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英国政府は2018年1月25日に、地層処分施設(GDF)に関する地域との協働プロセス案(イングランドと北アイルランドが対象)の協議文書を公開し、同日より2018年4月19日まで意見募集を行うことを公表した。また、ウェールズ政府も同日、ウェールズにおけるGDF設置に関する地域との協働プロセス案についての協議文書を公開し、同日より2018年4月20日まで意見募集を行うことを公表した。今回の協議文書において英国政府は、地層処分事業の実施主体である放射性廃棄物管理会社(RWM社)、GDFの受入れに関心を持つ地域と、その地域を内部に含む自治体議会等の複数の地方自治体との三者が係わり合う協働プロセスに関する提案を示している。

英国政府は現在、2014年7月の白書『地層処分の実施-高レベル放射性廃棄物等の長期管理に向けた枠組み』(以下「2014年白書」という)に沿って、地層処分施設のサイト選定プロセスの初期活動を進めている。英国政府は、サイト選定プロセスを進める上で「地域(コミュニティ)」に係わる問題を最も難しいものと位置づけており、地域との協働プロセスの策定に向けて、2015年から「地域の代表のための作業グループ」(Community Representation Working Group、CRWG)を設置して検討を進めてきた。また、2015年12月から2016年3月にかけて、科学コミュニケーションの促進を目的とした英国政府のプログラム「サイエンスワイズ」(Sciencewise Expert Resource Centre)を活用して、地層処分と地域との協働に関する公衆対話を実施していた。今回の協議文書は、これらの成果を踏まえて作成されたものである。

■新たなサイト選定プロセスにおける「地域」の捉え方

今回の協議文書では、サイト選定プロセスとは、地層処分施設の立地の可能性がある「地域(エリア)」を領域内に含む「地域(コミュニティ)」の特定を目指したアプローチであり、その開始から約20年にわたる時間経過と共に、「エリア」と「コミュニティ」の両方が、それらの数と大きさの面で狭められていく変化の過程として捉えられている。こうした認識のもと英国政府は、サイト選定プロセス初期の「調査エリア」を、「エリア」と「コミュニティ」の範囲が一致するように、選挙区を最小単位とし、地層処分施設の開発によって影響を受ける選挙区を含む全ての自治体を包括する形で定義するという考え方を提示している1 。また、サイト選定プロセスの途中段階では、調査エリアを包括する立地コミュニティを構成する自治体メンバーも変化することになる。そうした立地コミュニティは、サイト選定プロセスの開始当初から必ずしも存在しているとは限らないため、サイト選定プロセスを通じて発見あるいは新たに創設されることになる。地層処分施設の立地に関して意思決定する資格をもつ1つの<潜在的立地コミュニティ>が明らかになるまでは、当該エリアでの立地プロセスの継続に関する支持を調査・確認(test)する対象住民の範囲を明らかにできない。このような理由から、英国政府は、潜在的立地コミュニティが明確になるまでは、サイト選定プロセスに関係する個々の自治体が地層処分施設の受け入れ可否に関する意思決定を行う必要性に迫られることはないとしている。このことは、サイト選定プロセスへの参加にあたって、自治体が関心表明を行う必要はないことを意味している。

■新たなサイト選定プロセスにおけるパートナーシップ

今回の協議文書では、今後のサイト選定プロセスの開始にあたり、最初に地層処分の実施主体である放射性廃棄物管理会社(RWM社)が、RWM社と協働する「コミュニティパートナーシップ」の構築を目的として、事前に公衆や様々なステークホルダーと対話を行う「関与形成チーム」(formative engagement team)を組織することとしている。このチームの構成員として、RWM社の職員のほか、独立したチーム長、ファシリテーター、別途提案される「調査エリア」に含まれる自治体組織(市議会、州議会など)、地元企業パートナーシップの代表2 が挙げられている。英国政府は、関与形成チームに地元企業パートナーシップが参画することによって、当該コミュニティにおける社会経済や産業基盤に関する影響に関する情報が入手できることを期待している。

 RWM社と協働するコミュニティパートナーシップの構築は、その活動方法、参加者の役割、意思決定方法などを定めた合意書に対する署名をもって有効になるものとしている。また、英国政府は、この時点から当該コミュニティに対し、経済振興、環境・福祉向上を目的とするプロジェクトに限定した形で、年間最大100万ポンド(1ポンド=149円として、1億4,900万円)、また、地下深部ボーリング調査の実施に至った際には年間最大250ポンド(約3億7,300万円)の資金提供を行うとしている。さらに、この資金提供は、RWM社を通じて行うとの考えを提示している。なお、この資金提供の給付申請を行う資格は、当該コミュニティに属する個人も可能としており、コミュニティパートナーシップとRWM社で構成される投資パネルの審査を受けることを条件としている。

■今後の予定

今後、英国政府は、公衆協議で得られた意見を検討した上で、協議の回答と最終的な政策を公表するとしている。また、RWM社は、英国政府が示す地域との協働プロセスに関する政策を、実際の地層処分施設のサイト選定プロセスの中で、どのように連携させるかについて、より詳細なガイダンスを作成するとしている。

 

【出典】

 

【2018年5月14日追記】

英国政府の諮問機関である放射性廃棄物管理委員会(CoRWM)は、2018427日に、地層処分施設に関する地域との協働プロセス案への意見書を公表した。意見書においてCoRWMは、英国政府が公衆協議文書で意見を求めていた事項に関して、次のような意見を述べている。

■関与形成チーム(formative engagement team)の活用

本協働プロセス案では、サイト選定プロセスにおいて、地層処分の実施主体である放射性廃棄物管理会社(RWM社)が、RWM社と協働する「コミュニティパートナーシップ」の構築を目的として、事前に公衆や様々なステークホルダーと対話を行う「関与形成チーム」を組織することになっている。しかし、CoRWMは、本協働プロセス案に示された説明だけでは、この関与形成の意味を公衆が正確に理解することは困難であると考えている。本協働プロセス案において、関与形成に関するガイダンス文書は、今後用意されると説明されているものの、その文書をRWM社が作成し、RWM社が関与形成チームに参加する場合には、関与形成が偏ったものになると見られる可能性があるとCoRWMは指摘している。

■協働するコミュニティパートナーシップの構築方法

CoRWMは、RWM社と協働するコミュニティパートナーシップの構築はできるだけ柔軟であるべきと考えているが、本協働プロセス案では選挙区を有する自治体組織(市議会、州議会など)の役割が強調され過ぎているとの認識を示している。また、コミュニティパートナーシップを形成するという目的において、選挙で選ばれた代表で構成される行政機構は重要であるが、そうした行政機構がコミュニティパートナーシップの構築を主導する役割を担う必要があるとは必ずしも言えないとしている。さらに、関与形成の段階においては、潜在的なホストコミュニティのメンバーと開発者としてのRWM社の間に、知識の不均衡が存在するのは避けられないため、政治的な意欲が強すぎると、問題を招く可能性があると指摘している。このためCoRWMは、パートナーシップのメンバー間の交流や情報伝達のペースが、弱者と見なされるコミュニティメンバーの意思で進むような配慮がされるべきであるとの意見を示している。

