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《米国》エネルギー省(DOE)が高レベル放射性廃棄物の中間貯蔵施設の同意に基づくサイト選定プロセスを更新

米国エネルギー省(DOE)は、2023年4月25日に、2017年1月発行の「使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物の集中貯蔵・処分施設のための同意に基づくサイト選定プロセス案」(以下「サイト選定プロセス案」という。) を更新した。新たなサイト選定プロセス文書は「連邦使用済燃料集中中間貯蔵施設のための同意に基づくサイト選定プロセス」と改題された。米国では、1950年代から始まった商業原子力発電にともなって90,000トンを超える使用済燃料が発生しており、原子力発電所のプールや乾式貯蔵キャスクによって貯蔵されている。この他に、海軍の原子力艦船や研究開発から約2,400トンの使用済燃料がある。DOEは、これら70カ所以上に分散して貯蔵されている使用済燃料の対策に注力する方針を鮮明にした。

今回の新たなサイト選定プロセス文書では、公衆の安全、環境の保護に向けた取組などの方向性の説明に重点が置かれている。DOEは、サイト選定プロセス文書の更新を紹介するニュース記事において、「同意に基づくサイト選定」は、コミュニティを中心に置いたアプローチであり、バイデン大統領による環境正義(environmental justice)の目標に沿って 1 、不利な立場にあり重圧の押しかかるコミュニティへの健康と安全への影響を軽減するのに役立つとの考え方を示している。

■サイト選定プロセス文書更新の背景

今回のサイト選定のプロセス文書の更新に先立ってDOEは、連邦政府による使用済燃料の中間貯蔵に係るサイト選定のための同意に基づくサイト選定計画に関して、2021年12月1日に情報依頼書(RFI、Request For Information)を官連邦報において告示し、コメントや意見を広く募集していた。その後、DOEは2022年9月に、RFIに対して寄せられた225件のコメントの他、2017年1月のサイト選定プロセス案に対するコメントも集約して報告書「同意に基づくサイト選定―情報依頼(RFI)コメントの要約・分析」を取りまとめていた

更新されたサイト選定プロセス文書を掲載したページでは、①使用済燃料のための1つ、または、複数の連邦集中中間貯蔵施設を立地すること、②DOEの2017年1月のサイト選定プロセス案に基づいて新たなサイト選定プロセス文書が作成されていること、③サイト選定プロセスは、地域社会、先住民族、州、地方自治体、ステークホルダーからの情報により、引き続き更新されることが記されている。

DOEは、サイト選定プロセス文書に対する4つの重要な更新ポイントを次のように説明している。

  1. 現在は、連邦の集中中間貯蔵施設に焦点がある。
    新しいサイト選定のプロセス:DOEは、近い将来の行動として、商業用使用済燃料のための1つ、または、複数の連邦集中中間貯蔵施設の立地に焦点を当てる。
    従来のサイト選定のプロセス:高レベル放射性廃棄物の中間貯蔵施設に加えて、地層処分施設に対して、同意に基づくサイト選定プロセスを同時に適用することを想定していた。
    説明:中間貯蔵に焦点を当てることは、全米の原子炉サイトからの使用済燃料の取り出しを可能にし、地元での新しい雇用機会を促進するという連邦議会の指示に従っている。
    DOEは、この同意に基づくサイト選定アプローチから学んだ教訓を、集中中間貯蔵容量、処分場、並びに、使用済燃料・高レベル放射性廃棄物の輸送に必要なインフラ整備のための将来のサイト選定に適用する。
    また、DOEは、処分オプションのための研究開発を引き続きサポートする。
  2. 公平と環境正義の一層の重視
    新しいサイト選定のプロセス:十分な行政サービスを受けていない脆弱なコミュニティが標的になることを防止するため、すべてのコミュニティの公平な取扱と有意義な関与(involvement)を確保するため、追加的な手順が取られた。
    従来のサイト選定のプロセス:プロセスの各段階において、公平と環境正義に関する考慮事項がほとんど組み込まれていなかった。
    説明:2017年1月のサイト選定プロセス案には、公平と環境正義に関連する基準が含まれてはいたが、DOEは最近の一般からのコメントに対応して、これらの側面を強化した。
    また、使用済燃料の管理など、長期間にわたって発生する活動について、世代間の公平を考慮することの重要性を強調した。
  3. サイト固有の評価基準の策定において、ホストとなるコミュニティの役割を高めた
    新しいサイト選定のプロセス:関心のあるコミュニティは、施設の立地がコミュニティの目標と関心に合致することを確実にするため、プロセスの早い段階で追加のサイト固有の基準の作成に関与する機会を持つことを可能にした。
    従来のサイト選定のプロセス:DOEは最初に、サイト選定に関する考慮事項とスクリーニング基準を作成することとしていた。
    説明:ここでの考え方は、より優れたコミュニティ主導のプロセスへの包括的なアプローチに基づいている。個々のコミュニティは、施設の立地を決定する前に、地域の経済発展、労働市場、輸送、公共の安全インフラなどへの影響を評価できるようにした。
  4. コミュニティ参加をサポートするための資金提供の機会の拡大検討
    新しいサイト選定のプロセス:サイト選定プロセス文書では、重要な活動におけるコミュニティの関与と協力をサポートするため、実施段階を含め、サイト選定プロセスの各段階における資金提供の機会とその他の資源の使用について概説している。
    従来のサイト選定のプロセス:資源は、プロセスの1つのフェーズで可能な資金提供の機会に限定されていた。
    説明:追加の資金提供の機会は、プロセス全体を通じてコミュニティの関与とコラボレーションをサポートすることを目的としており、連邦政府の年間予算と歳出(Annual Budget and appropriations)の対象となる。
    本資金提供は、使用済燃料の受け入れを約束(commitment)するものではない。

