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米国のエネルギー省(DOE)は、超ウラン核種を含む放射性廃棄物(TRU廃棄物)の地層処分場である廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)について、2019年3月26日付の適合性再認定申請書(CRA)(以下「2019年CRA」という。)をウェブサイトで公表した。WIPPでは、1999年3月26日から、軍事起源のTRU廃棄物の地層処分が実施されているが、1992年WIPP土地収用法により、廃棄物の定置開始以降の5年毎に、廃止措置段階が終了するまで、連邦規則(CFR)の要件に適合していることの認定を受けることが要求されている。これまで3回の適合性再認定申請を行い、環境保護庁(EPA)が適合性認定の決定を行っており、今回が4度目の適合性再認定申請となる。

適合性再認定申請 適合性再認定の決定
1 2004年3月26日 2006年3月29日
2 2009年3月24日 2010年11月18日
3 2014年3月26日 2017年7月13日

前回の2014年3月26日に提出された3度目の適合性再認定申請書(以下「2014年CRA」という。)は、2013年1月1日までのデータに基づいて策定されていたが、その提出直前の2014年2月に、WIPPで火災事故及び放射線事象が発生し、微量の放射性物質が環境モニタリングで検出された。この放射線事象を受けてWIPPの操業は一時停止され、復旧活動が進められたが、DOEは、この放射線事象は処分場の長期的性能に影響するものではなく、WIPPはEPAの連邦規則である「使用済燃料、高レベル放射性廃棄物及びTRU廃棄物の管理と処分のための環境放射線防護基準」(40 CFR Part 191サブパートB・C)の要件を引き続き遵守しているとして、2017年1月に処分場の操業を再開している。EPAは、2017年7月13日に、WIPPが引き続きEPAの連邦規則に適合しているとして、適合性再認定の決定を行った。

DOEは、今回提出した2019年CRAの要約版において、今回の適合性再認定のサイクルは、次の2点で従来のサイクルとは異なるとしている。

  • 2014年CRAに係るEPAの決定が遅れたため、次の2019年CRAまでの間隔が短くなった。
  • 2014年CRAに係るEPAの決定文書では、DOEが2019年CRAで対応すべき技術的懸念や勧告が示されていた。

このため、DOEとEPAは2017年12月に、2019年CRAにおける性能評価(PA)の提出を2019年後半まで遅らせることで合意していた模様である。DOEは、2014年CRAの決定文書でEPAが指摘した技術的懸念事項への回答は、後に性能評価とともに提出されるとしている。なお、2014年CRAに係るEPAの決定の後、DOEはEPAの承認を必要とするような変更要求(PCR、planned change request)を行っていないことから、2014年CRAにおける性能評価は、2019年CRAにおいても引き続き性能評価のベースとして参照されているとしている。なお、DOEは、2014年CRA以降に、EPAの連邦規則への適合性に影響するような新たな情報は確認されていないとしている。

【出典】

 

【2019年7月4日追記】

米国のエネルギー省(DOE)環境管理局(EM)は、2019年7月2日付けのニュースにおいて、超ウラン核種を含む放射性廃棄物(TRU廃棄物)の地層処分場である廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)で、1999年の操業開始から12,500回目となるTRU廃棄物の受入れを行ったことを公表した。

WIPPでは、2014年2月に発生した火災事故及び放射線事象により操業が停止されていたが、2017年1月4日にはTRU廃棄物の定置を再開し、2018年1月には地下施設の掘削活動も再開された。また、連邦規則への適合性に関する4回目の再認定申請についても、2019年3月26日に環境保護庁(EPA)へ提出されている。

今回のニュースによれば、12,500回目の受入れとなったTRU廃棄物は、アイダホ国立研究所(INL)から搬出されたものであり、2019年6月27日にWIPPで受入れが行われた。WIPPへのTRU廃棄物の輸送距離は延べ1,490万マイル(約2,400万km)以上となっており、178,500以上の廃棄体容器の輸送が行われた。WIPPの輸送手順は、TRU廃棄物の発生サイトを出発してからWIPPに到着するまで一つの問題も発生しないように実施されており、輸送業界の中で最も厳しいものの一つとされている。

なお、WIPPでTRU廃棄物の受入れが開始されたのは1999年3月26日であり、操業開始から20周年となる2019年3月26日には、WIPPの20周年の記念式典も行われていた。WIPPウェブサイトによれば、2019年7月1日現在のTRU廃棄物の処分量は、約96,300m3となっている。

【出典】

 

【2019年9月30日追記】

米国でエネルギー省(DOE)が提出した廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)に係る適合性再認定申請書について、申請書の完全性の審査を実施している環境保護庁(EPA)は、2019年9月25日付けの連邦官報において、パブリックコメントの募集を開始することを告示した。軍事起源のTRU廃棄物の地層処分場であるWIPPについてEPAは、DOEの適合性再認定申請書のすべての側面についてコメントを求めるとしている。

EPAは、DOEの適合性再認定申請書の完全性が確認されたと決定したときには、DOEに書面で通知するとともに、連邦官報で告示することとしている。また、パブリックコメントの募集期限は、完全性の決定後、改めて連邦官報に掲載するとしている。なお、1992年WIPP土地収用法においては、EPAは完全性の決定から6カ月以内に適合性再認定の決定を行うことと規定されている。

【出典】

フランスの国家討論委員会(CNDP)1は、2019年4月10日に自身のウェブサイトにおいて、政府が策定中の2019~2021年を対象とした「放射性物質及び放射性廃棄物の管理に関する国家計画」(PNGMDR)に関する公開討論会を2019年4月17日より開始するとし、討論会の日程を公表した。PNGMDRは、フランスにおける全ての放射性物質と放射性廃棄物の管理の現状分析と管理方策の実現に向けた取組(研究開発を含む)を取りまとめたものであり、公開討論会は2019年9月25日までの予定でパリをはじめ、フランス国内の各都市で開催される。

PNGMDRは2006年の放射性廃棄物等管理計画法により、政府による3年ごとの策定・改定が義務付けられており、前回2016~2018年を対象としたPNGMDRは2017年2月に公表されている。2017年の法改正2 を受けて、2019~2021年を対象とする新たなPNGMDRの策定に先がけて、公開討論会が開催されることとなった。

今回の公開討論会は、2018年2月に環境連帯移行省が国家討論委員会(CNDP)に対し、PNGMDRに関する公開討論会の実施を付託したものである。環境連帯移行省は、今回の公開討論会を地層処分プロジェクトに関する透明性強化の方針に沿ったものであると説明している。国家討論委員会(CNDP)は2018年中に、公開討論会を主導する特別委員会(CPDP)を設置し、以下のメンバーを任命していた。

  • イザベル・アレル=デュリトゥ(委員長):フランスにおける司法訴訟の最高裁判所である破棄院の首席書記官
  • ピエール=イヴ・ジュイエヌフ:農業経済学者であり、公衆参加や協議の分野の専門家
  • アントワーヌ・ティロワ:独マックスプランク研究所の理論物理学者
  • カトリーヌ・ラレール:哲学者、パリ第一大学教授
  • イサベル・バルト:元グルノーブル都市圏議員、CNDPが過去に実施した公開討論会の情報提供及び公衆参加を監督する2名の保証人(garants)を務めた経験を有する
  • ミッシェル・バドレ:土木技術者、社会経済環境審議会(CESE)の副会長
  • フィリップ・クエヴレモン:土木技術者、CNDPの保証人(garants)を務めた経験を有する
  • ジュリエット・ロワド:ニュース解説を専門とする組織の設立者、市民参加に関するコンサルタント

国家討論委員会(CNDP)は、PNGMDRに関する公開討論会のための特設ウェブサイト(https://pngmdr.debatpublic.fr/)を開設しており、同ウェブサイトから意見表明や討論を行えるプラットフォームにアクセスできる。また、TwitterやFacebook等のソーシャルネットワークサービス(SNS)やニュースレターによる情報発信も行われている。

公開討論会は、以下の日程で実施される予定である。

日程 開催都市 テーマ
2019年4月17日 パリ 開会
4月24日 カン CAFÉ PHILO : 放射性廃棄物について・・・次世代に何を引き継ぐのか?
5月18日~19日 パリ 15人の市民パネル会合
5月24日~25日 パリ PNGMDRとそのガバナンスに関する分野横断的な学生グループ会合
5月28日 リール 放射性物質及び放射性廃棄物の管理
6月4日 ヴァランス [討論会] 原子力発電所の廃止措置で発生する廃棄物の対応
6月6日 ナルボンヌ [討論会] ウラン転換によって発生する廃棄物とその管理
6月11日 シェルブール [討論会] 使用済燃料の再処理の戦略と長期的影響
6月13日 レンヌ 放射性物質及び放射性廃棄物の管理
6月18日 ヌヴェール [討論会] 使用済燃料の貯蔵容量ひっ迫への対応
6月20日 バール・ル・デュック [討論会] 地層処分以外の最終処分のオプション
6月25日 リヨン CAFÉ PHILO : 放射性廃棄物に関するリスクとは?
6月27日 サクレー [討論会] 放射性物質と廃棄物との区別
7月2日 ボルドー 放射性物質及び放射性廃棄物の管理
7月4日 ルーアン [討論会] 放射性物質の輸送
7月9日 トゥール [討論会] 放射性廃棄物管理による健康や環境への影響
7月11日 ストラスブール 放射性物質及び放射性廃棄物の管理
9月4日 マルクール [討論会] 歴史的廃棄物
9月5日 サンテティエンヌ [討論会] 過去のウラン採掘サイトの健康や環境への影響
9月11日 パリ [討論会] 放射性物質と廃棄物の発生量の抑制
9月12日 グラヴリーヌ [討論会] 原子力事故で発生した廃棄物の管理
9月17日 トロワ [討論会] 長寿命低レベル放射性廃棄物の管理
9月19日 パリ [討論会] 放射性廃棄物管理のガバナンス
9月24日 パリ 公開討論会全体の振り返り
9月25日 パリ 閉会