【出典】

• 英国政府ウェブサイト、CoRWM Consultation Response to BEIS and DAERA on ‘Working With Communities: Implementing Geological Disposal’、2018年4月27日、https://www.gov.uk/government/publications/corwm-consultation-response-to-beis-and-daera-on-working-with-communities-implementing-geological-disposal


  1. 「調査エリア」の定義は、イングランドと北アイルランド、ウェールズのそれぞれの地方自治制度に依存することとなる。 []
  2. 地元企業パートナーシップ(Local enterprise partnerships)とは、イングランドの地方行政組織と地元企業間が自発的に参加するパートナーシップであり、地元経済の発展や雇用創出に関する政策決定をサポートする役割を担っている。この制度は2011年当時のビジネス・イノベーション・技能省(Department for Business, Innovation and Skills)の政策によって導入された。 []

英国政府は2018年1月25日に、イングランド1 における地層処分施設(GDF)等に関する国家政策声明書(National Policy Statement, NPS)案及びその公衆協議文書を公開し、同日より2018年4月19日まで意見募集を行うことを公表した。英国政府は、現在、2014年7月の白書『地層処分の実施-高レベル放射性廃棄物等の長期管理に向けた枠組み』(以下「2014年白書」という)に沿って、地層処分施設のサイト選定プロセスの初期活動を進めており、国家政策声明書(NPS)の策定をその主要目標の一つと位置づけている。

英国政府は、2014年白書において、2008年計画法を改正し、地層処分施設及びその候補サイトを評価するために必要な地上からのボーリング調査を「国家的に重要な社会基盤プロジェクト」(NSIP)として定義する意向を表明していた。この法改正は2015年3月に完了しており、地上からのボーリング調査の実施前、及び地層処分施設(GDF)の建設前において、計画審査庁からの勧告を受けた担当大臣による開発同意令(Development Consent Order ,DCO)が必要となっている。国家政策声明書(NPS)は、それらの開発同意令(DCO)の発給審査の基礎文書となるものであり、今後実施されるサイト選定プロセスにおいて、地域における地層処分事業基盤(インフラ)に関する開発合意の認可に関する法的な枠組みを提供するものとなる。

英国政府は、国家政策声明書(NPS)の策定に向けた準備として、2015年8月に、地層処分事業に関する持続可能性評価(AoS)と生息環境規制評価(HRA)の実施内容案を公表して、意見募集を行っていた。今回公表された国家政策声明書(NPS)案には、2008年計画法(2015年3月改正)に基づいて実施された持続可能性評価(AoS)と生息環境規制評価(HRA)の評価結果が含まれている。

今後の予定

2008年計画法(2015年3月改正)に基づいて、国家政策声明書(NPS)案は英国議会による審議・承認を受けることになっている。今回の地層処分施設等に関するNPS案は、2018年1月25日から約30週間にわたって、英国議会で審議(2018年8月下旬まで)される予定とされている。また、今回の2018年4月19日を期限とする意見募集で寄せられた意見に対する英国政府の回答文書も英国議会に提出されることになっている。

 

【出典】

 

【2018年5月11日追記】

英国政府の諮問機関である放射性廃棄物管理委員会(CoRWM)は、2018年4月27日に、地層処分施設(GDF)に関する国家政策声明書(NPS)案への意見書を公表した。意見書においてCoRWMは、英国政府がNPS案及びその公衆協議文書で意見を求めた点に対して、概ね肯定的な意見を示す一方で、次のような意見を述べている。

  • CoRWMは、これまでに科学的な観点から、高レベル放射性廃棄物等の管理方針として、地層処分以外の合理的な代替案は存在しないという判断をしている。しかし、高レベル放射性廃棄物等の管理方針については、現状では少なくとも、①スコットランドが採用している地表近くに設置した施設での長期管理と、②最終処分するのではなく廃棄物の回収可能性を考慮した地層処分との「2つの管理方針」についての検討が他所で行われているため、国家政策声明書(NPS)においても、これら2つの管理方針の代替案についても評価対象とする必要がある。
  • CoRWMは、持続可能性評価(AoS)において、これら2つの管理方針の代替案について、実施した場合に生じる可能性のある重大な影響の評価結果を示すこと、また、NPSが正式に承認された後のプロセスにおいて、2つの管理方針の代替案と比較した結果として、地層処分施設(GDF)への最終処分を選択する理由が文書の形で示されることが正当なやり方であると考える。CoRWMは、GDFへの最終処分を選択する理由を明確に示す文書の存在は、今後の地域開発計画方針や開発同意の形成プロセスを進めていく上でも役立つと考える。

【出典】

 

【2018年8月7日追記】

英国議会下院のエネルギー・産業戦略委員会は、2018年7月31日に、地層処分施設(GDF)及び評価のためのボーリング調査を「国家的に重要な社会基盤プロジェクト」(NSIP)にするための基礎となる国家政策声明書(NPS)案について、審議を行った結果をまとめた報告書を公表した。本委員会は、2008年計画法に基づいて、NPS案に関する審議を付託され、NPS案の内容と範囲とを中心に2018年5月から審議を行っていた。

同報告書において本委員会は、英国政府が今後策定する国家政策声明書(NPS)の最終化に向けて、以下のような意見・勧告を示している。

  • 国立公園及び特別自然美観地域(AMOB)が備える社会経済的な利益を保持しつつ、保護区域にある地上の施設への侵入を防止するように地層処分施設(GDF)を設計することは可能である、という英国政府の見解を支持する。国家政策声明書(NPS)において、そうした保護区域を除外区域として予め設定しなくても、既存の法律やNPSの枠内において、十分な環境保護措置が取られることになると認識している。
  • 新規原子炉から発生する高レベル放射性廃棄物等を含め、地層処分する放射性廃棄物のインベントリ予測について、どの程度不確かなものであるかを明示すべきである。
  • 将来のボーリング調査に先だって実施主体が提出する開発同意令(DCO)のための申請は、潜在的な立地コミュニティ内で実施される立地プロセスの継続に関する支持の調査・確認(test)までは行わないことについて、一般の人が理解しやすいように明示すべきである。
  • 地層処分施設(GDF)設置によって見込まれる地元の経済効果・人材雇用・スキル向上等の社会経済的な便益について具体的な内容を明示すべきである。

