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《米国》2021会計年度の予算要求-ユッカマウンテン計画の膠着状態を傍観せずに代替の解決策を開発するとの方針を表明

米国で2020年2月10日に、2021会計年度1 の大統領の予算教書が連邦議会に提出され、大統領府管理・予算局(OMB)のウェブサイトで公表された。使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物(以下「高レベル放射性廃棄物」という。)の管理についてトランプ政権は、ユッカマウンテン計画の膠着状態を打破して進展を図るため、代替の解決策(alternative solutions)を開発するためのプロセスを開始し、実行可能な方策の開発において州を関与させていくとの方針が示されている。

また、大統領の予算教書では、代替の解決策の開発と並行して、立地点(host)になる意思のある場所での展開可能なシステムに焦点を合わせた、高レベル放射性廃棄物のロバストな中間貯蔵プログラムの実施、貯蔵・輸送・処分のための代替技術の研究開発をサポートすることも示されている。予算教書の添付資料では、高レベル放射性廃棄物処分の項目において、「中間貯蔵及び放射性廃棄物基金監督(Interim Storage and Nuclear Waste Fund Oversight)」プログラムの予算として27,500千ドル(29億7,000万円、1ドル=108円で換算)が計上されている。同プログラムでは、中間貯蔵プログラムの開発及び実施のほか、ユッカマウンテンの維持や環境要件、セキュリティ関連の活動など1982年放射性廃棄物政策法で規定された管理義務を含め、放射性廃棄物基金の監督を行うことが示されている。

エネルギー省(DOE)のウェブサイトでは、2021会計年度の予算要求に関するプレスリリースが発出され、DOEの予算要求のファクトシートが公表されているが、高レベル放射性廃棄物の管理については言及されておらず、現状、予算要求の具体的な内容は不明である。

なお、DOEの高レベル放射性廃棄物処分に関連する活動について、2020会計年度の歳出法では、使用済燃料処分等(UNFD)研究開発プログラムとして62,500千ドル(67億5,000万円)、「統合放射性廃棄物管理システム」(IWMS)として25,000千ドル(27億円)を割り当てる歳出予算が計上されているが、これらの予算要求の詳細も不明である。

一方、原子力規制委員会(NRC)の予算要求資料では、2021会計年度の予算要求においては、ユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可申請書の審査活動のための予算は含まれていないことが示されている。

これまでユッカマウンテン計画については、トランプ大統領の2020年2月6日のTwitter投稿において、ユッカマウンテンに関するネバダ州の意見を聴いて尊重すること、政権は革新的なアプローチを探ることを確約することが示されていた。ユッカマウンテン計画に反対するネバダ州では、ユッカマウンテン関連の予算を要求しないことを評価する旨のプレスリリースをネバダ州知事が発出している。

【出典】

 

【2020年2月27日追記】

米国のエネルギー省(DOE)は2020年2月26日に、DOEのウェブサイトにおいて、2021会計年度1 の原子力等(第3巻パート2)の予算要求に係る詳細資料(以下「DOE予算要求資料」という。)を公表した。2021会計年度の予算要求については、2020年2月10日に大統領の予算教書が公表されたが、使用済燃料管理等に係るDOEの予算要求資料については、概要資料のみが公表されていた。DOE予算要求資料では、使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物(以下「高レベル放射性廃棄物」という。)の管理については、予算教書の添付資料で示されていた「中間貯蔵及び放射性廃棄物基金監督(Interim Storage and Nuclear Waste Fund Oversight)」プログラムの27,500千ドル(29億7,000万円、1ドル=108円で換算)のほか、「使用済燃料処分等(UNFD)研究開発プログラム」として60,000千ドル(64億8,000万円)が要求されている。

DOE予算要求資料では、新設する「中間貯蔵及び放射性廃棄物基金監督」プログラムの任務は、ロバストな中間貯蔵プログラムの構築と実施のほか、ユッカマウンテンの監督責任のサポート、放射性廃棄物基金の管理を継続することとしている。また、中間貯蔵の実施により以下のような便益が得られるとしている。

  • 連邦政府による高レベル放射性廃棄物のより早期の受入れ
  • 分散した貯蔵サイトのサイト数の減少
  • システムへの柔軟性の付加
  • 大規模な放射性廃棄物管理の制度的・技術的インフラの短期的な開発、実証

