Top » 海外情報ニュースフラッシュ(全記事表示モード)

スイスの処分実施主体である放射性廃棄物管理共同組合(Nationale Genossenschaft für die Lagerung radioaktiver Abfälle, NAGRA)は、2016年8月12日に、地層処分場の技術的実現可能性に関するサイトの評価基準に関して、最大深度に係る補足文書を規制機関に提出したことを公表した。また、NAGRAは、NAGRAが設定した最大深度700mより深いオパリナス粘土層での処分場の建設は極めて困難であること、最大深度700mよりも深く処分する場合には建設・操業に関する安全面で不利になることなどの見解を示した。
今回NAGRAが提出した補足文書は、2014年12月に取りまとめたNAGRA技術報告書『地質学的候補エリアの安全性の比較及び第3段階において検討対象とするサイトの提案』に対して、規制機関である連邦原子力安全検査局(Eidgenössisches Nuklearsicherheitsinspektorat, ENSI)が2015年11月に提示した補足情報の要求に対応するものである。ENSIは、地質学的候補エリアの絞り込みにNAGRAが用いた指標「建設上の適性の観点から見た最大深度(岩盤強度及び変形特性を考慮して)」に関する技術情報に不足があり、評価基準の妥当性を検証できないと指摘していた。今回の補足文書においてNAGRAは、様々な深度における処分空洞、密封、バリアの概念を比較した結果を示している。

○スイスにおけるサイト選定の現状

「第3段階に向けたサイト提案」 (NAGRA、技術報告書14-01「地質学的候補エリアの安全性の比較及び第3段階において検討対象とするサイトの提案」、2014年12月より)

「第3段階に向けたサイト提案」
(NAGRA、技術報告書14-01「地質学的候補エリアの安全性の比較及び第3段階において検討対象とするサイトの提案」、2014年12月より)

現在行われているサイト選定第2段階では、サイト選定第1段階で選定された高レベル放射性廃棄物の3つ、低中レベル放射性廃棄物の6つの地質学的候補エリアの中から、高レベル放射性廃棄物用、低中レベル放射性廃棄物用のそれぞれの地層処分場について、2カ所以上の候補を提案することが目標となっている。

高レベル放射性廃棄物の地層処分場について、当初の地質学的候補エリアは「ジュラ東部」「北部レゲレン」「チューリッヒ北東部」である。NAGRAは、2014年12月に取りまとめた技術報告書において、岩盤強度及び変形特性を考慮した上での建設上の適性の観点からの最大深度を地下700mと設定し、これに基づいて、オパリナス粘土層の多くが700mより深いところに分布している「北部レゲレン」をサイト選定第3段階で検討する優先候補とせず、予備候補として留保する提案を行っていた。

NAGRAの提案に対する連邦原子力安全検査局(ENSI)の依頼に基づく外部専門家によるレビューにおいて、NAGRAが提出した岩盤力学的な基本情報や想定条件、設計基準等が不十分かつロバストではないとの指摘を受けており、2015年11月にENSIは、「建設上の適性の観点から見た最大深度(岩盤強度及び変形特性を考慮して)」を用いた評価を可能とするため、NAGRAに補足情報の提出を求めていた。

今回、NAGRAは地質学的候補エリアの地質工学的条件について、構造地質学的な履歴や処分深度に応じた変化を踏まえて評価するとともに、処分場の人工バリア及び天然バリアに及ぼす影響を長期安全性の観点から評価することにより、高レベル放射性廃棄物用の地層処分場の最大深度を地下700mとする根拠を明らかにした。NAGRAは、北部レゲレンを地層処分場とすることについて、「チューリッヒ北東部」及び「ジュラ東部」と比較すると明らかに適性が劣ると評価している。

○今後の予定

今後、連邦原子力安全検査局(ENSI)は、2015年1月にNAGRAが取りまとめた報告書と今回の補足文書とを合わせて、サイト選定第2段階の絞り込み結果について審査を継続する。特別計画「地層処分場」(詳細はこちら)に基づいて、ENSIは審査結果の取りまとめを2017年春に公表する予定である。その後、原子力安全委員会(KNS)1 と州委員会2 がENSIの審査結果に対する見解を表明する。ENSIの審査結果、KNSと州委員会の見解を踏まえて、連邦エネルギー庁(BFE)は地質学的候補エリアの提案に関する成果報告書とファクトシートを作成する。2017年末には、成果報告書とファクトシートについて3か月にわたって州、自治体、政党、関心のある住民、近隣諸国を対象に意見聴取が実施される。意見聴取の結果を踏まえ、2018年末に連邦評議会3 が地質学的候補エリアの提案を承認する予定となっている。

 

【出典】


  1. 原子力安全委員会(Eidgenössische Kommission für nukleare Sicherheit, KNS)は、ENSI、環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)、連邦評議会に対して安全性に関する重要な問題に関して助言する。 []
  2. 州内に地質学的候補エリアが含まれる7つの州に、近接する地方バーゼル半州を加えた8つの州の代表が参加している。また、投票権は有さないが、連邦エネルギー庁(Bundesamt für Energie, BFE)、連邦原子力安全検査局(ENSI)、ドイツの連邦環境・自然保護・建設・原子炉安全省(BMUB)、及びドイツの3つの自治体の代表者も参加している。 []
  3. 日本の内閣に相当 []

スイスの連邦原子力安全検査局(Eidgenössisches Nuklearsicherheitsinspektorat, ENSI)は、2016年7月28日付プレスリリースにおいて、スイス北部の高速道路トンネルの掘削現場において、オパリナス粘土層を対象とした岩盤力学的な調査を実施することを公表した。この調査は、2016年2月から開始されている「ベルヒェン代替トンネル」のトンネル掘削工事と並行して進められる予定であり、ENSIがチューリッヒ工科大学に委託して実施する。

ベルヒェン・トンネルの位置(Tagesanzeiger紙より引用)

ベルヒェン・トンネルの位置(Tagesanzeiger紙より引用)

ベルヒェン代替トンネル

スイスの高速道路A2ルート上にあるベルヒェン・トンネルは、1970年代に建設され、スイス北部のジュラ山脈を貫く上下2本、合計4車線のトンネルである。2023年から大規模な改修工事を行う計画であり、改修中に閉鎖するトンネルの代替として運用するため、2016年2月から全長3.2km、2車線のベルヒェン代替トンネルの建設が開始されている。代替トンネルの開通は2022年の予定であり、トンネル工事には、スイス最大級の掘削機が投入されている。