 

【出典】

 

【2019年9月30日追記】

フランスの国家討論委員会(CNDP)は、2019~2021年を対象とした「放射性物質及び放射性廃棄物の管理に関する国家計画」(PNGMDR)に関する公開討論会について、2019年4月17日に開会した討論会が2019年9月25日に閉会したことを公表した。討論会期間中には全国で約20回の討論会等が開催され、一般から延べ3,000人を超える者が参加した。

一連の討論会では、PNGMDRを策定している環境連帯移行省と原子力安全機関(ASN)や、放射性廃棄物管理機関(ANDRA)、放射線防護・原子力安全研究所(IRSN)、フランス電力株式会社(EDF社)、Orano社等の関係機関に加え、グリーンピース等の環境保護団体等による説明に基づいて議論が行われた。公開討論会の特設ウェブサイト上には、討論会で使用された説明資料のほか、関係機関や環境保護団体等が一般公衆向けに取りまとめた資料等、合計約300件の資料が集約されており、閲覧可能となっている。

CNDPは今後、2019年11月25日までに、公開討論会を総括する報告書を公表する予定である。

【出典】


  1. 国家討論委員会(CNDP)は、環境に多大な影響を及ぼす大規模公共事業や政策決定を行うにあたり、事業実施主体の付託を受けて公開討論会を開催する独立した行政委員会である。 []
  2. 環境に重大な影響を及ぼす可能性のある意思決定に関する情報提供や公衆参加を確保するための手続き及び事業、計画等に係る環境影響評価に関する2017年4月25日のデクレ2017-626 []

ベルギーの放射性廃棄物管理の実施主体である放射性廃棄物・濃縮核分裂性物質管理機関(ONDRAF/NIRAS)は、2019年4月5日に、短寿命の低・中レベル放射性廃棄物(カテゴリーAと呼称されている)の浅地中処分場の設置に関する環境影響評価(EIA)報告書案について、公開協議を開始したことを公表した。ONDRAF/NIRASは、ベルギー北部のデッセル自治体に浅地中処分場を建設する予定であり、EIA報告書案の環境に関する分野について、下記の3点についてコメントを求めている。なお、公開協議は、2019年5月3日まで実施される予定である。

  • 地域レベルでの環境条件や問題点、懸念
  • 計画されている処分場の建設・操業に関する懸念
  • 想定される代替オプション、影響の緩和策等

今後、ONDRAF/NIRASは、寄せられた意見等を踏まえてEIA報告書を最終化して環境許可申請書を取りまとめ、デッセル自治体を管轄するフランダース地域政府に提出することとなっている。フランダース地域政府は、EIA報告書の内容を審査し、環境許可発給の是非を判断することになっている。なお、審査段階においても、公衆の意見聴取が実施される予定である。

デッセル自治体に建設予定の浅地中処分場の概観イメージ

図 デッセル自治体に建設予定の浅地中処分場の概観イメージ(EIA報告書案より引用)

ベルギーでは2006年6月に、短寿命の低・中レベル放射性廃棄物の処分場をデッセル自治体に設置することが決定され、2013年1月には、ONDRAF/NIRASが浅地中処分場の建設許可申請書を連邦原子力管理庁(FANC)に提出していた。ONDRAF/NIRASは2019年2月に、浅地中処分場の安全報告書の改訂版をFANCに再提出しており、安全審査が進められている。今回の浅地中処分場の設置に関するEIA報告書は、安全報告書とともに、許認可取得に向けて必要となる提出書類の一つである1 。なお、FANCとフランダース地域政府は、それぞれの審査を円滑に進めるため、協定を結んでいる。

 

【出典】

 


  1. ベルギーの浅地中処分施設の許認可プロセスは、「電離放射線の危険に対する公衆、職業人、環境の防護に関する一般規則を定める2001年7月20日の王令」(GRR-2001)に基づくものである。また、環境影響評価に関しては、欧州指令1985/337/EEG及びユーラトム条約第37条の適用に関する欧州委員会の勧告2010/635/Euratomに基づき作成する必要がある。 []

スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)は2019年4月4日付けのプレスリリースにおいて、使用済燃料最終処分場の立地・建設許可申請書等に関して、キャニスタの長期閉じ込め能力に関する補足説明書を、政府(環境省)に提出したことを公表した 。今回の補足説明書の提出は、環境法典に基づく許可発給が可能となるための条件として、土地・環境裁判所による2018年1月23日付けの意見書での指摘に対応したものである。SKB社は、この補足説明書を同社の技術報告書として発行しており、KBS-3概念1 を採用した処分により、放射線安全機関(SSM)が定めている安全要件を遵守できるとの結論を示している。

図 フォルスマルクに建設予定の使用済燃料処分場のイメージ(SKB社提供)

フォルスマルクに建設予定の使用済燃料処分場のイメージ(SKB社提供)

■銅製キャニスタの腐食に関する補足説明の内容

土地・環境裁判所は、2018年1月23日にスウェーデン政府に宛てた意見書において、SKB社による安全性の立証は信頼に足るものであると評価しつつも、使用済燃料を閉じ込める銅製キャニスタの腐食や機械的強度に影響を与えるプロセスの影響の大きさに関する説明は不十分であるとし、銅製キャニスタの腐食に関する以下の5点について補足説明の必要性を指摘していた 。

①無酸素水との反応による腐食
②硫化物との反応による孔食(熱水効果〔塩濃縮〕の影響の考慮を含む)
③硫化物との反応による応力腐食(熱水効果の影響の考慮を含む)
④水素脆化
⑤放射線照射が孔食、応力腐食及び水素脆化に及ぼす影響

SKB社は、今回提出した補足説明の技術報告書において、地下水に含まれる硫化物が銅製キャニスタと接触した際に、銅の母相界面に形成される局部電池が誘発するガルバニック腐食現象に起因する孔食(上記②)の可能性は無視できないとした。SKB社は、キャニスタでの孔食発生を組み込んだ安全解析を実施し、銅製キャニスタと地下水とが接触する時期が早まる悲観的なケースにおいても、スウェーデンにおいて自然放射線によって受ける被ばく線量の約100分の1、放射線安全機関(SSM)のリスク基準の約10分の1にとどまるとの結果を示している。

SKB社は、今回のキャニスタの長期閉じ込め能力に関する補足説明書の提出にあたり、技術的・科学的な品質を確保するために外部のピアレビューを受けたと説明している。また、SKB社は、今回の補足説明書の提出により、環境省において、使用済燃料の最終処分場の立地・建設許可申請に対する政府としての意思決定に向けた検討作業を進めることができるようになったと述べている。

【出典】

 

【2019年4月26日追記】

スウェーデン政府(環境省)は2019年4月25日付けのプレスリリースにおいて、スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)が提出したキャニスタの長期閉じ込め能力に関する補足説明書に対する意見募集を開始したことを公表した。意見募集先は、環境法典と原子力活動法のそれぞれを根拠として、放射線安全機関(SSM)や他の政府機関、大学、環境団体のほか、エストハンマル自治体などを対象としているが、指定された組織以外の個人等も意見書を提出することが可能となっている。意見書の提出期限は2019年9月13日となっている。

【出典】

 

【2019年10月2日追記】

放射線安全機関(SSM)は、2019年10月1日付けのプレスリリースにおいて、スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)が提出したキャニスタの長期閉じ込め能力に関する補足説明書について、SSMの意見書を政府(環境省)に提出したことを公表した。SSMは、環境法典と原子力活動法のそれぞれに基づく意見書を政府(環境省)に提出しており、いずれの意見書においても、SSMが2018年1月に政府に提出した意見書の結論と同様に、SKB社に対する許可発給は可能であるとの結論を示している。
なお、政府(環境省)は、SKB社のキャニスタの長期閉じ込め能力に関する補足説明書に対して、大学や環境団体等から提出を受けた22件の意見書を公表している。

【出典】


  1. KBS-3概念とは、スウェーデンで開発された使用済燃料の処分概念であり、使用済燃料を銅製のキャニスタに封入し、地下約500メートルに設けられる処分坑道の床面に掘削した処分孔に縦置きに定置して、キャニスタの周囲を緩衝材(ベントナイト)で囲うというもの。本概念を検討した報告書の略称に由来しており、フィンランドも同様な概念を採用している。 []