なお、本委員会は、2008年の英国政府白書に基づいて実施された地層処分施設(GDF)のサイト選定プロセスの教訓が国家政策声明書(NPS)案に十分反映されており、NPS案で示されたコミュニティが自発的にサイト選定プロセスに参加する方法を支持するとしている。

 

【出典】


  1. 英国では、地方自治政府(イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランド)のうち、イングランド以外は地方自治政府に放射性廃棄物管理の権限が委譲されており、イングランド以外で地層処分施設を計画する場合は各地方自治政府が定める許可制度が適用される。 []

スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)が2011年3月に提出した使用済燃料最終処分場の立地・建設許可申請書等に関して、環境法典に基づく審理を実施していた土地・環境裁判所及び原子力活動法に基づく審査を行っていた放射線安全機関(SSM)は、2018年1月23日に、それぞれの意見書を政府に提出した。このうち、土地・環境裁判所は、フォルスマルクに立地する使用済燃料処分場に対して、政府が環境法典に基づく許可の発給が可能となる条件が整うためには、使用済燃料を封入するキャニスタの長期閉じ込め能力に関する補足説明が必要であるとした意見書を政府に提出した。また、土地・環境裁判所は、キャニスタ封入施設に関しては環境法典に基づく許可発給が可能な条件は整っていると結論している。一方、SSMは、政府が原子力活動法に基づく許可を発給する際には、処分場の建設開始に先立ち、SKB社が処分場の様々な活動時期と閉鎖後の両方の期間における安全性を統合的に扱った安全解析書(SAR)を取りまとめ、SSMの審査・承認を受けることを条件とすべきであるとした意見書を提出した。今後、政府は、両方の意見書を踏まえて、SKB社が申請した処分事業が許可可能であるかの判断を行うことになる。

使用済燃料処分場及びキャニスタ封入施設のイメージ(SKB社提供)

使用済燃料処分場及びキャニスタ封入施設のイメージ(SKB社提供)

SKB社は、KBS-3概念1 と呼ばれる処分概念による使用済燃料の最終処分の実現に向け、2006年11月に、オスカーシャムにおけるキャニスタ封入施設の建設許可申請書を提出し  、その後、2011年3月にフォルスマルクにおける使用済燃料処分場の立地・建設許可申請書を提出した 。これまで、スウェーデンにおける使用済燃料処分場及びキャニスタ封入施設に関する許可申請では、環境法典及び原子力活動法の2つの法律に基づく3つの申請書の審査が並行して進められてきた(下記の囲みを参照)。

※使用済燃料処分場の実現に向けて審査中の申請書

①オスカーシャムにおけるキャニスタ封入施設の建設許可申請書
(2006年11月にSSMに提出、2011年3月16日更新)…原子力活動法に基づく申請
②フォルスマルクにおける使用済燃料の処分場の立地・建設許可申請書
(2011年3月16日にSSMに提出)…原子力活動法に基づく申請
③使用済燃料の処分方法及び関連施設の立地選定に係る許可申請書
(2011年3月16日に土地・環境裁判所に提出)…環境法典に基づく申請

放射線安全機関(SSM)の意見書

スウェーデンにおける原子力安全・放射線防護の規制機関である放射線安全機関(SSM)は、政府に提出した意見書において、SKB社の申請書に対する審査結果として、SKB社は使用済燃料を安全に処分するという原子力活動法の要求を実現する能力を有していると評価した上で、フォルスマルクにおける使用済燃料の処分場、及びオスカーシャムにおけるキャニスタ封入施設の建設を許可するよう勧告するとしている。また、原子力活動法に基づく段階的な許可プロセスのもとで、SKB社は今後、処分場の安全解析書(SAR)を取りまとめ、処分場及び関連施設を現実のものとする努力を続けることになるが、SKB社はそれらを達成する能力を備えていることを立証したとSSMは評価した。SSMは、処分場の建設、試験操業及び通常操業のそれぞれの開始に先立ち、処分場の安全性を最新の知見に基づいて精査可能とするために、SKB社が安全解析書(SAR)をSSMに提出し、承認を受けることを条件とする旨を許可条件に記載すべきとしている。

土地・環境裁判所の意見書

環境法典に基づいてSKB社が申請した使用済燃料の処分事業については、その方法及び関連施設の立地選定に関する許可判断は政府が行うことになっている。土地・環境裁判所は、申請案件についての環境法典に基づく許可発給が可能であるかに関する意見書を政府に提出することになっている。その意見書を受けて、政府が許可発給可能と判断した場合には、申請案件の審理が土地・環境裁判所に戻され、処分事業に関する許可及びその条件に関する審理が継続される。

土地・環境裁判所は、SKB社による立証は信頼に足るものであると評価しつつも、使用済燃料を閉じ込める銅製キャニスタの腐食や機械的強度に影響を与えるプロセスの影響の大きさに関する説明が不十分であり、現時点において提示されている安全解析の結果に基づいて、最終処分場が長期安全性を有しているという結論を導き出すことはできないと判断した。このため、土地・環境裁判所は政府への意見書において、SKB社が申請する処分事業に対する許可発給の可能性に関しては、今後、キャニスタの耐久性能を考慮に入れた形で処分場の安全性を立証する追加資料がSKB社から提出される場合に限り、政府が環境法典に基づく処分場の許可を発給することが可能になるとの結論を示した。

また、土地・環境裁判所は、現行の環境法典に基づく許可の取得者に対して、許可条件において別途指定されない限り、当該活動に対する責任が無期限に負わされている問題に言及している。土地・環境裁判所は、2017年9月から10月にかけて開催した口頭弁論において、エストハンマル自治体が最終的な責任を負うことに対して反対している事実を挙げ、最終処分場に関して国が最終手的な責任を負うとした場合でも、処分場の閉鎖後における責任の所在を予め明確にする必要性を指摘している。また、土地・環境裁判所は、今後SKB社が追加資料を提出することによって処分事業に対する許可発給が可能となる条件が整うのに先立ち、政府は環境法典において放射線安全機関(SSM)に対して、より強い権限を与えることを含め、いくつかの法改正を行うことを検討すべきであると勧告している。

今後の進捗

環境法典の規定に基づき、政府が許可発給に関する決定を行う前には、使用済燃料処分場の立地予定地があるフォルスマルクがあるエストハンマル自治体と、キャニスタ封入施設を建設予定地があるオスカーシャム自治体の議会がその受け入れを承認していることが条件となっている。エストハンマル自治体は、2017年4月に、自治体としての判断を行う際の参考とするため、2018年3月4日に住民投票を行うことを決定している 。使用済燃料の処分事業の実施可否は、放射線安全機関(SSM)及び土地・環境裁判所の意見書や地元自治体の受け入れ意思の確認を踏まえて、最終的に政府が判断することになる 。