オパリナス粘土は、放射性廃棄物管理共同組合(Nationale Genossenschaft für die Lagerung radioaktiver Abfälle, NAGRA)が2015年1月に提案した地質学的候補エリア「ジュラ東部」及び「チューリッヒ北東部」の母岩である。ベルヒェン代替トンネルの位置は、これら2つの地質学的候補エリアとは重なっていないが、母岩と同様のオパリナス粘土層が存在する。連邦原子力安全検査局(ENSI)は、地層処分場プロジェクトとは直接関係のないベルヒェン代替トンネルにおいて、大規模なオパリナス粘土層を掘削する機会を利用することにより、既存の地下研究施設では実施できなかった岩盤力学的な調査を実施するとしている。

調査では、実際の構造地質学・水理地質学的条件下において、トンネル掘削機を用いた場合におけるオパリナス粘土層の挙動や掘削後のオパリナス粘土の膨張に係る挙動等を、光学スキャン、写真撮影、各種計測、実験室での分析等により確認する計画である。

ENSIは調査に向け、同トンネルを管轄する連邦道路庁(ASTRA)及びトンネル工事事業者らと協議を進める意向である。ENSIは本調査の予算として、17万5,000スイスフラン(2,030万円、1スイスフラン=116円で換算)を計上している。

 

【出典】

英国政府の諮問機関である放射性廃棄物管理委員会(CoRWM)は、2016年7月19日に、2015年度1 の年次報告書を公表した。CoRWMは、高レベル放射性廃棄物等の地層処分の実施主体である放射性廃棄物管理会社(RWM)2 のプログラム及び計画、英国政府が主導するサイト選定の手続及び基準、政府及びRWMが行う公衆・ステークホルダーの関与に関するアプローチ等の活動をレビューしており、それらのレビュー活動に関する年次報告書を英国政府に提出することになっている

CoRWMは2015年度の年次報告書において、英国政府及びRWMに対して、次の3つの勧告を行っている。

  • 勧告1:放射性廃棄物管理会社(RWM)は、一般的な条件における地層処分システム・セーフティケース(gDSSC)の更新版を2016年に取りまとめる予定である。このセーフティケースには、地層処分場の設置が考えられている3種類の岩種(硬岩、粘土、岩塩)について、岩種による施設設計の違いが分かるような概念図を示すとともに、安全特性に関する説明を含めるべきである。
  • 勧告2:放射性廃棄物管理会社(RWM)の組織体制が地層処分施設を実現するという目的に合致しているかを評価するため、英国政府は、RWMのビジネスモデルに対する外部による独立したレビューを実施すべきである。
  • 勧告3:過去の文書へのアクセスは、地層処分を成功裡に終わらせるための重要な鍵となるため、英国政府は、公衆が放射性廃棄物管理委員会(CoRWM)及び放射性廃棄物管理会社(RWM)の過去の文書に容易にアクセスできる方法を検討すべきである。

地層処分の実施主体であるRWMは、NDAの内部組織であった放射性廃棄物管理局(RWMD:Radioactive Waste Management Directorate)を分離し、2014年4月に政府外公共機関(NDPB)であるNDA所有の100%子会社として設立された。その後、2014年8月の白書『地層処分の実施-高レベル放射性廃棄物等の長期管理に向けた枠組み』において、RWMが地層処分の実施主体と位置付けられた。このためCoRWMは、地層処分施設を設計、建設、操業するエンジニアリング・プロジェクト組織としての中核機能をRWMが備えるべきと考えている。一方、2015年11月に開催されたCoRWMとRWMとの会合において、RWMは当面の組織開発において、①サイト選定、②ステークホルダーの関与、③放射性廃棄物管理の3つの主要作業項目を軸とする考えを表明していた。これを受けてCoRWMは、公衆及び主要ステークホルダーがRWMの本来の役割を認識するのが難しくなることを懸念し、英国政府に対して勧告2として、RWMのビジネスモデルに対する外部による独立したレビューの実施を勧告すると説明している。

【出典】


  1. 英国の年度は日本と同じ4月開始 []
  2. 原子力廃止措置機関(NDA)の完全子会社 []

カナダの使用済燃料処分の実施主体である核燃料廃棄物管理機関(NWMO)は、「適応性のある段階的管理」(APM詳細はこちら)の実施に関して、2017年~2021年の5年間における実施計画案を公表し、2016年10月31日までの期限で意見募集を開始した。NWMOは2008年以降毎年、向こう5年間の行動計画をまとめた実施計画案を事前に公表し、幅広く国民から意見を聞く機会を設けている。最終版の実施計画書は、2017年3月に公表する予定である。

サイト選定プロセスの参照スケジュールの提示

サイト選定プロセスに参加している9自治体

サイト選定プロセスに参加している9自治体(出典:NWMO、2017-2021年実施計画書案)

NWMOは今回意見募集を行っている実施計画案において、使用済燃料処分場のサイト選定プロセスのリファレンスとなるスケジュールを示している。カナダでは現在、サイト選定プロセス第3段階にあたる“使用済燃料処分場の潜在的な適合性の予備的評価”が進められている。NWMOは、机上調査を行う前期(第3段階第1フェーズ)と、現地調査を行う後期(第3段階第2フェーズ)とに分けており、サイト選定プロセスの第3段階第1フェーズが完了した21自治体のうち、9つの自治体が第3段階第2フェーズに進んでいる。NWMOは、これまでのサイト選定プロセスの進行状況に基づいて、第3段階第2フェーズを2022年までに完了できるとの見通しを明らかにした。第3段階第2フェーズの途中段階でも、現地調査等から得られた情報に基づいて、適性が低いと思われる地域を除外していくが、2023年にはNWMOが1カ所の好ましいサイトを選定する準備が整うとしている。この好ましいサイトの所在自治体がサイト選定プロセス第4段階に進むことを望む場合、NWMOが詳細なサイト調査を実施するほか、サイト調査をサポートする専門技術センターの建設が行われる。また、NWMOは将来の作業計画を立案するための前提条件として、処分場の操業開始を2040~45年と仮定していることを明らかにした。

