射性廃棄物処分安全庁(BASE)に提出した 。中間報告書の提出を受けたBASEは、サイト選定手続きにおける地域横断レベルの公衆参加の場となる「サイト区域専門会議」(下記コラム参照)の立ち上げに向けたキックオフ会合を2020年10月17日と18日の2日間にわたって開催した。なお、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、キックオフ会合はオンライン形式で開催された。

■サイト区域専門家会議のキックオフ会合の概要と参加方式

今回の2日間のキックオフ会合は、今後本格的な検討を行う「サイト区域専門会議」の活動のあり方について議論し、方向性を決定するため、公衆参加を推進する役割を担う連邦放射性廃棄物処分安全庁(BASE)が開催したものである。1日目にサイト選定手続きやBGEが提出した中間報告書に関する説明が行われた後、2日目にサイト区域専門会議の今後の活動のあり方について議論が行われた。

BASEは、サイト選定法においてサイト区域専門会議の構成者と規定されているサイト区域内の自治体、各種社会組織、学術関係者の各種組織に対してキックオフ会合への参加登録を促す招請を行ったほか、2020年8月からドイツの一般市民に対して参加登録を促すキャンペーンを行っている。キックオフ会合への参加者は、オンラインで意見や質問を提示するだけでなく、事務局であるBASEが提示する議案への投票に参加できることが事前に明らかにされていた。なお、BGEが取りまとめた中間報告書では、最終処分に好適な可能性が高いとBGEが判断しているサイト区域は、ドイツ全土の約54%(約194,000km2)に及んでいる。BASEによると、最終的なキックオフ会合への参加登録者数は830名であり、1日目開始時点の参加者は334名、2日目開始時点の参加者は293名であった。

■サイト区域専門会議本格活動に向けて準備作業部会を設置

サイト選定法の規定によると、BASEが事務局として招集するサイト区域専門会議は、処分実施主体であるBGEが取りまとめた「中間報告書」に関する諮問組織として、最大3回の審査会議を開催し、その結果をBGEに答申することをもって解散することになっている(下記コラム参照)。

BASEは、サイト区域専門会議の具体的な活動の進め方は、サイト区域専門会議自体が今後決めていくべきとの考えであり、サイト区域専門会議の規約案や活動スケジュールのほか、第1回のサイト区域専門会議に向けた準備作業を行うための準備作業部会の設置を提案した。キックオフ会合の参加者全員による投票による採決が行われ、参加者の中から立候補した16名のうち、市民、サイト区域自治体、学術関係者、社会組織のカテゴリーあたり3名の代表者で構成される計12名を準備作業部会メンバーとして選出した。また、第1回のサイト区域専門会議の日程を2021年2月4日から7日に開催する予定とし、この参加者についてもキックオフ会合同様に、BASEからサイト選定法に規定された各種組織等に参加招請を行うことを決定した。

■今後の予定

今後、キックオフ会合で設置された準備作業部会が、全3回のサイト区域専門会議でのテーマやその他の作業部会の設置といった構成、及び2021年2月に開催される第1回のサイト区域専門会議のプログラムなどについて、事務局であるBASEと共に検討していくことになっている。

 

サイト区域専門会議(Fachkonferenz Teilgebiete)の位置づけ

サイト選定法では、サイト選定手続きにおける公衆参加の枠組みとして、連邦レベル、地域横断レベル、地域レベルの各レベルで委員会や合議体を設置することを規定している。このうち、連邦レベルの社会諮問委員会は、2016年に委員が選定され活動を行っている。今後、地域レベルの地域会議、地域横断レベルの地域代表者専門会議が、地上からの探査が行われるサイト地域の選定後に設置される予定である