なお、土地・環境裁判所及びSSMの意見書の公表を受けてSKB社は、2018年1月23日のプレスリリースにおいて、SSMが処分場の建設の開始に先立って提出するように求めている安全解析書(SAR)等の追加資料をSKB社が提出した時点で、政府が環境法典に基づく許可を発給できる条件が整うという認識を表明している。

【出典】

 

【2018年2月22日追記】

スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)は2018年2月21日付のプレスリリースにおいて、政府による環境法典に基づく許可発給が可能となるための条件として土地・環境裁判所が提示したキャニスタの長期閉じ込め能力に関する補足説明について、2018年内に作成できるとの見通しを示した。SKB社によれば、現状、土地・環境裁判所の意見書を受けた政府(環境省)からの対応指示を受けていないものの、SKB社は補足説明の作成に自主的に先行して取り組んでいるとのことである。土地・環境裁判所が補足説明の必要性を指摘したのは、具体的には以下の5点である。

  • 無酸素水との反応による腐食
  • 硫化物との反応による孔食(熱水効果〔塩濃縮〕の影響の考慮を含む)
  • 硫化物との反応による応力腐食(熱水効果の影響の考慮を含む)
  • 水素脆化
  • 放射線照射が孔食、応力腐食及び水素脆化に及ぼす影響

SKB社は、これらの銅製キャニスタの腐食に関する問題は既に数年にわたって取り組んでいるものであり、また、いくつかの点については規制当局である放射線安全機関(SSM)に提出予定の報告書において対応するために詳細調査を実施中であると説明している。

また、土地・環境裁判所は、2018年1月23日に提出した政府への意見書において、政府による環境法典に基づく許可発給が可能となるための条件として、最終処分施設の長期における責任の所在を明確にする必要性も指摘している。最終処分場の建設予定地があるエストハンマル自治体は、最終的な責任を負うことに反対している。エストハンマル自治体は、今後の許可プロセスの先行きが不透明になったことを受け、2018年1月30日の自治体議会において、自治体としての判断を行う際の参考とするために予定していた2018年3月4日の住民投票を中止することを決定している。

【出典】

 

【2018年6月4日追記】

スウェーデン政府は、2018年6月1日付のプレスリリースにおいて、土地・環境裁判所及び放射線安全機関(SSM)がそれぞれ2018年1月23日に政府に提出した意見書について、SKB社の見解を2019年1月7日までに提出するよう指示したことを公表した。また、政府が環境法典に基づいて許可発給可能と判断するための条件として、土地・環境裁判所が指摘したキャニスタの長期閉じ込め能力に関する補足説明に関しても、2019年1月7日までに政府に提出するよう指示している。

政府(エネルギー・環境省)からの指示を受けたSKB社は、2018年6月1日付けのプレスリリースにおいて、当面の作業スケジュールが明確になったとし、銅製キャニスタの腐食に関する問題の一部は、今後SSMに提出することになる安全報告書において対応するよう、既に数年間にわたって詳細な研究を進めていると説明している。

【出典】


  1. KBS-3概念とは、スウェーデンで開発された使用済燃料の処分概念であり、使用済燃料を銅製のキャニスタに封入し、処分坑道の床面に掘削した処分孔に縦置きに定置して、キャニスタの周囲を緩衝材(ベントナイト)で囲うというもの。本概念を検討した報告書の略称に由来しており、フィンランドも同様な概念を採用している。 []

米国のエネルギー省(DOE)は、2018年1月17日付けのWIPPのフェイスブック・ページにおいて、超ウラン核種を含む放射性廃棄物(TRU廃棄物)の地層処分場である廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)について、地下の処分施設の掘削活動を4年振りに再開したことを公表した。WIPPでは、1999年3月から軍事起源のTRU廃棄物の地層処分が行われているが、2014年2月に発生した火災事故及び放射線事象により操業が停止していた。4年間の復旧作業の後、2017年1月4日にはTRU廃棄物の定置を再開し、2017年4月にはDOE各サイトからのTRU廃棄物の受入れを再開していたが、地下施設の掘削活動は中断したままであった。

今回再開した掘削活動は、2018年1月15日から開始されており、WIPP地下処分施設の第8パネルでの掘削が行われている。WIPPでは現在、第7パネルでTRU廃棄物の定置活動が行われているが、第7パネルでの定置が完了すると、第8パネルでの定置が開始される。第8パネルの掘削は、2013年遅くに開始されていたが、2014年2月の火災事故及び放射線事象で中断していた。第8パネルの完成は、2020年の予定とされている。

掘削活動には連続掘削機が使用されており、WIPPのフェイスブック・ページでは、連続掘削機の写真やビデオも掲載されている。WIPPは岩塩層に建設された地層処分施設であり、時間の経過に従って岩塩のクリープ現象によって地下の開口部分が閉鎖される動きがあるため、処分パネルの掘削は、処分に必要となる時期に合わせて行われている。

なお、WIPPのフェイスブック・ページでは、2018年1月11日付けの情報として、2018年1月15日~28日の予定で、定期のメンテナンスのためにWIPPでの操業を停止することも公表されている。

【出典】

  • エネルギー省(DOE)の廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)フェイスブック・ページ「WIPP掘削作業を再開(WIPP Resumes Mining Operations)」(2018年1月17日))[アクセス日:2018年1月19日]
    https://www.facebook.com/WIPPNews/

フランスの原子力安全機関(ASN)は2018年1月15日に、放射性廃棄物管理機関(ANDRA)が2016年4月にASNへ提出していた地層処分場の「安全オプション意見請求書」1 に関する見解書を公表した。ASNは、2016年11月の国際レビューチームの見解及び2017年5月の放射線防護・原子力安全研究所(IRSN)の見解、2017年8月1日~9月15日までの意見募集を踏まえ、今回の見解を取りまとめている。

今回公表されたASNの見解書は、2017年8月の意見募集時に付された見解書案と大きな違いは見られず、ANDRAの地層処分プロジェクトが、安全オプション意見請求書の段階としては技術的に十分に高いレベルに達しており、過去にANDRAが提出したプロジェクトの進捗報告書に比べて、大きな進展が見られたと評価している。一方でASNは以下のような課題を指摘している。

廃棄物インベントリについて

ANDRAが安全オプション意見請求書で示した廃棄物インベントリについて、2019年に予定されている地層処分場の設置許可申請においては、将来における燃料サイクル政策やエネルギー政策の変化に伴う不確実性を考慮した予備的なインベントリも提出すべきである。