NWMOは2010年に策定したサイト選定プロセス(下記《参考》コラムを参照)において、各段階で実施する調査の期限やスケジュールを意図的に設定せず、サイト選定プロセスに参加する自治体がプロセス自体に関与し、使用済燃料処分場プロジェクトの安全性と地元の福祉への貢献を確認するために必要な時間を確保する姿勢を明確にし、堅持してきた。NWMOは今回の実施計画案において、サイト選定プロセスに参加する自治体や関係組織がサイト選定プロセスの今後の進行見通しを必要としているとの理解から、NWMOが現在までに得た情報に基づく最良のリファレンスとなるスケジュールを提示すると説明している。

2017年から5年間の主要マイルストーン

NWMOは、今回公表した2017年~2021年の実施計画案において、期間中の主要なマイルストーンとして以下の点を示している。

  • 安全性の評価のための予備的な現地調査と技術的評価の実施、及び対象地域の絞り込みに向けた強固なパートナーシップの構築
  • 詳細サイト特性調査の対象となる好ましいサイトの特定に向けた予備的な現地調査と評価の実施、及び強固なパートナーシップの構築
  • これらの活動を、先住民族などを含む関係自治体と協力して実施することによる、パートナーシップを構築してプロジェクトを実施するための基礎固め
  • NWMOの試験施設における使用済燃料コンテナ及び輸送用コンテナの試作品の設計と製造
  • 処分環境で発生しうる微生物学的プロセスの統合的評価の完了
  • サイト選定プロセスに関与している自治体との議論を通じた、選定されたサイトに設置される専門技術センター(Centre of Expertise)の設計計画の推進
  • サイト選定プロセスに関与している自治体との協力による、地元雇用の機会の創出と、「適応性のある段階的管理(APM)」による処分場の建設と操業に関連する将来の雇用のために必要な能力・技能の形成の機会の創出
  • コンテナの設計と試験、及び計画の枠組みの開発に関する情報の提供による公衆の関与を通じた、輸送計画の策定
  • 現在、使用済燃料が貯蔵されている施設からの使用済燃料の輸送計画の立案における廃棄物所有者との協力

《参考》カナダにおける核燃料廃棄物処分場のサイト選定プロセス

カナダにおける核燃料廃棄物処分場のサイト選定プロセス

【参考出典】『連携して進む:カナダの使用済燃料の地層処分場選定プロセス』(NWMO, 2010年)

【出典】

 

【2017年4月3日追記】

カナダの使用済燃料処分の実施主体である核燃料廃棄物管理機関(NWMO)は、「適応性のある段階的管理」(APM詳細はこちら)の実施に関して、今後5年間の行動計画をまとめた実施計画書の最終版を公表した。本最終版では、2016年7月の実施計画書案で示されていた主要マイルストーンに変更はない。なお、これと併せて、2014年から2016年までの事業内容等を取りまとめた報告書(以下「3年次報告書」という。)も公表している1

今回公表された実施計画書においてNWMOは、早ければ2023年としている1カ所の好ましいサイトの選定に向けて、当該サイトに設置される専門技術センター(Centre of Expertise)の設計計画の立案などの取組について、サイト選定プロセスに関与している自治体との議論を通じて進めていく意向を示している。

【出典】


  1. 3年次報告書の作成については、核燃料廃棄物法第18条で規定されており、同条では3年次報告書において、今後5年間のAPMの実施に向けた計画を記載すべきことが規定されている。 []

フランスで2016年7月11日に、地層処分場の設置許可申請時期の変更、可逆性の定義、パイロット操業フェーズの導入等に関する規定を含む「長寿命高・中レベル放射性廃棄物の可逆性のある深地層処分施設の設置方法を明確にした法律」が成立した。本法律の制定に伴って、「2006年放射性廃棄物等管理計画法」において規定されていた「可逆性のある地層処分」の処分場の設置許可申請時期が2015年から2018年に改定される。また、2006年放射性廃棄物等管理計画法での多くの規定が取り込まれている「環境法典」が改正され、放射性廃棄物管理機関(ANDRA)による地層処分場の操業は、可逆性と安全性の立証を目的とする「パイロット操業フェーズ」から始まることとなった。

今回成立した「長寿命高・中レベル放射性廃棄物の可逆性のある深地層処分施設の設置方法を明確にした法律」では、地層処分の「可逆性」を以下のように定義している。

  • 「可逆性」とは、地層処分場の建設・操業を段階的に継続すること、または過去の選択を見直し、管理方法を変更することが将来世代にとって可能とすることである。
  • 可逆性は、将来の技術進歩を反映し、エネルギー政策の転換による廃棄物インベントリの変更に対応するために、地層処分場の建設を段階的に進め、設計を調整可能とし、操業の柔軟性を確保することによって実行される。
  • 可逆性には、定置済の廃棄物パッケージが、処分場の操業・閉鎖戦略と整合した方法及び期間において、回収可能であることが含まれる。
  • 可逆性は、環境法典に定める公衆の安全、保健、衛生の保証、自然環境の保護の目的を遵守するよう確保されなければならない。可逆性の原則については少なくとも5年に1度の頻度でレビューを行う。

また、「長寿命高・中レベル放射性廃棄物の可逆性のある深地層処分施設の設置方法を明確にした法律」は、可逆性のある地層処分について以下の事項を規定している。

○2006年放射性廃棄物等管理計画法に規定された地層処分場の設置許可申請時期を2015年から2018年に変更する。

○環境法典に以下の内容を規定する。

  • 放射性廃棄物管理機関(ANDRA)は、地層処分場の操業期間を通じて、市民参加を確実にするため、全てのステークホルダーとの協議のもとで「操業基本計画」を策定し、5年毎に見直す。
  • 地層処分場の操業は、実地試験を実施し、地層処分場の可逆性と安全性の立証を強固にすることを目的としたパイロット操業フェーズから始まる。パイロット操業フェーズにおいては、全ての廃棄物パッケージは容易に回収できる状態に維持されなければならない。パイロット操業フェーズで行う試験には、廃棄物パッケージの回収試験も含まれる。
  • デクレ(政令)による地層処分場の設置許可の発給後、原子力安全機関(ASN)が発給する操業許可は、パイロット操業フェーズの操業に限定される。
  • 地層処分場の設置許可申請において、地下構造物に関しては、都市計画法典に基づく建設に関する事前の申告または建設許可は免除される。
  • 地層処分場のパイロット操業フェーズの操業許可は、その操業者が地上施設の設置される土地及び地下構造物の設置される地下部分の所有者である場合、もしくは土地所有者の義務について操業者と土地所有者の合意がある場合に限り発給できる。
  • パイロット操業フェーズの結果については、ANDRAが報告書を作成するとともに、ASN及び国家評価委員会(CNE)が見解書を提示する。さらに公衆意見聴取の対象区域内に全部または一部が所在する地方公共団体の意見が聴取される。
  • ANDRAの報告書はASN及びCNEの見解書とともに、議会科学技術選択評価委員会(OPECST)に提出される。OPECSTはANDRAの報告書を評価し、放射性廃棄物管理政策を担当する議会上下両院の委員会に、評価作業を報告する。
  • 政府はOPECSTの勧告も踏まえて、地層処分の可逆性の実現に関する条件を定める法案を策定する。
  • 操業中の地層処分場の可逆性の実現に関する条件を定める法律の公布後、ASNは地層処分場の全面的な操業の許可を発給できる。法律に定められる可逆性の実現に関する条件を満たしていない場合、操業許可は発給されない。

