Learn from foreign experiences in HLW management

《フランス》OPECSTが放射性廃棄物管理についての報告書を公開

2005年3月29日、フランスの議会科学技術選択評価委員会(OPECST)1 は、OPECSTのメンバーであるバタイユ議員2 を中心として、2005年1月から2月にかけて開催した放射性廃棄物管理に関する公聴会に基づく、OPECSTの報告書を国民議会のウェブサイト上で公開した。同報告書では、現在、1991年の放射性廃棄物管理研究法(詳細はこちら)に基づいて研究が進められている放射性廃棄物管理方針の3つの選択肢である、地下研究所の建設(研究状況については、こちらを参考)を中心とした可逆性のあるまたは可逆性の無い地層処分、長寿命放射性核種の分離・変換、放射性廃棄物のコンディショニングと長期の地上貯蔵についての勧告が示されている。

OPECSTは、国内外の関係機関の専門家を招待し、2005年の1月20日、1月27日、2月3日の3回にわたり、放射性廃棄物管理についての公聴会を開催した。公聴会は、放射性廃棄物管理研究の分野ごとに、第1回目が分離・変換、第2回目が可逆性のあるまたは可逆性の無い地層処分、第3回目がコンディショニングと長期地上貯蔵を対象として行われた。

今回のOPECSTの報告書の要約版では、以下の8つの勧告がなされている。

    • (勧告1)
      放射性廃棄物の管理に関わる研究成果の情報提供は、地方、国、国際レベルで改善されるべきである。
    • (勧告2)
      分離・変換および可逆性のある地層処分に関する研究は2006年以降も継続されるべきであり、議会は引き続きその推進と、時間的な設定を行うべきである。
    • (勧告3)
      1991年の放射性廃棄物管理研究法に基づく研究の地域的・国家的な活用は、政府と原子力事業者が互いに連携し、学術・大学・産業レベルで進展させるべき分野である。
    • (勧告4)
      議会は3つの放射性廃棄物管理方針、すなわち①分離・変換を取り込むことを当該分野における究極目標として位置づけ、②可逆性のある地層処分及び③長期貯蔵という手段を用いるという原則を盛り込んだ法案を作成すべきである。
    • (勧告5)
      議会は政府活動の目標として、以下の期限を定める提案の実施を勧告する。
      • 2016年:長期貯蔵の開始と可逆性のある地層処分場の建設許可の発給
      • 2020年~2025年:実証用変換炉の運転開始と可逆性のある地層処分場の操業開始
      • 2040年:核種変換事業の実現
    • (勧告6)
      国家放射性廃棄物管理計画(PNGDR-MV)3 を放射性廃棄物管理の一般的な枠組みとして盛り込んだ法律の立案を勧告する。
    • (勧告7)
      議会は、必要な資金調達を長期的に保証するため、国の責任の下で放射性廃棄物発生者から分担金を徴収し、廃棄物関連研究の資金を賄う特別基金の設置を決議すべきである。
    • (勧告8)
      放射性廃棄物管理機関(ANDRA)の任務を、放射性廃棄物管理全体および再処理されていない使用済燃料またはMOX燃料の長期貯蔵にまで拡大することを勧告する。

1991年の放射性廃棄物管理研究法では、これらの研究結果について政府が2006年までに総括評価を行い、可逆性のある地層処分が最善とされた場合には、地層処分場の建設許可等に関する法案を議会に提出することになっている。OPECSTは、政府が作成した総括評価報告書について、議会のために審査を行うことになっている。

なお、今回のOPECSTによる公聴会開催及び報告書の作成、公開については、1991年の放射性廃棄物管理研究法や議会の要請などで求められたものではない。

【出典】

    • フランス上院ウェブサイト、http://www.senat.fr/opecst/rapports.html
    • フランス国民議会ウェブサイト、http://www.assemblee-nat.org/12/dossiers/dechets_radioactifs.asp
    • 放射性廃棄物管理機関(ANDRA)よりの情報
  1. OPECSTは、1983年に設置された、科学的・技術的な選択によって生ずる結果について、議会が決定を行うために必要な情報収集、調査実施、評価を行う機関とされている。 []
  2. バタイユ議員は、1990年にもOPECSTのメンバーとして放射性廃棄物管理についての報告書を作成、議会及び政府に提出している。政府はこの報告書を基に、1991年の放射性廃棄物管理研究法を制定している。 []
  3. フランス国内の放射性廃棄物全般を包括的に管理するものとして2000年から原子力安全当局 (ASN)の監視のもと策定が進められてきた計画(PNGDR)を、再利用可能物(MV)も含める形で拡張し、2005年末までに策定すべきとしているもの。 []

(post by 原環センター , last modified: 2023-10-10 )