フィンランドの放射線・原子力安全センター(STUK)は、2010年9月30日付のプレスリリースにおいて、高レベル放射性廃棄物(使用済燃料)処分の実施主体であるポシヴァ社から提出を受けた「最終処分場の建設許可申請書の準備状況に関する報告書」(以下「準備状況報告書」という)に対する意見書を9月27日付で雇用経済省へ提出したことを公表した。STUKは、ポシヴァ社の報告書で示された建設許可申請書の準備状況が、概ね法令及び指針の要件と合致しているが、2012年末までにポシヴァ社が建設許可申請書を提出 するのは日程的に厳しいとするとともに、建設許可申請までに処分場の安全性に関する課題が解決されなければならないとしている。
STUKの意見書によれば、ポシヴァ社は、2003年10月の貿易産業省(現在の雇用経済省)の決定に示されたスケジュールに従って、雇用経済省に対し「準備状況報告書」を提出する1とともに、STUKに対し、建設許可申請時に提出する文書の作成状況を示す報告書を2009年12月に提出した2。その後、STUKは、雇用経済省から「準備状況報告書」に対する意見書の提出要請を受け、評価を行ったとしている。また、同意見書において、STUKの審査の目的は、「準備状況報告書」で示された建設許可申請書の準備状況、さらには建設許可申請の承認において重要な放射線学的及び原子力安全面での未解決課題の全体像を把握することであるとしている。
同意見書においてSTUKは、ポシヴァ社が作成した建設許可申請書の作成状況に関する報告書が、原子力令及び原子力廃棄物の処分の安全性に関する政令で要求されている資料に概ね対応するものである、という判断を表明している。ただし、ポシヴァ社が建設許可申請書を提出するまでには、以下の作業の実施が残っているとしている。
- STUKの要件に基づいた最終処分システム全体に関するシナリオの作成、及びそれらのシナリオに基づく放射性核種の放出及び移行に関する評価
- 人工バリア、特に、緩衝材の性能を示すために実施される研究開発及び評価作業
- 岩盤の分類体系の開発及びシステム性能の提示、及び地下特性調査施設(ONKALO) における最終処分坑道及び最終処分施設の建設の検証
なお、同意見書の中でSTUKは、建設許可申請書の作成状況に関する報告書に加えて、雇用経済省及びSTUKの要請に基づいてSTUKにポシヴァ社から提出された以下の資料を評価の際に考慮したとしている。
- 予備的安全解析報告書
- 設計段階の確率論的リスク解析報告書
- 原子力施設の安全性にとって重要な構造物、システム及び装置の分類が示される分類文書のための草案
- 建設面での品質管理に関する報告書
- 防護体制のための暫定計画
- 緊急時体制のための暫定計画
- 核物質の拡散防止に必要な保障措置の計画
- 原子力法の第19条第7項に言及されている取決めに関する報告書
- 安全性の論拠
- 最終処分された使用済燃料の回収可能性に関する報告書
- 輸送面での安全性の評価
- 政令及びYVL(STUK指針)プログラムの要件の遵守に関する報告書
- 施設劣化の管理原則に関する報告書
- 原子力施設の建設プロジェクトに関する計画
【出典】
- 放射線・原子力安全センター(STUK)、2010年9月30日付プレスリリース
- 放射線・原子力安全センター(STUK)、「使用済燃料最終処分の準備-ポシヴァ社の暫定報告書」、2010年9月27日
http://www.stuk.fi/stuk/tiedotteet/fi_FI/news_605/_files/84268826472154798/default/lausunto-kaytetyn-ydinpolttoaineen-loppusijoituksen-valmistelu-posiva.pdf - 原子力令
- ポシヴァ社は、建設許可の申請準備に関連した資料をSTUKとは別に、2009年9月に雇用経済省に提出していた。(http://www.posiva.fi/en/news/other_topical_issues/posiva_aiming_to_submit_a_construction_licence_application_in_2012.html) [↩]
- 原子力施設の建設許可申請時に許可申請者が雇用経済省及びSTUKに提出する文書は、原子力令第32条及び第35条でそれぞれ定められている。 [↩]
(post by t-yoshida , last modified: 2023-10-11 )