地層処分場の設計変更の可能性について

  • 地層処分場の閉じ込め機能を強化するため、放射性廃棄物の処分エリアと地上へ通じる坑道の位置関係等の設計を検討する必要がある。設置許可申請において採用される設計については、長期にわたる操業期間中の原子力安全や放射線防護を考慮し、異なるオプションの長所と短所に関する研究成果を提示して妥当性を立証しなければならない。
  • 操業中から閉鎖後に至るまで、地層処分場において想定される自然災害リスク(特に、地震)のレベル及びそのリスクに関係する機器や構造物の要件や挙動の解析方法を設置許可申請書に記載し、設計の妥当性を立証する必要がある。
  • 設置許可申請書の作成に際しては、廃棄物に影響を与える程度の火災が地上施設において発生することを想定する必要がある。
  • 安全オプション意見請求書においては、処分場の操業中及び閉鎖後の安全性に関わるモニタリングに関する情報が限定的である。設置許可申請書においては、地層処分場のモニタリング戦略とその実施方法を記載し、妥当性を立証する必要がある。
  • 設置許可申請書における地層処分場の設計に関する記載内容に関して、想定した事故の発生後における処分場の機能回復など、長期にわたる地層処分場の操業の安全上の課題を提示し、以下のような点を考慮していることを説明する必要がある。
  • 地層処分場の操業を継続できること
  • 事故により影響を受けた廃棄物を回収できること
  • 地層処分場の閉鎖作業を実施できること

ビチューメン(アスファルト)固化体について

ビチューメン固化体の特性を廃棄物発生者が速やかに明確化したうえで、処分坑道における火災を想定した対策として、以下の研究を実施すべきである。

1.ビチューメン固化体の発熱反応を抑えるための研究を優先的に実施すべきである。

2.上記の研究と並行して、ビチューメン固化体の発熱反応が過剰に進行する恐れを排除できるよう、地層処分場の設計変更を意図した研究も実施すべきである2

 

ASNの見解書の公表を受けたANDRAのコメント

安全オプション意見請求書に対するASNの見解書の公表を受けて、ANDRAは2018年1月15日に、地層処分場に関する安全オプション意見請求書に対する見解の総括を文書として公表した。ANDRAは、今回公表されたASNの見解書は概ね肯定的なものであったとした上で、ASNの見解を今後の研究等の方向性を示すものと位置づけ、2019年に予定されている地層処分場の設置許可申請に向けて、以下のような研究を進めるとしている。

  • 地層処分場において想定される自然災害のリスク・レベルの特定のための条件設定の詳細化
  • 詳細なモニタリング計画の提示に向けたモニタリング戦略のさらなる検討
  • ビチューメン固化体の火災リスクを管理できるような設計オプションの検討

 

【出典】


  1. 原子力基本施設及び原子力安全・放射性物質輸送管理に関する2007年11月2日のデクレ(2007-1557)の第6条に基づいて、事業者(ANDRA)は、処分施設の安全を確保するために採用したオプションの全部または一部に対する見解を原子力安全機関(ASN)に請求することができる []
  2. ビチューメン固化体に関する2番目の意見は、当初2017年8月に公表されたASNの見解書案には含まれていなかったが、今回の最終的な見解書において追加されたものである。 []

スイスの放射性廃棄物管理基金と廃止措置基金の両基金の管理委員会(以下「基金委員会」という)と連邦原子力安全検査局(ENSI)は2017年12月21日に、原子力発電事業者が2016年12月に取りまとめた放射性廃棄物管理の費用見積りに対する審査結果を公表した。廃止措置・廃棄物管理基金令(以下「基金令」という)に基づいてENSIは、安全技術の観点から原子力発電事業者が行った費用見積りに対する審査を行っている。また、基金委員会は、原子力発電事業者が基金に拠出する金額を決定する上で必要となる将来費用の額を環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)に提案する役割を担っている。

■原子力発電所の廃止措置と運転終了後の放射性廃棄物管理に要する費用

スイスの地層処分場サイト選定プロセスでは、①高レベル放射性廃棄物と低中レベル放射性廃棄物用の処分場をそれぞれ1カ所ずつの計2カ所に建設するケースと、②両方の処分場を同じ場所に建設するとの2つのオプションが検討されている。原子力発電事業者は、サイト選定プロセスの結果として最終的にケース②となった場合には、処分費用の削減が期待できるとしており、ケース①と②の可能性を共に50%と仮定した場合の期待値を将来費用の額として設定するよう提案していた。

これに対し、基金委員会は、将来費用の資金確保を確実にする観点から、将来費用の金額を高めに設定するように、ケース①と②の可能性を60%、40%の確率で重みをつけて期待値を算出すべきとしている。さらに、基金委員会は、地層処分費用に関して、原子力発電事業者による見積りが楽観的であるとして、事業者が積算した基本コストの12.5%を一般予備費(ドイツ語でgenereller Sicherheitszuschlag)として加算すべきとしている。

上記のような見直しの結果、基金委員会は、原子力発電事業者が提案していた将来費用の額である 217億6,700万スイスフラン(約2兆5,000億円)に対して、約7.9%上回る 234億8,400万スイスフラン(約2兆7,000億円)を環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)に提案するとしている。

表:地層処分費用の見積り(単位:百万スイスフラン 1スイスフラン=115円で換算)
項目 原子力発電事業者の
見積額
基金委員会が提案する
将来費用の額
備考
(A)地層処分費用 11,303
(約1兆3,000億円)
12,693
(1兆4,600億円)
 
内訳      
(1)基本コスト 8,125
(約9,300億円)
8,229
(約9,500億円)

変動コストは、処分場立地ケースによって変動する部分のコストである。処分場立地ケースの確率配分は、原子力発電事業者と基金委員会で異なる。

(2)変動コスト 3,178
(約3,700億円)
3,435
(約3900億円)
(3)一般予備費
(計上せず)
1,029
(約1,200億円)

基金委員会は、基本コストの12.5%を設定

(B)中間貯蔵、輸送、輸送・貯蔵容器、再処理費用 7,058
(約8,100億円)
7,058
(約8,100億円)
 
(C)廃止措置費用 3,406
(約3,900億円)
3,733
(約4,300億円)
 
合計
(A)+(B)+(C)
21,767
(約2兆5,000億円)
23,484
(約2兆7,000億円)

基金委員会の提案額は、原子力発電事業者の見積りの約7.9%増

 

■ENSIによる安全技術の観点からの審査

連邦原子力安全検査局(ENSI)は、エンジニアリング会社等の外部専門家の協力を得て、原子力発電事業者が取りまとめた費用見積りを審査している。ENSIは、スイスニュークリアが費用算定に用いた技術、スケジュール、組織、操業に係る想定は、現行の基準規則類に適合しており、これまでの知見や最新の科学技術水準に見合うものであり、技術データに関しても品質基準を満たしていると評価し、費用算定の技術的根拠として妥当なものであると結論付けている。

