連邦環境・自然保護・原子炉安全省(BMU)は、2011年12月15日付のプレスリリースにおいて、同日開催された発熱性放射性廃棄物の最終処分に関する会合の場で、BMU大臣と全ての州(16州)の代表が、2012年半ばまでに連邦法で制定予定とする新たなサイト選定手続の工程について合意したことを発表した。BMUは、今回のプレスリリースと併せて、BMUと州が合意したサイト選定手続の工程を示した文書「ドイツにおける発熱性放射性廃棄物の安全処分」を公表した。
ドイツ連邦政府は将来のエネルギー政策における重点項目を2011年6月に公表しており、その中でゴアレーベンでの探査活動と並行して、実行可能な代替処分オプションを確定するための手続きを検討する方針を示していた 。この方針を受けて、2011年11月11日、BMU大臣と全ての州代表は発熱性放射性廃棄物の最終処分に関する会合(第1回)を開催し、BMUと州(8州)の共同作業グループにおいてサイト選定手続の検討作業を開始するとともに、今回開催された第2回目の会合において再度協議する予定としていた。
今回公表された「ドイツにおける発熱性放射性廃棄物の安全処分」には、以下のように、発熱性放射性廃棄物の処分場選定を確実に進めていく上での基本的な考え方と、6段階から成るサイト選定の工程が示されている。
「ドイツにおける発熱性放射性廃棄物の安全処分」
<基本的な考え方>
- 発熱性放射性廃棄物処分の解決方法は、連邦、州、市民などのコンセンサスの下で決定する。
- 現世代で解決すべき課題である。
- 自国内で発生した放射性廃棄物は自国内において国家の責任で処分する。
- サイト選定は科学に立脚した最善の安全基準に則って実施する。
- 手続の全段階において透明性及び市民の参加を確保する。
- 全国及び地方レベルでの適切な参加方式により、全ての参加者が意思決定プロセスに参加できるようにする。
- 発熱性放射性廃棄物の安全管理に係る方策は、連邦議会及び州の代表で構成される連邦参議院(上院)の議決により決定する。
<サイト選定の工程>
- 第1段階(~2012年半ば):連邦議会と連邦参議院において、サイト選定手続の各段階の詳細を定めた法律を制定。
- 第2段階(2012年末~2013年半ば):一般的な安全要件、回収可能性の検討、母岩(岩塩、粘土、結晶質岩)ごとの適性基準(あるいは排除基準)などを含めたサイト選定基準案を策定し、連邦議会と連邦参議院に提案。
- 第3段階(2012年末~2013年半ば):第2段階で作成されたサイト選定基準案について連邦議会と連邦参議院の議決による決定
- 第4段階(2014~2019年末):第2段階で策定されたサイト選定基準に基づき、地上探査の適性を有する複数の探査地域の選定と地上探査の開始(~2014年半ば)。地上探査の結果を基に、地下探査のための候補サイトを選定(~2014年末)。連邦議会と連邦参議院の議決により地下探査サイトを決定。
- 第5段階:第4段階で決定された地下探査サイトにおいて地下探査を実施し、代替案の比較と処分場候補サイトの選定。連邦議会と連邦参議院の議決により処分場建設地を決定。
- 第6段階:計画確定手続(許認可手続)の実施、処分場の建設・操業開始。
上記のサイト選定の工程では、現在地下探査が実施されているゴアレーベン を、今後選定されるサイトとの比較を行うためのサイトと位置付けており、処分場建設地として決定されたものではないことを強調している。なお、他サイトとの比較を行うためにゴアレーベンにおいて今後どのような調査が必要となるのか、また上記工程においてゴアレーベンを地下探査サイトに加えるのか否かに関しては、今後議論を行う必要があるとしている。
【出典】
- 連邦環境・自然保護・原子炉安全省(BMU)、2011年12月15日付プレスリリース、
http://www.bmu.de/atomenergie_ver_und_entsorgung/endlagerung/doc/48177.php - 連邦・州作業グループ共同文書「ドイツにおける発熱性放射性廃棄物の安全処分」、2011年12月15日付、
http://www.bmu.de/files/pdfs/allgemein/application/pdf/hintergrund_standortsuche_bf.pdf - バーデン・ヴュルテンベルク州、2011年11月11日付プレスリリース、
http://www.baden-wuerttemberg.de/de/Suche_nach_Atommuell-Endlager_Sicherheit_hat_Prioritaet/260895.html?referer=88736
【2012年7月20日追記】
連邦放射線防護庁(BfS)の、2012年7月19日付のウェブサイト情報によると、連邦環境・自然保護・原子炉安全省(BMU)は、BfSに対して、2012年9月30日で失効するゴアレーベンの主操業計画について、12月31日までの3ヶ月間の延長を申請するよう指示した。現在ドイツでは、発熱性放射性廃棄物の地層処分の新たなサイト選定手続の詳細とともに、ゴアレーベンの今後の扱いについて検討が進められている(上記サイト選定工程の第1段階)。今回の主操業計画の暫定的な延長は、ゴアレーベンでの探査継続、探査の一時停止(モラトリアム)、或いは、探査の中止(廃止)など、いずれの検討結果への対応においても必要なものとされている。
また、ゴアレーベンが所在するニーダーザクセン州環境省は、高レベル放射性廃棄物の処分に関する州政府の見解を2012年7月18日付で公表した。同見解は、原則、公衆の関与、専門的・学術的観点、並びに、ゴアレーベンの4点で整理されており、ゴアレーベンに関しては次のように示されている。
- ゴアレーベンでの探査は今年中に終了し、法的基盤を整備した上で、新たなサイト選定手続に移行すべきである。
- 新たなサイト選定手続は、いかなる事前の決定もなしに進められるべきである。新たな手続において、ゴアレーベンサイトは比較、或いは参照用サイトのいずれでもなく、要件を満たさなければ今後の手続から除外されなければならない。
- ゴアレーベンに関する専門的知見の維持に配慮すべきである。ゴアレーベンが候補サイトでなくなったからといって、これまでの作業従事者が大幅に削減され、専門能力が失われるようなことがあってはならない。したがって州は、ゴアレーベンが新たなサイト選定手続から除外された場合には、地下研究所として転用されることを支持する。
- 予備的安全評価は、処分サイトとしての適性を確認するための方法論の基礎となるものである。ゴアレーベンを対象として現在進められている予備的安全評価作業については、これまでの結果を検証した上で、適切な形で完了すべきであり、また、処分サイトとしての適性に関する言及は避けるべきである。
【出典】
(post by j-nakamura , last modified: 2023-10-11 )