カナダの使用済燃料処分の実施主体である核燃料廃棄物管理機関(NWMO)は、自身のウェブサイトにおいて、「適応性のある段階的管理」(APM詳細はこちら))の実施に関して、2019年から2023年までの5カ年の実施計画書を公表した。NWMOは、毎年、今後5年間の行動計画をまとめた実施計画書を公表している。今回の実施計画書の対象期間には、NWMOが1カ所の好ましいサイトの特定を予定する2023年が含まれている。なお、2019年4月現在、NWMOは5つの自治体において、サイト選定プロセスの第3段階「使用済燃料処分場の潜在的な適合性の予備的調査」の第2フェーズとして現地調査を実施している

NWMOは、今回公表した実施計画書において、2023年を重要なマイルストーンと位置付け、それに向けた取り組みとして下記の7つの優先事項を挙げ、それぞれにおける実施内容を示している。

  1. 工学技術:工学的設計をさらに発展させ、その有効性を実証する。
    • プロトタイプの処分容器、緩衝材、定置システムの設計、製造、試験を完了する。
    • ボーリング調査、予備的な環境ベースライン調査で得られたデータを活用したサイト固有の概念的な処分場設計の整備を行う。
    • 人工バリアの評価のためのプロトタイプ試験及び実証施設を維持する。
    • 必要に応じてAPMの概念設計とコスト見積りを更新するとともに、使用済燃料取扱システムの設計と開発を開始する。
  1. サイト評価:候補サイトにおける詳細な現地調査を継続し、社会的・技術的両面でのサイト評価を実施していく。
    • ボーリング調査を継続するとともに、プロジェクトの要件に合致する可能性が高い地域における地球科学的、工学的、環境的及び安全性の要因と先住民の有識者や地域社会によって特定された要因の評価について情報提供するために現地調査を拡大する。
    • 地域社会との調査結果の再検討を通じて、調査対象地域の絞り込みを継続する。
  1. 安全性:サイト固有の予備的なセーフティケースを構築し、長期安全性を確認する取り組みを強化する。また、国際機関や諸外国の実施主体との協力に基づく研究を継続する。
    • カナダ国内外の大学との共同研究を通じてプロジェクトの科学的側面の理解を深め、その結果を学術誌、会議論文、技術報告書で提示する。
    • IAEA「使用済燃料管理及び放射性廃棄物管理の安全に関する条約」に基づくカナダの国際的義務を継続する。
    • 諸外国の研究者とともに、スイスのモン・テリ岩盤研究所プロジェクト及びグリムゼル試験サイトでの研究に引き続き協力する。
    • カナダ原子力学会、OECD/NEAやIAEAなどが主催する国内及び国際会議、ワークショップ、国際共同研究への参加を継続する。
    • 学術界と産業界の研究者による地球科学セミナーの開催を継続する。
    • カナダ自然科学・工学研究会議(NSERC)の奨学金プログラムを通じて、大学院生を支援する。
    • 地域住民の安全に対する理解を深めるための討論の場を構築・支援する。
    • 地下水の流れ、閉じ込め容器からの放出と移行及び熱-水-力学連成プロセスの評価を含めて、安全評価モデルを整備・改良する。
    • 処分場の安全性に影響を与える可能性があるプロセスについて科学的理解を促進する。
    • 地層処分場閉鎖後の安全評価のサイト固有のじ実例を通して、技術的安全性の考慮事項の調査を継続する。
  1. 人材の確保:2023年のサイト特定以降の段階に備え、NWMOの要員確保などに関する戦略を立案するとともに、地域における雇用の促進に向けた取り組みを強化する。
    • 将来の許認可申請をサポートするため、選定された地域の詳細なサイト特性調査、環境アセスメント、工学的設計及びセーフティケースの開発を進めるためのワークプランを検討し、要員の要件を評価する。
    • 選定された地域に建設される専門技術センターの概念等を検討する。
    • 潜在的なサイトでの現地スタッフのプレゼンスを構築し、プロジェクトに関する現地契約の機会を提供する。
    • 地方自治体の青少年及び住民の能力向上を支援するとともに、先住民がAPMプロジェクトやその地域の他の大規模プロジェクトに関連する就業機会を確保するためにサイト選定プロセスに関与を促す。
  1. 許認可:許認可や規制上の承認を得るための戦略を立案・実施するとともに、持続可能性の確保のための、自然環境、健康及び社会福祉の変化を特定するための調査を行う。
    • 立地地域と協力して影響評価手法を開発する。
    • 地域の持続可能な開発へのプロジェクトの貢献のために必要な情報を提供するプログラムを開発する。
    • 地域住民や先住民の有識者と連携して、潜在的なサイトにおけるベースライン環境モニタリングを確立する。
    • カナダ原子力安全委員会(CNSC)などの規制当局と協力して、規制プロセスの要件を理解することにより、NWMOの戦略を説明できるようにする。
    • 潜在的な受入地域と協力して、規制プロセスにおける役割を明確にし、プロセスに参加できるよう関与を促進する。
    • 地元の伝統的な知識を評価に織り込むための先住民との共同作業など、地域社会などの人々と協力しながら地域の自然環境に対する理解を深める機会を創出する。
  1. 輸送:関心のある自治体、個人及びグループの関与を促進し、輸送計画に対する信頼構築のための技術的作業(リスク評価、輸送方法の検討等)を行う。
  1. 公衆の関与:2023年にサイトを特定するために、地域での関与や現地調査を進め、自治体とのパートナーシップ協定締結に向けた取り組みを行う。
    • 「適応性のある段階的管理」(APM)の実施、サイト選定プロセス、サイト選定後の取り組み及びNWMOに対するカナダ国民の認識を高めるとともに、受け取った情報を一般に報告する。
    • プロジェクトに対する若年層の認識と理解を深め、APMに関連する将来の意思決定能力を高める。
    • 核燃料の最終的な輸送の計画を含むAPMの進捗状況について、カナダの原子力立地地域に説明する。
    • 以下との関係を構築し維持する。
      • サイト選定プロセスへの参加を選択した関心のある地域、その地域の先住民及びその周辺地域
      • APM及びサイト選定プロセスの進捗状況を共有するための国、州及び地域レベルに設けられている先住民組織
      • 地方自治体が重要と考える観点をより良く理解し、協力してAPMを実施していくために設けられている自治体連合体(複数州にまたがる連合体)
      • 連邦、州、地方自治体
    • 先住民地域の文化や言語、慣習、取り組みは多様であることを認識しつつ、先住民の有識者を含む潜在的に影響を受ける先住民との協力を続ける。
    • より具体的に「社会的受容(social acceptance)」及び「喜んで受け入れる(willing host)」という用語を定義し、どのように立証できるか理解するために、サイト選定プロセスに関与する自治体、地域、先住民と協働する。
    • 地域などでの議論をサポートするための展示やわかりやすいコミュニケーション資料、視聴覚ツールの開発を継続する。
    • NWMOのWebサイト及びソーシャルネットワークサービス(SNS)を通じた関与を拡大する。

《参考》カナダにおける核燃料廃棄物処分場のサイト選定プロセス

カナダにおける核燃料廃棄物処分場のサイト選定プロセス

【参考出典】『連携して進む:カナダの使用済燃料の地層処分場選定プロセス』(NWMO, 2010年)

【出典】

米国で2019年3月11日に、2020会計年度1 の大統領の予算教書が連邦議会に提出され、大統領府管理・予算局(OMB)のウェブサイトで公表された。また、エネルギー省(DOE)のウェブサイトでは、DOEの予算要求のファクトシートが公表され、使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物(以下「高レベル放射性廃棄物」という。)の管理については、「ユッカマウンテン及び中間貯蔵」プログラムとして116百万ドル(約131億円、1ドル=113円で換算)が要求されている。また、原子力規制委員会(NRC)のウェブサイトでは予算要求に係る概要資料が公表され、ユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可申請書の審査手続のための予算として、38,500千ドル(約43億5,000万円)が要求されている。

大統領の予算教書では、今回の予算要求は、中間貯蔵プログラムの実施を支援し、ユッカマウンテン地層処分場の許認可審査手続を再開することにより、トランプ政権の決意を示すものであるとしている。また、予算教書では、現在は停止されている原子力発電事業者からの放射性廃棄物基金への拠出金 について、2022会計年度から徴収を再開することも示されている。

DOEの予算要求に関して、2019会計年度の歳出法では、DOEの高レベル放射性廃棄物処分関連の活動について、使用済燃料処分等(UNFD)研究開発プログラムとして63,915千ドル(約72億2,240万円)、このうち22,500千ドル(約25億4,250万円)を「統合放射性廃棄物管理システム」(IWMS)に割り当てる歳出予算が計上されているが、2019年3月11日時点では2020会計年度のDOEの予算要求に係る詳細資料は公表されておらず、「ユッカマウンテン及び中間貯蔵」プログラムの詳細は不明である。

一方、NRCの予算要求資料では、処分場の建設認可に係る許認可申請書の審査活動を支援する高レベル放射性廃棄物の予算として、38,500千ドル(約43億5,000万円)が計上されているが、NRCの予算要求についても詳細資料は公表されておらず、予算要求の内訳等は不明である。

なお、ユッカマウンテン計画に反対するネバダ州では、知事及び同州選出の連邦議会議員から、ユッカマウンテン関連の予算が要求されたことを非難するプレスリリースが出されている。

