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《英国》西カンブリア放射性廃棄物安全管理パートナーシップの動き‐自治体議会への最終報告書取りまとめ

西カンブリア放射性廃棄物安全管理パートナーシップ1 (以下「パートナーシップ」という)は、2012年7月20日付プレスリリースにおいて、2012年7月19日に開かれた会合で、高レベル放射性廃棄物等の地層処分のサイト選定プロセスに関心表明を行っているカンブリア州、カンブリア州のコープランド市及びアラデール市の議会に対する、パートナーシップの意見及び勧告・助言をまとめた最終報告書を作成したことを公表した。

パートナーシップでは、2011年11月に、高レベル放射性廃棄物等の地層処分に関する重要な論点についての意見などを示した協議文書を公表し、2012年3月まで、公衆やステークホルダーからの意見を求める公衆協議を実施していた。今回作成された最終報告書は、公衆協議において寄せられた意見を反映し、取りまとめられたものである。

プレスリリースによると、公衆協議の結果により最終報告書に対して大きな変更が加えられたとしている。最も重要な変更点は、サイト選定プロセスへの参加決定に先立って、「放射性廃棄物の安全な管理プログラム」の主要な部分である地域の撤退権について、特に処分場の建設が開始されるまで、地域がプロセスから撤退する権利に対して法的拘束力を持たせると政府が確約すべきであると勧告したことである。パートナーシップは、政府からこの確約を取り付けているとしている。また、その他の変更点として、地質調査のような技術的な活動への独立したレビューについて、地域に代わって実施することができるよう、政府からの資金提供が行われるべきであるとする勧告を追加したとしている。

また、プレスリリースでは、200ページ以上に及ぶ最終報告書では幅広い論点に関するパートナーシップの意見・勧告・助言が示されているとしているが、これらは複雑な課題であり、より詳細な作業が実施された場合にのみ適切に検討することが可能であるため、単純な回答は示されていないとしている。

プレスリリースでは、例として以下のような最終報告書でのパートナーシップの意見及び勧告・助言を示している。

  • 処分対象となる放射性廃棄物の範囲2 の決定に対して、地域社会が確実に関与できるようにするため、事前協議する枠組みを検討してきた。この枠組みの適用に関する政府との合意については、十分な進展が得られている。
  • 西カンブリア地域の地層が処分場の設置に適しているかという点について、専門家の間で意見が異なっている。パートナーシップは、本質的に現段階で適切なサイトが見つかるか定かではなく、そのため、さらなる地質学的調査が必要であり、できるだけ早く調査を開始すべきであるとの見解を有している。しかし、最終報告書では、地層処分場のサイト選定プロセスに参加する決定を下す前、または後に更なる地質学的調査を実施すべきかパートナーシップ内で異なる見解があるとしている。
  • 地層処分場の立地地域に及ぼす影響と恩恵に関して、建設時の騒音や粉塵、交通、景観や環境面の他、観光業への影響、投資や雇用への影響などプラス及びマイナスの影響の可能性がある。現時点では、これらの点について、マイナスの影響を評価・低減し、プラスの影響を最大とする、地域社会が受け入れ可能なプロセスがサイト選定において実施可能であると判断できる。
  • 処分場を受け入れた地域社会に対する地域支援方策について、英国政府と将来の交渉のための原則に合意しており、これらの原則は、公衆協議の結果によりさらに強化されている。このことにより、地域社会が受け入れ可能な地域支援方策を獲得できるかについては、一定の見通しがあると考えられる。しかし、地層処分場を受け入れる最終決定は、英国政府、またはその後の将来の英国政府が、地域支援方策に関する義務・約束を履行すると確信できる場合にのみ行うべきである。

今回作成された最終報告書については、パートナーシップのウェブサイトにおいて数週間のうちに公表される予定となっている。今後、最終報告書は、カンブリア州、カンブリア州コープランド市及びカンブリア州アラデール市の議会に送られ、今秋中にも議会においてサイト選定の次の段階に進むかどうか決定が下される見込みとされている。

【出典】

【2012年8月17日追記】

西カンブリア放射性廃棄物安全管理パートナーシップは、自身のウェブサイトにおいて、カンブリア州、カンブリア州のコープランド市及びアラデール市の議会に対する、パートナーシップの意見及び勧告・助言をまとめた最終報告書を公表した。

最終報告書は、以下のURLからダウンロード可能である。

http://www.westcumbriamrws.org.uk/documents/306-The_Partnership’s_Final_Report_August_2012.pdf

【出典】

  1. 西カンブリア放射性廃棄物安全管理パートナーシップは、地層処分場サイト選定プロセスに関心表明を行ったカンブリア州、カンブリア州アラデール市及びカンブリア州コープランド市が合同で設立した諮問組織であり、関心表明を行った州議会・市議会の他、カンブリア州内の他の市議会、カンブリア州地方議会連合、全国農業者連盟(NFU)、地方労働組合やステークホルダーグループなどによって構成されている。自治体にサイト選定プロセスへの参加に関する判断材料の提供などの支援を行っている。 []
  2. 現状、英国では、使用済燃料、プルトニウム、ウランなどは放射性廃棄物と見なされていないが、将来、それ以上の用途がないと決定された場合、地層処分する必要が生じる可能性のある放射性物質が存在する。 []

(post by f-yamada , last modified: 2023-10-11 )