「中間貯蔵及び放射性廃棄物基金監督」プログラムのうち、中間貯蔵のための準備についての初期の重要な実施事項としては、以下が示されている。

  • 統合的なプログラムプランの開発
  • 州、先住民族及び地方政府と他の関係省庁との協働(Working with)
  • 可能性あるサイトの同定プロセスの開始
  • 予備的な設計概念の開発
  • オプション分析と輸送計画に情報提供するため、高レベル放射性廃棄物の発生量に関する重要データの分析・アップデート、並びにインベントリに関する詳細情報の収集
  • 計画の実施及び規制環境の要求を支援するためのプロセス及び手順の実施
  • 大規模な輸送のために必要なシステム能力及びインフラ整備のための継続的な取組

また、ユッカマウンテンの監督責任のサポート、放射性廃棄物基金の管理に関しては、以下の実施項目が示されている。

  • 放射性廃棄物基金の投資ポートフォリオに係る適切な投資戦略の実施と慎重な管理
  • ユッカマウンテンサイトについて、DOE令(DOE Order 473.3A)に基づく物的防護要件、メンテナンスや環境要件の維持
  • 連携する連邦スタッフ等をサポート

なお、「中間貯蔵及び放射性廃棄物基金監督」プログラムの活動は、放射性廃棄物基金からの支出で賄うものとされている。

一方、DOEの高レベル放射性廃棄物処分関連の研究開発に係る予算に関しては、DOE原子力局(NE)の燃料サイクル研究開発プログラムの下の「使用済燃料処分等研究開発プログラム」(UNFD研究開発プログラム)において、処分方策に中立的な放射性廃棄物管理プログラムの開発や高レベル放射性廃棄物のインベントリを勘案したオプションを開発することに主な焦点を当てるとして、60,000千ドル(64億8,000万円)の予算が要求されている。なお、これまでのUNFD研究開発プログラムについては、2019年12月に連邦議会が可決した2020会計年度歳出法では62,500千ドル(67億5,000万円)が計上されたが、DOEの予算要求額は5,000千ドル(5億4,000万円)のみであった。

DOE予算要求資料では、UNFD研究開発プログラムにおいて2021会計年度に実施する活動のうち、直接的に処分に関連する事項としては以下が示されている。

  • 粘土質岩及び結晶質岩における処分に係る性能評価ツールとプロセスレベルのモデルの統合及び実施手法の評価。不確実性の定量化と感度解析の解析ソフトウェアを含む統合モデル化ツール
  • 岩塩における発熱性廃棄物の処分に係る科学的・工学的技術基盤の継続
  • 様々な地層で実施されている研究開発を活用するための国際的パートナーとの協力を含め、様々な廃棄物及び使用済燃料の廃棄体の代替処分オプション探求に関連した研究開発活動の継続
  • キャニスタの再パッケージの必要性を解消することができるよう兼用キャニスタの直接処分の技術的フィージビリティを評価
  • 新しい事故耐性燃料の貯蔵・輸送・処分性能特性の試験、評価

UNFD研究開発プログラムにおいては、高レベル放射性廃棄物の貯蔵・輸送・処分の代替技術・経路に関して、展開可能な解決策に焦点を当てて評価することに加え、短期の貯蔵の解決策に係るプログラムの決定を支援する技術的解析には更なる焦点を当てることも示されている。

なお、2020年度歳出法で25,000千ドル(27億円)が計上された「統合放射性廃棄物管理システム」(IWMS)については、廃止が提案されている。ただし、従来はIWNSに含まれていた中間貯蔵及び輸送計画に関する活動については、今回新設された「中間貯蔵及び放射性廃棄物基金監督」プログラムに移管されている。

DOEの環境管理局(EM)の予算要求書である第5巻「環境管理」において、米国で超ウラン核種を含む放射性廃棄物(TRU廃棄物)の地層処分場として操業中の廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)については、換気システムの建設が完了すると見込まれることなどから、2020会計年度歳出法より13,647千ドル(約14億7,000万円)少ない383,260千ドル(約414億円)が計上されている。

【出典】

 

【2020年3月4日追記】

米国の連邦議会上院のエネルギー・天然資源委員会は、2020年3月3日に、エネルギー省(DOE)の2021会計年度1 の予算要求に係る公聴会を開催した。公聴会には、エネルギー長官が証人として出席し、証言と質疑応答が行われた。エネルギー長官の証言では、2020年2月26日に公表されたDOE予算要求資料と同様の方針が示されたのみであったが、質疑応答の中でエネルギー長官は、最終処分場としてユッカマウンテンを追い求めることをしないとの発言があった。