地層処分場の設置許可申請時期については、2006年放射性廃棄物等管理計画法において、放射性廃棄物管理機関(ANDRA)が2015年に設置許可申請書を提出することが規定されていた。しかし、同法にて設置許可申請書の提出に先立って実施が義務付けられた公開討論会が2013年に開催された結果を踏まえ、ANDRAは2014年5月に、設置許可申請時期の変更や、パイロット操業フェーズの導入等を提案していた。今回成立した「高レベル及び長寿命中レベル放射性廃棄物の可逆性のある地層処分場の設置について規定する法律」には、これらの設置許可申請時期の変更等に関する規定が含まれている。

また、2006年放射性廃棄物等管理計画法は、設置許可申請書が提出された後、政府が地層処分の可逆性の条件を定める法案を提出することを規定していたが、今回成立した、「長寿命高・中レベル放射性廃棄物の可逆性のある深地層処分施設の設置方法を明確にした法律」により、環境法典に可逆性の定義が盛り込まれた。今後、政府は、パイロット操業フェーズの結果を踏まえた上で、全面的な操業以降における地層処分の可逆性の実現に関する条件を定める法案を策定することとなる。

なお、地層処分場の設置許可申請スケジュールの変更等については、2015年7月に成立した「成長、活動、経済機会の平等のための法律」において規定されていた。しかし、同年8月、同法の目的と地層処分場に係る規定の関連が弱いこと等を理由に、憲法院1 は同法の地層処分場に係る規定を違憲と判断し、これらの規定は無効とされた。今回成立した「長寿命高・中レベル放射性廃棄物の可逆性のある深地層処分施設の設置方法を明確にした法律」は、無効となった規定の内容を一部踏襲し、2016年3月にロンゲ上院議員及びナミ上院議員らが法案を上院に提出したものであり、2016年5月17日に上院で可決された後、国民議会(下院)で最終可決されたものである。

 

【出典】


  1. 憲法裁判所である憲法院(Conseil constitutionnel)は、国会の議決後、大統領による審査・署名前の法律に対する違憲審査、大統領選挙の選挙管理、大統領及び国会議員の選挙に関する裁判等を行う。司法権にも行政権にも属さない機関である。 []

ドイツの高レベル放射性廃棄物処分委員会(以下「処分委員会」という)は2016年7月5日に、「発熱性放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に関する法律」(以下「サイト選定法」という)に基づくサイト選定手続きに関する最終報告書「将来への責任-最終処分場選定のための公正かつ透明性の高い手続き」(以下「最終報告書」という)を連邦議会議長に提出するとともに、処分委員会ウェブサイトにおいて最終報告書を公開した。

最終報告書は、報告書全体の主要な結論及び勧告をまとめた「パートA」と、報告書本体部分である「パートB」で構成されている。パートAでは、第1章及び第2章で可能な限り安全性の高い処分が可能なサイトを選ぶという処分場のサイト選定の基本方針を示すと共に、サイト選定に係る過去の経験や処分委員会の使命及び取り組み方法等を総括した上で、第3章から第5章に処分委員会の勧告をまとめている。各章では、以下の分野に関する勧告が示されている。

  • 第1章:可能な限り安全性の高い処分場サイト
  • 第2章:サイト選定の主要な前提条件
  • 第3章:処分オプションに関する勧告(回収可能性を有する地層処分)
  • 第4章:サイト選定手続きに関する勧告(サイト選定プロセス及び公衆参加)
  • 第5章:政治・社会的側面に関する勧告(処分実施体制、連邦議会に対する勧告)

サイト選定プロセス

処分委員会は2015年3月に、現行の連邦放射線防護庁(BfS)に代わる新たな処分実施主体として「連邦放射性廃棄物機関(BGE)」の設置を勧告しており、サイト選定の作業もBGEが主体となって進められる。サイト選定手続きの監督は、連邦放射性廃棄物処分庁(BfE)が所管する1

サイト選定プロセスは、下表の3段階で行われ、各段階において公衆参加の手続きが実施される。公衆参加の形態としては、公聴会等に加え、連邦、地域横断、地域の3つのレベルでそれぞれ委員会等が設置され、BGEによる選定手続き及びBfEによる審査の状況について評価・監視が行われる

 

段階

各段階での取り組み

段階の終了

第1段階

ドイツ全土を対象にサイト選定プロセスを開始。除外基準及び最低要件に基づき、対象外となる地域を除外。地質学的な評価基準及び項目を限定した予備的安全評価(第1次予備的安全評価)に基づき、主に連邦地球科学・天然資源研究所(BGR)や州の地質調査所が保有する既存のデータを元に地域間の比較を実施し、候補地域と地上探査の対象サイト地域を選定。

連邦放射性廃棄物機関(BGE)の提案に基づき、候補地域と地上探査の対象サイト地域を連邦法によって決定。

第2段階

地上からの探査を実施。地質学的な除外基準、最低要件、評価基準及び第1段階より範囲を拡大した予備的安全評価(第2次予備的安全評価)に基づき、サイト間の比較を実施し、地下探査の対象サイトを選定。

BGEの提案に基づき、地下探査の対象サイトを連邦法によって決定。

第3段階

地下探査などの処分の安全性の観点からの詳細な調査を実施。包括的な予備的安全評価を実施し可能な限り安全性の高いサイトの特定に向け、サイトの比較を実施し、処分場サイトを選定。

連邦放射性廃棄物処分安全庁(BfE)の提案に基づき、処分場サイトを連邦法によって確定。

 

