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《スイス》放射性廃棄物管理委員会(KNE)によるNAGRA「処分の実現可能性実証プロジェクト」報告書の評価

2005年4月28日に、放射性廃棄物管理委員会(KNE)1 の「NAGRAのチュルヒャー・ヴァインラントにおけるオパリナス粘土プロジェクト-地球科学的なデータの基礎および工学的な実現可能性についての判断」と題する評価報告書が原子力施設安全本部(HSK)のウェブサイト上に公開された。同報告書は、放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)が提出した「処分の実現可能性実証プロジェクト」報告書 に対して、KNEが地質学および工学的側面における評価をまとめたものである。この中で、KNEはチュルヒャー・ヴァインラントのオパリナス粘土層が、使用済燃料、高レベル放射性廃棄物および長寿命中レベル放射性廃棄物の地層処分場サイトとして地質学的に適していることが実証されていると結論を下している。

KNEの評価報告書では、チュルヒャー・ヴァインラントのオパリナス粘土層について、これまでの地質学的な変遷に関する入手可能なデータによる解析および解釈の結果、今後数百万年間のうちに、地層処分場を露出させるような侵食を生じるプロセスの存在を示唆するものは無いとしている。また、NAGRAが長期的な安全評価のために用いた地質学上の仮定は、慎重に収集および解析されたデータに基づいており、地質に関するデータを最新の技術を用いて適切にまた正しく解釈していると評価している。

また、KNEは同報告書の中で、深さ650mのオパリナス粘土層における処分場建設に関する工学的な概念の評価も行い、技術的に実現可能であるという結論を下している。なお、処分場のアクセス坑道のレイアウトや立坑の建設に関して、坑道の規模などに関するいくつかの重要な問題点や提案を示しているが、これらは処分場の実現可能性には影響しないとしている。

さらに、KNEは、評価報告書の中でNAGRAに対して、今後の調査の過程で明らかにされるべき問題点や勧告なども示している。これらの問題点の多くは、処分場の建設過程および放射性廃棄物の処分によって生じ得る熱の発生などの物理的および化学的な変化が、オパリナス粘土の特性に与える影響に関するものである。KNEは、これらの問題に関しては、将来処分場サイトに設置される地下特性調査施設での原位置試験によって解決されるべきであるという見解を示している。

一方、スイスの連邦エネルギー庁(BFE)は、2005年4月28日付のニュースリリースで、放射性廃棄物管理ワーキング・グループ(AGNEB)2 の年次報告書が公表されたことを発表した。同ニュースリリースによれば、このAGNEBの年次報告書には、NAGRAの「処分の実現可能性実証プロジェクト」に対する政府関係機関の評価に関する進捗などがまとめられており、評価結果の一つとして今回公表されたKNEによる評価報告書の要旨も示されているとしている。またAGNEBの年次報告書には、2004年4月に公表された経済協力開発機構/原子力機関(OECD/NEA)の国際レビューチームによる「処分の実現可能性実証プロジェクト」に対する評価報告書において、「NAGRAの安全評価は現行の国際的な勧告および慣行に適合しており、チュルヒャー・ヴァインラントでのオパリナス粘土層の好ましい特性と人工バリアシステムの安全性に関する科学的な根拠が提示されている」と評価されたことも言及されているとしている。

なお、同ニュースリリースでは、現在、HSKおよび原子力施設安全委員会(KSA)による「処分の実現可能性プロジェクト」報告書の評価も進められており、こうした結果は、2005年秋には公表される予定であるとしている。また、これらの報告書および専門家の意見を基に、連邦評議会が2006年中には今後の放射性廃棄物管理の進め方について決定を下す予定であるとしている

【出典】

  • 連邦エネルギー庁(BFE)2005年4月28日付プレスリリース http://www.entsorgungsnachweis.ch/news.php?userhash=&lID=1&newsID=26
  • 放射性廃棄物管理委員会(KNE)「NAGRAのチュルヒャー・ヴァインラントにおけるオパリナス粘土プロジェクト-地球科学的なデータの基礎および工学的な実現可能性についての判断」2005年2月 http://www.hsk.psi.ch/deutsch/files/pdf/gus_28_04_05_d.pdf
  1. 放射性廃棄物管理委員会(KNE):連邦地質学専門委員会(EGK)の小委員会として連邦環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)によって設置され、放射性廃棄物処分に関連した地球科学的な問題に関してHSKに助言を与える機関。 []
  2. 放射性廃棄物管理ワーキング・グループ(AGNEB):1978年に連邦評議会によって設置され、BFE、HSK、パウル・シェラー研究所(PSI)などの代表で構成されており、連邦評議会およびUVEKに代わり、スイスの放射性廃棄物管理に関する専門家の見解などをまとめる役割を有す。 []

(post by 原環センター , last modified: 2023-10-10 )