サイト区域専門会議は、サイト地域が選定され、地域の関心が重要となる前の段階に設置される地域横断レベルの会議であり、公衆参加意欲を促進し、専門家の助言を提供する緩やかな話し合いの場と位置付けられている。サイト選定法では、サイト区域専門会議の参加者の数、サイト区域の代表性などについては規定されていないが、サイト区域内の自治体、各種社会組織、市民、学術関係者の代表者を参加者とすることが規定されている。また、サイト区域専門会議は、6カ月間の活動期間中に最大3回にわたりBGEの中間報告書について検討し、協議結果をとりまとめBGEに提示することが規定されている。このサイト区域専門会議の協議結果については、BGEが地上探査サイト地域の提案作成において考慮することとされている。

ドイツのサイト選定手続きにおける公衆参加の枠組み

 

 

【出典】

スウェーデンの使用済燃料処分場の建設予定地フォルスマルクがあるエストハンマル自治体の議会は2020年10月13日、エストハンマル自治体における使用済燃料処分場の立地・建設の受け入れ意思に関する議決を行った。議員総数49名のうち48名が投票を行い、賛成38、反対7、棄権3で使用済燃料処分場の受け入れ意思を表明することを可決した。

エストハンマル自治体は、1995年にスウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)から使用済燃料処分場のサイト選定プロセスの最初の段階である「フィージビリティ調査」(わが国の文献調査に相当)の申し入れを受諾した以降、25年にわたって処分場の立地に関わる地元や周辺自治体を含めた社会影響、処分技術の研究開発動向、スウェーデン政府の政策に対応する法整備の検討状況など、幅広い分野についての学習を続けている。SKB社は、2002年からエストハンマルとオスカーシャムの二つの自治体でサイト調査(わが国の概要調査に相当)を行い、2009年に使用済燃料処分場の建設予定地として、エストハンマル自治体のフォルスマルクを選定していた。

SKB社は、2011年3月に使用済燃料最終処分場の立地・建設許可申請書等を提出しており、環境法典及び原子力活動法の2つの法律に基づく審査が最終局面にあり、2020年10月現在は政府の判断を待つ状況にある。環境法典において地元の拒否権が規定されており、政府が許可発給の判断を行う前に、地元自治体に処分場の受け入れ意思を書面にて確認する手続きが必要になっている。

今回のエストハンマル自治体議会での議決は、政府から受け入れ意思の確認要請がなされていない状況において、自治体独自の判断で行われたものであり、今後、政府から処分場の受け入れ意思の確認要請がなされた場合、エストハンマル自治体は拒否権を行使しないことを政府に対して先行的に明らかにするものである。エストハンマル自治体は、今回の議決を行う上で十分な知識を備えているという認識を共有して議決を行った点を強調した上で、今後、政府(環境省)における審査手続きや法整備の検討が進むことを期待するとしている。

エストハンマル自治体は、自治体の最も重要な懸念事項として、処分場の閉鎖後における最終的な責任について、原子力活動の安全に関する責任を果たすことができる者がいない場合、その責任が国に移管されること等を規定した法改正パッケージ案「原子力活動に関する国の責任の明確化」(Ett förtydligat statligt ansvar för visa kärntekniska verksamheter)が2020年6月10日にスウェーデン議会(国会)で可決されたことによって解消されたものの、使用済燃料処分場の建設、操業、閉鎖などの「段階的な許認可」(step-wise licensing)手続きにおいて自治体が判断を行う必要があり、その手続きを法律において明確化するよう要望するとしている。

 

【出典】

 

フランスのエネルギー政策を所管するエコロジー移行省(Ministère de la Transition écologique)は2020年9月28日に、第5版となる「放射性物質及び放射性廃棄物の管理に関する国家計画」(PNGMDR)の改定方針に関する公開協議(concertation)を実施することを公表した。公開協議は、2019年4月17日~9月25日に国家討論委員会(CNDP)が実施したPNGMDRに関する公開討論会の結果を踏まえ、エコロジー移行省及び原子力安全機関(ASN)による改定方針について、公衆に情報提供するとともに、意見を募集することが目的である。