連邦環境・自然保護・建設・原子炉安全省(BMUB)の反応

処分委員会から最終報告書の提出を受けた連邦環境・自然保護・建設・原子炉安全省(BMUB)のヘンドリクス大臣は、原子力発電に対する各委員の姿勢が異なる中で、処分委員会が最終処分の将来に向けた共通の結論を出すに至ったことを評価した。同大臣は、サイト選定の対象からゴアレーベンを予め除外することを求める意見が一部の州から出ていることについて、旧処分場候補地であるゴアレーベンを含め、ドイツ全土を同じ条件で取り扱う原則を強調した。

今後、連邦政府及び連邦議会・連邦参議院において、処分委員会の最終報告書に示された勧告を踏まえて、サイト選定法の改正に向けた検討などが行われる。

 

【出典】

 

【2016年7月20日追記】

連邦環境・自然保護・建設・原子炉安全省(BMUB)は2016年7月18日、高レベル放射性廃棄物処分委員会(以下「処分委員会」という)が2016年7月5日に連邦政府及び連邦議会へ提出した最終報告書「将来への責任-最終処分場選定のための公正かつ透明性の高い手続き」(以下「最終報告書」という)に対するインターネット上での意見募集を開始した。意見募集は、2016年9月11日まで実施される。

意見募集用に設置された専用ウェブサイト(https://www.endlagerbericht.de/ja/)では、処分委員会の最終報告書の各節、各段落について、「賛成」、「反対」の投票が可能であるほか、コメントを記入できるようになっている2

意見募集の結果は、処分委員会の委員参加の下、2016年9月28日に開催予定となっている連邦議会の環境委員会で検討され、最終報告書の勧告を受けて実施されるサイト選定法の改正作業等において考慮される。

【出典】

【2016年9月30日追記】

ドイツ連邦議会(下院)の環境委員会は2016年9月28日に、高レベル放射性廃棄物処分委員会(以下「処分委員会」という)が2016年7月5日に連邦政府及び連邦議会へ提出した最終報告書「将来への責任-最終処分場選定のための公正かつ透明性の高い手続き」(以下「最終報告書」という)について、サイト選定法の改定などを検討するための会合を開催した。

本会合において連邦環境・自然保護・建設・原子炉安全省(BMUB)は、最終報告書に示された勧告を実施に移すための法整備について、2016年内に法律原案を取りまとめる意向であること、その場合、2017年の連邦議会の夏季休会前に法律の成立が可能との見方を示した。また、最終報告書の勧告の法制化の手続きは、州の代表で構成される連邦参議院(上院)との協力が重要であるとの意見が出された。

さらに、本会合では、2016年7月上旬から9月18日まで(当初予定より1週間延長)実施された、処分委員会の最終報告書に対するインターネット上での意見募集の結果について報告が行われた。意見募集のための専用ウェブサイトには、11名が参加し、800件を超えるコメントが寄せられており、コメントの大半は技術的内容に関するものであったとされている。

【出典】


  1. 2016年6月に名称を「連邦放射性廃棄物処分安全庁(Bundesamt für kerntechnische Entsorgungssicherheit, BfE)」に変更する法案が連邦議会で可決されている []
  2. 意見表明するには、ソーシャルネットワークサービスのユーザ登録情報を利用した本人確認が必要となっている []
図 フォルスマルクに建設予定の使用済燃料処分場のイメージ(SKB社提供)

フォルスマルクに建設予定の使用済燃料処分場のイメージ(SKB社提供)

スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)が提出した使用済燃料最終処分場の立地・建設許可申請書等について、安全審査を行っている放射線安全機関(SSM)は2016年6月29日、土地・環境裁判所に対して、SKB社は安全要件を遵守して処分場を建設する能力を有しているとする意見書を提出した。

SKB社は、KBS-3概念1 と呼ばれる処分概念による使用済燃料の最終処分の実現に向け、2006年11月にオスカーシャムにおけるキャニスタ封入施設の建設許可申請書を提出し、その後、2011年3月にフォルスマルクにおける使用済燃料処分場の立地・建設許可申請書を提出した 。現在、スウェーデンにおける使用済燃料処分場及びキャニスタ封入施設に関する許可申請では、環境法典及び原子力活動法の2つの法律に基づく3つの申請書の審査が並行して進められている(下記の囲みを参照)。

※:使用済燃料処分場の実現に向けて審査中の申請書

①オスカーシャムにおけるキャニスタ封入施設の建設許可申請書
(2006年11月にSSMに提出済、2011年3月16日更新)…原子力活動法に基づく申請
②フォルスマルクにおける使用済燃料の処分場の立地・建設許可申請書
(2011年3月16日にSSMに提出)…原子力活動法に基づく申請
③使用済燃料の処分方法及び関連施設の立地選定に係る許可申請書
(2011年3月16日に土地・環境裁判所に提出)…環境法典に基づく申請

今回SSMが土地・環境裁判所に提出した意見書は、上記のうち③の環境法典に基づく使用済燃料の処分方法及び関連施設の立地選定に係る許可申請の審査に係わる意見書である。

SSMは、土地・環境裁判所に提出した意見書において、SKB社の許可申請に関して、以下のような総括的な評価結果を示している。

  • SKB社による環境影響評価書、及びその補足文書と原子力活動法に基づく許可申請書は、環境法典に基づく許可プロセスにおける原子力安全と放射線防護に関連する論点をSSMが評価するために十分な根拠となるものである。環境影響評価のための意見募集プロセスにおいて、SSMには見解を表明する機会が与えられ、SKB社はそれに対応してきた。
  • SKB社は、放射線から人間や環境を防護するため、環境法典第2章「配慮に関する一般規定」を遵守している、遵守する能力を有していることを立証している。
  • 使用済燃料の最終処分システムを構成しているキャニスタ封入施設及び処分場は、放射線から人間や環境を防護するために規定された放射線安全要件を遵守する能力を備えている。

また、SSMは、SKB社が、原子力安全と放射線防護の観点から、処分場の長期安全性を十分に立証したと評価しており、その根拠として以下の3点を挙げている。

  • 処分場として望ましいサイトとしてのフォルスマルクの選択の根拠
  • 最終処分方法の選択の根拠、及びそれが他の方法に比して望ましいとされる理由の説明
  • 放射線安全要件を遵守してキャニスタ封入施設及び処分場の建設・操業を行う能力