【出典】

 

【2019年3月20日追記】

米国の原子力規制委員会(NRC)は2019年3月18日に、2020会計年度2 の予算要求に係る詳細資料(以下「NRC予算要求資料」という。)を公表した。NRC予算要求資料では、ユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可申請書の審査活動を再開するため、NRCが高レベル放射性廃棄物の予算として要求している38,500千ドル(約43億5,000万円)について、項目別の内訳が示されるとともに、裁判形式の裁決手続の再開準備など、主要な活動内容が示されている。

NRC予算要求資料によれば、ユッカマウンテン処分場に係る2020会計年度の高レベル放射性廃棄物の予算の内訳は、以下のとおりとされている。

・許認可審査: 30,600千ドル (約34億6,000万円)
・監督: 200千ドル (約2,000万円)
・規則策定活動: 1,300千ドル (約1億5,000万円)
・任務支援・監督: 5,400千ドル (約6億1,000万円)
・訓練: 400千ドル (約5,000万円)
・旅費交通費: 700千ドル (約8,000万円)
合計: 38,500千ドル (約43億5,000万円)
※予算の桁数の関係から、額の合計は合計の値と合っていない。

また、NRC予算要求資料では、2020会計年度における高レベル放射性廃棄物の予算要求に係る主要な活動として、以下が示されている。

  • ヒアリング施設及び情報技術(IT)/視聴覚支援のためのインフラ整備活動の実施
    (許認可支援ネットワーク(LSN)(詳細はこちら)、電子情報交換、電子ヒアリング記録(Electronic Hearing Docket)などのITシステムの試験、検証、訓練を含む)
  • 裁判形式の裁決手続の再開
    (証言録取、事件管理協議、略式決定動議などのプレヒアリング活動を含む)
  • 継続中の連邦訴訟の準備及び参加
  • 申立てや取調べ活動、地層処分場操業区域(GROA)に関連する規則策定の継続などの活動の支援

なお、エネルギー省(DOE)の2020会計年度の予算要求については、予算の概要資料が2019年3月18日に公表されており、2017年1月に操業を再開した廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)については、2019会計年度と比較して5,133千ドル減の398,334千ドル(約450億1,200万円)の予算要求額が示されている。

【出典】

 

【2019年4月3日追記】

米国のエネルギー省(DOE)は2019年4月2日に、DOEのウェブサイトにおいて、2020会計年度3 の原子力関連等の予算要求に係る詳細資料(以下「DOE予算要求資料」という。)を公表した。2020会計年度の予算要求については、2019年3月11日に大統領の予算教書が公表されたが、使用済燃料管理等に係るDOEの予算要求資料については、概要資料のみが公表されていた。なお、DOEの予算要求に対して連邦議会では、上下両院でエネルギー長官を証人とした公聴会が開かれており、実質的に2020年度歳出法案の策定プロセスが開始されている。

DOE予算要求資料では、ユッカマウンテン許認可申請書の審査手続の再開及び中間貯蔵の体制を確立するために新設する「ユッカマウンテン及び中間貯蔵」プログラム(YMISP)について、2020会計年度に行う事項として、以下が示されている。

ユッカマウンテン(106,084千ドル(約120億円、1ドル=113円で換算)、2019会計年度要求額は110,000千ドル)4

  • ユッカマウンテン許認可手続への参加の支援
  • 高度に技術的・詳細な質問への対応のため、処分場の閉鎖前・閉鎖後の解析活動を実施
  • 訴訟対応として技術的・科学的・法的支援を提供
  • 争点の解決に係る成果を反映して許認可申請書及び関連文書を更新・維持
  • 許認可申請書の支援文書との一貫性等を確保
  • 証言書の準備・レビュー
  • 原子力規制委員会(NRC)の原子力安全・許認可委員会(ASLB)の裁決手続によるヒアリングにおけるDOE側の証人・証言の準備
  • 裁決手続での証拠開示手続の準備
  • 裁決手続での質問書への対応・準備
  • 裁決手続での動議その他法的手続の支援
  • 許認可手続の支援に必要な地質学的試料・施設の維持
  • 他の政府機関、地方政府、公衆等に対する効果的なコミュニケーション提供の義務を支援する包括的なコミュニケーション戦略構築の継続

中間貯蔵(9,916千ドル(約11億2,000万円)、2019会計年度要求額は10,000千ドル)5

  • 集中中間貯蔵の能力及び関連する輸送を開発・評価・取得するために必要な活動、マイルストーン、資源を含む計画の策定
  • 使用済燃料貯蔵及び輸送の能力の取得に向けた基盤開発の継続
  • 将来の使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物の輸送に備えるため、地域・州等の輸送当局との関係の維持
  • 物流上の要件や解析能力に対する最低限の支援の維持

また、DOEの高レベル放射性廃棄物処分関連の活動のうち、DOE原子力局(NE)の燃料サイクル研究開発プログラムの下の「使用済燃料処分等研究開発プログラム」(UNFD研究開発プログラム)については、2019会計年度予算要求 と同様に、高燃焼度燃料の性能の研究、多様な使用済燃料等を対象とした潜在的な代替処分オプションに関する国際共同研究に焦点を当てた活動を行うとした上で、前年度要求額の2分の1の5,000千ドル(約5億6,500万円)の予算が要求されている。なお、オバマ前政権がUNFD研究開発プログラムの中で行ってきたその他の活動、及び「統合放射性廃棄物管理システム」(IWMS) については、廃止が提案されている。ただし、従来はIWNSに含まれていた中間貯蔵及び輸送計画に関する活動については、新設された「ユッカマウンテン及び中間貯蔵」プログラムに移管されている。

連邦議会では、DOEの2020会計年度の予算要求に関する公聴会が開催されている。公聴会は、以下に示すとおりの日程で上下両院の関連委員会が開催したものであり、エネルギー長官が証人として出席して2020会計年度の予算要求について説明するとともに、各委員会の委員による質疑が行われた。エネルギー長官の証言書では、ユッカマウンテン許認可申請書の審査手続の再開及び中間貯蔵プログラムの開始に係るトランプ政権の意思が改めて表明されている。6

  • 2019年3月26日:下院歳出委員会エネルギー・水資源小委員会
  • 2019年3月27日:上院歳出委員会エネルギー・水資源小委員会
  • 2019年4月 2日:上院エネルギー・天然資源委員会

なお、上院エネルギー・天然資源委員会の公聴会では、ネバダ州選出のマスト上院議員が耐震評価問題などを採り上げてユッカマウンテン計画への強い反対を示した他、ネバダ州選出の下院議員3名は、下院歳出委員会エネルギー・水資源小委員会の委員長等に宛てた書簡で、ユッカマウンテンにおける高レベル放射性廃棄物処分を阻止するための条項等を歳出法案に盛り込むよう要請している。ネバダ州知事も、2019年4月2日のプレスリリースにおいて、ユッカマウンテン計画に対する反対の戦いを続けることを表明している。

【出典】

 

【2019年5月22日追記】

米国の連邦議会下院の歳出委員会は、2019年5月21日に開催した法案策定会合において、2020会計年度7 のエネルギー・水資源開発歳出法案(以下「歳出法案」という。)の草案を承認した。ユッカマウンテン処分場の許認可審査手続きの再開等のための予算については、エネルギー省(DOE)や原子力規制委員会(NRC)から要求されていたが、今回承認された歳出法案には含まれていない。

歳出法案に付随する下院歳出委員会報告書の草案では、DOEの高レベル放射性廃棄物処分関連の活動について、「使用済燃料処分等(UNFD)プログラム」の一般的な研究開発活動を継続するための予算として62,500千ドル(69億3,750万円、1ドル=111円で換算)が計上されているほか、「統合廃棄物管理貯蔵(IWMS、Integrated Waste Management Storage)」の予算として47,500千ドル(52億7,250万円)が計上されている。IWMS予算のうち25,000千ドル(27億7,500万円)は、使用済燃料が残された廃止措置済みの原子力発電所サイト等における準備活動を含め、地域的な輸送協定や輸送の調整を再開する「集中中間貯蔵プログラム(consolidated interim storage program)」の開始など、使用済燃料の中間貯蔵の活動のための予算とされている。

また、下院歳出委員会報告書の草案では、種々の核燃料サイクルや技術的なオプションのメリットと実現可能性についての評価を、全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)に指示している。本評価は、廃棄物の輸送・貯蔵・処分など燃料サイクルのすべての要素間の関係や、より広範な安全性・セキュリティ・核不拡散上の懸念について、説明するものとなるとしている。

一方、今回の歳出法案に計上されなかった「ユッカマウンテン及び中間貯蔵」プログラムの予算、及びユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可申請書の審査手続のための予算に関して、下院歳出委員会の法案策定会合では、歳出委員会エネルギー・水資源小委員会の少数党最上席議員(共和党)から、これらの予算を計上する修正案が提出されたが、25対27で否決された。

ネバダ州選出のタイタス下院議員からは、ユッカマウンテン許認可審査手続きを再開するための修正案が否決されたことを伝え、今後も連邦議会下院議長やネバダ州知事らとともに反対を続けていくことを表明するプレスリリースが発出されている。

