フランスで、2005年9月12日から2006年1月13日にかけて、独立した行政委員会である公開討論国家委員会(CNDP)によって開催されていた高レベル・長寿命放射性廃棄物管理に関する公開討論会の総括報告書が、CNDPのウェブサイトにて公表された。CNDPによる公開討論会は、1991年の放射性廃棄物管理研究法(詳しくは こちら)に基づくものではないが、産業省のウェブサイトでは、同省による地層処分場の建設など放射性廃棄物管理に関する法案(2006年第2四半期に審議予定)の策定に当たっては、研究報告書、専門家の評価の他に今回の公開討論会の結果も考慮されるとしている。
同報告書において、公開討論国家委員会(CNDP)は、2006年に定められる放射性廃棄物管理法においては、地層処分に関する研究と、永続的な中間貯蔵を実現するための研究との両方が実施されるよう規定すべきであるとしている。こうして、処分の実現可能性を確認するための2020年の意思決定までの時間を利用して、一層の判断材料を確保するとともに、倫理に係る考慮事項をより一層検討するための時間も確保できるとしている。また、放射性廃棄物管理機関(ANDRA)の放射性廃棄物インベントリや、原子力安全当局(ASN)による「放射性廃棄物及び再利用可能な物質の管理に関する国家計画(PNGDR-MV)」を考慮し て、各カテゴリーの放射性廃棄物ごとに管理方針を検討していくことが望ましいとしている。
さらに、公開討論国家委員会(CNDP)は、今回の討論会の開催によって、放射性廃棄物管理の意思決定プロセスにおいて、公衆の意見表明という参加型民主主義の段階から、議会での審議という代表制民主主義の段階へのつながりが確立されたことは重要だとしている。
今回の報告書では、討論内容・結果だけではなく、政府からの討論会開催の付託から公開討論国家委員会(CNDP)が開催を決定するに至るまでの経緯、関係当事者や討論内容・目的及び公衆への情報提供などの開催方法等を決定した背景についても示されている。その他、今回の総括報告書において示されている主要な点は以下の通りである。
- 長寿命放射性廃棄物(種別、数量)とエネルギー政策の基本方針とのつながりが明確になったこと
- 超長期間の予測に対する公衆の不信感に対して、段階的な管理方策の実施方式を構築し、放射性廃棄物管理研究について 定期的な研究報告会を設けること
- 情報提供と対話は信頼の要件であり、情報提供と住民参加は安全性の一要因であるため、主要段階においてその都度確保されるようにするなど、情報提供と対話がより一層推進されること
- 地元の意見を聴くべきという住民の要求は正当であり、この意見聴取の原則と形式については、2006年の放射性廃棄物管理法案の審議の際に議会に付議されるべきであること
- 倫理に係る考慮事項として、世代間及び地域間の公平が求められたこと
【出典】
- 公開討論国家委員会(CNDP)、高レベル・長寿命放射性廃棄物管理に関する総括報告書、2006年1月27日
- フランス産業省ウェブサイト、http://www.industrie.gouv.fr
(post by 原環センター , last modified: 2023-10-10 )