欧州連合(EU)理事会は2006年12月20日に公表した事務総局文書において、加盟国及び欧州委員会(EC)などとともに、原子力安全及び使用済燃料・放射性廃棄物管理に関する行動計画の策定を開始することを明らかにした。これを受けて、策定に係る議長国、加盟国及び欧州委員会(EC)の協議プロセスが2007年1月9日から開始されている。
欧州連合では、2003年4月、欧州委員会(EC)により「放射性廃棄物管理指令案」及び「原子力施設安全確保指令案」が提出され 、放射性廃棄物管理に関して各国に対して拘束力を持つ指令の策定に向けた動きが進められていた。しかしながら、2004年6月のEU理事会で示された結論では、指令案は採択されず、放射性廃棄物管理及び廃止措置の在り方については関連する作業部会において検討を継続することとされていた。今回公表された事務総局文書では、2004年6月のEU理事会の結論に対応して原子力安全作業部会(WPNS)及びその下に設置された3つの下部グループが取りまとめた報告書を、原子力課題作業部会(WPAQ)が承認し、使用済燃料・放射性廃棄物管理に関する行動計画の策定が開始されることが示されている。
この事務総局文書の付属資料では、今後の検討の目的、検討範囲、考えうる方策のリスト、手段が示されている。また、検討結果はEU理事会と欧州議会へ報告することとされている。考えうる方策のリストでは、原子力施設の安全、使用済燃料と放射性廃棄物の管理の安全性、原子力施設の廃止措置と放射性廃棄物管理のための資金確保の3点に関する検討項目が示されている。使用済燃料と放射性廃棄物の管理の安全性に関して挙げられている項目は次の通りである。
- 使用済燃料と放射性廃棄物管理の特殊性を考慮した、整合の取れた整備プロセス、知識共有と協力の実施
- 放射性廃棄物等安全条約に基づくレビューミーティング開催後、次のミーティングまでの期間に行う協議
- 西欧原子力規制当局連合(WENRA)の成果の活用
- 全ての種類の使用済燃料と放射性廃棄物の安全な管理のための戦略の策定への重点的取り組み
- 協力及び知見と課題の交換のための、使用済燃料と放射性廃棄物の安全な管理計画の立案と加盟国への提供、達成度の評価
- 廃止措置期間及び同期間終了後の人員と知識に関する課題についての意見の交換
また、事務総局文書によると、今後検討を進めていくに当たって、上級規制機関グループ、原子力安全に関する専門家グループ、使用済燃料及び放射性廃棄物の管理に関する専門家グループなどを設置することとされている。
なお、2004年6月のEU理事会後、欧州委員会(EC)は2004年9月に修正指令案を提出したが 、この修正指令案については、公式な動きは示されていない。廃止措置の資金確保に関しては、欧州委員会(EC)より2006年10月24日に拘束力のない勧告が採択されている 。
【出典】
- 2007年1月15日のEU理事会原子力課題作業部会(WPAQ)議事概要 http://register.consilium.europa.eu/pdf/en/07/st05/st05253.en07.pdf
- 2006年12月20日のEU理事会事務局文書「原子力安全及び使用済燃料と放射性廃棄物の安全管理に関する協議プロセス」 http://register.consilium.europa.eu/pdf/en/06/st17/st17020.en06.pdf
- 2004年6月のEU理事会の結論「原子力安全及び使用済燃料と放射性廃棄物の安全な管理に関する結論」 http://register.consilium.europa.eu/pdf/en/04/st10/st10823.en04.pdf
(post by 原環センター , last modified: 2013-06-26 )