なお、2019年5月21日に開催された下院歳出委員会の法案策定会合においては、技術的な事項に係る修正案等が承認されているが、これらの修正事項を反映し、法令番号を付した歳出法案は2019年5月22日時点で公表されていない.。

【出典】

 

【2019年6月24日追記】

米国の連邦議会下院は、2019年6月19日の本会議において、2020会計年度8 「労働省、保健福祉省、教育省、その他関連機関の歳出法案」(H.R.2740、以下「本歳出法案」という。)を、226対203で可決した。本歳出法案は、労働省等の2020会計年度の歳出法案(H.R.2740)に「エネルギー・水資源歳出法案」(H.R.2960)など、4つの歳出法案をまとめた「ミニバス法案」である。本歳出法案において高レベル放射性廃棄物管理に係る予算については、2019年5月21日に下院歳出委員会で承認された内容からの修正はなく、ユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可審査手続きの再開等のための予算は計上されていない。なお、本歳出法案に付随する委員会報告書は、2019年5月21日に下院歳出委員会で承認されたものとなっている。

本歳出法案の下院本会議における審議に向けては、ユッカマウンテン許認可審査手続きを再開するための予算を含めるような修正案も提出されたが、本会議で審議された本歳出法案には当該予算は含まれなかった。本歳出法案の下院本会議における審議については、下院議事運営委員会で承認された修正案のみが本会議で審議されることとなっていたが、ユッカマウンテン許認可審査手続きの再開に係る修正案は、事前に行われた議事運営委員会における投票において4対7で否決されていた。

ネバダ州選出の下院議員からは、ユッカマウンテン許認可審査手続きの再開のための予算が本歳出法案に計上されなかったことを評価し、今後もネバダ州における処分場建設には反対を続けていくことを表明するプレスリリースが発出されている。

【出典】

 

【2019年9月17日追記】

米国の連邦議会上院の歳出委員会は、2019年9月12日に、2020会計年度9 の「エネルギー・水資源開発歳出法案」(S.2470、以下「歳出法案」という。)を承認し、上院本会議に提出した。2020会計年度の歳出法案では、使用済燃料の中間貯蔵について、前年度に上院本会議に提出された2019会計年度の歳出法案(S.2975)と同様に、中間貯蔵施設のパイロットプログラムの実施等をエネルギー長官に命じる規定が置かれている。

なお、ユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可審査手続きの再開等のための予算については、エネルギー省(DOE)や原子力規制委員会(NRC)から要求されていたが、今回承認された2020会計年度の歳出法案には計上されていない。

2020会計年度の歳出法案に付随する「上院歳出委員会報告書」(S.Rept.116-102、以下「委員会報告書」という。)では、DOEの高レベル放射性廃棄物処分関連の活動について、「使用済燃料処分等(UNFD)プログラム」の一般的な研究開発活動を継続するための予算として27,500千ドル(30億5,250万円、1ドル=111円で換算)が計上されているほか、「統合廃棄物管理貯蔵(IWMS、Integrated Waste Management Storage)」の予算として22,500千ドル(24億9,750万円)が計上されている。IWMS予算のうち10,000千ドル(11億1,000万円)は、エネルギー長官が現行の権限内で、使用済燃料の中間貯蔵に係る民間事業者との契約などを締結するための予算とされている。

軍事起源のTRU廃棄物の地層処分場である廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)については、DOEの予算要求を上回る396,907千ドル(約440億5,670万円)が2020会計年度の歳出法案に計上されている。

2020会計年度の歳出法案に盛り込まれた中間貯蔵関連の条項では、2019会計年度の上院版の歳出法案(S.2975)と同様に、以下のような内容が規定されている。

集中中間貯蔵のパイロットプログラム(歳出法案(S.2470)第306条)

  • 使用済燃料等を中間貯蔵するため、1つまたは複数の連邦政府の集中貯蔵施設の許認可取得、建設、操業のためのパイロットプログラムを実施することをエネルギー長官に許可
  • エネルギー長官は、歳出法案の施行後120日以内に、集中貯蔵施設の建設許可取得や輸送等の協力協定についてのプロポーザルを公募
  • 集中貯蔵施設の立地決定前に、立地サイト周辺等での公聴会の開催、地元州知事、地方政府等との書面による同意協定の締結をエネルギー長官に義務付け
  • エネルギー長官は、上記プロポーザルの公募から120日以内に、推定費用、スケジュール等を含むパイロットプログラム計画を連邦議会に提出
  • 集中中間貯蔵のパイロットプログラム活動に係る資金の放射性廃棄物基金からの支出を許可

また、委員会報告書では、エネルギー長官に対して、以下の報告を連邦議会に行うように指示している。

  • 費用対効果が高く、短期間で実施可能な技術オプションなど、高レベル放射性廃棄物の処分及び使用済燃料管理に係る革新的なオプションについて、90日以内に報告
  • 全米科学アカデミー(NAS)と契約して、先進炉の廃棄物に係る包括的、独立的な研究を実施し、20カ月以内に報告
  • 放射性廃棄物処理に係る電磁技術の科学的基盤の評価や考え得る効果等について、180日以内に報告

【出典】

 

【2019年10月2日追記】

米国の連邦議会は2019年9月26日に、2020会計年度(2019年10月1日~2020年9月30日)のうち、2019年10月1日から2019年11月21日を対象とした継続歳出法案(H.R.4378)を可決し、継続歳出法案は2019年9月27日に大統領の署名を得て法律(Public Law No.116-59)として成立した。継続歳出法案(H.R.4378)は、連邦議会下院本会議では2019年9月19日に301対123で、連邦議会上院本会議では2019年9月26日に81対16で、それぞれ賛成多数で可決された。

今回成立した2020会計年度の継続歳出法(Public Law No.116-59)は、規定された期間について、前年度である2019会計年度の歳出法での予算と同じレベルでの歳出を認めるものである。エネルギー・水資源分野については、2019会計年度の歳出法として、ミニ包括歳出法(Public Law No.115-244)が制定されていた。継続歳出法による予算は、原則として前年度予算と同率で比例配分され、特段の規定が無い限り、前年度で未計上の事業・プログラム等の実施は認められない。

なお、2020会計年度の継続歳出法(Public Law No.116-59)では、ユッカマウンテン処分場、廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)、中間貯蔵施設等の関連を含め、放射性廃棄物の貯蔵・処分に関する特別な規定は無い。

【出典】

 

【2019年11月26日追記】

米国の連邦議会は2019年11月21日に、2020会計年度(2019年10月1日~2020年9月30日)のうち、2019年12月20日までを対象とした「追加的継続歳出法案」(H.R.3055)を可決し、本法案は2019年11月21日に、大統領の署名を得て法律(Public Law No.116-69)として成立した。2020会計年度の歳出予算については、2019年11月21日までを対象とした継続歳出法(H.R.4378)が2019年9月26日に成立していたが、今回、上下両院で可決された「追加的継続歳出法案」は、前回の継続歳出法で設定された継続予算の期限を2019年12月20日まで延長するものとなっている。

なお、今回成立した2020会計年度の「追加的継続歳出法」(Public Law No.116-69)では、ユッカマウンテン処分場関連、廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)関連、中間貯蔵施設関連を含め、放射性廃棄物の貯蔵・処分に関する特別な規定は無い。

【出典】

 

【2019年12月24日追記】

米国の連邦議会は、2019年12月19日に、2020会計年度10 のエネルギー・水資源開発分野を含む追加的包括歳出法案(H.R.1865、以下「歳出法案(H.R.1865)」という。)を可決し、2019年12月20日に大統領の署名を得て法律(Public Law No.116-94)として成立した。2020会計年度のエネルギー・水資源開発歳出法案については単独の法案として、連邦議会下院では2019年6月19日の本会議において可決されていたが、連邦議会上院では2019年9月12日に上院歳出委員会で承認されたのみで可決に至らず、年度が新しくなった2020会計年度の2019年10月からは継続予算が執行されていた。今回成立した歳出法案(H.R.1865)は、両院で超党派のミニ歳出法案11 として検討されていたものであり、2019年12月17日に下院本会議で、2019年12月19日には上院本会議で、それぞれ可決された。なお、詳細な予算額や指示事項などについては、法案付随の説明文書(Explanatory Statement、以下「付随説明文書」という。)で示されている。付随説明文書は、歳出法案と同じ効力を持つものとされている。

2020会計年度の歳出予算については、ユッカマウンテン処分場計画の再開のための予算がエネルギー省(DOE)及び原子力規制委員会(NRC)の予算要求に盛り込まれていたが、最終的に成立した歳出法案(H.R.1865)ではユッカマウンテン関連の予算は計上されていない。高レベル放射性廃棄物関連の予算としては、使用済燃料処分等(UNFD)研究開発プログラムとして、2019会計年度歳出予算 から微減の62,500千ドル(約67億5,000万円、1ドル=108円で換算)、「統合放射性廃棄物管理システム」(IWMS)として25,000千ドル(約27億円)を割り当てる歳出予算が計上されている。

現在、ニューメキシコ州で操業中の軍事起源のTRU廃棄物の地層処分場である廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)については、2019会計年度の歳出予算と同額の396,907千ドル(約428億6,600万円)が計上されている12

