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《フランス》国家評価委員会第8回評価報告書の公表- 深い地層中への処分の研究における進捗状況について懸念を表明

2002年10月9日、フランスの国家評価委員会(CNE)は第8回の評価報告書を公表した。同報告書は、1991年12月30日の放射性廃棄物管理研究法(詳細は こちら)によって設置されたCNEが、2006年の高レベル・長寿命放射性廃棄物の管理方法に関する研究の総括評価に向けて、「長寿命放射性核種の分離・変換」、「深い地層中への可逆性のあるまたは可逆性の無い処分(以下、深い地層中への処分)」、「放射性廃棄物の固定化処理及び長期地上貯蔵技術」の3つの研究分野の進捗状況等について毎年まとめるもので、それらを公表することが同法によって規定されている。

今回の第8回評価報告書では、3つの研究分野のうち、何年にもわたり不確実であった「放射性廃棄物の固定化処理及び長期地上貯蔵技術」に関する展望が開けてきたとする一方、「深い地層中への処分」と「長寿命放射性核種の分離・変換」については、研究にかなりの遅れが生じていることが指摘されている。

特に「深い地層中への処分」については、まず、ビュール地下研究所の建設が大幅に遅れている点を挙げている。同地下研究所建設については、これまでも何度か作業の遅れが発生していたが、2001年末の中断に加えて、2002年5月15日に発生した事故により現在も主立坑の掘削作業が停止している。さらに掘削速度が当初の予測を大幅に下回っているという事実があり、主立坑が必要な深度に到達するのは早くて2003年末になる見通しで、計画されている実験の実施に必要な複数の坑道の掘削を終え、坑道内で実際に作業を行うことの出来る期間は2005~6年の2年間しか残されていないと見ている。CNEは、この2年間において、断層や亀裂等の地質学的観察や掘削の影響等の岩石力学的観察は可能と考えているが、地下水の移動や地層内での放射性核種の移行などの地球化学的な実験については、予備的な結果しか得られないと見ており、スケジュールの大幅な見直しが必要との見解を示している。

また本報告書では、「深い地層中への処分」の研究分野に関し、解決が望まれるもう一つの点として、第2地下研究所についての計画が現在までのところ進められていないことが挙げている。この第2地下研究所は、粘土質岩(ビュール)と花崗岩(サイト未決定)の2つの地下研究所を建設するという1998年12月9日の政府決定によるものである。様々な地層の比較及び科学的な結果に基づいた選択肢を提示するために第2地下研究所の存在が重要であることが強調されており、放射性廃棄物管理研究法では、地下研究所が建設されるべき岩種は特定されておらず、また2つの地下研究所で同時期に調査を実施する必要性も規定されていないとして、第2処分場の建設地の対象岩種を花崗岩以外の岩種(粘土質岩を含む)にすることについて、その可能性を探ること等も視野に入れるよう指摘している。

【出典】

  • 国家評価委員会(CNE)第8回報告書

(post by 原環センター , last modified: 2023-10-12 )