国家討論委員会(CNDP)が公開協議の実施を指摘

PNGMDRに関する公開討論会のためにCNDPが設置した特別委員会(CPDP)は、2019年11月に公表された実施報告書の結論において、PNGMDRの継続的な改定への公衆やステークホルダーの参加を確かなものとするため、公開討論会のフォローアップとして公開協議を実施することが望ましいと指摘していた。その後、環境連帯移行省及び原子力安全機関(ASN)による改定方針の公表を受け、国家討論委員会(CNDP)は2020年4月の会合において、PNGMDRの改定方針を具体化する手順を熟考(elaborate)していくため、CPDPが指摘していた公開協議を行うことが望ましいとするCNDPとしての判断を決定した。CNDPは、PNGMDRの策定を担当するエコロジー移行省(当時は環境連帯移行省)に対して、改訂方針に含まれる項目のうち、特に下記について熟考の必要性を強調している。

  • PNGMDRのガバナンスの変更を提案すること。
  • 特にPNGMDRの策定頻度を検討することにより、エネルギー政策の方向性とPNGMDRの関係性を強化すること。
  • 地層処分プロジェクトにおける意思決定のマイルストーンと、行われた選択を再検討できるようにするためのガバナンスを定めること。
  • 高レベル放射性廃棄物について、地層処分に代わる対策方法(alternatives)の研究を支援すること。

また、CNDPは、下記の項目をPNGMDRに含めるべきことに注意を喚起している。

  • 分野横断的な問題(環境、衛生、経済的影響、輸送の管理、地域への影響の考慮)の統合
  • 放射性物質と放射性廃棄物の間の区分の変更
  • 歴史的廃棄物の管理
  • 長寿命低レベル放射性廃棄物に関するシステムの確立

エコロジー移行省による公開協議の予定

今回の公開協議は、国家討論委員会(CNDP)によって任命された保証人の監督の下で、エコロジー移行省により実施される。公開協議は、放射性廃棄物及び放射性物質管理のガバナンス、PNGMDRとエネルギー政策との関係等のテーマごとに設定された専用ウェブサイトを通じた情報提供や意見募集、パリや地方で開催するパブリックミーティング等により構成されている。

パブリックミーティングは以下のような日程・テーマで実施予定であるが、新型コロナウイルス感染症の拡大状況によっては、インターネット上での開催に変更される可能性もある。

日程 場所 テーマ
2020年10月27日 パリ 極低レベル放射性廃棄物管理
未定 未定 地層処分プロジェクトのガバナンスとANDRAによる情報提供・公衆参加の取組みとの関係
2020年11月16日 パリ 地域や環境面での課題についてのPNGMDRにおける考慮
2020年12月2日 グランテスト地域圏(詳細未定) 高レベル放射性廃棄物及び長寿命中レベル放射性廃棄物管理
2021年2月3日 パリ 公開協議から得られた最初の教訓

また、専用ウェブサイトを通じた情報提供や意見募集が行われるテーマは以下の通りである。

テーマ
放射性物質及び放射性廃棄物のガバナンス
PNGMDRとエネルギー政策の関係
放射性物質の管理
極低レベル放射性廃棄物の管理
使用済燃料の貯蔵
長寿命低レベル放射性廃棄物の管理
高レベル放射性廃棄物及び長寿命中レベル放射性廃棄物の管理及び地層処分プロジェクトにおける論点
特別なカテゴリーに属する放射性廃棄物
放射性物質及び放射性廃棄物に関する分野横断的な問題(環境、健康、地域、経済等)

公開協議後の予定

今回のPNGMDRの改定方針に関する公開協議の結果は、2021年2月3日のパブリックミーティング後に、CNDPが任命した保証人により報告書として取りまとめられて公開される予定である。また、エコロジー移行省も、公開協議を通じて得られた教訓のPNGMDRの案への反映について報告書を作成する。その後、エコロジー移行省は、これらの結果を踏まえて、PNGMDR全体の案を作成し、環境当局(Autorité environnementale)の見解を聴取したうえで最終化することになる。その後、従来のPNGMDR策定プロセスと同様に、公的な意見聴取(consultation du public)に付した後、最終決定のため議会に提出する予定である。