その上でENSIは、放射性廃棄物管理に関して、次回2022年に行われる費用見積りにおける主要課題として、以下の3点を勧告している。

  • 高レベル放射性廃棄物と低中レベル放射性廃棄物を同じ場所に処分するケースを検討する場合について、処分場の地上施設の設計・操業の具体的な概念を示し、その概念に基づいた見積りを行うこと。
  • 高レベル放射性廃棄物用処分場の地上施設について、使用済燃料を受け入れから処分廃棄体を製造するまでの一連の作業手順を具体化すること。
  • 地上施設を構成する建屋間のインターフェースに着目したモデル解析を再度実施し、既に見つかっている不整合を是正し、不足点を補うこと。

■今後の予定

基金委員会は、環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)よる将来費用の決定を待って、2017年から2021年において原子力発電事業者が基金へ拠出する金額を決定することになる。基金委員会は、UVEKによる決定は2018年秋になるとの見通しを示している。

 

【出典】

【2018年4月20日追記】

スイスの環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)は2018年4月12日に、原子力発電所の廃止措置と運転終了後の放射性廃棄物管理に要する将来費用の見積額を245億8,100万スイスフラン(約2兆8,300億円、1スイスフラン=115円で換算)と決定したことを公表した。今回UVEKが決定した見積額は、放射性廃棄物管理基金と廃止措置基金の両基金の管理委員会(以下「基金委員会」という)がUVEKに提案した見積額よりも約11億スイスフラン(約1,300億円)多く、この費用の増加は以下の項目で見直しを加えたことによるものと説明している。

<地層処分費用>

  • 高レベル放射性廃棄物の処分場と低中レベル放射性廃棄物の処分場とを異なる場所に建設するケースで将来費用を決定したことによる費用増:
    スイスの地層処分場選定プロセスでは、①高レベル放射性廃棄物と低中レベル放射性廃棄物の処分場をそれぞれ1カ所ずつの計2カ所に建設する場合、②両方の処分場を同じ場所に建設する場合が検討されており、費用算定においても、これらの2つのケースのオプションが検討されている。②のケースでは、①のケースと比較して処分費用の削減が期待される。原子力発電事業者は、ケース①と②の可能性を50%、50%の確率で重みをつけて期待値を算出するよう提案していたが、基金委員会は、60%、40%の確率とするよう提案していた。一方、UVEKは、現在の処分場選定プロセスでは、②のケースの是非を決定できる段階には至っていないとして、①の2カ所に建設するケースで将来費用を決定した。これによりUVEKの決定は、基金委員会の提案と比較すると、約6億5,100万スイスフラン(約750億円)の増額となっている。
  • 地層処分場立地地域への交付金支払いの可能性を高く見積ることによる費用増:
    スイスでは、国としての課題解決への貢献に対する経済的措置として、処分場の立地地域に対して交付金を支払うとされている。廃棄物管理基金から支出される立地地域に対する交付金の支払いについては、法的根拠が存在しておらず、自由意思によって行われる関係者との交渉の結果として取り決められることから、原子力発電事業者と基金委員会は4億スイスフラン(約460億円)を確保するよう提案していたが、UVEKは将来費用を確実に確保する観点から8億スイスフラン(約920億円)を確保するように決定した。

<廃止措置費用>

  • 原子力発電所サイトを全て更地に回復することによる費用増:
    原子力発電事業者の見積りでは、廃止措置の完了後に汚染のない建屋の一部がサイトに残る「ブラウンフィールド」と呼ばれる条件で算出していたが、基金委員会は建屋をすべて解体して、サイトを更地にする「グリーンフィールド」の可能性も費用見積りに含めるべきとの見解から、グリーンフィールドの可能性を80%、ブラウンフィールドの可能性を20%とした場合の期待値を算出するよう提案していた。UVEKは、廃止措置・廃棄物管理基金令(以下「基金令」という)における廃止措置費用の定義に従い、全ての建屋を撤去する費用を確保するとして、グリーンフィールドの条件で将来費用を決定した。これによりUVEKの決定は、基金委員会提案と比較すると、約4,600万スイスフラン(約53億円)の増額となっている。

 

原子力発電事業者の見積額、基金委員会が提案した将来費用額、UVEKが決定した費用額を下表に示す。

表:廃棄物管理・廃止措置費用の見積り(単位:百万スイスフラン 1スイスフラン=115円で換算)

項目 原子力発電事業者の見積額 基金委員会が提案した将来費用額  UVEKが決定した将来費用額 
 地層処分費用  11,303
(約1兆3,000億円)
12,693
(約1兆4,600億円)
13,744
(約1兆5,800億円)
 中間貯蔵、輸送、輸送・貯蔵容器、再処理費用  7,058
(約8,100億円)
 7,058
(約8,100億円) 
 7,058
(約8,100億円) 
 廃止措置費用  3,406
(約3,900億円) 
 3,733
(約4,300億円) 
 3,779
(約4,300億円) 
 合計 21,767
(約2兆5,000億円)

23,484
(約2兆7,000億円)

24,581
(約2兆8,300億円)

 

今後の予定

基金委員会は、今回のUVEKの決定に先立つ2016年12月に、2017年から2021年の期間に原子力発電事業者が基金へ支払うべき拠出金の暫定額を決定している。現在、スイスでは、基金令の改正が予定されており、基金委員会は2017年から2021年の期間に原子力発電事業者が基金へ支払うべき拠出金の正式な額については、改正した基金令の発効後に決定するとしている。基金令の改正の閣議決定は2019年前半と見込まれている。

 

【出典】

英国の原子力廃止措置機関(NDA)は、2017年12月11日に、2018年4月1日から3年間を対象としたビジネスプラン(事業計画書)のドラフト版を公表するとともに、意見募集期限を2018年2月4日までとする公開協議を開始した。NDAは、英国における17の原子力サイトの廃止措置・クリーンアップ、放射性廃棄物の安全な管理、使用済燃料の再処理等に責任を有する政府外公共機関(NDPB)1 である。NDAは、2004年エネルギー法に基づいて、ビジネスプランを毎年作成し、英国政府の承認を受けている。NDAは、今回のビジネスプランのドラフト版において、放射性廃棄物処分に関連した活動計画を以下のように示している。

・再処理事業

NDAは、セラフィールドの酸化物燃料再処理工場(THORP)を従来通りに2018年に閉鎖する計画としている。また、英国で初期に導入されたガス冷却炉(GCR、マグノックス炉)からの使用済燃料の取り出しとマグノックス再処理工場への搬出を2019年までに完了させ、それらの再処理を2020年に完了させる計画としている。

・浅地中処分事業

イングランド北西部のドリッグ村近郊に位置する低レベル放射性廃棄物処分場は、1959年から操業しており、2080年に処分場の最終的な閉鎖が予定されている。処分場の操業者である低レベル放射性廃棄物処分場会社(LLW Repository Ltd、LLWR社)は、すでに満杯となっている既存の1~7号トレンチ処分施設及び8号コンクリートボールト施設の最終的な覆土(cap)の施工の準備を継続する計画としている。