今後、土地・環境裁判所での審理手続きとして、2016年10月から12月の間で口頭弁論が実施される予定となっている。土地・環境裁判所での審理手続きの後、SSM及び土地・環境裁判所はそれぞれ、SKB社による申請を認めるか否かに関する意見書を政府に提出することとなっており、SSMは意見書の提出は2017年内になるとの見通しを示している。SKB社が計画している使用済燃料の処分事業の実施是非は、SSM及び土地・環境裁判所の意見書を踏まえて政府が判断することになる

【出典】


  1. KBS-3概念とは、スウェーデンで開発された使用済燃料の処分概念であり、使用済燃料を銅製のキャニスタに封入し、処分坑道の床面に掘削した処分孔に縦置きに定置して、キャニスタの周囲を緩衝材(ベントナイト)で囲うというもの。本概念を検討した報告書の略称に由来しており、フィンランドも同様な概念を採用している。 []

ドイツの高レベル放射性廃棄物処分委員会(以下「処分委員会」という)は、2016年6月27日に開催された第33回会合において、「発熱性放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に関する法律」(以下「サイト選定法」という)に基づくサイト選定手続きに関する最終報告書を採択した。最終報告書は2016年7月5日に、連邦政府及び連邦議会に提出されると同時に処分委員会ウェブサイトにおいて公開される予定である。また、処分委員会は7月5日に、最終会合となる第34回会合を開催し、公衆に向けて最終報告書の勧告などの説明を行うとしている。

処分委員会は32名の委員(委員長2名除く)で構成されるが、このうち最終報告書に関する議決権を持つのは、学術界代表及び社会グループ代表の各8名の計16名である。最終報告書の採決は、16名の全員一致、もしくは、これらの16名の委員のうち3分の2以上の賛成が必要とサイト選定法に規定されているが、14名が賛成し、環境団体代表の1名が反対した(1名は欠席)。

最終報告書の主な勧告内容

処分委員会は2016年6月28日付のプレスリリースにおいて、採択した最終報告書は500ページを超えるものとなり、ドイツにおいて可能な限り高い安全性を有する高レベル放射性廃棄物処分場サイトを選定するための勧告・基準、及び公衆参加を組み込んだ公正で透明性の高いサイト選定手続きが含まれているとしている。

連邦議会のウェブサイトによると、最終報告書には、主に以下の勧告が示されている。

  • 放射性廃棄物は地層処分場に最終処分する。その際には、欠陥が認識された際に是正が可能となるよう、意思決定の可逆性及び定置された廃棄物の回収可能性を重視する。
  • 可能な限り高い安全性を有する処分場サイトを3段階の手続で絞り込み、連邦法で確定する。
  • 連邦、地域横断、地域の各レベルで委員会・合議体を設置し、包括的な公衆参加のもとでサイト選定を実施する
  • 岩塩、粘土層、結晶質岩を候補母岩として検討対象とする。
  • 旧処分場候補地であるゴアレーベン・サイトを、今後実施されるサイト選定手続きから除外しない。

【出典】

ドイツの連邦議会は2016年6月23日に、「最終処分分野における組織体制刷新のための法案」(以下「法案」という)を可決した。法案の発効後は、ドイツにおいて放射性廃棄物処分場のサイト選定から建設・操業・廃止措置を、単一の国営組織が担う体制が構築されることになる。また、放射性廃棄物処分関連の安全規制機関の名称変更が行われる。本法案は、2016年6月24日付で連邦参議院に回付されており、今後、連邦参議院の同意を得たのち、連邦官報に公示され、発効する見込みである1 。

本法案は、「発熱性放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に関する法律」(以下「サイト選定法」という)に基づく「高レベル放射性廃棄物処分委員会」(以下「処分委員会」という)が提案した、放射性廃棄物処分の新たな実施主体の設置 や、放射性廃棄物処分場のサイト選定プロセスを中立的な立場から監視する「社会諮問委員会」の早期設置などを目的として策定されたものであり、原子力法やサイト選定法をはじめとする計15の関係法令を改正する条文で構成されている。

放射性廃棄物処分の新たな実施主体の設置

本法案には原子力法とサイト選定法の改正が含まれている。改正原子力法には、放射性廃棄物処分事業の実施責任を、連邦環境・自然保護・建設・原子炉安全省(BMUB)の監督下に置かれる「連邦が100%所有する私法上の組織」に一任するとの規定が盛り込まれる。同様に、改正サイト選定法では、高レベル放射性廃棄物処分場のサイト選定の実施責任者が、現在の連邦放射線防護庁(BfS)から、「連邦が100%所有する私法上の組織」に変更される。

なお、処分委員会は2015年3月の決議において、処分実施主体となる「連邦放射性廃棄物機関(BGE)」を100%国営組織として新たに設置することを提案しており、本法案は処分委員会の決議を反映したものである

放射性廃棄物処分の実施責任に関する現行法上の体制と、関係法令の改正後における体制を整理すると、下表のとおりとなる。

実施責任範囲

現行法上の体制

改正案による新体制

放射性廃棄物処分場のサイト選定・建設・操業・廃止措置

連邦放射線防護庁(BfS)

(実際の処分場の建設・操業等の作業については、ドイツ廃棄物処分施設建設・運転会社(DBE社:民間会社)及びアッセ有限会社(国有会社)に業務委託)

連邦が100%所有する私法上の組織(※)。監督官庁は連邦環境・自然保護・建設・原子炉安全省(BMUB)。

(※連邦放射性廃棄物機関(BGE)として設置される見込み)

 

放射性廃棄物処分場のサイト選定プロセスを監視する社会諮問委員会の早期設置

現行のサイト選定法において社会諮問委員会は、サイト選定手続きへの公衆参加を実現するための組織と位置づけられているが、具体的な役割、委員構成等に関する規定は含まれていなかった。本法案の発効後は、社会諮問委員会の設置時期が、現行の「連邦議会による処分委員会の最終報告書の評価後」から、「2016年6月30日の処分委員会の最終報告書提出後」に前倒しされる。社会諮問委員会は、処分委員会の活動終了後からサイト選定の開始までの期間においても、関連機関の諸活動に関与することになる。また、社会諮問委員会の役割が明確化され、処分場サイトの決定に至るまでの公衆参加の実施状況も含めて、サイト選定手続きを中立的な立場から監視するとともに、関係者間の調整を行うことになる。

