Learn from foreign experiences in HLW management

《スペイン》放射性廃棄物管理の第5次研究開発計画策定

2004年5月、スペインの放射性廃棄物管理の実施主体であるスペイン放射性廃棄物管理公社(ENRESA)は、2004-2008年の5年間を対象とする第5次研究開発計画を策定したことをニュースリリースで公表した。この計画は、1999-2003年を対象とした第4次研究開発計画を引き継ぐもので、スペインにおける放射性廃棄物管理全般を対象としている。ニュースリリースでは、新研究開発計画の位置付け、策定経緯に加え、計画の概要が示されており、5年間における投資額は約2,900万ユーロ(1ユーロ132円として約38億円)とされている。

スペインでは、放射性廃棄物管理全般の実施主体であるENRESAが研究開発も推進することとされており、1987年以来研究開発計画を策定し、研究開発活動を行ってきた。ニュースリリースによれば、今回の2004-2008年の新研究開発計画も、これまでの研究成果及び施設をベースとし、スペインの放射性廃棄物管理の基本計画である第5次総合放射性廃棄物計画(詳細は こちら)と密接な関連を持つものとして、現在の環境条件に対応して策定されたことが示されている。ニュースリリースで紹介された新研究開発計画の概要は以下の通りである。

方法論及び環境条件

科学的・技術的適合性を社会的・政治的に受容可能にするため必要な段階的戦略を基本として、高レベル、中・低・極低レベル放射性廃棄物、廃止措置、国際的状況、技術状況、ENRESA戦略の各項目ごとの計画立案上の環境条件が示されている。高レベル放射性廃棄物に関しては次の4点が挙げられている。

  • 使用済燃料の長期的解決策は、主に深地層処分を想定
  • 核種分離・変換は、工業的に実行可能な場合は深地層処分でも廃棄物容積・特性等を考慮
  • 原子力発電所の廃止等に伴い、使用済燃料中間貯蔵施設の容量追加が必要
  • 計画実施期間中にEUまたは国際原子力機関(IAEA)が、特別な手続/計画の確立を各国に求める可能性あり

計画の目標

研究開発計画の目標は、戦略上、科学・技術上、国際協力上の3区分で示されている。高レベル放射性廃棄物に関連するポイントは以下に示す通りである。

  • 戦略上の目標
    • 最終管理オプション、深地層処分、安全評価等に関する戦略書類作成支援
    • 使用済燃料管理展開のための実証済み技術、知見等の利用可能性
    • 国際協力の維持
    • 研究開発で得られた知見の管理
  • 科学・技術上の目標
    • 地層処分場(粘土及び花崗岩層)で重要なプロセス、パラメータ、モデルでの不確実性低減
    • 処分場の影響を含む地質バリア総合的機能の特性把握技術改善
    • 処分場建設から閉鎖に至るエンジニアリングに関する研究開発の開始
  • 国際社会での目標
    • 各階層での国際協力の維持(国、機関、多国間組織及び研究センターレベル)
    • EUの第6次フレームワーク計画への積極参加
    • 地下研究所等の作業の一本化による作業効率の改善
    • スペインの事例に適用可能なプロジェクトへの集中

計画の管理

今回の研究開発計画の最も革新的な点の一つとして計画の管理が挙げられており、以下のポイントが示されている。

  • プロジェクトは可能な限り統合
  • 計画遂行のため研究者及び研究機関の役割強化
  • ENRESAの情報ツールの活用
  • 活動の統合、管理改善、成果の確実な活用等のため、技術局長職を新設

なお、スペインでは、高レベル放射性廃棄物の最終管理方針に関する決定は2010年までの間延期し、地層処分技術および核種分離・変換の研究を行っていく方針が採られている。また、スペインにおけるこれまでの研究開発計画は以下の通り、策定、実施されてきた。
    第1次研究開発計画:1987年~1991年
    第2次研究開発計画:1991年~1995年
    第3次研究開発計画:1995年~1999年
    第4次研究開発計画:1999年~2003年

新研究計画書は同社のウェブサイトでは未だ公開されていない(2004年6月3日時点)。

【出典】

  • スペイン放射性廃棄物管理公社(ENRESA)ニュースリリース
    (http://www.enresa.es/ultimahora/Not10/noticia.html)
  • スペイン放射性廃棄物管理公社(ENRESA)技術報告書PT-07-01
    (IV Jornadas de investigacion y desarrollo tecnologico en gestion de residuos radiactivos)

(post by 原環センター , last modified: 2023-10-10 )