【出典】

ドイツでは、「高レベル放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に関する法律」(以下「サイト選定法」という)に基づき、処分実施主体である連邦放射性廃棄物機関(BGE)が2017年9月からサイト選定手続きを進めている。現在は、その第1段階である「地上探査の対象サイト地域の選定」の途上にある。BGEは2020年9月28日、サイト選定法に規定されている基準のうち、地下の地質条件に関する基準をドイツ全土に適用した結果を取りまとめた『サイト選定手続き第1段階の中間報告書』を連邦放射性廃棄物処分安全庁(BASE)に提出した。BGEは、今回の中間報告書は最終処分やサイト選定というドイツ社会の問題に対する公衆の関心を高めることに役立ち、公衆がサイト選定の初期段階から公式に関与するための基礎になるとしている。

ドイツ全土の母岩別のサイト区域の分布

◆サイト区域の選定

サイト選定法では、サイト選定に適用する4種類の基準・要件を定めている。サイト選定手続き第1段階の中間報告では、既存の地質学的データである地球科学的な基準・要件のみを適用することになっている。

①地球科学的な除外基準

  • 一定以上の広域的な隆起が予想されないこと
  • 活断層が存在しないこと
  • 現在または過去の鉱山活動の影響が存在しないこと
  • 一定以上の地震活動が予想されないこと
  • 過去の火山活動が存在しない、または将来予想されないこと
  • 年代の新しい地下水が存在しないこと

②地球科学的な最低要件

  • 岩盤の透水係数が10-10m/s以下
  • 閉じ込め機能を果たす岩盤領域1 の厚みが100m以上
  • 閉じ込め機能を果たす岩盤領域の深度が300m以上
  • 閉じ込め機能を果たす岩盤領域の広がりが処分場建設に可能な面積を有している
  • 閉じ込め機能を果たす岩盤領域の健全性が100万年にわたり維持されることが疑問視されていない

③地球科学的な評価基準(11項目)

  1. 閉じ込め機能を果たす岩盤領域内での地下水の流動に伴う放射性物質の移行の評価に使用する基準
  2. 岩体構成の評価基準
  3. 空間的な特性調査可能性の評価基準
  4. 好ましい状況の長期安定性に関する評価基準
  5. 好ましい岩盤力学的な特性に関する評価基準
  6. 地下水流動経路形成傾向に関する評価基準
  7. 気体の生成の評価基準
  8. 温度への耐性の評価基準
  9. 閉じ込め機能を果たす岩盤領域内での放射性核種の保持能力の評価基準
  10. 地下水化学的な状況の評価基準
  11. 被覆岩による閉じ込め機能を果たす岩盤領域の保護に関する評価基準

④地域計画面に関する評価基準(11項目)

  1. 住宅地域からの距離、飲料用地下水源や自然保護地域の有無など11項目
  2. ※④の評価基準は、今回の『サイト選定手続き第1段階の中間報告書』でのサイト区域の抽出では適用されていない。

連邦放射性廃棄物機関(BGE)は、ドイツ国内で処分場の母岩候補とされる岩種(岩塩、粘土岩及び結晶質岩)を対象に、連邦や各州の地質調査所などが保有する全国の地質学的データを収集した。BGEは、これらのデータをもとに、上記の①地球科学的な除外基準と②地球科学的な最低要件を適用して不適格となる区域を除外して、全国から181区域を抽出し、さらに、③地球科学的な評価基準を適用した結果として、今回の『サイト選定手続き第1段階の中間報告書』において90区域に絞り込んでいる。BGEは、③地球科学的な評価基準11項目のうち、その多くで文献から得た岩種別(岩塩、粘土岩、結晶質岩)の一般データを使用しており、区域固有のデータが利用できる項目は岩塩・粘土岩の場合3~4項目、結晶質岩の場合2項目であったとしている。