なお、処分委員会は、最終報告書提出後に公衆参加の空白期間が生じることを回避する目的で、社会諮問委員会の設置を早めることを提案していた。

社会諮問委員会の設置時期と体制、役割について、現行法と改正案における規定内容を整理すると、下表のようになる。

項目

現行法

改正案

設置時期

連邦議会による処分委員会の最終報告書の評価後に設置。

2016年6月30日の処分委員会の最終報告書提出後に設置。

委員構成

委員構成は多元性に配慮しなければならない

設置時(9名):連邦議会・連邦参議院から6名、市民代表2名、若年層代表1名。

連邦議会による処分委員会の最終報告書の評価後に見直しを実施。

委員任期

規定なし。

3年(再選2回まで)。

主な役割

サイト選定手続きへの公衆参加を実現。

  • サイト選定手続きを公衆参加の実施状況も含めて中立的な立場から監視及び関係者間の調整
  • 処分委員会の活動終了後からサイト選定の開始までの期間の諸活動に関与

 

放射性廃棄物処分関連の安全規制機関の名称変更

処分場サイト選定手続全体の監督、調整を担う規制機関として、2014年9月に連邦放射性廃棄物処分庁(Bundesamt für kerntechnische Entsorgung, BfE)が設置されている。本法案の発効後は、同機関の名称が「連邦放射性廃棄物処分安全庁(Bundesamt für kerntechnische Entsorgungssicherheit, BfE)」に変更される。また、放射性廃棄物の貯蔵や輸送に関する許可発給権限は、連邦放射線防護庁(BfS)からBfEに移管される。

連邦放射線防護庁(BfS)の反応

連邦放射線防護庁(BfS)長官は、本法案の連邦議会通過を受けて公表された2016年6月24日付の声明において、最終処分関連の組織体制変更は、最終処分事業のこれまでの経験に照らして、理に適ったものであると評価しており、その上で、組織体制の刷新は、高レベル放射性廃棄物処分場の新たなサイト選定にとって必要であり、体制の重複を避け、外部から見て責任の所在がわかりやすい構造とする必要があると述べている。

【出典】

 

【2016年7月13日追記】

ドイツの連邦参議院は2016年7月8日に、連邦議会が可決した「最終処分分野における組織体制刷新のための法律」について、同法の内容に異議を申し立てないことを決議した2 。今回の連邦参議院の決議により、同法に関する議会両院の手続が終了して法律として成立した。同法は今後、連邦官報に公示され、発効する見込みである。

【出典】


  1. ドイツの国会は二院制であり、連邦議会と連邦参議院がある。連邦参議院は直接選挙で選出されるのではなく、州が代表を送って構成される。ドイツ基本法では、連邦法は連邦議会が議決すると規定しているが、法律の内容によっては連邦参議院の同意が必要となる。 []
  2. ドイツの法律制定過程における連邦参議院の関与には2通りあり、連邦参議院の同意が必要なものと、異議権限が認められるものがある。連邦参議院が異議を唱えた場合、両院協議会が設置され協議が行われるが、連邦議会は異議を覆すことが可能である。 []
フェノヴォイマ社が地質学的研究を行う2自治体の位置

フェノヴォイマ社が地質学的研究を行う2自治体の位置

フィンランドにおいて新たに原子力発電事業に参入し、原子炉新設に向けたプロジェクトを進めているフェノヴォイマ社は、2016年6月22日付のプレスリリースにおいて、新規原子炉から発生する使用済燃料の処分に向けた環境影響評価(EIA)計画書を雇用経済省(TEM)に提出したことを公表した。フェノヴォイマ社の使用済燃料処分事業のスケジュール(下図参照)によれば、同社は調査を2030年代半ばまで実施した後、環境影響評価書の作成を行い、2040年代に使用済燃料処分場のサイトを選定する計画である。

  • 使用済燃料処分場のサイトに関してフェノヴォイマ社は、原子炉建設プロジェクトを進めているピュハヨキ自治体と、ポシヴァ社が使用済燃料処分場を建設するエウラヨキ自治体の2カ所を対象として、今後、地質学的研究(Geological studies)を実施する。
  • フェノヴォイマ社は、ポシヴァ社の子会社ポシヴァ・ソリューションズ社と10年間の業務提携契約を締結した。ポシヴァ・ソリューションズ社は親会社のポシヴァ社が培ってきた専門性を活かして、フェノヴォイマ社の使用済燃料処分に向けた計画策定や研究開発、及びサイト選定の面で協力する。10年後には次のステップの実施に向けた別の協定を結ぶことも可能となっている。
フェノヴォイマ社の使用済燃料処分事業のスケジュール(フェノヴォイマ社環境影響評価計画書を基に作成)

フェノヴォイマ社の使用済燃料処分事業のスケジュール(フェノヴォイマ社環境影響評価計画書を基に作成)

雇用経済省の2016年6月22日付プレスリリースによると、同省のレーン経済大臣は、フェノヴォイマ社とポシヴァ・ソリューションズ社との協力により、フェノヴォイマ社の使用済燃料処分プロジェクトにおいてポシヴァ社が有する専門的知識が活用されるとして歓迎の意を表明した。また、フィンランドの原子力に関する安全規制機関である放射線・原子力安全センター(STUK)も2016年6月22日にプレスリリースを公表し、今回の両社の協力は、これまでのポシヴァ社の経験を活かすことによって、フェノヴォイマ社が計画している使用済燃料処分の安全性にとって好ましいとする見解を表明した。また、フェノヴォイマ社が今後実施する環境影響評価について、STUKは処分の計画の実施、処分概念、処分による放射線影響の評価に主に取り組んでいくこととしている。

フェノヴォイマ社の使用済燃料処分計画をめぐるこれまでの動向

フェノヴォイマ社は、フィンランドの原子力発電事業に新たに参入した企業であり、同社が新規原子炉建設事業に関して2009年に原則決定(詳細はこちら)の申請を行った際には、使用済燃料管理に関してはエウラヨキ自治体オルキルオトに計画されている処分場に共同で処分する計画としていた。なお、その当時、フェノヴォイマ社はポシヴァ社やその親会社であるテオリスーデン・ヴォイマ社(TVO社)、フォルツゥム・パワー・アンド・ヒート社(FPH社)と経済的な面での協力関係はなかった。フェノヴォイマ社の原則決定申請に対して政府は2010年5月に原則決定を行い、2010年7月には国会が政府原則決定を承認していた。政府による原則決定文書では、フェノヴォイマ社は2016年6月30日までに、同社が既存の処分実施主体であるポシヴァ社と協力協定を締結するか、独自の使用済燃料最終処分場の建設に向けた環境影響評価計画書を雇用経済省に提出することにより、同社の使用済燃料最終処分に関する計画を策定することを付帯条件としていた。

