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《フランス》ビチューメン(アスファルト)固化体の管理に関する国際レビューが開始

フランスの放射性廃棄物管理機関(ANDRA)は、2018年9月26日付プレスリリースにおいて、2018年9月6日に、政府と原子力安全機関(ASN)主導で、地層処分の対象であり、発熱反応のリスクが指摘されているビチューメン(アスファルト)固化体の管理に関する国際レビューが開始されたことを公表した。

ビチューメン固化体は、Orano社(旧AREVA社)や原子力・代替エネルギー庁(CEA)の再処理工場の廃液処理で発生したスラッジ等をビチューメン(アスファルト)にて固化し、金属製容器に封入したものであり、長寿命中レベル放射性廃棄物に分類されている。ビチューメン固化体は、ANDRAによる高レベル放射性廃棄物及び長寿命中レベル放射性廃棄物の地層処分場において処分が予定されている長寿命中レベル放射性廃棄物の廃棄物量72,000m3の18%(約13,000m3)を占めており、この廃棄物量は高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)の廃棄物量12,000m3を上回るものとなっている。

今回設置されたビチューメン(アスファルト)固化体の管理に関する国際レビューチームは、国内外の専門家や有識者等で構成されており、以下の内容についてレビューを実施する。

  • ビチューメン固化体の特性と挙動に関する科学的知見
  • ビチューメン固化体で生じる化学反応の抑制に関して、現在実施中の研究の妥当性
  • 急激な発熱反応のリスクを排除するためにANDRAが実施している地層処分場の設計変更に関する検討の妥当性

政府やASNは、ビチューメン固化体の安全対策を重要視し、これまでに、以下のような検討を行っており、今回の国際レビューチームの設置はこれらに基づくものである。

  • 2016~2018年を対象とした「放射性物質及び放射性廃棄物の管理に関する国家計画」(PNGMDR)において、原子力・代替エネルギー庁(CEA)がANDRAと協力して実施するビチューメン固化体に関する研究成果に基づく報告書を2017年6月末までに政府に提出し、さらにANDRAは同報告書を踏まえ、地層処分場にビチューメン固化体を受け入れた際の影響分析結果を2018年6月末までに政府に提出する方針が示された
  • ANDRAが提出した地層処分場の安全オプション意見請求書(DOS)について、ASNが2018年1月に公表した見解書では、ビチューメン固化体の処分坑道における火災対策として、発熱反応を抑えるための研究を優先的に実施するとともに、発熱反応の過剰な進行を防げるように処分場の設計を変更する場合の検討を実施することが勧告された
  • 2018年3月に開催された地層処分プロジェクトに関する高レベル委員会(CHN)において、地層処分プロジェクトに関する透明性強化の方針の中で、政府及びASNの指示の下、ビチューメン固化体に関する国際専門委員会を2018年中に設置することが決定された
  • 2018年6月に公開された国家評価委員会(CNE)1 の第12回評価報告書では、国際的な検証が行われるべきであるとの立場が示され、地層処分プロジェクトに関する高レベル委員会(CHN)で設置が決定されたビチューメン固化体に関する国際専門委員会における検討状況を注視する方針が示された

また、原子力安全機関(ASN)は、現状の設計と、ビチューメン固化体に関する知見のレベルからは、同廃棄物を地層処分場に処分することはできないと考えており、以下のいずれかを明らかにすべきであるとの立場をとっている。

  • 設計変更により地層処分場にビチューメン固化体を安全に処分できること。
  • 化学反応を抑制するための処理をビチューメン固化体に対して行う場合の技術的な実現可能性。

なお、今回の国際レビュー会合には、国防原子力安全機関(ASND)2 と国家評価委員会(CNE)の代表も参加している。

今後、ビチューメン(アスファルト)固化体の管理に関する国際レビューチームは、2018年10月、11月及び12月に会合を開催し、2019年半ばまでに、検討結果に関する報告書を取りまとめる予定である。

【出典】

 

【2019年9月18日追記】

フランスの原子力安全機関(ASN)は、2019年9月12日付のプレスリリースにおいて、地層処分の対象であり、発熱反応のリスクが指摘されているビチューメン(アスファルト)固化体の管理に関して、専門家・有識者等で構成される国際レビューチームが取りまとめた報告書を公表した。国際レビューチームは、主に3つの内容についてのレビューを実施し、それぞれについて、以下のような結論を示した。

  • ビチューメン固化体の特性と挙動に関する科学的知見:
    発熱反応が生じる温度に関しては、これまで原子力・代替エネルギー庁(CEA)が研究を行っている。その結論の妥当性を強固なものとするには、補完的な試験を実施する必要がある。
  • ビチューメン固化体で生じる化学反応の抑制に関して、現在実施中の研究の妥当性:
    化学反応を抑制するための処理方法に関しては、工業規模での実現性についての検証が必要である。このような処理施設を2040年以前に設置することは実現困難な見通しであるが、化学反応を抑制するための研究を継続すべきである。また、工業化が必要となった場合には、具体的な処理プロセスを決定する前に、ビチューメンを化学的に溶解するメリットの有無を再検討すべきである。
  • 急激な発熱反応のリスクを排除するために放射性廃棄物管理機関(ANDRA)が実施している地層処分場の設計変更に関する検討の妥当性:
    ANDRAが今後も研究を進めることによって、安全性を立証できるように地層処分場の設計変更を行うことは、短期で実現可能であると考えられる。処分場の設計変更によって、急激な発熱反応のリスクを排除し、ビチューメン固化体をそのまま処分できれば、事前に化学反応を抑制する処理を行うより、明らかにコストが小さくなると考えられる。

ASNと原子力政策を所管する環境連帯移行省のエネルギー・気候総局(DGEC)は、今回の国際レビューの結果、並びにこれを受けて行われるANDRA及び廃棄物発生者の研究結果について、現在策定中の2019~2021年を対象とした「放射性物質及び放射性廃棄物の管理に関する国家計画」(PNGMDR)に反映する方針である。

【出典】

  1. フランスにおいて放射性廃棄物等の管理計画に関する研究・調査の進捗状況を評価する組織 []
  2. 原子力・代替エネルギー庁(CEA)は軍事由来のビチューメン固化体をマルクールサイトに保有しており、これを規制・監督するのはASNDである。 []

(post by eto.jiro , last modified: 2023-10-10 )