エネルギー長官のユッカマウンテンに関する発言は、エネルギー・天然資源委員会の委員であるマスト議員(ネバダ州選出、民主党)からの質問に対する回答として示された。具体的にマスト議員は、現政権はユッカマウンテンにおける恒久処分への道をいまだに模索しているのかとの質問を行った。これに対してエネルギー長官は、ユッカマウンテンは1982年放射性廃棄物政策法(1987年修正)に基づく手続きで最終処分場として指定されているものの、ユッカマウンテン計画の予算をゼロとしているのも法律であること、この膠着状態は連邦議会やネバダ州における声に拠るところが大きいことから、ネバダ州の反対を押してユッカマウンテンを追い求めることは止めることを大統領が決定するに至ったことなどを回答した。その上でエネルギー長官は、連邦議会の記録に残る発言として、「現政権は、最終処分場としてユッカマウンテンを追い求めることはしない」と明言したものである。

さらなるマスト議員の質問に対してエネルギー長官は、仮にユッカマウンテン計画に係る予算を連邦議会が付けた場合にはその法律に従うが、現政権の意図はユッカマウンテンの代替方策を探すことであること、州やステークホルダーが発言権を持つようなプロセスを支持すること、その議論にはネバダ州の参画も考えていることなども表明している。

なお、連邦議会では、下院歳出委員会においても2020年2月27日にDOEの予算要求に係る公聴会が開催されており、エネルギー長官からは今回と同様の証言書が提出されている。また、上院歳出委員会では、2020年3月4日にDOE予算要求に係る公聴会の開催が予定されている。

【出典】

 

【2020年7月17日追記】

米国の連邦議会下院の歳出委員会は、2020年7月13日に開催した法案策定会合において、2021会計年度1 のエネルギー・水資源開発歳出法案(H.R.7613、以下「歳出法案」という。)を承認し、2020年7月15日付で下院本会議に提出した。2021会計年度の予算において、ユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可審査手続きの再開等のための予算については、エネルギー省(DOE)や原子力規制委員会(NRC)の予算要求資料でも要求されておらず、今回承認された歳出法案においても計上されていない。

歳出法案に付随する下院歳出委員会報告書(H.Rept.116-449、以下「委員会報告書」という。)では、「放射性廃棄物処分(Nuclear Waste Disposal)」プログラムとして、27,500千ドル(30億2,500万円、1ドル=110円で換算)が計上されている。これは、DOEの予算要求資料において「中間貯蔵及び放射性廃棄物基金監督(Interim Storage and Nuclear Waste Fund Oversight)」プログラムとして要求されていた予算額を全額認めるものであるが、放射性廃棄物基金からの支出で賄うのは放射性廃棄物基金監督に係る7,500千ドル(8億2,500万ドル)のみとしている2。また、委員会報告書では、中間貯蔵に係るDOEの提案は詳細さに欠けて一般的なものが多く失望しているとした上で、連邦政府による中間貯蔵施設のサイトを選定するための活動を、現行のDOEの法的権限の範囲で、同意に基づくアプローチを活用して進めることを指示している。

一方、DOEの高レベル放射性廃棄物処分関連の研究開発に係る予算については、「使用済燃料処分等(UNFD)」プログラムの一般的な研究開発活動を継続するための予算として62,500千ドル(68億7,500万円)が計上されているほか、「統合廃棄物管理貯蔵(IWMS、Integrated Waste Management Storage)の予算として25,000千ドル(27億5,000万円)が計上されており、これは2020会計年度の歳出法と同額の予算となっている。また、委員会報告書では、UNFDプログラムについて、輸送中の使用済燃料の挙動等の研究を継続することを指示するとともに、DOEの予算要求には含まれていなかったIWMSプログラムについては、廃止措置された原子力発電所等での準備活動の継続、輸送活動再開に係る評価や調整などを行うことが指示されている。

また、超ウラン核種を含む放射性廃棄物(TRU廃棄物)の地層処分場として操業中の廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)については、DOEの予算要求額を40,000千ドル(44億円)上回る423,260千ドル(465億5,860万円)が計上されている。委員会報告書では、このうち10,000千ドル(11億円)は地域のインフラ整備費用として、歳出法案の施行後60日以内にその計画について連邦議会に報告するようDOEに指示している。