・地層処分事業

英国政府は、2014年8月に公表した白書『地層処分の実施-高レベル放射性廃棄物等の長期管理に向けた枠組み』において、サイト選定プロセスの開始前の初期活動として、英国全土(スコットランドを除く)を対象とした「地質学的スクリーニング」、「2008年計画法」の改正、地域との協働プロセスの策定活動の3つを行うこととしている。ビジネスプランのドラフト版では、これらの初期活動が完了間近であり、2018年6月にはサイト選定プロセスが開始される見込みであるとしている。

なお、地層処分事業に関しては、2017年12月7日付けの英国政府のプレスリリースにおいて、地層処分施設に関する開発同意令(DCO)の発給審査の基礎となる国家政策声明書(NPS)の作成2 、地域との協働プロセスの策定に関して、それぞれ公開協議による意見募集を2018年早々に開始する意向を公表している。

 

【出典】


  1. 「政府外公共機関」(NDPB)は、所管省の行政機能を実現する実務組織として省の外部に設置されている組織の総称である。執行型、諮問型、法廷型に類型され、NDAは執行型に相当する。 []
  2. このNPSは、特定のサイトではなく一般的なサイトを対象とした地層処分施設等について作成される。 []
カナダサイト選定状況201712

NWMOによるサイト選定プロセスの進捗動向(2017年12月時点)

カナダの使用済燃料処分の実施主体である核燃料廃棄物管理機関(Nuclear Waste Management Organization, NWMO)は、2017年12月、サイト選定プロセスの第3段階第2フェーズが実施されていたオンタリオ州のエリオットレイク市、ブラインドリバー町(右上図13番及び12番)を、サイト選定プロセスから除外したことを公表した。NWMOは除外理由として、この地域において、潜在的に適性があると考えられる複数の対象エリアが地質学的に複雑であるほか、地形の起伏が激しいために調査対象エリアへのアクセスが困難であることを挙げている。また、この地域の調査対象エリアは先住民の権利が認められている領域に位置している。NWMOは、既に一部の先住民とは良好な関係にあるものの、その他の先住民を含めたパートナーシップへ拡大できる見通しが低いことも、この地域を除外した理由の一つとしている。

NWMOは、サイト選定プロセスの第3段階第2フェーズの初期において空中物理探査などの調査を実施している。NWMOは、地域の地質に関する理解の向上を図るため、ボーリング調査を進める計画であり、サイト選定プロセスに残っていた7自治体の地理的な近さに応じて4グループにまとめ、ボーリング調査の実施に向けた計画の策定などを進めている。今回NWMOは、より高精度な地質データの取得が完了した「エリオットレイク/ブラインドリバー地域」と「ホーンペイン/マニトウェッジ地域」の結果に基づいて2つの自治体を除外した。これで、サイト選定プロセスに残っている自治体は5つとなった。

NWMOは、地層処分場のサイト選定プロセスに対する地域のこれまでの貢献を高く評価するとともに、地元の持続的開発と福祉向上のために独自に利用できる資金として、エリオットレイク市、ブラインドリバー町、先住民であるサガモク・アニシュナウベック・ファースト・ネーション(Sagamok Anishnawbek First Nation)にそれそれ60万カナダドル(5,400万円)、近隣自治体でありサイト選定プロセスから除外された後も前向きな協力を続けていたスパニッシュ町とノースショア・タウンシップにそれぞれ30万カナダドル(2,700万円)を提供するとしている。

なお、NWMOが2017年12月に公表した資料によれば、サイト選定プロセスに残っている地域や自治体における調査やパートナーシップの構築等の状況は以下の通りである。

  • ホーンペイン/マニトウェッジ地域(図中9番と8番):技術的調査の結果、岩石学的・構造的に好ましい特性を持つ潜在的な処分場エリアが特定されている。これらのエリアは、処分場の設置に好ましい地質学特性を備えている可能性があるが、今後実施するボーリング孔の掘削によって不確実性に対応する必要がある。なお、NWMOは、現時点ではホーンペイン/マニトウェッジ地域近傍の潜在的な処分場エリアにおける詳細調査に注力する意向である。
  • イグナス地域(図中5番):プロジェクトの実施のための技術的要件を満たし、プロジェクトを前進させる協力的なパートナーシップ構築の可能性が高い。なお、イグナス地域では、既に初期ボーリング調査が開始されている
  • ヒューロン=キンロス/サウスブルース地域(図中19番と20番):カナダ楯状地の結晶質岩と異なり、この地域のミシガン盆地の堆積岩は、広い地域にわたって均質であると理解されている。パートナーシップロードマップに基づく取組みにより、地域における協力的なパートナーシップの構築が進められている。なお、この地域の近傍のセントラルヒューロン自治体は、既にサイト選定プロセスから除外されている

《参考》カナダにおける核燃料廃棄物処分場のサイト選定プロセス

カナダにおける核燃料廃棄物処分場のサイト選定プロセス

【参考出典】『連携して進む:カナダの使用済燃料の地層処分場選定プロセス』(NWMO, 2010年)

 

【出典】

 

フランスの国家評価委員会(CNE)は、2017年11月23日に、放射性廃棄物等の管理計画に関する研究・調査の進捗状況を評価した第11回評価報告書を議会科学技術選択評価委員会(OPECST)に提出し、CNEウェブサイトで公表した。CNEは2006年の放射性廃棄物等管理計画法に基づいて、放射性廃棄物等管理に関する取組や調査研究等の進捗状況について毎年評価を行い、評価結果を報告書に取りまとめて議会に提出することになっている。第1回評価報告書は2007年6月に取りまとめられている

CNEの第11回評価報告書では、放射性廃棄物管理機関(ANDRA)による高レベル放射性廃棄物及び長寿命中レベル放射性廃棄物の地層処分プロジェクトの他、特に、ビチューメン(アスファルト)固化体や極低レベル放射性廃棄物の管理研究について、以下のような見解が示されている。

高レベル放射性廃棄物及び長寿命中レベル放射性廃棄物の地層処分プロジェクト

  • 地層処分場とその操業の複雑さを考慮して、CNEは、ANDRAがインタラクティブな3次元デジタルモデルを作成し、作業員の育成等に活用するよう勧告する。
  • 地層処分プロジェクトはパイロット操業フェーズから開始されるが、この段階において、将来設置する様々なプラグ1 の適性を確認すべきである。
  • 高レベル放射性廃棄物の処分区画での廃棄物の定置作業が終了するまで、廃棄物を定置した処分孔を開放したままにしておくことは望ましくない。操業期間中、廃棄物の定置作業が完了した処分孔を段階的に隔離していくためにプラグを設置し、地質媒体による受動的安全性を確保できるようにすべきである。また、これらの処分孔を継続的にモニタリングすべきである。
  • 地層処分場の設置許可申請後に、地層処分事業に係る新たなコスト評価を行わなければならない2 。特に、パイロット操業フェーズのコストを詳細化すべきである。資金需要が長期にわたることを考慮して、試算には資金調達コストも含めなければならない。
  • 2016年の「長寿命高・中レベル放射性廃棄物の可逆性のある深地層処分施設の設置方法を明確にした法律」に基づき、CNEは、地層処分プロジェクトの進捗を透明性のある方法で監督する機関の設置を提言する。当該機関は、ANDRAが策定する地層処分プロジェクトの「操業基本計画」の進捗を毎年レビューする。

