フランス原子力安全当局(ASN)は、2006年1月31日付のプレスリリースで、放射性廃棄物管理研究と放射性廃棄物管理全般に関する見解書をまとめ、政府に提出したことを公表した。この見解書には、1991年の放射性廃棄物管理研究法(詳しくはこちら)のもと、15年間にわたって実施されてきた高レベル・長寿命放射性廃棄物の管理方法についての研究に関するASNの結論と、全ての放射性物質及び廃棄物の管理についてのASNの見解が示されている。
なお、高レベル・長寿命放射性廃棄物の管理に関する3つの研究分野(長寿命放射性核種の分離・変換、可逆性のあるまたは可逆性の無い地層処分、放射性廃棄物のコンディショニングと長期地上貯蔵)については、2005年7月に放射性廃棄物管理機関(ANDRA)と原子力庁(CEA)から最終研究成果報告書が政府に提出されている。
フランス原子力安全当局(ASN)の見解書によると、ASNは、高レベル・長寿命放射性廃棄物の管理方法については、可逆性のある地層処分が最終的な管理方法であると結論付けている。ASNの見解は、可逆性のあるまたは可逆性の無い地層処分の最終研究成果に対する、放射線防護・原子力安全研究所(IRSN)とASN内の放射性廃棄物処分諮問委員会による評価に基づいたものとなっている。また、ASNは、3つの研究分野について、それぞれ以下のような見解を示している。
- 長寿命放射性核種の分離・変換は、現時点では技術的な実現可能性が実証されていない。仮に実現されても、長寿命放射性核種を完全には除去できないので、核種分離・変換とともに別の管理方法が必要である。
- 可逆性のある地層処分が最終的な管理方法である。国会が高レベル・長寿命放射性廃棄物を地層処分するという原則を決定した場合には、放射性廃棄物管理機関(ANDRA)のビュール地下研究所(粘土層)で得られた研究成果から、同研究所の北西部に処分場の建設を検討することが可能であり、さらなる実用的な性格を有する調査・研究の必要がある。
第二地下研究所を立地するための花崗岩サイトの研究は、ビュール地下研究所で確認されている好適な性質等を勘案すると、安全の観点からは優先順位が高いとは思われない。 - 長期貯蔵は、将来世代にわたる監視の継続を前提としており、従って最終的な管理方法とはなり得ず、数百年にも及ぶ監視を保証することはできない。
また、フランス原子力安全当局(ASN)は見解書において、2006年以降の処分場設置に向けた計画を以下の通りとしており、これは2005年3月に議会科学技術選択評価委員会(OPECST)が示した勧告に整合するものであると述べている。
- 2006年~2011年:放射性廃棄物管理機関(ANDRA)が、ビュール地下研究所での研究活動を継続し、同研究所サイトの北西部にある利用可能区域内での処分場立地に適した場所を調査
- 2011年~2016年:ANDRAによる処分場建設許可申請、ASNによる許可発給の検討
- 2016年~2023年:ANDRAが許可取得後、処分場建設
- 2023年~ :処分場の操業
一方、全ての放射性廃棄物の管理に関しては、ASNは見解書の中で、全ての放射性物質と放射性廃棄物に確実な管理方法を適用することを目的として2006年1月に取りまとめられた、放射性廃棄物及び再利用可能な物質の管理に関する国家計画(PNGDR-MV)について、2006年に制定が見込まれる新しい法律の枠組みにおいて承認されるべきであると述べている。
なお、放射性廃棄物管理に関する新しい法律の制定は、1991年の放射性廃棄物管理研究法において示されており、2006年第2四半期における議会での審議が予定されている。
【出典】
- フランス原子力安全当局(ASN)、2006年2月1日付プレスリリース、http://www.asn.gouv.fr/data/information/05_2006_cdp.asp
- フランス原子力安全当局(ASN)、1991年放射性廃棄物管理研究法のもと実施されている高レベル・長寿命放射性廃棄物(HAVL)管理研究に関するASNの見解のまとめ、2006年2月1日
- フランス原子力安全当局(ASN)、1991年放射性廃棄物管理研究法のもと実施されている高レベル・長寿命放射性廃棄物(HAVL)の管理研究とPNGDR-MVに関するASNの見解、2006年2月1日
(post by 原環センター , last modified: 2023-10-10 )