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《ドイツ》バックエンド資金確保のあり方を検討する委員会が放射性廃棄物管理に係る資金確保のための公的基金設置を勧告

連邦経済エネルギー省(BMWi)は2016年4月27日に、「脱原子力に係る資金確保に関する検討委員会」(以下「検討委員会」という)が、原子力発電所の廃止措置及び使用済燃料を含めた放射性廃棄物管理のための資金(以下「バックエンド資金」という)確保のあり方に関する勧告をとりまとめた最終報告書を提出したことを公表した。検討委員会は、バックエンド資金を長期的に維持できる資金確保方策の検討を目的として、連邦政府により2015年10月に設置された。当初、2016年1月末までに最終報告書を提出する予定であったが、原子力発電事業者との協議に時間を要したことなどから、2016年4月末の報告書提出となった。

ドイツでは原子力法に基づき、放射性廃棄物処分場のサイト選定、建設及び操業の責任は連邦政府にある。一方、放射性廃棄物管理費用は、発生者責任の原則に基づいて原子力発電事業者が負担しているが、現在のところ公的な基金制度はなく、各原子力発電事業者は、将来に発生が見込まれる費用を引当金として計上している。

放射性廃棄物管理のための資金確保に関する検討委員会の勧告

検討委員会は、中間貯蔵以降の放射性廃棄物の管理に関係する実施責任及び資金確保・管理責任を、原則として連邦政府に集中することを勧告している。これに伴い、新たに公的基金を設置すること、また、現在、原子力発電事業者が引当金として計上しているバックエンド資金のうち、放射性廃棄物の管理資金(約172億ユーロ、約1兆5,500億円)に加えて、リスクに備えるために35%の保険料を上乗せした総額約233億ユーロ(約2兆9,100億円)を同基金に払い込むことなどを勧告している(下表参照)。引当金の基金への移管は、基金設置後直ちに実施される。一方、リスクに対応するための保険料は全ての原子力発電所が運転を終了する2022年までに基金に払い込むこととされている1

この勧告が実行された場合、2022年に基金へのすべての払い込みを終えた後は、最終処分場の操業開始遅延等に伴い費用が増大した場合でも、原子力発電事業者が基金への払込金額を超える負担を求められることはないとされている。

表: 原子力発電所由来の放射性廃棄物の管理・処分における
原子力発電事業者と連邦政府の責任分担

  

現状の責任分担 検討委員会勧告による責任分担 事業者引当金から基金への資金移管額
(2014年価格)

放射性廃棄物のコンディショニング

事業者

連邦政府:今後発生する使用済燃料及び再処理廃棄物(ガラス固化体)の処分のためのコンディショニング

事業者:その他の廃棄物

①約47億ユーロ
(約5,900億円)

中間貯蔵及び輸送

事業者

事業者:中間貯蔵施設の設置まで

連邦政府:中間貯蔵施設操業開始以降、最終処分場への輸送までの全工程

最終処分

事業者:資金確保・管理

連邦政府:処分場サイト選定、設置、操業、廃止措置

連邦政府

②約124億ユーロ
(約1兆5,500億円)

基金に移管される引当金の額(①+②)

③約172億ユーロ
(約2兆1,500億円)

リスクに対応するための保険料(③の約35%)

④約61億ユーロ
(約7,600億円)

基金への払い込み総額(③+④)

約233億ユーロ
(約2兆9,100億円)

原子力発電所の廃止措置に関する検討委員会の勧告

原子力発電所の廃止措置に関する検討委員会の主な勧告は以下のとおりである。

  • 廃止措置に関しては引き続き、原子力発電事業者が実施責任及び資金・財務面で無限責任を負う。この責任について法的な根拠を与える法律を制定する。
  • 現状では廃止措置オプションとして、「安全貯蔵」と「即時解体」のいずれかを選択できるが、これを即時解体に限定する。連邦政府及び州は、廃止措置の許可を迅速かつ効率的に発給できるように準備を整える。

検討委員会の勧告に関する今後の動き

検討委員会は、連邦政府と原子力発電事業者に対し、同委員会が勧告した内容に関して合意書を締結するよう求めている。また、検討委員会の勧告を実行に移すには、原子力法及び関係法令の改正のほか、新たな法令の制定が必要である。今後、連邦政府は関係省庁の政務次官等で構成される「原子力発電に関する政務次官委員会」において、検討委員会の最終報告書をレビューし、勧告された措置の実施について検討することとなっている。

【出典】

 

【2016年6月6日追記】

ドイツ連邦政府は2016年6月1日のプレスリリースにおいて、「脱原子力に係る資金確保に関する検討委員会」(以下「検討委員会」という)が2016年4月27日に行った勧告の実施に関して閣議決定したことを公表した。

連邦政府は、放射性廃棄物の管理・処分資金に関する新たな公的基金の設置などを盛り込んだ検討委員会の勧告について、合意可能かつ実現可能な解決策を示したと評価している。また、連邦政府は現在、検討委員会の勧告の詳細なレビューを行っている段階であるが、これと並行して勧告内容の実施に必要な関連法令の策定準備を進める方針を示している。

【出典】

  1. ドイツ政府は2022年末までにすべての原子力発電所の営業運転を停止することを決定している。 []

(post by tokushima.hideyuki , last modified: 2023-10-11 )