なお、歳出法案(H.R.1865)にユッカマウンテン計画再開のための予算が含まれなかったことについて、反対を表明しているネバダ州選出の連邦議会議員の多くからは、予算計上を阻止したことなどを伝えるプレスリリースが発出されている。

その他、付随説明文書では、放射性廃棄物管理に関連するものとして、以下の報告を行うことをエネルギー長官及び全米アカデミーに指示している。

  • エネルギー長官は、高レベル放射性廃棄物処分及び使用済燃料管理の革新的オプションについて、90日以内に報告を行うこと
    • 費用対効果が高く、短期で実施可能であり、サイト選定のステークホルダー関与を考慮した技術オプションを優先
  • エネルギー長官は、放射性廃棄物の電磁的技術による処理について、180日以内に報告を行うこと
    • 技術の科学的基盤の評価、放射性廃棄物及びその貯蔵に対して考え得る効果、原子力産業へのメリット、核セキュリティへの意義を含む
  • 全米アカデミーは、DOEと契約を締結し、さまざまな核燃料サイクル・技術オプションのメリットと可能性について、全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)による評価を実施し、180日以内に報告すること
    • 廃棄物輸送・貯蔵・処分などの燃料サイクルの全要素間の関連を考慮に入れて評価を行い、先進炉からの廃棄物の研究も実施

【出典】


  1. 米国における会計年度は、前年の10月1日から当年9月30日までの1年間となっており、今回対象となっている2020会計年度の予算は2019年10月1日からの1年間に対するものである。 []
  2. 米国における会計年度は、前年の10月1日から当年9月30日までの1年間となっており、今回対象となっている2020会計年度の予算は2019年10月1日からの1年間に対するものである。 []
  3. 米国における会計年度は、前年の10月1日から当年9月30日までの1年間となっており、今回対象となっている2020会計年度の予算は2019年10月1日からの1年間に対するものである。 []
  4. プログラム管理費用(19,600千ドル(約22億1,000万円))を含む []
  5. プログラム管理費用(3,400千ドル(約3億8,000万円))を含む []
  6. 上院環境・公共事業委員会では、2019年4月2日に、原子力規制委員会(NRC)の予算要求に係る公聴会が開催されている。 []
  7. 米国における会計年度は、前年の10月1日から当年9月30日までの1年間となっており、今回対象となっている2020会計年度の予算は2019年10月1日からの1年間に対するものである。 []
  8. 米国における会計年度は、前年の10月1日から当年9月30日までの1年間となっており、今回対象となっている2020会計年度の予算は2019年10月1日からの1年間に対するものである。 []
  9. 米国における会計年度は、前年の10月1日から当年9月30日までの1年間となっており、今回対象となっている2020会計年度の予算は2019年10月1日からの1年間に対するものである。 []
  10. 米国における会計年度は、前年の10月1日から当年9月30日までの1年間となっており、今回対象となっている2020会計年度の予算は2019年10月1日からの1年間に対するものである。 []
  11. H.R.1865は、8分野の2020会計年度歳出法案を統合したミニ包括歳出法案として連邦議会両院で審議された。8分野の歳出法案のみの統合であることから、通常の包括(Omnibus)歳出法案に対し、ミニ包括(Minibus)歳出法案と呼ばれている。 []
  12. 廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)については、DOE予算要求書では保障措置・セキュリティ予算の一部として別途6,692千ドル(約7億2,270万円)が要求されていたが、付随説明文書では保障措置・セキュリティ予算の内訳が明示されていないため、保障措置・セキュリティ予算を除くWIPP関連の歳出予算額を示している。 []

英国政府は2018年12月19日、2014年7月の白書『地層処分の実施-高レベル放射性廃棄物等の長期管理に向けた枠組み』(以下「2014年白書」という)に代わるイングランドの政策文書である『地層処分の実施-地域社会との協働:放射性廃棄物の長期管理』(以下「2018年政策文書」という)を公表するとともに、地層処分事業の実施主体である放射性廃棄物管理会社(RWM社)による地層処分施設(GDF)の新たなサイト選定プロセスが開始されたことを公表した。一方、2018年政策文書の公表に併せてRWM社は、2014年白書に基づいて取り組んでいた英国全土(スコットランドを除く)を対象とした「地質学的スクリーニング」(National geological screening exercise)の結果を公表するとともに、今後のサイト選定プロセスを通じて地域社会と協働して進めていく「サイト評価方法案」に関する協議文書を公表した。サイト評価方法案に対する意見募集は、2019年3月31日まで行われる。

■サイト評価方法案に関する協議文書で提案されたサイト選定で考慮する立地要因と評価項目

図:サイト選定プロセスの全体像

英国政府は、2018年政策文書で新たなサイト選定プロセスとして、今後約5年間を「サイト評価期間」(site evaluation)とし、複数の「調査エリア」(Search Area)を探すことを計画に盛り込んだ。RWM社は、ボランタリーなワーキンググループ(下記参照)との初期対話において、今回提示した既存の地質情報に基づく地質学的スクリーニングの結果を活用しつつ、自治体組織が参加する「コミュニティパートナーシップ」(下記参照)の設立を目指すとしている。今回RWM社が提示した協議文書では、地層処分施設の立地要因(Siting Factor)として、①安全、②コミュニティ、③環境、④工学的成立性、⑤輸送、⑥コストの6つを挙げている。このうち、2番目の「コミュニティ」では、「コミュニティの福祉」と「立地コミュニティの将来ビジョン」を評価項目(Evaluation consideration)として位置づけている。6つの立地要因間での序列や重み付けはなく、定性的な評価方式を採用するとしている。

■新たなサイト選定プロセス:初期対話とワーキンググループの設置

2018年政策文書で設定されたサイト選定プロセスでは、地層処分施設(GDF)の設置に関心を示す者、または設置候補エリアを提案したい者であれば、RWM社との初期対話(initial discussion)を開始できる。初期対話の関心表明は、必ずしも自治体当局である必要はなく、土地所有者や企業、団体、個人であっても可能であるとしている。初期対話において、GDF設置に向けた更なる検討を進めていくことに合意した場合には、当該地域の自治体組織(市議会、州議会など)に報告して、コミュニティ全体での協議に発展させることになる。これを目的として、RWM社、関心表明者の他、独立したグループ長とファシリテータを加えた準備組織「ワーキンググループ」を設立することを2018年政策文書において取り決めている。英国政府は、ワーキンググループに自治体組織が入ることが望ましいとする見解を示しているが、必須条件とはしていない。

ワーキンググループは、その設置を当該地域の自治体組織に報告した後、RWM社がGDF設置の潜在的な適合性を確認する「調査エリア」の特定作業を進める。調査エリアは、自治体組織の選挙区を最小単位にするように設定するとしており、これにより、コミュニティや自治体組織等の協議への参加可能者が特定されるとしている。

■コミュニティパートナーシップの設立

英国政府は、「調査エリア」の地理的範囲はRWM社の協議文書「サイト評価方法案」で定めた立地要因に基づく検討が進むに従って変化するものであるとしており、ワーキンググループの活動によって調査エリアの範囲が定まっていくにつれて「コミュニティパートナーシップ」の範囲に収斂していくと見込んでいる。2018年政策文書では、「コミュニティパートナーシップ」を当該コミュニティにおける情報共有、地層処分・サイト選定プロセス・地域の便益に関する対話と理解を促進するために設置されると位置づけている。コミュニティパートナーシップの設立には、調査エリアにある自治体組織の合意が必須であり、同パートナーシップの構成メンバーには、少なくとも一つの自治体組織が参画する必要がある。英国政府は、同パートナーシップを形成するコミュニティに対し、経済振興、環境・福祉向上を目的とするプロジェクトに限定した形で、年間最大100万ポンド(1億4,900万円)、地下深部ボーリング調査の実施に至った際には年間最大250万ポンド(約3億7,300万円)の資金提供を行うとしている。

■サイト選定プロセスにおける住民支持の調査・確認の義務と撤退権に関する取り決め

英国政府は、今回の2018年政策文書の公表に先立って、2018年1月25日から4月19日まで、地域社会との協働プロセスに関する公衆協議を実施した 。この公衆協議を通じて寄せられた意見に基づき、英国政府は、サイト選定プロセスにおいて、自治体組織(市議会、州議会など)が果たす重要な役割である「住民支持の調査・確認(test)」と「撤退権」に関する条件を明確にしている。

英国では、地層処分施設及びその候補サイトを評価するために必要な地上からのボーリング調査を「国家的に重要な社会基盤プロジェクト」(NSIP)と位置づけており、地上からのボーリング調査の実施前、及び地層処分施設(GDF)の建設前において、計画審査庁からの勧告を受けた担当大臣による開発同意令(Development Consent Order ,DCO)が必要となっている。コミュニティパートナーシップに参画する自治体組織は、遅くともRWM社が地層処分場の建設許可申請を行う前までに、地層処分施設(GDF)の設置受け入れに関して、住民支持の調査・確認(test)を実施する必要がある。また、サイト選定プロセスにおいては、住民支持の調査・確認が実施される前であれば、自治体組織はサイト選定プロセスから撤退する権利を有することが認識されている。