フェノヴォイマ社は、ポシヴァ社及びその親会社2社(TVO社、FPH社)と使用済燃料処分に関して協力関係を構築するよう調整を行っていたが、ポシヴァ社はオルキルオトに建設予定の処分場は親会社が運転する原子炉から発生する使用済燃料のためのものであるとして、フェノヴォイマ社との協力関係を拒否し続けていた。

その後、FPH社の親会社であるフォルツム社が、2015年8月にフェノヴォイマ社のプロジェクトに出資し、フェノヴォイマ社のプロジェクトに参加することとなった。なお、フェノヴォイマ社は2015年に新規原子炉(ハンヒキヴィ1号機)の建設許可申請を行っている。

今回のポシヴァ社によるプレスリリースでは、ポシヴァ社は引き続き、親会社であるTVO社とFPH社の原子力発電所で発生する使用済燃料の処分場建設に集中していくものであり、フェノヴォイマ社との業務契約締結には、フェノヴォイマ社の原子力発電所で発生する使用済燃料をポシヴァ社が建設を進めているオルキルオトの地層処分場において処分することは含まれていないとしている。

フィンランドにおける環境影響評価について

フィンランドでは、1994年に環境影響評価手続法が制定されている。環境影響評価は、環境に重大な影響が生じる可能性がある事業について、市民を含むステークホルダーが情報を事前に入手し、計画策定や意思決定に参加する機会を増やすことを目的とした制度となっている。最終処分場を含む重要な原子力施設の建設事業に関しては、原子力法に基づく原則決定手続きの申請に先だって、事業者は環境影響評価(EIA)を実施し、その評価書を原則決定申請書に添付することが規定されている。

EIAは、狭い意味での自然環境に対する影響だけではなく、景観、社会生活への影響、経済的な影響を含めた総合的な評価をすることが規定されている。

また、環境影響評価(EIA)は、計画書の作成(EIA計画書)、評価の報告書(EIA報告書)をまとめる段階から構成されている。

原子力施設に係る事業に関しては雇用経済省が環境影響評価の監督官庁となり、対象地域住民を含めた関係者や関係省庁に意見を求めることとなっており、その一環としてこれまでの原子力施設に係る環境影響評価において、雇用経済省はSTUKにも意見書の提出を要求している。

【出典】

 

【2016年7月13日追記】

フィンランドの雇用経済省(TEM)は、2016年7月12日付のプレスリリースにおいて、フェノヴォイマ社が提出した使用済燃料の処分に向けた環境影響評価(EIA)計画書が、同社の新規原子炉建設事業に関する2010年の原則決定の付帯条件を満たしていることを承認したことを公表した。これにより、同社が2015年に提出していたハンヒキヴィ原子力発電所1号機の建設許可申請の審査が継続されることになる。

フェノヴォイマ社の新規原子炉建設に関する原則決定申請に対して、政府は2010年5月に原則決定を行っていた。原則決定文書では、フェノヴォイマ社が2016年6月30日までに、同社が既存の処分実施主体であるポシヴァ社と協力協定を締結するか、独自の使用済燃料最終処分場の建設に向けた環境影響評価(EIA)計画書を雇用経済省に提出することにより、同社の使用済燃料最終処分に関する計画を策定することを付帯条件としていた。

また、同プレスリリースによれば、今後、雇用経済省(TEM)は環境影響評価の調整機関として、関係行政機関や、候補サイトの自治体とされているエウラヨキ、ピュハヨキの両自治体にフェノヴォイマ社の環境影響評価(EIA)計画書に関する意見照会を行うほか、その一環として公聴会を開催する計画である。

【出典】

 

【2016年8月24日追記】

フィンランドの雇用経済省(TEM)は、2016年8月23日付のプレスリリースにおいて、フェノヴォイマ社が提出した使用済燃料の処分に向けた環境影響評価(EIA)計画書に関する公聴会を、エウラヨキ、ピュハヨキ両自治体において、それぞれ2016年9月21日、9月22日に開催することを公表した。

環境影響評価手続法に基づいてTEMは、環境影響評価の調整機関として、関係行政機関及び候補サイトの自治体にEIA計画書に関する意見照会を行うほか、公聴会を開催することが規定されている。同プレスリリースによると、EIA計画書に対する関係行政機関及び候補サイトの自治体から意見照会を行う期間は2016年9月12日から2016年11月9日とされ、収集した意見を踏まえて、TEMは2016年末までに見解書を公表する予定としている。

【出典】

 

【2016年12月19日追記】

フィンランドの雇用経済省(TEM)は、2016年12月16日付のプレスリリースにおいて、フェノヴォイマ社が2016年6月に提出していた使用済燃料の処分に向けた環境影響評価(EIA)計画書に対する意見書を公表した。TEMは意見書において、フェノヴォイマ社のEIA計画書は包括的であり、環境影響評価手続法の要件を満たしているとの見解を示している。

フェノヴォイマ社のEIA計画書について調整機関である雇用経済省(TEM)は、2016年9月12日から11月9日にかけて自治体や関係機関等、及び関係国に対して意見聴取を行った。その結果、合計で63の意見が寄せられたが、多かった意見としては、EIA評価の期間が非常に長いこと、事業に関するコミュニケーションが重要であることなどのほか、EIA評価の期間中における評価プログラムに関する最新情報の提供についての要求があったとしている。

雇用経済省(TEM)は、今回の意見書においてフェノヴォイマ社に対し、現時点で放射性廃棄物管理義務を有している原子力発電事業者との協力を継続すること、及び2018年1月31日までに使用済燃料処分プロジェクトのより詳細なスケジュールを示した計画書を追加で提示するよう求めている。フェノヴォイマ社が追加で提出する計画書では、エウラヨキ自治体で実施する調査の対象となる地域の選定方法と選定時期のほか、エウラヨキ・ピュハヨキ両自治体の調査地域での調査の実施方法、及び公衆参加の枠組みに関する詳細を示さなければならないとしている。そのほか、雇用経済省(TEM)は、フェノヴォイマ社の原子炉から発生する使用済燃料については、商業契約に基づく協力により、ポシヴァ社の処分場で処分するのが最も望ましい解決策であり、フェノヴォイマ社がそのための努力をすべきであるとの見解を示している。

【出典】