なお、下院歳出委員会の法案策定会合で共和党議員からは、ユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可申請書の審査手続の再開等のための予算が計上されていないことへの批判が示されたが、これらの予算を計上するような歳出法案の修正案は提出されなかった。

ネバダ州選出のタイタス下院議員からは、下院の歳出法案において、ユッカマウンテンプロジェクト再開に係る予算が計上されなかったことなどを歓迎するプレスリリースが発出されている。

【出典】

 

【2020年8月17日追記】

米国の連邦議会下院は、2020年7月31日の本会議において、2021会計年度1 の「国防、商務、司法、科学、エネルギー・水資源開発、金融財務・一般政府、労働、保健福祉、教育、運輸、住宅・都市開発の歳出法案」(H.R.7617、以下「統合歳出法案」という。)を、217対197で可決した。統合歳出法案は、「2021会計年度国防歳出法案」(H.R.7617)に、「エネルギー・水資源開発歳出法案」(H.R.7613)などを統合して、6つの歳出法案をまとめたものである。統合歳出法案における高レベル放射性廃棄物管理に係る予算については、2020年7月13日に下院歳出委員会で承認された内容から修正はなく、ユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可手続きの再開等のための予算は計上されていない。なお、統合歳出法案に付随するエネルギー・水資源開発分野の委員会報告書は、2020年7月13日に下院歳出委員会で承認されたもの(H.Rept.116-449)となっている。

統合歳出法案の下院本会議における審議においては、下院歳出委員会エネルギー・水資源開発小委員会及びエネルギー・商務委員会環境小委員会のそれぞれの少数党最上席議員であるシンプソン議員及びシムカス議員(いずれも共和党)らから、ユッカマウンテン許認可手続きの再開に係る予算計上が必要であるなどとする発言が行われたが、ユッカマウンテン許認可手続きの再開に係る修正案の本会議審議は行われなかった。シムカス議員の発言においては、ユッカマウンテン処分場の許認可審査の完結を引き続き支持することなどを表明するものとして、ユッカマウンテンの立地自治体であるネバダ州ナイ郡の決議も公式の記録として提出されている。

一方、ネバダ州選出の下院民主党議員の一部からは、ユッカマウンテン許認可手続きの再開のための予算が統合歳出法案に計上されなかったことを評価し、今後もネバダ州における処分場建設には反対を続けていくことなどを表明するプレスリリースが発出されている。

【出典】

 

【2020年10月2日追記】

米国の連邦議会は2020年9月30日に、2021会計年度(2020年10月1日~2021年9月30日)のうち、2020年10月1日から2020年12月11日までを対象とした継続歳出法案(H.R.8337)を可決し、継続歳出法案は2020年10月1日に大統領の署名を得て法律(Public Law No.116-159)として成立した。継続歳出法案(H.R.8337)は、連邦議会下院本会議では2020年9月22日に359対57で、連邦議会上院本会議では2020年9月30日に84対10で、それぞれ賛成多数で可決されていた。継続歳出法の成立により、米国での予算の空白が当面は回避されたことになる。

今回成立した2021会計年度の継続歳出法(Public Law No.116-159)は、2020年12月11日までの期間について、2020会計年度の予算を規定した歳出法 での予算と同じレベルでの歳出を認めるものである。高レベル放射性廃棄物処分に関連する予算を含むエネルギー・水資源分野については、2020会計年度の歳出法として、追加的包括歳出法案(Public Law No.116-94)が制定されていた。継続歳出法による予算は、原則として前年度予算と同率で比例配分され、特段の規定が無い限り、前年度で未計上の事業・プログラム等の実施は認められない。

なお、2021会計年度の継続歳出法(Public Law No.116-159)では、ユッカマウンテン処分場関連、軍事起源のTRU廃棄物の地層処分場である廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)関連、使用済燃料等の中間貯蔵施設関連を含め、放射性廃棄物の貯蔵・処分に関する特段の規定は無い。

【出典】

 

【2020年11月11日追記】

米国の連邦議会上院の歳出委員会は2020年11月10日に、2021会計年度のエネルギー・水資源歳出法案の原案(以下「歳出法案原案」という。)、及び法案に付随する説明文書(Explanatory Statement、以下「付随説明文書」という。)を公表した。歳出法案原案では、前年度の上院歳出法案(S.2470)と同様に、中間貯蔵施設のパイロットプログラムの実施等をエネルギー長官に命じる規定が置かれているが、ユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可審査手続きの再開等のための予算は計上されていない。なお、上院歳出委員会のプレスリリースでは、連邦議会下院との交渉が開始されるに当たり、下院歳出委員会の委員長等と超党派で相違点を解決するように協力したいとのメッセージが示されている。