『サイト選定手続き第1段階の中間報告書』において、BGEが最終処分に好適な可能性が高いと判断している90区域は、ドイツ全土の約54%にあたる約194,000km2、州単位で見た場合には、南西部のザールラント州を除いた全ての州に分布している。抽出された各サイト区域の面積は、地下の母岩候補の岩種を反映して、6 km2(岩塩ドーム)から約63,000 km2(粘土岩)まで異なっている。

母岩別のサイト区域数及び総面積(†)
母岩 サイト区域数 サイト区域の総面積(km2
粘土岩 9 129,639
岩塩 74 30,450
結晶質岩 7 80,786
サイト区域合計 90 240,874

†:母岩が異なる深度に存在し、一つの区域が複数の母岩カテゴリに重複してカウントされる場合があるため、サイト区域の合計値は、BGEが最終処分に好適な可能性が高いと判断している90区域の合計面積約194,000km2と一致しない。

 

◆ゴアレーベンはサイト区域から除外

従来、処分場の候補サイトとして探査が行われていたゴアレーベン・サイト(岩塩ドーム)については、③地球科学的な評価基準のうち、「11.被覆岩による閉じ込め機能を果たす岩盤領域の保護に関する評価基準」を考慮した結果、今回の『サイト選定手続き第1段階の中間報告書』において抽出された90区域には残らず、以降の処分場選定手続きにおいては除外されることとなった。サイト選定法では、ゴアレーベン・サイトについて、他の区域・サイト等と同様に扱い、サイト区域などに含まれなかった時点でサイト選定手続きから除外されることを規定している。

◆今後の予定:公衆参加手続きの開始

サイト選定法に基づいて、サイト選定を監督し、公衆参加を推進する役割を担う連邦放射性廃棄物処分安全庁(BASE)は、連邦放射性廃棄物機関(BGE)が取りまとめた『サイト選定手続き第1段階の中間報告書』を受領した後、サイト区域の地域団体の代表者等からなる、地域横断の公衆参加枠組みである「サイト区域専門会議」を設置することになっている。このサイト区域専門会議の開催スケジュールについて、BASEは、2020年10月17日~18日に開催されるキックオフ会合の後、2021年前半に3回の会合を実施する予定である。BGEは、中間報告書がサイト区域専門会議の基礎になるとともに、公衆参加を推進するものになるとしている。

BGEは、サイト区域専門会議における議論の後、今回抽出した90区域を対象として、処分場システムの概念設計を含む予備的安全評価を行い、その結果に基づき、「地上からの探査を行うサイト地域」を複数選定することになっている。BGEが選定したサイト地域では、その地域毎に地域会議と呼ばれる合議体が組織される。サイト選定手続きの第1段階の目標である「地上からの探査を行うサイト地域」の確定は、連邦議会において連邦法を制定することによって行われる。

 

【出典】

【2021年9月22日追記】

ドイツの連邦環境・自然保護・原子炉安全省(BMU)は、2021年9月17日、高レベル放射性廃棄物の処分場の候補サイトとして1986年から2013年まで地下探査が行われていたゴアレーベン・サイト(岩塩ドーム)について、廃止措置を連邦放射性廃棄物機関(BGE)に委託することを決定した。

BGEは2020年9月28日に、連邦放射性廃棄物処分安全庁(BASE)に提出したサイト選定第1段階の中間報告書において、最終処分に好適な可能性が高いと判断される90のサイト区域にゴアレーベン・サイトを含めず、サイト選定手続きから除外した。これを受けてBMUとBGEとは、ゴアレーベン・サイトの閉鎖の進め方について協議を行っていた。今後のスケジュールを含めて詳細は明らかにされていないが、BGEが閉鎖計画の策定を進め、ゴアレーベン・サイトは閉鎖され、岩塩の掘削ズリは地下に戻される予定である。

【出典】


  1. 人工バリアや地質工学的なバリアとともに、隔離期間に廃棄物の閉じ込めを保証する地質バリアの一部  []