英国政府は2018年政策文書において、住民支持の調査・確認を行う時期を決定する権限は、コミュニティパートナーシップに参画する自治体組織が有するとしつつ、コミュニティパートナーシップに複数の自治体組織が参画している場合には、全ての自治体組織がその実施時期に合意しなければならないことを明確にした。また、自治体組織がサイト選定プロセスから撤退する権利を行使する際には、当該コミュニティパートナーシップに参画している全ての自治体組織が撤退に合意する必要があることを明確にしている。

【出典】

 

【2019年6月7日追記】

英国政府の諮問機関である放射性廃棄物管理委員会(CoRWM)は、2019年6月4日に、地層処分事業の実施主体である放射性廃棄物管理会社(RWM社)による「サイト評価方法案」への意見書を公表した。意見書においてCoRWMは、RWM社が示した地層処分施設(GDF)の立地要因の一つである「コスト」については、建設コストがGDFの安全性やサイト選定プロセスを阻害することにならないことを条件とすべきである点を指摘している。また、サイト評価方法の説明文書が、コミュニティとの初期対話において役立つものとなるよう、次のような意見を示した。

  • 現時点ではおそらく、複数の調査エリア内から、サイトを絞り込む方法を詳しく説明するのは時期尚早であるが、サイトを見出す目的で、調査エリア内を地質条件の違いで色分け(differentiate)する方法を説明しておくことは有益と考えられる。その作業でどのような種類の情報が重み付けされるかを人々が考えることができれば、各エリアがどのように比較判断を受ける可能性があるかを理解する上で役立つ情報となる。同様に、サイト選定プロセスの各段階において検討されるサイト数の目安、並びに次段階に進むサイト数を絞る観点から、いつ比較が行われるのかを解説しておくことも有益と考えられる。
  • 潜在的コミュニティがサイト選定プロセスに参加する時期は、コミュニティによって異なるうえ、参加後の進み方を左右する個別の事情を抱えている。もし、後から参加した潜在的コミュニティが先行するコミュニティに対して引け目を感じたり、十分な情報を得ることなく除外される可能性があると考えるようなことがあれば、立地に適したサイトが初めから除外されるおそれがある。したがって、プロセスの全体的な進行がどのように管理されるのかに関する情報が重要である。
  • 地層処分施設(GDF)の立地要因には「地質」(geology)が含まれていないが、サイト評価方法案において、GDFにとっての地質の重要性を概略的に説明しておくことは有益と考えられる。同様に、現行の英国政府の政策である「地域社会との協働」に関する情報やサイト選定プロセスの全体的な背景情報を盛り込むことも有益と考えられる。
  • RWM社のサイト評価方法案では、非常に技術的な表現が散見される。文書の理解を助け、親しみやすくするだけでなく、人々の関与を後押しするものとするため、人間味のあるものとする(humanising)ことを考えるべきである。また、地層処分施設(GDF)のサイト評価の方法について、他の原子力施設やインフラプロジェクトの場合との比較分析(ベンチマーク)の情報が役立つと考えられる。

【出典】

カナダ原子力安全委員会(CNSC)は、2018年12月14日、放射性廃棄物管理及び廃止措置に関する規制の枠組みを示した規制文書「REGDOC-2.11 廃棄物管理 カナダにおける放射性廃棄物管理及び廃止措置の枠組み」(以下「REGDOC-2.11」という。)を公表した。REGDOC-2.11は、放射性廃棄物管理及び廃止措置の規制に対するCNSCの取り組みの基本的考え方と原則を示す文書であり、放射性廃棄物管理の国の枠組み、放射性廃棄物管理及び廃止措置に関するCNSCの規制の枠組みと監督、国際的義務などが記されている。

CNSCは、原子力産業に対する規制に関する情報を、事業者及びカナダ国民に明瞭かつ論理的な形で提供することを目的として、規制文書の再編成を進めている。従来は、規制文書の位置づけや拘束力に応じて、規制方針(P)、規制基準(S)、規制指針(G)、規制通知(N)の4シリーズに区分していたが、これを規制対象分野で区分した階層番号形式に変更し、規制文書へのアクセス性を改善している。

廃棄物管理に関する規制文書REGDOC-2.11シリーズは、今回公表された最上位の文書のほか、下位の3巻の文書で構成されている。

文書名

策定状況

備考

REGDOC-2.11 廃棄物管理 カナダにおける放射性廃棄物管理及び廃止措置の枠組み

2018年12月発行

 

REGDOC-2.11.1 廃棄物管理 第1巻:放射性廃棄物の管理

未策定

 

REGDOC-2.11.1 廃棄物管理 第2巻:ウラン鉱山廃棄物の岩石及び鉱さいの管理

2018年11月発行

従来の「ウラン鉱山廃棄物の岩石及び鉱さいの管理 RD/GD-370」及び「放射性廃棄物の管理 規制方針P-290」を置き換え

REGDOC-2.11.1 廃棄物管理 第3巻:放射性廃棄物管理の長期安全性の評価

2018年5月発行

従来の「放射性廃棄物管理の長期安全性の評価 規制指針G-320」及び「放射性廃棄物の管理 規制方針P-290」を置き換え

CNSCの規制文書のREGDOC-2.11シリーズへの再編では、従来の「規制方針P-290 放射性廃棄物の管理」(2004年)及び「規制指針G-320 放射性廃棄物管理の長期安全性の評価」(2006年)は、形式的な変更はされているものの、内容的な変更はされずに取り込まれている。

なお、CNSCは別途の規制文書として、「REGDOC-1.2.1地層処分場のサイト特性調査に関するガイダンス」の策定に向けた取り組みを進めており、2018年10月19日にREGDOC-1.2.1の案を公表し、2018年12月17日を期限として公衆からの意見募集を行っている

【出典】

 

【2019年5月28日追記】

カナダ原子力安全委員会(CNSC)は、2019年5月24日、規制文書「REGDOC-2.11.1 廃棄物管理 第3巻:放射性廃棄物の長期管理のためのセーフティケース」の案を公表し、2019年8月30日を期限として公衆からの意見募集を開始した。本規制文書案は、処分場の閉鎖後長期における処分場性能(performance)や影響の評価に関して、許認可申請者・取得者が作成するセーフティケース及びその主体となる安全評価に係る要件やガイダンスを示すものである。本規制文書案でセーフティケースとは、処分場が安全であり、すべての適用される規制要件を満足することを立証する論拠と証拠を統合的に集めたもの(integrated collection)と定義している。なお、現行のREGDOC-2.11.1第3巻の文書名は「放射性廃棄物管理の長期安全性の評価」であるが、今回公表された規制文書案は、内容を全面的に刷新したものとなっている。

【出典】

スイスの連邦評議会1 は、2018年11月21日の閣議において特別計画「地層処分場」(以下「特別計画」という)に基づくサイト選定手続について、サイト選定第2段階の成果報告書を承認したことにより、サイト選定第2段階は終了し、サイト選定第3段階が開始されることとなった。2011年12月から開始されたサイト選定第2段階においては、6つの地質学的候補エリアが検討され、このうち、「ジュラ東部」「チューリッヒ北東部」「北部レゲレン」の3つをサイト選定第3段階に進む候補とした。

「サイト選定第2段階で確定した地質学的候補エリア」(NAGRAウェブサイト」、2018年11月22日を元に原環センターが作成)

■サイト選定第3段階開始に向けた連邦評議会の決定事項

連邦評議会は、処分実施主体である放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)の提案、連邦原子力安全検査局(ENSI)及び原子力安全委員会(KNS)の見解、意見聴取の結果を踏まえて、サイト選定第3段階に向けて、以下の事項を決定した。

  • サイト選定第3段階では、高レベル放射性廃棄物及び低中レベル放射性廃棄物の地層処分場について、地質学的候補エリア「ジュラ東部」「北部レゲレン」「チューリッヒ北東部」を対象として詳細調査を実施する。
  • 地質学的候補エリア「ジュラ・ジュートフス」「ジュートランデン」「ヴェレンベルク」は予備候補として留保する。
  • NAGRAは、高レベル放射性廃棄物の処分場と低中レベル放射性廃棄物の処分場を同じ地質学的候補エリアに建設する場合の長所と短所を検討する。
  • 各地質学的候補エリアにおいて検討する地上施設の設置区域は、JO-3+(ジュラ東部)、NL-2またはNL-6(北部レゲレン)、ZNO-6b(チューリッヒ北東部)とする。
  • NAGRAは、上記の地上施設の設置区域から離れた場所に設置する換気用立坑と掘削土砂輸送用の建設立坑について提案し、処分場の建設段階と操業段階における活動範囲、地上インフラの外観デザインなどについて、サイト地域の要望を考慮しつつ、特別計画の目標と環境保護が最良な形で達成されるように最適化すべきである。このため、NAGRAは、サイト地域2 を含む州や自治体当局、市民で構成される地域会議との協働のもと、ガラス固化体のオーバーパック等を処分場の地上施設ではなく、サイト地域外で行う可能性について検討することを認める。