また、DOEは、同意に基づくサイト選定プロセスは、コミュニティの要求などに対応できるよう、柔軟で適応性があることに触れた上で、次のステップとして、現在の資金提供の機会(上記ポイント4)、今後も継続していく情報提供やその他の活動を通じて、公衆との対話/関与のための機会を引き続き提供していくことを明らかにしている。

【出典】

 

【2023年5月10日追記】

米国では、エネルギー省(DOE)により、使用済燃料の集中中間貯蔵施設のための同意に基づくサイト選定プロセスが進められている一方で、テキサス州及びニューメキシコ州で民間による集中中間貯蔵施設の計画が進められている。ただし、両州での計画については、貯蔵等を禁止する州法が成立しており、実際の建設等は難しい状況となっている。

テキサス州アンドリュース郡で中間貯蔵パートナーズ(ISP)社が計画している使用済燃料等の集中中間貯蔵施設の建設・操業 2 については、すでに、原子力規制委員会(NRC)が建設・操業に係る許認可を2021年9月13日に発給している。これを受けてテキサス州は、NRCが発給した許認可の取り消しを求める訴訟を2021年9月23日に起こしている

今般、NRCは、ニューメキシコ州リー郡のサイトでホルテック・インターナショナル社(以下「ホルテック社」という。)が計画している使用済燃料等の集中中間貯蔵施設について、建設・操業に係る許認可を2023年5月9日に発給した 3 。NRCは、ホルテック社の許認可申請書の審査に基づいて、許認可で承認される活動は公衆の健康と安全を脅かすことなく実施できること、これらの活動はNRC規則(10 CFR Part 72)を遵守して実施されることについて、2023年5月9日付けのホルテック社宛の許認可書送付書簡において、合理的な保証があるなどと判断したことが示されている。

ただし、テキサス州の場合と同様に、ニューメキシコ州でも貯蔵等に関する州法(SB53)が成立していることにより、集中中間貯蔵施設の建設・操業については、実際には行えないことが見込まれる。

【出典】


  1. バイデン大統領は、2023年4月21日に、全ての国民のための環境正義の実現へ向けて各政府機関に取り組むよう指示する大統領令に署名した。[]
  2. ISP社は、テキサス州アンドリュースにおいて、プロジェクトの第1段階として5,000トン、最終的には全8段階で最大40,000トンの使用済燃料等の貯蔵を行う計画である。[]
  3. ホルテック社は、ニューメキシコ州リー郡において、プロジェクトの第1段階として約8,680トン、最終的には全20段階で約10万トンの使用済燃料等の貯蔵を行う計画である。[]

(post by inagaki.yusuke , last modified: 2023-10-11 )