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《フランス》国家評価委員会(CNE)が第16回評価報告書を公表

フランスの国家評価委員会(CNE)は、第16回評価報告書を議会科学技術選択評価委員会(OPECST)に提出し、2022年7月にCNEウェブサイトで公表した。CNEは、2006年の放射性廃棄物等管理計画法  の規定に基づいて、放射性廃棄物等の管理に関する取組や調査研究等の進捗状況について毎年評価を行い、評価結果を報告書に取りまとめて議会に提出している。なお、前回の第15回報告書は2021年7月8日に公表されている 。

これまでCNEは、「放射性物質及び放射性廃棄物の管理に関する国家計画」(PNGMDR)及びこれに基づいて実施される調査・研究等を主な評価対象としてきた。しかし、PNGMDRは第4版(2016年~2018年)以降、新たな版の発行が遅延しており、第5版(2022-2026年)は現在も発行に至っていない。このような状況の下、今回のCNEの第16回報告書では、近年の小型モジュール炉(SMR)等の新型炉の導入に関する検討の進展等を受け、将来に導入される原子炉の選択によって、核燃料サイクルや放射性廃棄物の管理に関する研究開発や原子力産業が数十年間にわたり影響を受けると考えられること、並びに原子力発電所の開発に関する決定を行う前に、放射性廃棄物管理に関する明確な方針を確立することが不可欠であることを示し、従来からの放射性廃棄物管理に関する評価に加え、新型炉と核燃料サイクルに関する国際動向等についても評価を行っている。

■放射性廃棄物の処分等について

フランスにおける放射性廃棄物の処分等については、以下の見解や勧告が示されている。

<高レベル及び中レベルの長寿命放射性廃棄物>

  • 地層処分場(Cigéo)の設置認可申請書を遅滞なく提出するための科学的・技術的条件はすべて満たされている。
  • 長期貯蔵は受動的安全ではなく、継続的な監視と定期的な廃棄物の再コンディショニングが必要である。これは、将来の世代が廃棄物を管理する技術的・財政的な能力を保持していると仮定して、人々と環境を保護する負担を転嫁しようとするものであり、地層処分の代替とはならない。
  • 現在までのところ、高レベル及び中レベルの長寿命放射性廃棄物の地層処分に代わる信頼できる方法はない。比較的早い時期に開発された特定のマイナーアクチノイドを核種変換するという戦略があるが、核種変換を行っても地層処分から解放されるわけではない。しかし、高レベル放射性廃棄物の処分パッケージの発熱量を小さくすることで、地層処分場の設置面積を減らす機会を提供することができる。そのためには、多くの技術開発課題を克服し、適切な原子炉を数世紀にわたって維持することが必要である。

<使用済燃料の中間貯蔵>

  • 使用済燃料の中間貯蔵は、核燃料管理における過渡的なステップである。
  • CNEは、使用済燃料の経年劣化と貯蔵インフラに関する研究を強化し、再処理、貯蔵に拘わらず、燃料の引き取りと取り扱いが確実にできるようにすることを勧告する。

<長寿命低レベル放射性廃棄物>

  • 長寿命低レベル放射性廃棄物は、その性質が多様であり、量が多い発熱性廃棄物である。放射性毒性が低いことから、放射性廃棄物管理機関(ANDRA)は地下数十メートルの深さに処分することを検討している。
  • 数万年以上の安全機能の立証は、これまでと同様にシナリオを用いることになるが、これは安全当局と協議の上、定義する必要がある。

<極低レベル放射性廃棄物>

  • 極低レベル放射性廃棄物の多くは、原子力施設の解体・廃止措置作業で発生する。
  • CNEは、原子力事業者に対し、効率性を高めるために、解体・廃止措置業務に関する協力を強化することを奨励する。
  • 既存の原子炉の運転終了後に発生する極低レベル放射性廃棄物の量は、処分場の利用可能な容量を超えていると考えられる。廃止措置の停滞を避けるために、既存の処分場の拡張や新規処分場の建設を十分な時間的余裕をもって行う必要がある。

■新型炉と核燃料サイクルに関する国際動向について

CNEは、第16回報告書において、新型炉と核燃料サイクルに関する国際動向を広く概観して、国・地域別の動向について、以下のように分析している。

<英国、米国>

  • 気候変動を背景とした、特に石炭火力発電の代替という経済的な要因と、新たに原子力発電設備の導入を希望する国々に対する中国やロシアとの競争という地政学的な要因により、小型モジュール炉(SMR)の導入を図り、使用済燃料の再処理を行わない「オープンサイクル」の原子力開発が進んでいる。

<ロシア、アジア主要国>

  • 主にエネルギー主権の追求のために、使用済燃料のリサイクル(エネルギー回収)を目的とした核燃料サイクルのクローズド化を目標としている。
  • 小型モジュール炉(SMR)に関しては、ロシアではすでに35MWeの船上設置型原子炉を2基建設し、稼働中である。

<フランスを除く欧州諸国>

  • 核分裂よりも核融合に対する取り組みへの支援が優先されている。
  • 高レベル放射性廃棄物の処分に向けた取り組みが進捗している。
  • 小型モジュール炉(SMR)等の革新的な核分裂型の原子炉の研究は、ごく初期の調査・研究からほとんど進んでいない。

CNEはこれらの概観から、主な所見として以下の事項を示している。

  • 小型モジュール炉(SMR)の設計をめぐる大きな動きが進んでいる。
  • 使用済燃料を再処理しない「オープンサイクル」政策に伴い、核燃料サイクルに関する議論が希薄となっている。
  • 原子力発電の需要増は、ウラン消費量全体の大幅な増加をもたらす可能性がある。

【出典】

(post by eto.jiro , last modified: 2023-10-11 )