米国の連邦議会の上院エネルギー・天然資源委員会は、2006年9月27日のプレスリリースにおいて、同委員会のドメニチ委員長がユッカマウンテンにおける高レベル放射性廃棄物処分を促進するための法案を提出したことを発表した。同法案は、ユッカマウンテンにおける土地収用やインフラ施設建設などを認めるもので、2006年4月のエネルギー省(DOE)提案 と共通の規定も有するが、ユッカマウンテンでの中間貯蔵施設建設による廃棄物早期受入を図るなど、独自の法案となっている。
プレスリリースによれば、法案は、ネバダテストサイト内の処分場の建設予定地での地上貯蔵施設の建設を規定し、貯蔵施設に対する原子力規制委員会(NRC)の許可発給後は、国防関係の高レベル放射性廃棄物の貯蔵を認めるものである。DOEはユッカマウンテン処分場の建設認可申請書と同時に地上貯蔵施設の許認可申請書もNRCに提出することとしている。DOEによる処分場建設の申請書提出は2008年6月と予定されており 、本法案では国防関係の廃棄物は早ければ2010年にも受入が開始されるとしている。
また、民間の使用済燃料については、処分場の建設認可の発給後、リサイクルの予定が無いとエネルギー長官が判断した廃棄物は、地上貯蔵施設での受入が可能としている。DOE発表のスケジュールでは、建設認可発給は2011年9月とされている 。
本法案の主な規定内容は以下の通りである。
- ユッカマウンテン周辺の土地の永久的な収用
- 70,000トンの法定処分量上限の撤廃
- インフラ施設の建設開始の承認
- 廃棄物受入及び貯蔵についてのDOEへの権限付与
- 鉄道用地の収用・確保
- 新設炉に関するDOEと原子力発電会社との廃棄物引取標準契約
- 放射性廃棄物基金(NWF)からの歳出区分変更
- 廃棄物保証
2006年4月のDOE提案 との比較では、中間貯蔵、鉄道用地収用、新設炉の廃棄物引取標準契約の規定が新たに追加されており、逆に、ネバダ州の管轄権の一部制限を含めた許認可手続の迅速化に関連する規定は織り込まれていない。プレスリリースによれば、ドメニチ議員は本法案を、連邦議会次会期1 における上院通過の可能性が高いものとして、また喫緊の課題である中間貯蔵及び長期に亘る国際原子力エネルギー・パートナーシップ(GNEP)計画と、ユッカマウンテン処分場の役割という三者の統合を図るために起草したとしている。
【出典】
- 上院エネルギー・天然資源委員会プレスリリース(2006年9月27日) (energy.senate.gov/public/index.cfm?FuseAction=PressReleases.Detail&PressRelease_id=235120&Month=9&Year=2006&Party=1)
- 上院エネルギー・天然資源委員会プレスリリース(2006年9月27日) (energy.senate.gov/public/index.cfm?FuseAction=PressReleases.Detail&PressRelease_id=235119&Month=9&Year=2006&Party=1)
- 核燃料管理・処分法案(S.3962)
【2007年5月24日追記】
2007年5月23日、上院エネルギー・天然資源委員会の少数党リーダーのドメニチ議員はプレスリリースを発表し、ユッカマウンテン処分場の開発・許認可を迅速化するための法案を再提出したことを明らかにした。
- 連邦議会上院エネルギー・天然資源委員会(共和党)プレスリリース(2007年5月23日)
(energy.senate.gov/public/index.cfm?FuseAction=PressReleases.Detail&PressRelease_id=235296&Month=5&Year=2007)
- プレスリリースに示されたドメニチ議員の声明によれば、本法案については第110議会に向けての審議を期待するとしている。米国では2006年11月に連邦議会の中間選挙が予定されており、連邦議会の現会期(第109議会)は2006年10月で実質的に終了する。第110議会は、2007年1月に招集される。 [↩]
(post by 原環センター , last modified: 2023-10-10 )