今回公表された付随説明文書では、エネルギー省(DOE)の高レベル放射性廃棄物処分関連の活動について、燃料サイクル研究開発プログラムの下で、「放射性廃棄物処分(Nuclear Waste Disposal)」として、使用済燃料の集中中間貯蔵の計画を実施するための予算として27,500千ドル(30億2,500万円、1ドル=110円で換算)が計上されている。このうち、10,000千ドル(11億円)を上限とした予算において、エネルギー長官が現行の権限内で、使用済燃料の管理に係る民間事業者との契約などを締結するものとしている。また、「使用済燃料処分等(UNFD)プログラム」には、30,000千ドル(33億円)が計上されているが、「統合廃棄物管理システム(IWMS、Integrated Waste Management System)」の予算は計上されていない。

歳出法案原案に盛り込まれた中間貯蔵関連の条項では、2020会計年度の上院歳出法案(S.2470)と同様に、以下のような内容が規定されている。

集中中間貯蔵のパイロットプログラム(歳出法案原案、第306条)

  • 使用済燃料等を中間貯蔵するため、1つまたは複数の連邦政府の集中貯蔵施設の許認可取得、建設、操業のためのパイロットプログラムを実施することをエネルギー長官に許可
  • エネルギー長官は、歳出法案の施行後120日以内に、集中貯蔵施設の建設許可取得や輸送等の協力協定についてのプロポーザルを公募
  • 集中貯蔵施設の立地決定前に、立地サイト周辺等での公聴会の開催、地元州知事や地方政府等との同意協定の締結をエネルギー長官に義務付け
  • エネルギー長官は、上記プロポーザルの公募から120日以内に、推定費用、スケジュール等を含むパイロットプログラム計画を連邦議会に提出
  • 集中中間貯蔵のパイロットプログラム活動に係る資金の放射性廃棄物基金からの支出を許可

また、軍事起源のTRU廃棄物の地層処分場である廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)については、DOEの予算要求と同額の383,260千ドル(約421億5,860万円)が計上されている。

なお、ネバダ州選出の連邦議会の上院議員は、ユッカマウンテン処分場の許認可審査活動のための予算を計上しないように求め、上院歳出委員会エネルギー・水資源開発小委員会の委員長等に宛てて書簡を提出していた。

【出典】

 

【2021年11月22日追記】

米国の連邦議会資料室は2021年11月に、2020年10月1日から2021年9月30日までを対象としていた「2021会計年度包括歳出法」(Public Law No.116-260、以下「包括歳出法」という。)の公式ファイルを連邦議会資料室ウェブサイトで公表した。2021会計年度の歳出予算については、2020年12月21日に2021会計年度包括歳出法案(H.R.133)が連邦議会両院で可決され、2020年12月27日に大統領の署名を得て法律(Public Law No.116-260)として成立していたが、最終的な包括歳出法のファイルは公表されていなかった。包括歳出法で規定された2021会計年度の高レベル放射性廃棄物管理に係る予算額は、一部を除いて、2020年7月31日に下院本会議で可決された統合歳出法案(H.R.7617、以下「下院版歳出法案」という。)と同様のものとなっている。なお、ユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可手続きの再開等のための予算は計上されていない。

包括歳出法及び付随する説明文書(Explanatory Statement、以下「付随説明文書」という。)で規定された放射性廃棄物処分関連の予算は、下表のとおりとなっている。

 

予算項目

プログラム

サブプログラム
(サブプログラムがない場合は括弧内に概要説明)

2022会計年度歳出予算
(単位:千ドル)

財源

DOE

原子力(Nuclear Energy)

燃料サイクル研究開発
(Fuel Cycle Research and Development)

使用済燃料処分等研究開発(Used Nuclear Fuel Disposition R&D)

62,500
[約65億6,300万円]

一般

統合放射性廃棄物管理システム(IWMS)
(Integrated Waste Management System)

18,000
[18億9,000万円]

放射性廃棄物処分
(Nuclear Waste Disposal)

放射性廃棄物処分
(Nuclear Waste Disposal)

(中間貯蔵を含め、1982年放射性廃棄物政策法の目的遂行)

27,500
[約28億8,800万円]
※うち20,000は中間貯蔵、7,500はNWF監督等

20,000は一般、
7,500はNWF

国防環境クリーンアップ
(Defense Environmental Cleanup)

廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)

WIPP操業ほか
(換気システム等の設備更新を含む)

413,260
[約433億9,200万円]

一般

独立機関

原子力規制委員会(NRC)

高レベル放射性廃棄物処分

(高レベル放射性廃棄物処分場の許認可審査)

0

NWF

放射性廃棄物技術審査委員会(NWTRB)

活動費

(DOE研究開発活動の評価等)

3,600
[3億7,800万円]

NWF

NWF:放射性廃棄物基金、1ドル=105円で換算

統合放射性廃棄物管理システム(IWMS)及び廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)以外の具体的な予算額は、下院版歳出法案で計上されていた予算額と同一となっている。統合放射性廃棄物管理システム(IWMS)については、下院版歳出法案では25,000千ドル(26億2,500万円)が計上されていたが、2020年11月10日に公表された上院版歳出法案原案では予算は計上されていなかったが、包括歳出法で18,000千ドル(18億9,000万円)が計上された。また、廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)については、下院版歳出法案で10,000千ドル(10億5,000万円)が計上されていた地域のインフラ整備費用のための予算については、計上しないことが付随説明文書で示されている。

包括歳出法の付随説明文書では、高レベル放射性廃棄物管理に係るものとして、以下のような指示が示されている。

  • 使用済燃料処分等研究開発(UNFD)
    DOEは、輸送状態における使用済燃料の挙動、及び輸送中における使用済燃料の燃料棒の安全性改善の可能性について研究すること。
  • 統合放射性廃棄物管理システム(IWMS)
    DOEは、使用済燃料が残置されたサイトにおけるサイト準備活動を継続するとともに、地域輸送の再開について評価し、輸送に関する調整の取組みを実施すること。特に、都市部や先住民居留地に近いサイトからの使用済燃料の除去の計画を含めるよう努力すること。
  • 廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)
    包括歳出法の施行から90日以内に、WIPP関連の道路使用及びその活動により必要となる今後の金額について、連邦議会両院の歳出委員会に報告書を提出すること。報告書には、1992年から2020年におけるWIPP関連の道路使用を石油・ガス産業等の他の重負荷活動と比較したデータ、これまでの予算の使用状況、及び改善を計画している道路等の具体的な費用想定を含めること。

なお、中間貯蔵に係る活動を含む放射性廃棄物処分(Nuclear Waste Disposal)プログラムについては、付随説明文書では予算額が示されているのみで特段の指示等は示されていない。ただし、付随説明文書において、下院版歳出法案(H.R.7617)に付随する委員会報告書(H.Rept.116-449、以下「下院委員会報告書」という。)における記載は、特に矛盾しない限り付随説明文書と同等の効力を持つものとされている。ここで、放射性廃棄物処分(Nuclear Waste Disposal)プログラムについて下院委員会報告書では、DOEに対し、連邦政府による中間貯蔵施設のサイトを選定するための活動を、現行のDOEの法的権限の範囲で、同意に基づくアプローチを活用して進めることを指示していた。

なお、2021会計年度の歳出予算については、2021会計年度のうち2020年10月1日から2020年12月11日までを対象とした継続歳出法案(H.R.8337)が2020年10月1日に大統領の署名を得て法律(Public Law No.116-159)として成立した。しかし、継続予算の期限内に歳出法案は可決されず、2020年12月18日までを対象とした「さらなる継続歳出法(H.R.8900、Public Law No.116-215として成立)」、さらには2020年12月20日までを対象とした継続歳出法(H.J.Res.107、Public Law No.116-225として成立)、2020年12月21日までを対象とした継続歳出法(H.J.Res.110、Public Law No.116-226として成立)、及び2020年12月28日までを対象とした継続歳出法(H.R.1520、Public Law No.116-246として成立)と、5度にわたる継続歳出法が制定され、最終的に包括歳出法(Public Law No.116-260)が2020年12月27日に制定との経緯をたどっていた。

【出典】

  1. 米国における会計年度は、前年の10月1日から当年9月30日までの1年間となっており、今回対象となっている2021会計年度の予算は2020年10月1日からの1年間に対するものである。 [] [] [] [] []
  2. DOEの予算要求では、中間貯蔵施設関連を含めた27,500千ドル全体について、放射性廃棄物基金からの支出で賄うものとされていた。 []

(post by inagaki.yusuke , last modified: 2023-10-17 )