なお、サイト選定第2段階では、地上施設の設置区域として、廃棄体の製作施設を設置可能な場所を検討してきているが、チューリッヒ北東部の地域会議から、廃棄体の製作をサイト地域外で実施することの長所及び短所を説明して欲しいとの要望が出されており、今回の連邦評議会の決定は、このような地域会議の意見を反映したものとなっている。

■サイト選定第2段階での取組

サイト選定第2段階では、サイト選定第1段階(2008年~2011年)で選定された6つの地質学的候補エリア(ただし、高レベル放射性廃棄物用処分場の地質学的候補エリアは3カ所)から、高レベル放射性廃棄物用処分場、低中レベル放射性廃棄物用処分場について、それぞれ最低2カ所の候補を選定する取組が行われた。

2015年1月にNAGRAは、地層処分場のサイト選定第2段階での絞り込み結果として、「チューリッヒ北東部」及び「ジュラ東部」の2つを優先候補として第3段階での詳細調査対象とすることを提案した。しかし、規制機関である連邦原子力安全検査局(ENSI)が2016年12月に、NAGRAが予備候補として留保した「北部レゲレン」について、北部スイスの地質学的データが十分とは言えない中で、NAGRAが示した想定が現在の科学技術的知見に照らして過度に保守的であると判断し、同エリアも引き続き優先候補として検討すべきとの見解を示し、諮問機関である原子力安全委員会(KNS)もこれを支持した

サイト選定第2段階では、6つの地質学的候補エリアそれぞれに、関係する州や自治体当局や個人が参加する地域会議が設置され、NAGRAがこの地域会議との協働により、各エリアにおける処分場地上施設の設置区域を特定する取組も行われた。また、NAGRAによる安全上の比較評価に加え、連邦エネルギー庁(BFE)により、地層処分場が与える社会影響・経済影響・環境影響に関する調査も行われた

このような取組を受けて、サイト選定手続きを監督する連邦エネルギー庁(BFE)が2017年11月に公表した第2段階の成果報告書草案では、「チューリッヒ北東部」「ジュラ東部」「北部レゲレン」を優先候補とし、同草案は2017年11月22日から2018年3月9日までの約3か月にわたって意見聴取にかけられた。意見聴取では、個人・組織から約1,550件の意見が提出され、うち431件がスイス、1,120件がドイツ、3件がオーストリアから寄せられたものであった。NAGRAも、これら3つのエリアがサイト選定第3段階で引き続き検討対象となることを想定して三次元弾性波探査を先行実施するととともに、サイト選定第3段階で実施されるボーリング調査に向けて、ボーリング地点の特定と許可申請などの準備作業を進めてきた

■今後の予定

サイト選定第3段階が開始されたことを受け、今後NAGRAは、2019年初頭から順次、必要な許可が発給された地点について、3つの地質学的候補エリアにおけるボーリング調査を実施する。NAGRAはこれら詳細調査を踏まえてサイトの比較を行い、最終的なサイト候補を提案し、2024年末までに連邦エネルギー庁(BFE)に対して概要承認を申請する。サイト選定プロセスを監督するBFEは、連邦評議会による概要承認の決定を2030年頃としている。

なお、サイト選定第3段階では、NAGRAと関係地域との間で、地上施設、交付金・補償金など地域開発関連、安全性の問題等に関する具体的な交渉が行われる。また、連邦エネルギー庁(BFE)が社会経済影響に関する詳細調査を実施する。地質学的候補エリア「ジュラ東部」「チューリッヒ北東部」「北部レゲレン」では2018年内に、サイト選定第2段階で設置された地域会議を、第3段階における公衆参加の機能と役割に合わせて再編成し、規約変更や代表者の選定等を実施する予定である。

 

 

【出典】


  1. 日本の内閣に相当 []
  2. サイト選定第3段階におけるサイト地域は、地上施設、地下施設、地上・地下のインフラの一部または全てが立地する「インフラ立地自治体」と「その他関係自治体」で構成される。 []

英国の原子力安全規制機関である原子力規制局(ONR)とイングランドを所管する環境規制機関(EA)(以下、両機関を合わせて「規制機関」という。)は、2018年11月15日に、放射性廃棄物管理会社(RWM社)が作成した地層処分施設の一般的な条件における処分システム・セーフティケース(gDSSC)の2016年版(以下「2016年版gDSSC」という。)に対する評価報告書を公表した。2016年版gDSSCは、地層処分施設への放射性廃棄物の輸送、地層処分施設の建設・操業、地層処分施設の閉鎖後という3つの段階に分けて、放射性廃棄物を安全に処分できることを立証する目的で作成されている(下記コラムを参照)。gDSSCは許可申請文書の一部となるものではないが、規制機関とRWM社の協定のもと、RWM社の要請に基づいてレビューが実施されている。なお、同様なレビューは、RWM社が取りまとめた2010年版gDSSCに対しても実施されている

今回の評価報告書において規制機関は、2016年版gDSSCが前回の2010年版と比べて大幅に改善していると評価する一方、サイト固有の処分施設が設計されなければ十分な評価はできないとしており、今後の包括的なサイト固有のセーフティケースの作成に向けて、多くの作業が必要であると指摘している。また、規制機関は、以下に示す環境セーフティケースに関する指摘を含め、2016年版gDSSC全体を対象として38項目の改善点を指摘している。

  • 地層処分施設の操業期間(建設、操業、閉鎖及び廃止措置を含む)を対象とした環境安全評価において、全ての潜在的な環境影響を網羅していない。また、現段階では、地層処分施設の操業期間と閉鎖後を個別に評価しても構わないが、2つの評価間の整合性を保つように改善すべきである。
  • 処分施設閉鎖後のニアフィールドにおけるガスの発生量や移行経路、人間侵入の評価方法を更に開発する必要がある。
  • 将来的に作成するサイト固有の環境セーフティケースでは、地層処分施設の安全性をバランスの取れた、偏りのない観点で示すことが期待される。一般的な条件における環境セーフティケースでは、地層処分施設の操業時及び閉鎖後の長期にわたって環境安全を確保できる証拠を示しているが、今後、環境安全の確保のため、必要な作業に関する重要な前提条件の存在や不確実性について、十分に説明されていない。
  • 回収可能性のアプローチを明確にし、廃棄物パッケージの回収を実現するために必要な研究を特定すべきである。
  • 回収可能性を維持したままでも、地層処分施設のセキュリティ、保障措置、操業安全及び閉鎖後安全が確保されることを立証するために、回収可能性を維持するために必要となる条件を操業セーフティケース(OSC)に含めるようにすべきである。

なお、英国の規制機関は、現時点では廃棄物パッケージの回収可能性に関する規制要件を定めていないものの、英国政府は2014年に公表したサイト選定プロセス等を示した白書『地層処分の実施-高レベル放射性廃棄物等の長期管理に向けた枠組み』において、廃棄物パッケージを回収する確固たる理由がある場合には、廃棄物パッケージの回収を行う余地があるとしている。そのため、RWM社は、廃棄物パッケージの回収が必要となる万一の事態に備えて、回収可能性の技術的なオプションを排除しないような地層処分施設の設計を行うという意向である。

(2017年8月9日の速報より再掲)

2016年版gDSSC の目的と構成

一般的な条件でのセーフティケース(gDSSC)は、①gDSSCを構成する文書全体の構成、目的、主要成果を示した概要報告書(Overview)、②地層処分施設への放射性廃棄物の輸送、地層処分施設の建設・操業、地層処分施設の閉鎖後という3つの段階におけるセーフティケース報告書(Safety Cases)、③3つのセーフティケースの根拠となる評価報告書(Assessments)、④評価のために利用された基礎情報文書(System Information)で構成されている(下図参照)。

2016年gDSSCの文書校正

図:2016年gDSSCの文書構成

<2016年版gDSSCの目的>

  • 放射性廃棄物を安全に処分できることを立証する
  • 規制機関及び廃棄物発生者や原子力廃止措置機関(NDA)のようなステークホルダーとの協議に利用できる
  • 放射性廃棄物管理会社(RWM社)が廃棄物発生者に対して、廃棄物パッケージに関するアドバイスの根拠となること、及び廃棄物パッケージの処分可能性評価のための基礎情報となること
  • 地層処分施設の受け入れに関心のある自治体(コミュニティ)に情報提供を行うことで、サイト選定プロセスを支援する
  • 研究開発が必要な分野を特定し、RWM社の科学技術プラン3  の策定に資する
  • 地層処分施設の開発における明確な処分概念と設計に関する情報を提供し、サイト選定プロセスの早期段階において、潜在的な候補サイトの適合性を評価するための基礎情報となること
  • サイト固有の設計及びセーフティケースの開発を支援する情報となること

【出典】
• 英国政府ウェブサイト、Joint regulators’ assessment of the 2016 generic Disposal System Safety Case、2018年11月15日、https://www.gov.uk/government/publications/joint-regulators-assessment-of-the-2016-generic-disposal-system-safety-case
• 原子力規制局(ONR)及びイングランドの環境規制機関(EA)、Pre-application advice and scrutiny of Radioactive Waste Management Limited: Joint regulators’ assessment of the 2016 generic Disposal System Safety Case、2018年11月15日、https://assets.publishing.service.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/756205/Joint_regulators__assessment_of_the_2016_generic_Disposal_System_Safety_Case.pdf