放射性廃棄物の管理研究

  • ビチューメン(アスファルト)固化体の処分について、原子力・代替エネルギー庁(CEA)が研究結果を提示しているが、火災発生の可能性、さらに火災が処分区域全体に広がる可能性をさらに検証する必要がある。CNEは、本問題に関する試験を継続するよう勧告する。
  • 極低レベル放射性廃棄物の発生量は膨大であるが、ANDRAはその半分はより簡略化された処分場において処分可能と考えている。CNEは、原子力産業からの廃棄物であるか否かに関わらず、廃棄物の毒性に基づいて管理政策を決定すべきであると考える。本問題に関して、フランスでは現在、クリアランス制度3 が導入されていないが、欧州レベルあるいは国際レベルでの協調的な行動が取られることが望ましいと考えられる。CNEは、クリアランス制度の導入に関するフランスとしての詳細な検討を行うよう、改めて勧告する。

 

【出典】


  1. 坑道や処分孔に設置し密閉する構造物 []
  2. ANDRAは2014年にコスト評価書を取りまとめている []
  3. 放射性廃棄物のうち、放射性物質の放射能濃度が低く、人の健康への影響がほとんどないものについて、普通の廃棄物として再利用又は処分できる制度 []

地層処分場のサイト選定手続きを監督する連邦エネルギー庁(Bundesamt für Energie、BFE)は2017年11月23日のプレスリリースにおいて、特別計画「地層処分場」(以下「特別計画」という)に基づくサイト選定第2段階の成果報告書の草案を公表し、意見聴取を開始した。現在、BFEは、サイト選定第3段階に進める候補の確定に向けて、連邦評議会1 による承認を受けるために成果報告書の取りまとめを行っている。今回公表された成果報告書の草案は、2011年12月から開始されたサイト選定第2段階において検討された6つの地質学的候補エリアのうち、「ジュラ東部」「チューリッヒ北東部」「北部レゲレン」の3つを第3段階に進む候補とする内容となっている。

現在行われているサイト選定第2段階では、サイト選定第1段階で選定された高レベル放射性廃棄物の3つ、低中レベル放射性廃棄物の6つの地質学的候補エリアの中から、高レベル放射性廃棄物用、低中レベル放射性廃棄物用のそれぞれの地層処分場について、2カ所以上の候補を提案することが目標となっている。2015年1月に処分実施主体である放射性廃棄物管理共同組合(Nationale Genossenschaft für die Lagerung radioaktiver Abfälle, NAGRA)は絞り込み作業の結果、高レベル放射性廃棄物用処分場の優先候補として2つの地質学的候補エリア「ジュラ東部」と「チューリッヒ北東部」を優先候補として提案し、「北部レゲレン」は予備候補として留保する提案を行った。NAGRAの提案に対して、規制機関である連邦原子力安全検査局(Eidgenössisches Nuklearsicherheitsinspektorat, ENSI)は2016年12月に、北部スイスの地質学的データが十分とは言えない中で、NAGRAが示したオパリナス粘土層の安定性と堅牢性に関する想定は、現在の科学技術的知見に照らして過度に保守的であると判断し、「北部レゲレン」も引き続き優先候補として検討すべきとの見解を示していた。また、原子力安全委員会(Eidgenössische Kommission für nukleare Sicherheit、KNS)も2017年7月に、ENSIの見解を支持するとしていた。

■サイト選定第2段階の成果報告書草案の主な内容

今回公表された成果報告書の草案は、上記のNAGRAの提案、連邦原子力安全検査局(ENSI)及び原子力安全委員会(KNS)の見解を踏まえたものである。成果報告書の草案の主な内容は以下の通りである。

  • サイト選定第2段階では、高レベル放射性廃棄物及び低中レベル放射性廃棄物の地層処分場の候補として、地質学的候補エリア「ジュラ東部」「北部レゲレン」「チューリッヒ北東部」まで絞り込む。NAGRAはサイト選定第3段階において、高レベル放射性廃棄物及び低中レベル放射性廃棄物の処分場を同一サイト内に設置する場合の長所と短所を検討する。
  • 地質学的候補エリアの絞り込みに伴い、地上施設の設置区域は、JO-3+(ジュラ東部)、NL-2またはNL-6(北部レゲレン)、ZNO-6b(チューリッヒ北東部)とする。
  • 地質学的候補エリア「ジュラ・ジュートフス」「ジュートランデン」「ヴェレンベルク」はサイト選定第3段階での詳細調査の対象とはしないが、特別計画に基づくサイト選定手続きが終了するまで、予備候補として留保する。
  • サイト選定第3段階ではサイト地域の範囲や地域会議の構成を変更する。サイト地域は、地上施設、地下施設、地上・地下のインフラの一部または全てが立地する「インフラ立地自治体」と「その他関係自治体」で構成される2

 

■今後の予定

BFEはプレスリリースにおいて、成果報告書の草案に対する意見聴取を2017年11月22日から2018年3月9日まで実施するとしている。特別計画に基づいてBFEは、州、関係する連邦機関及び隣接諸国、並びに国内の関係する組織にサイト選定第2段階でNAGRAが提出した報告書や規制機関等の審査結果、成果報告書とファクトシートの草案を送付することとなっており、2011年に終了した第1段階でも同様の手続きが取られた。今後の意見聴取の結果などを踏まえて連邦評議会は、成果報告書を承認するか否かを判断する。サイト選定第2段階の完了は2018年末となる見込みである。

【出典】


  1. 日本の内閣に相当 []
  2. サイト選定第2段階までは、特別計画「地層処分場」の「2.2.2 地質学的候補エリア、計画範囲、サイト地域」及び「略語一覧、用語」に従い、サイト地域は、「候補エリア所在自治体(地質学的候補エリアが領域の一部あるいは全体にわたって含まれる自治体)、並びに計画範囲(建設される可能性のある地上施設の配置を考慮して、地質学的候補エリアの広がりによって確定される地理的領域)の境界内に全体が含まれるか、それを管轄領域の一部に含む自治体によって構成される。また、事情によってはその他の自治体がサイト地域に含まれることもある」と定義されていたが、サイト選定第3段階では、サイト地域の構成に変更が加えられるということである。 []